『世界が変わる時』を前にーーハク。がHomecomingsと溶け合い、鳴らした覚悟と新たな始まり『ハク。の日 -大阪編-』でみせた自由な景色
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撮影=toya
2026年8月9日(日)、大阪・心斎橋BIGCATでハク。の恒例自主企画『ハク。の日 -大阪編-』が開催された。2021年に始まり、今年で6回目を迎えた『ハク。の日』史上、最大キャパでの開催となる。ゲストは、ハク。がバンドを始めた頃から憧れを抱き、身近な存在だったというHomecomings。それぞれが歩んできた時間が溶け合い、さらにハク。がこれから新たな一歩を踏み出していこうとする覚悟が滲む一夜となった。
『ハク。の日 -大阪編-』2026.8.9(SUN)大阪・心斎橋BIGCAT
Homecomingsは、畳野彩加(Vo.Gt)と福富優樹(Gt)、サポートメンバーに吉木諒祐(THE NOVEMBERS)、関根史織(Base Ball Bear)を迎えて登場。スモークが焚かれたステージに浮かぶ幻想的な幕開けに。
静かに鳴らされた「luminous」の一音目から、この日の対バンがベストマッチであることを確信させられる。柔らかくドリーミーな畳野の歌声がBIGCATいっぱいに響き渡り、「euphoria / ユーフォリア」を終えると大きな拍手が沸き起こる。続く「every breath」では、演奏が進むにつれてサウンドの厚みが増し、じりじりと熱を帯びながらこちらへ迫ってくる。
MCでは福富「『ハク。の日』おめでとうございます!」と祝福。心斎橋JANUSのイベントで、オープニングアクトを務めていたハク。と出会ったことを振り返り、「そこからお互い音楽を続けていて、こういう大事な日に呼んでいただいて、本当にうれしいです」と喜びを伝える。続けて披露されたのは「knit」。肌寒さを思わせる物寂しさと、人肌のような温もり。優しさと力強さ、相反するような要素のどちらも手放さずに紡いで内包させる、Homecomingsらしい音像でフロアを包み込んでいく。「ラプス」では魔法のような煌めきと日常の儚さが交差。「angel near you」では美しいコーラスワークが冴え渡り、Homecomingsらしい音世界を存分に描き出していった。
やがてステージが暗転すると、福富が「短い時間でしたが、ありがとうございました!」と告げる。しかし、ここからが凄かった。「Drowse」が始まると、それまでの夢見心地な空気から一転、軽快なリズムがライブのラストスパートを一気に加速させる。吉木のドラムが躍動的に打ち鳴らされ、バンドの演奏もぐんぐん熱を帯びていく。まだこんな展開を残していたのか――思わずのけぞってしまうほどの演奏に、フロアからは次々と拳が上がった。
四つ打ちに手拍子が重なった「US / アス」は、メンバーと観客、一人ひとりの呼吸や鼓動にスポットライトが当たり煌めきが生まれるような楽曲で、<これは私たちの歌>という宣言も力強く胸を打つ。そしてラストは「blue poetry」。Homecomingsが描いてきた風景を凝縮するように、畳野の歌声と4人の音がBIGCATの空間を満たしていった。
そんなホムカミの余韻と熱気のバトンを受け取ると、対バンでぶつかり合うのではなく、マーブルに溶け合うようにしてハク。のステージへと繋がっていく。ブルーのライトに包まれ、あい(Gt.Vo)、カノ(Ba.Cho)、なずな(Gt)、まゆ(Dr)が登場。円陣を組むと、大きな拍手に迎えられてライブをスタートさせる。
1曲目は「宇宙船ハート号」。これまでの『ハク。の日』とは一味も二味も違う、ストレンジで魅惑的なサウンドでいきなりBIGCATを満たす。かつての初々しさとは対局にある堂々たる演奏で、のっけからフロアにはいくつもの手が上がった。「頭の中の宇宙」では、カノのベースもご機嫌に鳴り、なずなのギターが冴え渡る。スペーシーな楽曲を立て続けに放たれると、今度は1st Full Album『僕らじゃなきゃダメになって』から「直感way」へ。4人のアンサンブルやアレンジはもちろん、観客のクラップまで楽曲にすっかり馴染んでいる。その光景から、一人ひとりがハク。の音楽とともに今日までを過ごしてきた時間まで伝わってくるようだった。あいの歌も遊びがあり、音源以上のフィジカルを伴って楽曲の力を引き出していく。
あいが観客へ感謝を伝え、「みんなが好きなように楽しんでもらえたらなと思います!」と伝えた、その直後。ほっこりとしたMCから一転、轟音とともに「dedede」が炸裂する。不敵な笑みを浮かべるカノ、甲高く切り込むなずなのギター、マユの高速ドラム、そして色気をまとったあいの歌声が高揚感を高める。(カノとなずなが前ツラに並んで鳴らすお馴染みの光景は、何度見ても胸が高鳴る!)
一息ついて披露された新曲「飛行」では、ポストロック的なアプローチから、エモーショナルで壮大な世界へとサウンドが広がっていく。<行こうか どこまでも?>という言葉も、これからさらに高く飛ぼうとする4人と重なり、じーんとくる。「自由のショート」ではマユの安定したビートが心音のように響き、あいの自由度を増した歌がのりエモーショナルに胸を打つ。
再びMCへ。あいは、さきほどHomecomingsも話していたライブでオープニングアクトとして出演したことに触れ、「ずっと前から好きで、バンドを始めた時のSEがホムカミで。それぐらい身近な存在で、包み込んでくれる音楽。そんなホムカミと一緒にできてうれしいです」と喜びを爆発させ、照れくさそうにもじもじしながら話す。そして「大事な発表ごとがある」とメモを手に、9月9日(水)にリリースするメジャー1stアルバム『世界が変わる時』の詳細を発表。堂々とした演奏っぷりとは裏腹に、MCでは緊張した様子も見てとれたが、時折フロアで見守ってくれている観客の方に目をやりリラックスした表情を見せていたのも、ホームグラウンドならではだった。
「ここは大阪だけどね」と前置きしつつ披露された新曲「渋谷から」は、エッジーでノイジーなサウンドと、あい独特の言葉の世界で釘付けに。東京へと活動の場を広げ、新天地で戦う彼女たちの逞しさも感じさせる一曲で。<これは始まりなのか>という言葉も、アルバムのオープニングトラックに相応しく、またこれからメジャーという新たなフィールドへ踏み出すバンドの決意表明のようにも響いた。
その残響を引き継いだ「それしか言えない」では、さらに演奏が一気に爆発。鬼気迫る音像にフロアが揺れ、早口のリリックから叫びへと感情をバーストさせる。そこから奥行きのある「世界」をじっくりと聴かせる流れも鮮やかだった。
「なんでかわかりませんが、すごく泣きそうになりました。そうすると頭が通信できなくなりました」と、あいらしい素直なMCで場が和む。ツアーについても「立ちたいねと言ってた場所に立てること。みんなにちょっとずつでも広がっていくことがうれしい」と真摯に語った。
残すは2曲。客席から上がった「えー!」と惜しむ声には、笑顔で「しょうがないです」とキッパリ(笑)。「たくさんいろんなことを届けていけるように頑張ります!」と宣言して、新曲「一進」を投下。TVアニメ『手札が多めのビクトリア』のオープニングテーマとして制作された一曲は、葛藤を抱えながらも前へ進む意志を、これまで以上にストレートな言葉とサウンドに乗せて届けた。
本編最後は「奥二重で見る」。宇宙というマクロな世界から始まったこの日のライブが、最後には自らの瞳の奥というミクロな視点にクロースアップし、深めていく構成に唸らされる。ロマンチックな空想から何気ない日常までを自由に行き来する楽曲の振り幅と、それを鳴らし切る演奏力は、今のハク。の強さが凝縮された本編だった。
鳴り止まない拍手に応えて、グッズを身につけた4人がアンコールへ。「ハクの日。」が2021年から始まり、今回で6回目を迎えたことをカノが伝えると、あいは「3回目やと“続いてるな”って気持ち。6回目やと“続けてるなぁ!”という気持ち」と笑う。彼女らしいといえば彼女らしい捉え方だが、その何気ない言葉に、4人が積み重ねてきた年月が滲んでいるようにも感じた。
そしてメジャーデビューアルバム『世界が変わる時』から、アンコールでも新曲「GO」を披露。<もう泣かない>という強い意志をストレートなロックサウンドに乗せ、葛藤の先で希望を掴もうとする姿に、こちらも思わず心の中でガッツポーズを送る。
最後は「回転してから考える」。バンドのポテンシャルを解放し、新天地へと連れていった一曲でフィナーレへ突き進む。カノはのけぞるようにベースを鳴らし、タオルがフロアを舞う。カノ、なずな、マユが向き合い、あいも息を切らしながら声を振り絞る。ステージもフロアも一緒になって、頭を振り乱し、歌い、鳴らす。そこにはバンドと観客が個性を生かしたままかき混ざりひとつになったような、自由で美しい景色が広がっていた。
6回目の『ハク。の日』は、これまで積み重ねてきた時間を確かめる日であると同時に、その先に待つ新しい景色の始まりを告げる一夜となった。そしてバンドにとっても、メンバーにとっても、この1枚を受け取った一人ひとりにとっても『世界が変わる時』となるに違いない、メジャーデビューアルバムへの期待感が高まるステージだった。本作を携えた、ツアーへと突き進むハク。各地を廻り、来年の『ハク。の日』にはまた違った景色を見せてくれるだろう。
取材・文=大西健斗 撮影=toya
2026年8月18日(火)、恵比寿LIQUIDROOMで開催された『ハク。の日 東京編』のレポートはこちら!
>ハク。とストレイテナー、憧れの先で響き合う――“相思相愛”だった初開催『ハク。の日 -東京編-』で見せた飛躍への覚悟
セットリスト
02. euphoria / ユーフォリア
03. every breath
04. knit
05. ラブス
06. angel near you
07. Drowse
08. US / アス
09. blue poetry
02. 頭の中の宇宙
03. 直感way
04. dedede
05. 飛行
06. 自由のショート
07. 渋谷から
08. それしか言えない
09. 世界
10. 一進
11. 奥二重で見る
EN2. 回転してから考える
ツアー情報
※各公演別途ドリンク代がかかります