「俺は時速を信じてる!Teleを信じてる!」時速36kmとTele、8年越しに交差した魂の夜ーー『802 Jungle Attack Vol.12』ライブレポート

レポート
音楽
2026.11.6
 写真提供=FM802(撮影:渡邉一生)

写真提供=FM802(撮影:渡邉一生)

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2026年10月28日(水)に大阪・GORILLA HALL OSAKAで『802 Jungle Attack Vol.12』(以下、『ジャンアタ』)が開催された。本イベントは、FM802とGORILLA HALL OSAKA、イープラスで取り組むプロジェクトとして、番組『MUSIC Play-STANDARD』(毎週月曜〜金曜23:48〜24:00)と連動する形で不定期開催するオムニバスイベント。第12弾となる今回は、時速36kmとTeleが対バンした。筆者は常々『ジャンアタ』のブッキングは秀逸だなと感じていたのだが、今回その想いがより強まった。旧知の2組が全てをさらけ出したライブは、求める未来への通過点であり、不安定で未完成な自分たちが救われるための友情がもたらすカタルシスだった。

『802 Jungle Attack Vol.12』2026.10.28(WED)@GORILLA HALL OSAKA

季節が一気に秋から冬へと進んだような日。外はカットソー1枚だと思わず身震いするほどの気温だったが、会場は集まったファンたちの熱気であたたまっていた。定刻5分前、MCでFM802 DJ・高樹リサが「ウホウホ。皆さんこんばんゴリラー!」とステージに登場。

前日に行われたKroiとザ・クロマニヨンズとの『ジャンアタ Vol.11』も大盛り上がりだったと紹介し、時速36kmとTeleについて「今日は仲良しツーマン。ライブハウスシーンでそれぞれが培ってきた底力、オーディエンスとの信頼は言うまでもなく圧倒的。剥き出しの感情と生々しさもあるような、美しい感性がぶつかりあうライブを体感していただきたいと思います!」と述べて、フロアと「ジャングル!」「アタックー!」をコール&レスポンスする「ウホウホチェック」から、先攻の時速36kmを呼び込んだ。

時速36km

2016年結成、東京・江古田発の時速36km。透明雑誌の「ノラネコ」をSEに仲川慎之介(Vo.Gt)、オギノテツ(Ba.Throat)、松本ヒデアキ(Dr.Cho)、石井開(Gt.Cho)がステージに現れるとフロアは大歓声で歓迎し、より一層高揚した。

ひとりピンスポを浴び、下を向いてポロリとギターを鳴らした仲川はゆっくりと顔を上げて「ハロー」を歌い出す。そして「東京から時速36kmです! よろしくお願いします!」と気迫を込めて叫び、鋭いロックサウンドを解放した。ギターソロでは石井がお立ち台に乗り、オギノもコーラスしながら咆哮。1曲目から前のめりに放たれる音と感情を、フロアはしっかりと拳で受けとめる。

<三三七拍子!>を合図にクラップが発生した「七月七日通り」では、2番の間奏の直前に仲川がTeleの「箱庭の灯」の一節、<僕ら不安定で 不完全だ 箱庭の外へ 笑うように君を許せ>を紡ぐ場面も。Teleのファンからは悲鳴にも似た歓声が沸き上がり、無数の拳が突き上げられる。メンバーは増幅した熱をエネルギーにしてソロプレイも交えた怒涛の展開で疾走、そのまま「Gazer」へなだれ込んだ。

MCでオギノは「Teleとツーマンということで色々話したいことはあるんですけど、最初のあれやりたいな」と「ジャングル!」「アタック!」のコール&レスポンスで場を和ませ、Teleこと谷口喜多朗との関係について語り始めた。両者が初めて出会ったのは8年前。まだ喜多朗が未成年で、Teleがバンド時代だったと回顧。下北沢の小さくて汚いライブハウスの廊下で、お互い自主制作のCDを交換したのだという。「唯一ほんとに天才だと言っていいのが彼でした。今これだけ多くのTeleのお客さんが増えていることに僕は感動していますが、最初の頃に見つけたのは俺らです!」と古参アピール(笑)。仲川も「初めてあいつが「生活の折に」をやった時はビックリしたもんだよね。30人も入らないようなハコで5組ぐらい出てたイベントに、飛び入りで参加してトッパーでやったのが喜多朗くんで、勘弁してくれよと思ったのを覚えてる。あの頃からずっとすごくなり続けてる」と語る。

中盤は「Beyond the Sea, Above the Lights」「Cakewalk」「化石」とミドルナンバーを連続で披露。丁寧に情緒的にアンサンブルを紡ぎ出した。

2度目のMCでオギノは、喜多朗の才能はもちろんだが、今の活動は努力の結果だから「天才」という言葉を訂正したいと語り、「それでも当時光るものがあった」と述べる。仲川も「彼はただ音楽が好きだから、良い曲が書けて良い歌が歌えるというだけなんだよね」と賛同。続けて「初めて聴いた時は本当にビックリした。逆に「はあ?」みたいな気持ちもあった。あいつの新譜が出るたびに悔しい想いをしてました。すっげえ良いから絶対聴くの。でも俺が音楽をやる理由はこいつの中にしかない。こいつがいればいいかもしれないと思えるぐらい、彼の音楽が大好きです」と喜多朗への想いを口にした。

続いて、かつてお互い同じフェスのサブステージに出演し、出番を終えて喜多朗とメインステージを観ていた時の思い出を振り返る。仲川が「あっち(メインステージ)はすげえよな」と言うと喜多朗が返した「何言ってんだよ、俺らもあっち行くんだろ」という言葉が「すっげえ嬉しかったんだけど、それが呪いにもなったんだよな。あいつは行ったからさ。だから恥ずかしくて、こいつと並んだと思えるようになるまでは話せねえなと思って、3年間連絡できなかった」と当時の葛藤を赤裸々に吐露。「それで、メジャーが決まってアニメの主題歌が決まって今日です。肩を並べたとは思わねえけど、ようやく同じトーナメントに参加したと思ってる」と笑顔を覗かせた。 

さらに「当時はお前だけ行くんだろうなと思ってしまってた。でも今なら言えます。俺もそっちに行くし、喜多朗くんと同じステージに出て、同じように「やっぱり何年もやってるバンドはすげえな」「何言ってんだよ、次は俺らがあれになるんだろ」と言い合いたい。カッコ良い曲を作ってカッコ良いライブをする。ただそれだけのことが実を結ぶんだと思います。頑張っていこうと思います」と真っ直ぐなまでに想いを語る。そんな仲川に、会場中から割れんばかりの拍手が贈られた。 

ライブもラストスパート。昨年リリースのEP「Around us」から「Around you」「ゴースト」へとエモーショナルに繋ぐ。<さぁここからは すべて僕らのもの さぁここからは そんな僕らが歌う>という歌詞は、時速36kmが握りしめた決意そのもの。最後はTVアニメ『ONE PIECE』エンディング主題歌「その未来」を堂々とプレイ。彼らの軌跡と努力の結晶、盟友への友情がないまぜになって力強く放たれるアンサンブル。<自分で決めた運命で自分で描いた空で>と力強く歌う4人の姿は、眩しく光り輝いていた。

Tele

「果たしてこのライブにTeleはどう応えてくれるのか」と高樹が言ったように、時速36kmから渡された直球で意味のありすぎるバトンをTeleはどう受け取りどう返すのか、会場中が固唾を飲んで見守っていた。

SEなしでステージに現れた、喜多朗とサポートメンバーの馬場庫太郎(Gt)、森夏彦(Ba)、森瑞希(Dr)、奥野大樹(Key)。大歓声に包まれる中、喜多朗の弾き語りから「アンダルシア」でライブをスタートした。歌声だけで会場を掌握するような存在感。まるで言葉が生きているようだ。盤石のバンドメンバーの演奏も最高で、シームレスに「夜行バス」「金星」へと繋げば、みるみるうちにTeleワールドに巻き込まれていった。オーディエンスとTeleは一心同体といった様子で、1曲ごとに熱量を高め合う。ファンは全身から好きを溢れさせていた。

TVアニメ『タコピーの原罪』エンディングテーマ「がらすの線」の解釈を広げた「硝子の線」では、シューゲイザーのような歪みサウンドの中、剥き出しの生命力をぶつけていく。マイクスタンドを倒し、手を伸ばし、頭を抱え、身体を折って叫ぶように歌う喜多朗の姿に釘付けになった。さらに「あいでいて」をドラマチックに歌唱し、圧巻のパフォーマンスを立て続けに披露した。

MCでは喜多朗も時速36kmとの思い出を回顧する。8年前にCDを交換した時、喜多朗は高校卒業が決まったタイミング。「最短距離を選んでいくためには何でも捨ててやるぞと思っていた」と、バンド時代に多くのメンバーが去っていったことを示唆。「今、心としては間違っていると思うけど、頭としては間違ってないと思ってて。どれだけドライにいれるかを考えてた。そんな中、こっちは削って最短距離で進もうと思ってるところに、ほのあたたかい光を放ってる人たちがいるわけよ。ボーカルのしんちゃん(仲川)とは多摩川の前で弾き語りしたり。自分がバンドじゃなくなったタイミングで、やっぱり本当に冗談抜きで羨ましくて。年齢は関係ないけどやっぱり先輩だと思っていて、時速も時速で思うところはあるんじゃないのかなと考えたりもしていた」と、お互いの心情に想いを馳せた。

そして「何でまだ俺がバンドを羨ましく思うのかと、何で時速がMCであんなに仲良い感じを出してくるのかといったら、俺らがまだ不安で、俺らがまだ辿り着ける場所に辿り着けてないから。要するに、もっと売れたらお互い心から褒め合えるんですよ、俺らは。8年ぶりでこんなに大きなとこで対バンできましたと言ってるけど、そうかなあ? 俺と時速が対バンやって、1,000人ちょっとのキャパシティは、そうかなあ? お言葉ですが先輩、まだまだやれるんじゃないですか、僕たちは。その根拠を今から言うから。ひとつ、俺は時速を信じてる! Teleを信じてる! そしてお前らを信じてる! 自分自身を信じる! カルトなんだよ」と焚き付けて「カルト」へ。

全身全霊で生き様を叩きつける喜多朗の姿に胸を打たれる。そこからタイトなビートに乗せて「ここにいる全員、何ならゴリラホールも一緒に、もっともっと高くに、もっともっと広くに、もっともっと遠くに、僕が連れていきます! いくぞ!!」とジャンプを煽り「ブルーシフト」へ。「飛べー!!」と叫んだ瞬間、大きく揺れるゴリラホール。共感と共鳴の先に生まれたステージとフロアの魂の交換に思わず鳥肌が立った。サビはさらに躍動。大合唱するオーディエンスを「素晴らしい!」と喜多朗が称賛すると、フロアには今日1番の熱狂の渦が巻き起こった。

続く「バースデイ」では、「これが音楽だ!」とメンバーを煽り渾身のソロ回し! ステージが轟音と光に満たされると、最後は「クソみたいな世界漕いでいこうぜ!」と「砂漠の舟」で本編を締め括った。オレンジ色の照明の中で静と動が入り混じる。焦燥なのか、あるいは渇望か意地なのか、込み上げる感情を乗せて、叩きつけるように激しく弦をはじく喜多朗。迎えたフィナーレ、残響に宿る余韻と熱は間違いなく観る者の記憶に刻み込まれただろう。

すぐさま起こったアンコール。マイクの前で「はぁ、緊張する」と呟いた喜多朗は、時速36kmの「七月七日通り」を弾き語りでカバー。どこか挑むような目つきで生々しく歌唱し、歌い終えると「ありがとう」とニカッと笑う。

喜多朗は、本当はカバーをするつもりではなかったが、時速が「七月七日通り」の曲中に「箱庭の灯」の歌詞を入れて歌ったことで「ちょっとやられちゃいましたね」と急遽カバーを決めたと明かす。そして「自分はバンドから始めて、それを自分で切り捨てて次に進む判断をしたんだけど、そうじゃない選択をして突き進むバンドに心の底からリスペクトを贈っている。改めてこの場を設けてくれてありがとうございます」と802やGORILLA HALL OSAKAに感謝を伝えた。

さらに「俺も『ONE PIECE』やりてー!」と無邪気に本音をこぼす。「でも我々ジャンプ仲間ですよ。まだまだ僕たちは満足しちゃいけないところにいる。そんな仲間意識を持って時速の曲を聴いてる。時速もTeleも、未来を見ていきたいわけです。仲良しこよしでやってるんじゃないんだよ。最近良い曲できたから聴いとけよ、時速!」と宣戦布告し、映画『タコピーの原罪 -ありがとう、また明日-』の主題歌「らびゅー」を投下。少し穏やかな顔で歌う喜多朗の姿が印象的だった。最後まで大きく躍動し、圧巻の景色を作り上げたTele。「また生きて会えたら! 元気で!」と叫び、ジャンプしてライブを終えた。

お互い強烈な羨望とリスペクトを抱えながら、良き仲間、良きライバルとしてそれぞれの道を歩み続けてきた時速36kmとTele。この日2組の人生が交差する瞬間に立ち会えたことは本当に奇跡だったと思う。まだ道半ばの両者が次に相まみえる時は、一体どんな景色が広がるのだろう。

ロビーに設置された「ゴリラパネル」には「時速36kmはじめましてだけど、心にグッときたよ。またきてや〜」「時速36km、Tele、両方最高でした。号泣!」「Teleらびゅー」など、オーディエンスからの感動のメッセージがたくさん書き込まれていた。

『MUSIC Play-STANDARD』(毎週月曜〜金曜23:48〜24:00)では、時速36kmとTeleの楽屋インタビューをオンエア(※radiko「タイムフリー」機能で1週間後まで無料聴取可)。

取材・文=久保田瑛理 写真提供=FM802(撮影:渡邉一生)

セットリスト

番組『MUSIC Play-STANDARD』
◎放送日時=毎週月曜日~金曜日 23:48~24:00
◎DJ=週替わり
◎番組 HP=https://funky802.com/site/blog/1123
◎番組 X:@fm802_MPS

イベント情報


『802 Jungle Attack Vol.13』
日時:11月12日(木)OPEN 18:00/START 19:00
会場:GORILLA HALL OSAKA
出演:TRACK15/plenty/リーガルリリー
MC:加藤真樹子(FM802 DJ)

:前売 4500円
※小学生以上有料∕未就学児入場不可
※ご入場は整理番号順となります。
※ご入場時に別途ドリンク代600円をいただきます。
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