ハク。とストレイテナー、憧れの先で響き合う――“相思相愛”だった初開催『ハク。の日 -東京編-』で見せた飛躍への覚悟
写真=カワセルイ
2026年8月18日(火)、恵比寿LIQUIDROOMで開催された、ハク。による自主企画の対バンイベント『ハク。の日 東京編』。この日のレポートを本来の『ハクの日。』である8月9日(日)にHomecomingsを迎え、開催された「大阪編」に続いてお届けする。
『ハク。の日 東京編』2026.8.18(TUE)東京・恵比寿LIQUIDROOM
6回目にして、初の開催となった今回の「東京編」が物語るのは、結成から7年、さらなる追い風に乗ったバンドの勢いだ。キャパ1,000人のLIQUIDROOMがソールドアウトになったことからも、今まさにバンドが飛躍しようとしていることは明らかだったが、それは「東京編」の対バンの選び方からも感じられた。この日、ハク。が迎えたのは、結成から数えて28年のキャリアを持つストレイテナーだったのだから、思わず快哉を叫んだファンは少なくなかっただろう。
もちろん、ストレイテナーにオファーしたハク。としては、大先輩に胸を借りるつもりだったのだろう。しかし、「今日は、どういうわけで誘ってもらったんだろうと思いながら、LIQUIDROOMのステージに立ってます」と戸惑う素振りを見せながら、「何を隠そう、僕はハク。のファンです」と最初のMCでストレイテナーのフロントマン、ホリエアツシ(Vo.Gt.Key)が告白したことで、記念すべき東京初開催の『ハク。の日』はがぜん“相思相愛”の2組によるベストマッチの対バンイベントになっていったのである。
「どうしてそんな歌詞が書けるのとか、どうして4つ目と8つ目に変なコードをぶちこんでくるのとか、ハク。のメンバーに訊きたいことがいろいろあります」
前掲の「ハク。のファンです」という発言が社交辞令ではないことを裏付けるハク。に対する興味をホリエが言葉にしながら、ストレイテナーはイントロから観客を沸かせた「Melodic Storm」を皮切りに「Next Chapter」「メタセコイアと月」「Skeletonize!」といった新旧の楽曲を披露。ギターポップからバラード、そしてダンサブルなポップナンバーまでという振り幅とともにエモーショナルに歌い上げるホリエをはじめ、メンバー4人の個性が絶妙に交じり合うダイナミックなバンドアンサンブルを観客に見せつけていった。
「ハク。がカバーしてくれた曲です」とホリエが言って、最後に演奏したのはストレイテナーの代表曲である「シーグラス」。リリース10周年を記念して7月29日に「DECADE EMO MIX」と題した新バージョンを配信したばかりだが、この日はハク。によるオマージュカバーに応える選曲だったに違いない。
そんな思いを汲み取ったのか、クライマックスに向け、テンポアップしていった演奏に応えて、観客が鳴らしたハンドクラップは、まるでストレイテナーとハク。の楽曲を通した交歓を祝福するように聴こえたのだった。
「今日はストレイテナーに出てもらえて、めちゃめちゃうれしいです! みんなもストレイテナーが大好きだと思うけど、私も大好きです!」
開口一番、ストレイテナーと共演できた感激を露わにした、あい(Vo.Gt)がフロントに立つ、この日の主人公、ハク。は、「ファンです」とホリエが言うのも大いに頷ける、あまりにもユニークなバンドアンサンブルを、1曲目の「宇宙船ハート号」から見せつけ、観客を虜にしていった。その「宇宙船ハート号」はボサノバっぽいリズムが心地いいギターポップナンバーと思わせ、あいの歌の裏で、なずな(Gt)が奏でる単音リフがマスロックなんて言葉も連想させつつ、ギターポップの一言に収まりきらない魅力もアピール。そこからまゆ(Dr)のドラムで繋げた2曲目の「頭の中の宇宙」もオールディーズなポップスをオルタナロックサウンドに落とし込みながら、やはりなずなが奏でる単音リフが転調して、観客の耳を惑わせるのだから、三半規管の弱い人は要注意だが、そういう曲をステージの4人は実に楽しそうに笑顔で演奏しているのだった。
あいがギターのコードをリバービーに鳴らしながら、ハーモニーワークでも魅了したノスタルジックなポップナンバー「ふわ輪」。まゆがタイトに鳴らすマシーン風のビートを軸にベースソロとも言えるメロディアスなフレーズを閃かせ、観客を沸かせたカノ(Ba)をはじめ、フロントに立つ3人が奔放な演奏を繰り広げた「dedede」と、1曲目の「宇宙船ハート号」からお馴染みの曲を繋げ、フロアを存分に揺らしてきたタイミングで、バンドは新曲の「飛行」を披露。棹3本のアンサンブル、カノン形式のコーラス、変拍子がバンドのプログレセンスを物語る一方で、敢えてルート弾きしたベースをはじめ、サビではロックバンドらしい疾走感もしっかりと表現してみせる。
そこにロマンチックなポップソングを、彼女達にしてはどちらかと言うと、タイトでリラックスしたアンサンブルに落とし込んだ「自由のショート」を繋げたところまでがセットリストの前半戦だった。
「今日、ストレイテナーと一緒にできてめちゃめちゃうれしいです。私がバンドを始めたくらいに聴いた「ネクサス」という曲の歌詞が自分に浸透したんです。その頃からずっと大切なバンドの1つです」
ストレイテナーに対する思いを語ったあいは、続けて9月9日にメジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』を9月9日(水)にリリースすることを発表した。
「14曲入っていて、今までのハク。もだけど、新しいハク。も含め、自分の音楽観をちゃんと書けた作品だと思うので、少しずつでもいいからみんなに届いたらいいなと思ってます」
そのメジャー1stアルバムから先行配信リリースした新曲「渋谷から」から始めた後半戦は、前半戦以上にライブバンドとして、彼女達が持つ凄みを見せつけていく。その「渋谷から」はファンキーなポストパンクナンバーだが、なずなが鳴らした凶暴とも言えるほど歪ませたギターの音色に戦慄。激しいギターソロにフロアから歓声が沸いた。
そして、なずなが足元のエフェクターを操作して、ノイズを鳴らす中、なだれこんだ「それしか言えない」では、音源よりも感情を高ぶらせ、シャウトするあいをはじめ、全員の渾身の演奏が地鳴りのように響き、観客を圧倒する。そこに意表を突くように繋げたスローナンバーの「世界」も最後は轟音の演奏に!
「みんな楽しい!?」
そう尋ねたあいにフロアから返ってきたのは、「おぉ!」という怒号に近い歓声だった。それを聞いたあいは「イエー!」と声を上げ、「ありがとう。うれしい!」と続けた。
10月30日(金)の千葉LOOKを皮切りに全国15公演を巡る『みんなの世界が変わる時ツアー』では、2027年1月31日(日)のツアーファイナルで、彼女達にとって最大キャパとなるZepp Shinjuku (TOKYO)に挑戦する。
その意気込みを語ると、あいは「残り2曲です!」と観客に予告する。
「ええ~」と残念そうに声を上げる観客に「さみしい?」と尋ねたあいはにこっと微笑んで、こう続けた。
「(さみしいってことは)ツアーに来てくれるってことだよね? ツアーで会おうね!」
あいの言葉に観客が沸き上がる中、バンドが演奏したのは7月8日に配信リリースした「一進」だ。軽快なギターポップナンバーと思わせ、3連符のコードカッティングをはじめ、バッキングという概念にとらわれないなずなのギタープレイに加え、演奏中のブレイクやサビの転調が、ある意味トリッキーな魅力をダメ押しするようにアピールする。そこからリラックスしたポップナンバー「奥二重で見る」に繋げ、ミラーボールの眩い光がフロアを輝かせる中、エンディングを迎えるも、自信作になった『世界が変わる時』の曲をもっと観客に聴いてもらいたかったのだろう。
アンコールでは、この日3曲目となる新曲「GO」を披露して、曲が持ついわゆるアオハル感を観客と共有すると、「ラスト1曲!」とあいが声を上げる。そして、轟音が響きわたる中、イントロを耳にした観客が上げた歓声とともに「回転してから考える」になだれこむと、タオル回しとハンドクラップでバンドの熱演に応える観客とともに記念すべきライブの最後を飾るにふさわしい大きな盛り上がりを作り上げたのだった。
取材・文=山口智男 写真=カワセルイ
2026年8月9日(日)、大阪・心斎橋BIGCATで開催された『ハク。の日 -大阪編-』のレポートはこちら!
>『世界が変わる時』を前にーーハク。がHomecomingsと溶け合い、鳴らした覚悟と新たな始まり『ハク。の日 -大阪編-』でみせた自由な景色
セットリスト
『ハク。の日 東京編』2026.8.18(TUE)東京・恵比寿LIQUIDROOM
ストレイテナー
01. Melodic Storm
02. 叫ぶ星
03. Silver Lining
04. Next Chapter
05. COME and GO
06. メタセコイアと月
07. SAD AND BEAUTIFUL WORLD
08. Skeletonize!
09. 羊の群れは丘を登る
10. シーグラス[DECADE EMO MIX]
ハク。
01. 宇宙船ハート号
02. 頭の中の宇宙
03. ふわ輪
04. dedede
05. 飛行
06. 自由のショート
07. 渋谷から
08. それしか言えない
09. 世界
10. 一進
11. 奥二重で見る
EN1. GO
EN2. 回転してから考える
ツアー情報
※各公演別途ドリンク代がかかります