angela、元スターチャイルドの看板を背負って活躍し続ける二人が挑んだカヴァーアルバム『スタチャまみれ?!』とは
angela
スタチャまみれの青春を送った、全ての人々へーー。キングレコード内のアニメソングの名門レーベル、スターチャイルドが発足45周年を迎えた今年、元スターチャイルドの看板を背負って活躍し続けるangelaが、カヴァープロジェクトに挑むのは運命の導きと言っても過言じゃない。11月4日にリリースされるangela初のカヴァーアルバム『スタチャまみれ?!』と、11月13日、14日に大宮ソニックシティ大ホールで開催されるangelaの「ミュージック・ワンダー★大サーカス2026〜スタチャまみれ?!〜」。メンバー、スタッフ、ファンのスタチャ愛が爆発する一大プロジェクト、その壮大なストーリーについてKATSU、atsukoに語ってもらおう。
――できましたね、ついに。angela初のカヴァーアルバム、その名も『スタチャまみれ?!』。
atsuko:無理かと思いました。もう間に合わない!ってなっちゃって、KATSUさん死ぬんじゃないか、っていうぐらいで。
KATSU:こんなに大変だとは思わなかった。事務所でスタジオを作ったんで、そこでほぼほぼ録ってるんですけど。
atsuko:となると、KATSUさんがエンジニアになっちゃうんですよね。新しいスタジオだから、マイクがないとかアンプがないとか、全部買い揃えてやることになり。で、例えば「パーカッションを録ろう」となって、KATSUさんが「どの角度にマイクを立てるのがいいんだろうか?」みたいな、一回録った後に、もうちょっと離したほうがいいってなると、「ごめん、もう一回叩いてくれる?」とか言いながら。
――それは大変。そもそもアーティストがやることじゃないですよ。
KATSU:元々バイトでPAをやってたんで、録音の知識はあるんですよ。もちろんちゃんとしたエンジニアさんが録ってくれるほうがいいんですけど、色々と厳しいこの世の中でございまして、「自分でやらないと」ということになりまして。
atsuko:それはそれでいいんですけど、自分でやるとスタジオの時間を気にしなくていいから、どこまでもこだわれるじゃないですか。あれはちょっと困りものだなと思いましたね。「何時までに終わらせないと」がないから、もういつまでもやるっていうね。ループになっちゃうから、良いようで悪いようで、悪いようで良ようで、みたいな。
――新録音は1~7曲目で、8~12曲目が既発曲を再収録。まずは、星の数ほどあるスターチャイルドソングの中からどうやって選曲したのか、という話から始めなきゃいけないんですが。
KATSU:スターチャイルドのアニメは、約300作品あるらしいんですよ。オープニングとエンディングで単純に計算しても600曲、さらに挿入歌やイメージソング、キャラクターソングとかもあるわけじゃないですか。そういう曲まで入れると何千曲にもなると思うので、選曲が本当に大変でした。
atsuko
――そもそもこの壮大なカヴァー企画、どんな経緯で実現したんでしょう。
KATSU:今回は、11月13、14日の「ミュージック・ワンダー★大サーカス2026〜スタチャまみれ?!〜」が先に決まっていて、そこでスタチャ曲のカヴァーをやるのであれば、その前にカヴァーアルバムを出したほうが、皆さんの期待感も高まるだろうし、我々にとっても、作品として残せるのは意味のあることだし、「カヴァーアルバムを出すのはどうですか?」と、キングレコードさんに言ったんです。
――angelaからのプレゼンだったんですね。
KATSU:はい。普通はリリースとライブがセットになるんですけど、今回はCDのほうが後から乗っかってきた、ということです。珍しいパターンというか、駄目元で言ってみたんですけど、意外と通ってしまった。
――そして選曲会議に入っていくと。どこから手を付けましたか。
KATSU:まず、スターチャイルドの作品を背負うのは正直大変だし、根っからのスタチャファンの人たちからしてみれば、「なんでangelaが」という声も出るだろうなと思ったので、キングレコードの中で、今はいろんな部署に散らばっている元スタチャの人たちと会議しまして。部外の人たちにも集まっていただいて、「angelaにスタチャを背負わせてください。で、何の曲を何やったらいいと思いますか?」という会議をやったら、みんな「あれが聴きたい、これが聴きたい」と、収集がつかなくなりまして。結局、選曲に関しては「angelaの二人が思うスターチャイルドの曲で」というところで落ち着きました。
――はい。なるほど。
KATSU:そこから、例えば「輪舞-revolution」(奥井雅美)に関しては、スタッフの方から「奥井さんの曲がないと、スタチャまみれじゃないですよね」とか、「やっぱり、めぐさん(林原めぐみ)の曲がないと!」などこれまたたくさんのご意見をいただきまして。
――こっちを取ればあっちが落ちる。その苦労、お察しします。
KATSU:すでにSNSで「あれが入ってない、これが入ってない」と言われてますけど、そういう意見はどんどんください。第2弾がある時は参考にしますので。
――それくらい重い存在なんですね。スターチャイルド楽曲というのは。
KATSU:angelaよりも前から所属されていたスタチャの先輩方、ファンの方はいらっしゃるし、今年はスターチャイルド発足45年、消滅して10年ですけど、angelaがスターチャイルドにいたのは13年間なので、半分も背負えていない。スターチャイルドの大きさを実感しています。
KATSU
――それでも年代的にはまんべんなく、90年代半ばから2010年代まで、かなり網羅している印象を受けてます。
KATSU:もっと前がないんですよ。『ガンダム』や『ボトムズ』もないし。
atsuko:森口(博子)さんも、米倉(千尋)さんも、TWO-MIXもない。だから「第2弾があったら…」になるんですよね。
――atsukoさんは歌い手として、「自分が歌えるかどうか」も、選曲の基準になるわけですよね。
atsuko:もちろんそれはあるんですけど、ただ、自分が歌えると思っていた歌が、いざレコーディングしてみるとあんまり歌えない、ということに気づくことが、今回すごく多かったです。
――おや。例えば?
atsuko:「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)なんて、私、『エヴァンゲリオン』の95年のテレビ放送第一回目からリアルタイムで見ていて、カラオケでも歌っていたし、勝手に自分の中では歌えると思っていたんですけど、いざ録音しようとするとーー洋子さんの歌を聴きながら練習したら、「あれ?思っていたメロディーラインと違うぞ」と。「ここに休符が入るんだ」「この言葉はこの音程じゃないんだ」とか、細かく聴くとたくさんあって、洋子さんならではの歌い方をどこまで再現するのか、私なりに歌っていいのか、でもこれを入れないと再現率が下がるなとか、そういうポイントを探していくと、もう無限大にあって、考えれば考えるほど歌えなくなり。すぐ歌えると思ったのに、全然歌えない!ってなって、3回録り直しました。
KATSU:一回レコーディングして、ミックスも終わって、聴いてみたら「ここ違うかも」となり。2回目を録り直して、これでできたと思ったら「もう一回録り直したい」と言い出して、結局3回。こんなこと初めてです。
atsuko:歌のレコーディングは、直したい部分だけを歌い直すことは可能なんですけれど、KATSUさん的に、前に録った時のコンプ(コンプレッサー/音のダイナミックレンジを圧縮するエフェクト)の設定を、別のものに変えちゃったから、もう一回設定し直さないと録れないと言われ、また一からやり直し、みたいなことをやってましたね。
KATSU:あの時、たぶん世界で一番「残酷な天使のテーゼ」を分析した二人だと思います(笑)。「残酷な天使のテーゼ」は、ここ何十年、カラオケで一番歌われている曲で、みんな気持ちよく歌っていて、それはそれでもちろん素晴らしいことなんですけど、「こんなに奥が深いとは」と、改めて思いました。
atsuko:だってね、洋子さんって、「残酷な天使のテーゼ」を一番上手く歌える方法という本を出されているんですよ。 (高橋洋子著『「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」をだれよりも上手に歌えるようになる本』)。私、その本をいただいていたので、読みながら勉強しました。
――すごい。一冊の本になるほど細かいポイントがある。
atsuko:それぐらい深いんですよ。それを、軽く歌えるなんて思ったら大きな間違いで。でも、その間違いに気づかないぐらい、世界中で皆さんが歌っている、それぐらいすごい曲なんです。
――アレンジャーとして、KATSUさんは、どういうところにポイントを置きましたか。
KATSU:「残酷な天使のテーゼ」は、angelaのデビューのきっかけに深く関わっていて、atsukoが『エヴァンゲリオン』を見て、「残酷な天使のテーゼ」に感化して作られた曲が3枚目のシングル「merry-go-round」であり、それを路上ライブで歌っている時に、当時のスターチャイルドのプロデューサーが僕たちを拾ってくれて、たまたまそれが「残酷な天使のテーゼ」と同じスターチャイルドだったという歴史がありまして。この曲がなければ今のangelaはいないということで、今回のアルバムの中で「残酷な天使のテーゼ」は絶対に外せない1曲でした。この曲をカヴァーする時は自分がangelaを畳む時かな、というぐらいに考えていたんですけど、数年前に自分が体調を崩した時に、「やれる時にやっておかないと自分がどうなるかわかんない」ということを、身をもって経験したので、チャンスがあったら早くやりたいと思っていて。そんな時に今回のカヴァーアルバムの話が決まったので。「今やろう!」ということでした。
――そんなに強い思い入れが。
atsuko:「残酷な天使のテーゼ」は、もうカヴァーし尽くされている曲だと思うんですよね。そんな中で「今angelaがやるとしたら?」というものを、KATSUさんも試行錯誤して、『エヴァンゲリオン』といえばベートーヴェンの曲の印象もあるよね、みたいなことで、モチーフとして入れたりとか。あと、トラック数がありえないくらいの数になってるんですよ。たぶん当時の90年代は、録音できるトラック数が決まっていて、その当時のマックスのトラック数で、コーラスの量や楽器の量を駆使して作っているはずなんですけど、今はある意味無限大で、そんな中で我々にこの思い入れのある曲をカヴァーさせたものだから、それはそれはすごいトラック数になり、エンジニアさんが泣いてましたね。KATSUさんの気合の量が、トラック数に表れてます。
angela「残酷な天使のテーゼ」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
――そこはみなさん、アレンジをしっかり聴き込んでほしいです。「Give a reason」(林原めぐみ)はどうですか。
KATSU:『スタチャまみれ?!』の中で、めぐさんの曲は絶対抜かせない!じゃあめぐさんの曲の中で何?というと、曲が多すぎて、自分の中では「Over Soul」を入れたかったんですけど、10年前に消滅したスタチャに対して♪よみがえれ、って歌うのもちょっとブラックジョークかなと(笑)。あと、僕が一番衝撃を受けたのは、『STARCHILD DREAM in KOBE』という野外フェスで、最後の最後、夕日をバックにめぐさんが歌った「負けないで、負けないで…」がすごい感動的で、それにしたいと思ったんですけど、あれはアニメの曲じゃないんですよね。「アニメの曲のほうがいいです」というスタッフの助言もあって、「Give a reason」に決まりました。アレンジに関して言うと、めぐさんの曲って、サビ頭で始まるイメージがあったんですけど、この曲はサビ頭じゃなかったんですよ。なので、あえてサビ頭のフレーズを使い、でもシンセのリフは印象的だからそのまんまやりたいし、正解を探しながら作っていきましたね。この記事は、「大サーカス」の前に出るんでしたっけ。
――その予定です。
KATSU:原曲とは違う、間奏にちょっと仕掛けがあって、そこに演出を入れようと思ってます。「大サーカス」ともリンクしてるんですね。
――それは楽しみ。改めて「輪舞-revolution」(奥井雅美)に関しては?
KATSU:これもやっぱり、奥井さんの曲が入ってないと『スタチャまみれ?!』にふさわしくないだろうと、そして奥井さんといえば「輪舞-revolution」だろうということで。スタッフからも「atsukoさんの歌う「輪舞-revolution」が聴きたい」という声もあったし、このアルバムの中では、原曲とは最も違う方向に行っているアレンジなんですけど、曲はみんなの中に染み込んでいるので、印象的なフレーズはそのまま使いたいなと思っていました。「輪舞-revolution」に関しては、実は奥井さんに聴いてもらいたいというか、本当はスタチャのファンの人に向けてアレンジを考えるのが正解だと思うんですけど、この曲だけは奥井さんに「ええやん」って言わせたいみたいな、なんて言うんだろう、下心じゃなくて、ラブレターかな。
――いいですね。思いを届けるラブレター。
KATSU:僕はJAM Projectさんの曲を書かせてもらったりもしているし、デビューした時から奥井雅美という大きな存在が目の前にいて、背中を見て育ってきた者としては、「先輩に認められたい」という思いが強いアレンジになったと思います。
――ご本人の感想は聞きました?
atsuko:まだですね。
KATSU:聞くのが怖いけど(笑)。
――絶賛間違いなしですよ。atsukoさん、歌い手として、奥井さんの歌を歌う気持ちは?
atsuko:奥井さんとは何度もご一緒して、「輪舞-revolution」も生で聴いているし、なんなら自分自身も「KING SUPER LIVE」の台湾公演で、水樹奈々さんと「輪舞-revolution」を一緒に歌ったこともあるんですよね。自分の中では「輪舞-revolution」をかっこよく歌ってる奥井さんのイメージがあるから、自分もかっこよく歌えるだろうと思っていたんですけど、いざ歌おうとなった時にーーやっぱり奥井雅美節(ぶし)というものが、洋子さんもそうですけど、奥井さんならではの正確さみたいなものがあって。例えば、サビの頭に言葉を詰め込んでいる部分があるんですけれど、その部分の譜割りやリズム感がちょっとでも崩れると、この曲がかっこよくなくなるんですよ。そのラインがすごく難しいのと、あんまり力を入れすぎて歌うのも、今回のアレンジには合わないところがあって、ちょっと冷静になりつつ、奥井さんの滑舌、譜割り、リズム感をどこまで自分のカラーで出せるか?というところを意識しました。
――はい。なるほど。
atsuko:モノマネではダメじゃないですか。聴いてくれた方が「「輪舞-revolution」だけど、angelaっぽくね?」と思ってもわらないと、カヴァーする意味がないので、その部分のせめぎ合いでかなり苦戦しました。あと、奥井さんってコーラス出身なんですよ。この曲にも結構なコーラスワークが重ねてあるんです。さっきも言った通り、トラック数に限りがある中で、奥井さんはご自身のコーラスのスキルを、まんべんなく散りばめてるんですよ。それをどこまで再現するのか?を考えるのも大変でしたし、あと、奥井さんがフェイクで歌っている英語の部分があったりして、歌詞カードに載ってないから、なんて言ってるかわかんないんですよ。だから、「よし、奥井さんに聞いてみよう!」って(笑)。でもそれってangelaにしかできないことだし、そういう意味で今回のカヴァーアルバムは、岡崎律子さん以外は直で連絡が取れる方ばかりなので、angelaにしかできないことができたなとは思っております。
angela「Give a reason」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
angela「輪舞-revolution」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
――その、岡崎律子さんの「Forフルーツバスケット」。なんと、当時の岡崎さんの歌声とatsukoさんのボーカルが共存してます。これ、どうやって作ったんですか。元のトラックから声を抜いて、ということですか。
KATSU:そもそもこのカヴァーアルバムは、「残酷な天使のテーゼ」は必ずやりたい、ということだけ決まってて、2曲目に決まったのが「Forフルーツバスケット」だったよね?
atsuko:うん。
KATSU:最初は普通にカヴァーするつもりだったんですけど、突如思い出したのが、めぐさんが岡崎さんの未発表曲「Mint」を歌っていて、その中に、岡崎さんの声をデモテープから拾って入れていたんですよ。「そういうことができるんだ」というのが、数年前からずっと記憶にあり、今回「Forフルーツバスケット」をカヴァーする時に、デモの段階ではatsukoがコーラスを歌ってたんですけど、あの雰囲気はやっぱり岡崎さんにしか出せないもので、どうしようかな?という時に、原曲のマスターデータがキングレコードのスタジオにあることを知り、それを借りられないか?と思って、駄目元で聞いてみたんです。アーティストのマスターデータを他の人が開くのはまず無理だし、ご本人はいらっしゃらないので、許可も取れないじゃないですか。でも管理をされているご家族の方に聞いてみたら、快くOKしてくださって、データを貸していただいたんです。
――なんと。
KATSU:コーラスだけじゃなくて「デュエットにしたいです」と言ったら、それも快く許可いただいて、そこからアレンジを考えていったんですね。最初はカヴァーーだったんですけど、いつの間にかもうカヴァーじゃなくなって、しかもデュエットだけどデュエットという言い方はしたくないから、「何かいい言い方はないですか?」って、キングレコードのみんなと色々考えて、「岡崎律子×atsuko Time-Crossing Session」という、時を超えてのセッションになりました。岡崎さんは、今回のアルバムの中で唯一会えなかった方で、angelaのデビューが2003年、岡崎さんが亡くなったのが2005年なので、2年間はかぶっているんですけど、結局ご挨拶もできなくて。それをずっと後悔していたので、「Forフルーツバスケット」は、このアルバムの中で一番距離感の近いものにしたかったんです。
――ものすごく、いい話です。
KATSU:一番はatsukoさんが歌ってて、二番は右チャンネルが岡崎さんで左チャンネルがatsukoさん、そして3番の最後のサビになると、「これは岡崎さんの曲なので岡崎さんにお返しします」ということで、合いの手のコーラスをatsukoがやっているというふうに組み上げました。
――大事な曲です。そもそも、曲がいいですからね。本当に優しい気持ちになれるし、位置的にも、ここに入っててすごくいいなと思います。
atsuko:言ってみれば、岡崎律子さんの声質と私の声質は真逆なんですよ。真逆がゆえに、どうやったら違和感なく聴けるか?というところを模索しながら、レコーディングしていきました。「その歌い方だとまだ強い。もっと力を抜いて」みたいな、ずっとそういうせめぎ合いをしながら。岡崎さんの声をヘッドホンで聴きながら、それに合わせて歌っていったので、本当に隣にいるような気持ちで歌いました。
angela「For フルーツバスケット 岡崎律子× atsuko Time-Crossing Session」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
――そして、曲順で言うと、その次が上坂すみれさんの「七つの海よりキミの海」、そして堀江由衣さんの「ヒカリ」。これまた、スタチャと言えば当然出て来る名前です。
atsuko:この流れで言うと、岡崎律子さんの曲でしんみりした後に、空気を変えられる人間という意味でーー何年か前の『アニメロサマーライブ』でシークレットアーティストとしてTM NETWORKさんが出たんですよ。それで「GET WILD」とか歌うわけですよ。ものすごく盛り上がって、終わった後も会場全体が「うわー、本物だったな」みたいな、ざわざわしてるわけですよ。でもその後にすみぺが、「みなさーん、こっちですよー」みたいな感じで、トロッコで出てきたのを見て、「TM NETWORKのサプライズの後の空気を変えられるのはすみぺしかいない」という、強烈な印象がありまして(笑)。となると、この「Forフルーツバスケット」の空気を変えられるのは上坂すみれしかいない、と。
――見事に変えてくれてますね。
atsuko:「七つの海よりキミの海」は、もちろん好きだから選んだんですけど、この曲がデビュー曲だなんてありえないというぐらい、ぶっ飛んだ曲だなと思ってて。でも実際やってみたら楽しくて、すみぺっぽく可愛らしく歌う部分もあったり、自信を持ってかっこいいangelaの声で歌うところもあり、コーラス隊のような歌い方をする部分もあり、一粒で何度もおいしい感じになっていると思います。たぶんアレンジも楽しかったと思いますよ。
KATSU:実は、この中で唯一、ご本人に怒られました(笑)。この曲って、イントロが始まって歌い始めるまでに1分ぐらいあるんですよ。それがちょっと長く感じて、(アニメの)テレビサイズのイントロの尺に合わせてアレンジしてたんですけど、制作の前にすみぺに会う機会があって、「今度カヴァーするんだけど、イントロ短くしちゃったんだよね」と言ったら、「駄目です。この曲はイントロを聴かせるための曲であって、他はおまけです」って。「そこは絶対取らないでください」と言われて、「ごめんなさい、作り直します!」って(笑)。そこからイントロを作り直しました。
――マジですか。それはすごい。
KATSU:ご本人に怒られたんで(笑)。「あそこが主体なんです」と言われて、「そうだったんだ!」と。
――すごいこだわりですよね。
KATSU:でも、代表曲ってそういうものなんでしょうね。今回のアルバム制作を通して、やっぱりそうなんだなと思いました。強い思い入れがあるだろうし。
――堀江由衣さんの「ヒカリ」は、最もシンプルに、ストレートに聴かせる印象が強いです。
KATSU:この曲は、エピックトランスかな?と自分の中では解釈してて、四つ打ちの中にいわゆるエモい動き方をするコード進行を繰り返して、そこにメロディが乗るのがこの曲の特徴なので。それをangelaならどうするか?という時に、エモさとかトランシーな部分は残しつつも、バンドでやるのが正解なのかな?と。ただ、ここに来るまでにひと悶着もふた悶着もあり、堀江さんはangelaが最も楽曲提供している方なので、それ以外の曲をangelaがカヴァーするとなると、何が正解かわからなくて。ザ・堀江由衣といえば「Love Destiny」だろうとか、自分の好きな曲で言うと「笑顔の連鎖」とか、でもそれをangelaがカヴァーするのも違うし、というところで、atsukoさんから「ヒカリ」を歌いたい、という強い希望がありまして。これは『いぬかみっ!』という作品の主題歌だったんですけど、当時も見ていましたし、原作者の有沢まみずさんとはプライベートでも仲良くて、そこが「ヒカリ」を選んだポイントだったりしますね。
atsuko:単純に私が好きだから、というところと、『いぬかみっ!』が20周年なのもあって。自分は2006年ぐらいのスタチャの感じがすごく印象的というか、2003年にデビューして、右も左もわからない中で一生懸命やりながら、スタチャのみなさんと仲良くしていたなーという、まさにスタチャにまみれた青春時代みたいな記憶もあって、この曲を選びました。
angela「七つの海よりキミの海」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」)
angela「ヒカリ」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
――1曲1曲にドラマがあるんですね。その後、7曲目がセルフヴァバーの新録音「アシンメトリー」で、その後は「冷たい部屋、一人」「キラキラ-go-round」「Sail away」と、セルフカヴァーの既発曲が続きます。そして最後を締める2曲「YOU GET TO BURNING」と「Dearest」は、2005年にシングルでリリースされたバージョン。これは当時のままですか。
atsuko:はい。リマスタリングしただけです。最後の4曲は「佐藤竜雄ゾーン」と呼んでいて、今年の4月にお亡くなりになってしまったんですけど、angelaにとっては『宇宙のステルヴィア』の監督であり、どちらかというと、先生というより親戚のお兄さんみたいな関係性でした。
KATSU:angelaがスタチャに拾ってもらって、最初の作品の監督なので、ここが実家と言いますか。あの時、竜雄監督がノーと言っていれば、angelaは『宇宙のステルヴィア』のオープニングテーマ「明日へのbrilliant road」でデビューしていないし、今ここにいないし、angela自体が竜雄監督の作品なんじゃないか?と自分では思っていて。だからこの先も、いつかまた一緒に何か作れるのかなって、漠然と思ってたし、なんなら道でばったり会ったこともあったし、ライブがあるって声をかけたら来てくれるし、自分の関わっていない作品でも、angelaが活躍している記事を見て、すごく喜んでくれたりとか。その人が急にいなくなるという感覚が、今でも腑に落ちていないんですけど。
――そうですよね…。
atsuko:この間、佐藤竜雄監督を偲ぶ会がありまして。今は巨匠と呼ばれる監督さんたち、制作陣、ものすごい人数が集まったんですけど、そこで色々な方々が竜雄さんを語っていたり、竜雄さんの作品が展示されていたり、いろんな方にもお会いできて、「また今日ここでこの人たちに会わせてもらったのも、竜雄さんのおかげなんだな」と。そういう意味では、竜雄さんありきのangelaだし、デビューして間もない我々をご自宅にしょっちゅう招いてくれて、声優さんと一緒に鍋をやったり、たこ焼きパーティーをやったりして、最初がそれだったから、「アニメの現場ってこういう感じなんだ」と思うじゃないですか。ところが、その後、監督の家でパーティーをやるみたいなことはまずないから、「竜雄さんだからだったんだ」と思うと、本当にいい環境で我々はスタートを切れたんだなということを、改めて感じました。
――素敵なエピソードです。
atsuko:ただ一つあるのは、当時たこ焼きパーティーをやった時に、たこ焼き器を私が持っていったんですけど、まだ返してもらってない(笑)。
KATSU:取りに行かないと。
atsuko:「そういえば、返してもらってないな」って。また行くと思ってたから。だから、またいずれ、何十年か後にね、どこかの星の向こうで、一緒にたこ焼きパーティーをやらなきゃなと思ってます。
angela「For フルーツバスケット 岡崎律子× atsuko Time-Crossing Session」(カヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」収録)
――そんな、泣かせないでください…。改めて、すごいアルバムですね。スタチャはもちろん、angelaの思い出もたっぷりと詰まっている。
atsuko:本当に大変でしたけど、(作りたいと)言ってみて良かったなと思いました。でも、第2弾はやりたくないんだっけ?
KATSU:いやぁ、やっぱり、人の代表曲を背負うのがこんなに重たいことだとは思わなかったし、今の気持ちは、もう二度とやりたくない!
――そんな(笑)。もうちょっと柔らかい言い方はないですか。
KATSU:もうちょい柔らかい言い方をするとすれば、この『スタチャまみれ?!』の中に入ってない曲についての後悔があって。
atsuko:『ガンダム』とかね。
KATSU:あれだけ「ジーク・ジオン」と言ってる男が、この中に『ガンダム』入ってないじゃないか、とか(笑)。「残酷な天使のテーゼ」はやるけど「魂のルフラン」はいいのか?とか。だから第2弾がある時はこれを入れたい、という構想が実はもうあって。やる気満々じゃないか、って感じですけど。
atsuko:その、相反する気持ちと言いますか。
――過酷な制作が終わったばかりですからね。
KATSU:もうちょっと、落ち着いてから考えようと思います。でも、カヴァーをやって本当に良かった。
atsuko:うん。ただ作りました、歌いました、だけではない、背景が深すぎますよね。
KATSU:この日本に住んでいて、アニメに携わる人が、スタチャ作品に関わらずに育つことって不可能じゃないですか。『エヴァンゲリオン』や『ガンダム』を筆頭に。そういう作品たちを背負えたというのが、大きな経験になったし、今度はこれを持ってコンサートに挑みたいと思います。
――コンサートは11月13日、14日、大宮ソニックシティ大ホールにて。初日のゲストが堀江由衣さん、2日目のゲストが上坂すみれさん。どんな内容になるでしょう。
KATSU:一つ言っちゃうと、今回のアルバム以外の曲もカヴァーしようと思ってます。せっかく堀江さんとすみぺが来てくれるので。そして初日の堀江さんの日は、たぶん感動的に迎えられると思いますけど、2日目は、ごめんなさい、予測不能です(笑)。すみぺには自由に泳ぎ回ってもらおうかなと、放置しておこうかなと思ってます。とにかく、どちらも楽しい2日間になると思うので、ぜひお越しいただければと思います。
取材・文=宮本英夫
angela
angelaカヴァーアルバム「スタチャまみれ?!」全曲試聴
リリース情報
01.残酷な天使のテーゼ(テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』主題歌・新録)
02.輪舞-revolution(テレビアニメ『少女革命ウテナ』オープニング主題歌・新録)
03.Give a reason(テレビアニメ『スレイヤーズNEXT』オープニングテーマ・新録)
04.For フルーツバスケット 岡崎律子× atsuko Time-Crossing Session(テレビアニメ『フルーツバスケット』オープニングテーマ・新録)
05.七つの海よりキミの海(テレビアニメ『波打際のむろみさん』主題歌・新録)
06.ヒカリ(テレビアニメ『いぬかみっ!』オープニングテーマ・新録)
07.アシンメトリー(テレビアニメ『K RETURN OF KINGS』オープニングテーマ・セルフカヴァー・新録)
08.冷たい部屋、一人(テレビアニメ『K』エンディングテーマ・セルフカヴァー)
09.キラキラ-go-round(劇場版『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE-亜空の深淵-』主題歌・セルフカヴァー)
10.Sail away(劇場版『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE-亜空の深淵-』挿入歌・セルフカヴァー)
11.YOU GET TO BURNING(テレビ東京系アニメ『機動戦艦ナデシコ』オープニングテーマ)
12.Dearest(東映配給映画『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』主題歌)
ゲーマーズ:アクリルスタンド
価格:5,500円(税込)
価格:6,160円(税込)
ライブ情報
Guest:堀江由衣 17:30開場/18:30開演
【DAY2】2026年11月14日(土)大宮ソニックシティ 大ホール
Guest:上坂すみれ 14:30開場/15:30開演
S席 ¥15,000(税込)
A席 ¥9,900(税込)
A席 ファミリー割 大人¥9,900(税込)/子供¥5,500(税込)
※ファミリー割注意事項は公式サイトをご確認ください