野田秀樹が芸術監督を務める「IF TOKYO 東京国際演劇祭 2028」が始動。「東京中の劇場が賑やかに点滅する日」を目指す

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2026.10.18
野田秀樹(IF TOKYO 東京国際演劇祭 芸術監督)

野田秀樹(IF TOKYO 東京国際演劇祭 芸術監督)

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2028年10月1日(日)から22日(日)にかけて、都内全域および近郊を舞台にした新たな舞台芸術の祭典「IF TOKYO 東京国際演劇祭 2028」が開催されることが発表された。

本演劇祭は、国内外の多様な演劇が集う3年に1度のお祭り。海外の大規模作品から若手クリエイターの実験的アプローチ、国内の現代演劇、ミュージカル、能・狂言・歌舞伎といった伝統芸能、郷土芸能、コンテンポラリーダンス、2.5次元ミュージカル、さらにはテント芝居まで、ジャンルや国境を越えた約200団体が参加を予定している。

芸術監督を務める野田秀樹は、本フェスティバルの開催趣旨と、今なぜ「演劇の復権」が必要なのかについて、熱のこもったメッセージを寄せた。コロナ禍を経て見出した希望や、AI時代における「人間の身体」と「劇場」の存在意義が力強く語られた、メッセージ全文を以下に掲載する。

野田秀樹(IF TOKYO 東京国際演劇祭 芸術監督) メッセージ

本日はお忙しい中、ありがとうございます。 このIF TOKYOの芸術監督を務めさせていただきます野田秀樹です。 (本業は、劇作家、演出家、役者であります)

三年前に日本記者クラブで私は、この国際演劇フェスティバル、IF TOKYOを提案するにあたって、これは「巨大な風車を巨人と思い込み猪突猛進したドン・キホーテの誇大妄想」に見えるかもしれないと語りました、今日はそのドン・キホーテの誇大妄想が、実現可能になったことのご報告であります。

ただ私一人でそのことを申し上げても、狂人の戯言におもわれますため、その証人として、ともに実現に向かって汗をかいていただいている方々に、ご列席していただいております。

巨大な風車への猪突猛進の実現に当たっては、二つの大きな車輪が必要でした。 一つの大きな車輪は、IF TOKYO という巨大なフェスティバルの、その構想実現のためのパートナーです。 このIF TOKYOの事務局を中心とする働きかけによって、文化と社会との関わりに深く関心と理解のある民間企業さんが挙り集まって下さり、実現できるところまでやってきました。ありがとうございます。後ほど、このパートナーさんについては、村岡さんの方からの紹介があると聞いています。

もう一つの大きな車輪が、コロナ禍に演劇界に誕生した、日本舞台芸術ネットワーク、JPASNの力です。 コロナ禍に結成されたこのネットワークは当時、「不要不急」とまで呼ばれた劇場の言われなき中傷を払拭するためのいわば後ろ向きの力が注がれました。 けれどもコロナ禍を何とか乗り越えた頃、「社会が演劇界を理解してくれない」とティーンエイジャーみたいに愚痴っていても始まらない。演劇がもっとこの世に認知される必要がある。前向きな力に変わりました。

かつて1960,70,80年代くらいまで、演劇は他の分野同様に、文化の真ん中にありました。それがいつの間にか、文化そのものが共同体の真ん中からずれ、そして、その文化の真ん中からも演劇がずれてしまった。演劇の復権は、文化の復権であり、共同体の精神の復権だと考えます。 そこでもっと世間に演劇をアピールしていく姿はないか。折角この演劇界を横断しているこのネットワークを、ポジティブに活用していく姿はないかという志向に至りました。

そこで思いついたのが、この国際演劇祭です。まずは劇場の数が圧倒的なTOKYOで始め、究極は日本全体を巻き込みたい。そういう思いです。 同時に、何故、今、演劇の復権なのか、演劇フェスティバルという思いつきなのかを私自身に問うことにもなりました。そして、何十年ぶりかに、十二指腸潰瘍となりました。

今、AIを含めた技術の発達で、人間の行為や思考が、不必要なものになってくるのではないか、という不安がまことしやかに語られています。 でも、その対極にあるのが、「演劇」です。 演劇は、人の前で人が演じる非効率な芸術です。演劇は「目の前でおこるハプニング」です。目の前でやらかしてしまう間違いやトチリさえも表現であることにしてしまう。現にお客はどこかで間違えないか、役者が転ぼうものなら拍手喝采です。

今隆盛のAIが作ろうとしている芸術には、間違いは起こらない。間違ったふりもすることができるらしいですが、それは、やはり間違いではない。AIは、正確に間違える。 演劇ではありませんが、カーレースが今後、自動運転の車によるカーレースになったらどうでしょう?確かに、一度は見てみたい気もしますがきっと直に飽きが来る。やはり、自動運転カーレースは、見ている時に、何かが足りない。それは、カーレーサー、人間の身体がないからです。人間の身体がないということは、人間がやらかす間違いを含めて、人間の身体が抱えているリスクがない。だから人を「ドキドキ」させないでしょう。

まさに、演劇という行為もそうで、仮にAIが創作上取って代わろうとしても、人間の身体のところ、目の前の本当の役者の体の代役はできない。 それこそが、演劇が目の前の芸術である所以です。演劇は目の前に人間の身体がある。だからドキドキさせる。一度、その「ドキドキ」を味わえば、病みつきです。 その大きな切っ掛けになるような、ライブだらけのフェスティバルにしたいと思っています。

そして演劇を見ると、「ドキドキ」するだけでなく、人は「ほっとする」。それは目の前で人間の体から、声や汗や時につばさえ飛んで、しかも間違えないように頑張っていながら間違えてしまう。 毎日同じことをやろうとしながら、やっぱり毎日が違う。これは「新しい技術」の目指すものと逆方向です。人間の体は間違える。だから人間の体は面白い。劇場ではそれが目の前で見られる。だから、「出来るだけ早く答えを出さなくてはいけない」今という時代に、「ホッとする」んだと思います。人間の身体が「不要不急」なものになることはない。人間の身体が、つまり人間がAIに取って代わられることはない。劇場に来ればそれが分かる。人間は人間でいいんだ。「ほっとする」ために、だから劇場にいらっしゃいということです。

お祭りというものが持っている特性も、そこに行くと何か「ほっとする」。その意味で、劇場に近い。祭りで知らない人とすれ違うとしても、それは普段、通勤や通学でヒトとすれ違うのとは少し違うはずだ。「ホッとする」場所を求めている人たちだからです。 演劇の祭りというのは、ただでさえ「ホッとする」場所である劇場やテント小屋が、お祭りになるわけですから、二重の「ほっとする」です。二重ホット。 しかも国際演劇祭というのは、スケールとしては巨大ですが、とどのつまりは、巨大な「ドキドキして、ほっとする」場所。東京中が、何か今日は「ドキドキしてほっとする場所」になっているな。ということかと思います。

何故、国内の演劇祭にとどまらず国際演劇祭なのかは、この後の野上さんや松田さんの話になると思います。 また、最も関心のある所に違いない、どんなものが見られるのか、に関しては、一年前にあたる来年秋に、そのラインアップを発表する予定であります。何だよ〜と言う声も聞こえてまいりますが、より質の高い、エネルギーのある演目を揃えたく思い、尽力をしているところであります。決まりつつあるところも随分とあるのですが、発表は時期尚早ということでお許しください。

このフェスティバルの間、東京中の劇場がここに劇場あり、といつも以上に声を上げます。その劇場の声は、秋祭りで遠くから聞こえてくる笛の音だと思っていただければ幸いです。

このフェスティバルが長い目でどういう影響を与えていくのか。劇作家の別役実さんが東日本大震災の折におっしゃった言葉を引用します。 「演劇は、即効薬じゃないんだよ。長く効く薬なんだよ」 その言葉を借りれば、即効薬のようにも見えるフェスティバルも長く続けることで初めて、どんな風にこの社会にこの共同体に、きいてくるのかが見えてくると思っています。

冒頭で、ドン・キホーテの誇大妄想が実現可能になったと申し上げましたが、それはまず、2028年のことであり、その先、三年に一度続いていくというのは、ドン・キホーテのミュージカル「ラ・マンチャの男」の中の歌にあるような、「見果てぬ夢」であります。この「見果てぬ夢」が次の世代、次の次の世代、次の次の次の世代へと繋がっていく願いを込めて、このIF TOKYO という生まれたてのフェスティバルを末長く見守ってください。劇場の客席から。

野田秀樹

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イベント情報

『IF TOKYO 東京国際演劇祭 2028』
 
・開催期間 :2028年10月1日(日)~22日(日)  
以降、3年ごとのトリエンナーレとして継続開催を予定 
・開催エリア:都内全域・近郊
・主催 :一般社団法人 IF Tokyo/IF TOKYO 2028組織委員会
・IF TOKYO 2028 TOP PARTNER: KDDI株式会社/株式会社ジェーシービー/株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX)/日本生命保険相互会社 /野村ホールディングス株式会社/東日本旅客鉄道株式会社/株式会社三井住友銀行
 
・公式サイト :https://iftokyo.jp/ 
 
■参加規模 約200団体 国内外あわせての参加規模を想定 
■開催エリア  都内全域・近郊 (日比谷、東京、日本橋、高輪、浜松町、有明、上野、浅草、池袋、新宿、渋谷、三軒茶屋、下北沢、東京近郊 野外ステージ、野外テント、他)
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