もう人間なんてやめちゃおう!『妖怪盆踊り』で非日常のグルーヴに酔う秋の日
『妖怪盆踊り 2026』
例年10月の3連休に、立川で『妖怪盆踊り』というイベントが開催されているのをご存じだろうか。縁日の屋台が立ち並ぶ中、思い思いに装った妖怪たちが集まって練り歩き、盆踊りをし、最終的には「やぐらステージ」に立つDJを囲んで大いにぶち上がるという、ハチャメチャでありつつも日本の伝統文化を色濃く匂わせるイベントだ。
会場風景
妖怪に変身した人たちが多数集まるという意味ではハロウィンイベントのようでもあるし、DJパフォーマンス中の会場の雰囲気は完全にクラブそのものである。コスプレ大会なのか、レイヴパーティーなのか、はたまたガチめの秋祭りなのか。会場の空気は場所や時間帯によって鮮やかに変化するため、生真面目な人なら「なんなんだ……一体このイベントは何がしたいんだ!」と混乱するかもしれない。正直、筆者も行ってみるまで全く分からなかった。
会場風景
2026年の『妖怪盆踊り』は10月10日(土)、11日(日)、12日(月・祝)の3日間で開催された。本記事ではSPICE取材班が現場で見たアレコレをお伝えしていこうと思う。きっとこのイベントを楽しむキーワードは「非日常」、そして「脱人間」だ。
妖怪盆踊りのすゝめ
会場風景
会場マップ(『妖怪盆踊り 2026』公式サイトより)
会場は、昭和記念公園横のオシャレ商業施設「グリーンスプリングス」だ。ビルの合間の中庭的なスペースが縁日になり、最奥には盆踊り・DJイベントの舞台となる「やぐらステージエリア」が広がる。が必要なのは「やぐらステージエリア」のみなので、妖怪を横目にただブラブラするぶんには無料で楽しめる。とはいえまあ、音楽が溢れ出してひときわ賑やかな「やぐらステージエリア」に入りたくなってしまうのが人情というもの。どうせ
を買うなら、前売りの方がちょっとお得ですよ(
はイープラスにて販売)!
やぐらステージエリア
妖怪の扮装は、してもしなくてもOK。ただし「やぐらステージエリア」に入る場合は、以下のドレスコードのうちいずれかをクリアしなくてなならない。
1:妖怪になる
2:和装する
3:『妖怪盆踊り』公式グッズを身につける
に加えてドレスコードまであると思うと敷居が高いように思えるが、むしろその一手間が非日常感を高めてくれるのである。せっかくこのイベントに身を投じるなら、思い切って妖怪になってしまうのがおすすめだ。筆者は物販コーナーでキツネのお面(1500円也)を購入して頭に載せていたのだが、会場とひとつになれたようなワクワク感はかなりプライスレスだった。いや、本当にお面ってすごい。
会場内には有料の「妖怪メイクブース」も複数あり、特別感あるフェイスペイントやメイクでさらに妖怪度を高めることができる。いいなあ。
街かど妖怪スナップ
それでは早速、会場内で見かけたキュートな妖怪の皆さんをちょっとご紹介しよう。
妖怪スナップ (小杉撮影)
ストローを使ってハイボールを啜る、愛らしいのっぺらぼう。ご本人曰く「口の穴は、今日ここに来てから開けたんです……飲めないのが堪えられなくて!」とのこと。こんなご陽気な妖怪ならいつでも遭遇したいものである。
妖怪スナップ
こちらは子どもたちに大人気のネコ。一緒に写真を撮りたい子たちが次から次へと集まってきてモテモテだった。ちびっ子たちのほうも、ネコメイクや三つ目メイクでバッチリ妖怪化しているのが可愛い。
妖怪(?)スナップ
仲良し3人組で地球に遊びにきたという宇宙人ギャルズの姿も。よく見ると、人によって頭の触角の本数が違うあたりにこだわりを感じる。お揃いの甚兵衛が、みなさんよくお似合いです。
「妖怪屋台村」で、ちょっとした異世界に迷い込む
妖怪屋台村風景 「オーガニックわたあめ」は食べておけばよかったと後悔中
「妖怪屋台村」と名付けられた縁日エリアでは、妖怪に関する雑貨や、仮装グッズ、なんだかよく分からないけど怪しい魅惑的なアイテムが販売されていたり……。
妖怪似顔絵を切り絵で制作してくれるブースや、コミック風に妖怪似顔絵を描いてくれるブースも
オカルトモチーフのカッコいいハンドメイド雑貨に心惹かれる(缶バッヂ買っちゃいました) (小杉撮影)
輪投げや射的といった、昔ながらのゲームの屋台が立ち並んでいたり。心に残るのは、射的の景品の豪華さである。ハワイ旅行やSwitch2がゲットできると知って張り切った取材班もつい仕事を忘れて挑戦してみたものの、結果、残念賞(駄菓子)を握りしめて肩を落とすこととなった。でも、一連の流れがとても楽しかった。きっとこれこそが射的の正しい楽しみ方だと思う。
ちなみに前日にはSwitch2の当たりが出たらしい。すごい。
夕陽は落ちて、逢魔時……
夕暮れの屋台村
陽が落ちてからは、提灯の灯りで屋台村がさらに幻想的な雰囲気に。屋台を冷やかしながらそぞろ歩けば、鬼やキツネとすれ違う。このムードにはきっと外国からの観光客も大興奮だろう。
妖怪スナップ
屋台のほか、無料で楽しめるエリアには「妖怪ディスコ」なるDJブースや、「魅世物小屋ショー」なる大道芸パフォーマンスエリアなどが設けられており、楽しみは尽きない。小さい子どもたちが妖怪メイクを施してはしゃいでいる姿を遠目に眺めつつ、日本の祭りっていいなぁ……なんてしみじみとした気分になる。
妖怪スナップ
なおもちろん、会場内でお酒・おつまみは豊富に販売されているのでご安心を。日常を離れて妖怪に近づくためにも、まずは「とりあえず一杯」キメるのがおすすめである。今回はキッチンカーエリアで「エスニックまつり」というイベント内イベントが開催されており、スパイシーなフードと共にタイのビールを楽しむこともできた。
盆踊り、しちゃいますか。
さて、本イベントは『妖怪盆踊り』。時間がちょっと前後するが、午後3時〜5時にかけて催された、メインイベントである「盆踊り」そのものについてお伝えしよう。
やぐらステージエリア
やぐらステージの前面には緩く傾斜のついた芝生が広がっている。購入者たちはレジャーシートを敷いたり敷かなかったりしながら、思い思いにくつろいでOKだ。盆踊りを眺めつつ、この後に開催されるDJパフォーマンスの待機をしている人も結構多い。
20時からの石野卓球イベントを心待ちにしていたお二人。手作りだというお面のクオリティが高くてドキッとする。
取材班が訪れた10月12日(イベント最終日)の盆踊りは、「モノガタリ宇宙の会」と「民謡ユニットこでらんに〜」という2チームによる生演奏・生唄で実施された。スタート前に一度振り付けの練習タイムが設けられていたのだが、ぼやぼや眺めている間に本番がスタートしてしまって、筆者は結構後悔した。どうやら練習はそんなに何度も無いので、しっかり予習して踊りたい人は最初のタイミングを逃さないように。
盆踊りのコツは、上手い人を見つけてひたすら真似すること!
盆踊りが始まると、(取材だし、自分は踊らなくてもいいかな〜)なんてぬるい考えは数分で打ち砕かれた。生演奏と歌の迫力がすごくて、どうしても身体が「ドドンがドン」のリズムに乗ってしまうのである。しかも見ているうちに踊りの輪は着々と大きくなっていき、様々な妖怪たちがぐるぐると踊り回っているのだ。もっと近くで見るには、一緒に踊ってしまうのが一番だ!
踊り切ったあとの妖怪集合写真。みんないい笑顔!
よく考えたらこれが人生初の盆踊り体験だった。地域の祭りとかで見かけても、これまで一度も輪に入ったことはなかったのに……やっぱりお面で「今の自分は自分ではない」という非日常のスイッチが入っていたからだろうか。ちなみに踊っている最中には、落ちたお面を後ろで踊っていたガチめの鬼が「あっどうぞ」と拾ってくれるという、心がほっこりするようなひとコマもあった。
熱狂する妖怪たちの宴
20時頃のやぐらステージ
妖怪たちの盆踊りのあと、すっかり夜に包まれたやぐらステージエリアはさらに熱を増していく。ここからは人気DJによるライブイベントの時間である。夜が更けていくにつれて観客たちは膨れ上がり、フィナーレを飾る石野卓球が登場した20時の時点では、まるで辺り一帯がクラブになったかのようだった。
石野卓球
そもそもこの『妖怪盆踊り』というイベントは、電気グルーヴの「モノノケダンス」のMVの世界を現実に再現できないか、という主催者の熱意によってスタートしたものだという(主催者×石野卓球のインタビュー記事URLは欄外に掲載)。
悲鳴に近い歓声と、少しでも前に行こうと押しのけ合い、肘鉄を喰らわせ合う観客たち。もはやこうなっては、誰もが妖怪になるしかない。あの夜、石野卓球が空気を揺らすやぐらステージエリアは、まさしく「モノノケダンス」、というか妖怪大集合状態だった。ある意味で強烈な非日常であり、「脱・人間」体験で本当にびっくりした。
会場全体をひとつにする圧巻のパフォーマンス
同じ頃、芝生エリアの後方では、ステージ付近の盛り上がりを眺めながら比較的自由に音楽に乗る人たちの姿が見られたそう(前方からは後ろの様子を振り向くことすら難しかった)。敢えてステージの前に群がらず、そういう風にチルな時間を過ごすのも手だったな、と思う。ちなみに、例年3日間にわたって開催される『妖怪盆踊り』の中でも、石野卓球が場を盛り上げる最終日の夜がとりわけ混雑するのだとか。覚悟を決めてそこに飛び込むもよし、快適さを求めるならその逆を狙うもよし、である。
ちなみに、18時以降〜DJイベント開始前は会場のトイレがものすごく混むので、できるだけそちらもオフピークがおすすめだ!
自分の中の妖怪が、囃し立てられる
妖怪たちが会場外周を一列になって練り歩く「立川妖怪百鬼夜行」は必見!
百鬼夜行に手を振ったり声を掛けたりすると、決めポーズや妖怪らしいリアクションをしてくれて嬉しい。
イベント終了後、「立川」駅を出る電車内には、へとへとに遊び疲れた妖怪たち・和装の人たちが多く乗車していてなんだか可笑しかった。筆者も頭に載せていたお面をどのタイミングで外すか悩んだけれど、余韻がもったいない気がして結局自宅まで装着したまま帰った。暗い住宅街の夜道に浮かび上がるキツネの面はさぞ怪しかっただろうな、と思うとニヤニヤしてしまう。やはり妖怪たるもの、見せつけてナンボなのである。
※会場内には有料(1,000円)の更衣室もあります、念のため。
妖怪スナップ (小杉撮影)
『妖怪盆踊り』は面白い。妖怪とは基本的に悪さをするものだから、イベント全体に悪戯っ子のような雰囲気が満ちていて、それが心中の抑圧されている部分をガシガシ刺激するのだ。子どもはもちろん、むしろ日頃真面目な顔をして働いている大人こそ、このイベントはハマる気がする。そもそも歴史的に盆踊りというものが浮き世のガス抜きとして機能していたと考えれば、『妖怪盆踊り』はその正当な後継者であり、令和アップグレード版である。
『妖怪盆踊り』はこれからも立川を舞台に開催されていく。どなた様もぜひ妖怪の皮をかぶって(いや、人間の皮を脱ぎ捨てて?)、お盆とハロウィンの間の秋の夜を、妖しく特別なものにしてみてほしい。
『妖怪盆踊り 2026』
文=小杉美香、写真=大橋祐希
イベント情報
『妖怪盆踊り2026』(開催終了)
『妖怪盆踊り』代表・齊藤崇、石野卓球対談
https://spice.eplus.jp/articles/346595
『妖怪盆踊り2025』レポート
https://spice.eplus.jp/articles/341520
『妖怪盆踊り2024』レポート
https://spice.eplus.jp/articles/332981
開催日程:2026年10月10(土)、11日(日)、12(月・祝)
開催場所:GREEN SPRINGS 2F 中央広場(東京都立川市緑町3-1)
<やぐらステージ出演者>
・10日(土)U-zhaan × 環ROY × 鎮座DOPENESS/SPEEDER-X ⇄ AstroGuitar(中村達也 × KenKen × Rio)/あっこゴリラ/イマジン盆踊り部/ちゃんゆか&よしむね2人こでらんに~と愉快な妖怪たち/モノガタリ宇宙の会/妖怪囃子連/モノノケダンスクラブ
・11日(日)民謡クルセイダーズ/浅草ジンタ/Pinch of Snuff/古山菜の花/ジンタらムータ/民謡ユニットこでらんに~/モノガタリ宇宙の会/モノノケダンスクラブ
・12日(月・祝)石野卓球/Atsuo the Pineapple Donkey/Omodaka/北村蕗/民謡ユニットこでらんに~/モノガタリ宇宙の会/Atsushi K × Yoshitake Mori/モノノケダンスクラブ
・MC 木村mitsu / 藤田みさ
・メインビジュアルディレクション:KAIHO
内容:妖怪盆踊り/アーティストライブ/お囃子/妖怪コンテスト&妖怪賢人談義/妖怪ディスコ/妖怪屋台村/妖怪メイクブース/キッチンカー/エスニックまつり/魅世物小屋ショー/立川百鬼夜行
後援:立川市、立川商工会議所
運営:株式会社夏祭り
主催:妖怪盆踊り実行委員会
イベント公式HP:https://www.yokaibonodori.tokyo
イベント公式Instagram:https://www.instagram.com/yokaibonodori/
イベント公式X:https://x.com/yokaibonodori