OSK日本歌劇団が銀座博品館劇場に登場!『カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~』

レポート
2016.2.18


OSK日本歌劇団公演『カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~』が、銀座の博品館劇場で本日から公演中だ(2月18日より21日まで)。
 
多くの用語や文化を生み出している日本の代表的な動画共有サイト「ニコニコ動画」で発表され、実に500万回以上の再生回数を記録した大ヒット曲「カンタレラ」に加え、やはり大ヒット曲である「パラジクロロベンゼン」「サンドリヨン」3曲の世界観をミュージカル化した作品『カンタレラ』が生まれたのは2011年のこと。ニコニコ動画を象徴する存在である、ボカロ曲を使ったミュージカルは大きな話題を呼び、翌2012年『カンタレラ2012~裏切りの毒薬~』として早くも再演。今回はOSK日本歌劇団による新たなバージョン『カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~』と名付けられての公演で、女性だけの歌劇団であるOSKによる世界の広がりが期待を集め、大盛況の大阪公演を経ての東京公演となった。
 

舞台はルネッサンス後期(15世紀末)のローマ。悪名高き法王の一族であるボルジア家のチェーザレ(桐生麻耶)は一族の浮沈を双肩に担い、家を守る為だけに人生を捧げている一方で、実妹ルクレツィア(舞美りら)を溺愛し、ルクレツィアもまたひたすらな献身を兄に寄せていた。そんな2人の禁断の恋の闇を割くように、フィレンツェの司祭であり悪魔の化身でもあるサヴォナローラ(真麻里都)は、チェーザレの周囲の人間たちの心の隙に乗じ裏切りを誘っていた。絡みつく策謀と愛憎の渦中、兄にコンプレックスを抱き続けるチェーザレの弟ホアン(悠浦あやと)、ルクレツィアを思うチェーザレの親友ジョバンニ(愛瀬光)、ルクレツィアを我が手にと企むフェルナンド3世(楊琳)をも巻き込み、やがてボルジア家に伝わる毒薬「カンタレラ」が人々を悲劇へとひた走らせてゆく……
 

ルネッサンス期のイタリアを舞台にした美貌の一族ボルジア家の愛と策謀の物語は、これまでにも様々な形で取り上げられているが、やはりこの作品が興味深いのは、その発祥がボーカロイドというソフトによる歌唱で披露されるボカロ曲から成り立っていることだろう。中世ルネッサンスの煌びやかな背景、策謀をめぐらし政敵を倒すために秘伝の毒薬カンタレラを用いたと伝えられるボルジア家の淫靡な香りが、ボカロ曲のどこか乾いた人工的な香りを持つ音楽によって表される世界観は独特で、不思議な魅力にあふれている。特に今回はその世界に、女性ばかりの歌劇団であるOSK日本歌劇団の、男役と女役による、この世の者ならぬ非現実感が加味されたことで、舞台は更に幻想性を増した。だからこそ、実の兄妹が互いに禁断の恋心を抱き、悪魔が暗躍し、悲劇が悲劇を呼ぶ物語が、重苦しくなり過ぎることがなく、あくまでも美しい。この効果には大きなものがあって、演出・振付の上島雪夫、スーパーバイザーである片岡義朗の確かな目線と、それに応えたOSK日本歌劇団の勇気あるチャレンジに見事な実を結ばせている。
 

特に、チェーザレを演じる桐生麻耶のただ冷酷なばかりでなく、揺れ動く思いとルクレツィアへの愛をしっかりと表現した堂々の主演ぶりと、台詞発声の美しさと優美な身のこなしで、深すぎる己の想いに囚われて行くルクレツィアを表現した舞美りらををはじめとした、OSK日本歌劇団の出演メンバー達がそれぞれに素晴らしいパワーを発揮している。
 

卓越したダンス力はもちろん、いずれ劣らぬ歌唱力も十全。ブレスや発語が相当に難しいであろうボカロ曲も見事に歌いこなしていて、何度となく感心させられた。これだけ奥深い華やかな世界をわずかに12人で演じきっていることも驚嘆すべきで、この確かな地力を武器に、今後も様々な作品で真価を発揮して欲しいものと願っている。
 

総じて、ボカロ・ミュージカルがOSK日本歌劇団と新たな出会いを果たしたことで、生まれた化学反応には比類ないものがあり、休憩込2時間45分の上演時間があっという間に感じられる、見応えある舞台となっていた。わずか4日間の東京公演という短さが惜しまれるほどの仕上がりで、是非多くの人に劇場でこの魅力を体感して欲しい。
 

初日を前にした2月17日通し舞台稽古が行われ、主演の桐生麻耶と舞美りらが囲み取材に応じて公演への抱負を語った。
 


 
【囲みインタビュー】
 
──この作品の再演の舞台でもあり、様々な作品を上演してきた博品館劇場で、銀座で公演なさることについていかがですか?
 
舞美 (スーパーバイザーの)片岡さんもまた博品館劇場で公演できることをすごく嬉しいとおっしゃっているとお聞きして、私も改めてこの作品でこの劇場でさせて頂けることを幸せに思っています。
桐生 『カンタレラ』が生まれた劇場にまた戻ってきて私達がやらせて頂くということで、以前は男性と女性で演じられてきた舞台を、今回は私達女性だけの歌劇団が演じますので、以前に『カンタレラ』をご覧になった方にも新しい『カンタレラ』を観て頂けたらと思います。
 

──役作りの上で最も大切にされていることを教えてください。
 
桐生 2人に共通していることだと思うのですが、ルクレツィアに対する愛があるが故にこういう道を選んでしまった、その愛の部分ですね。ボルジア家を守るのも、ボルジアが安泰であれば、彼女も安泰であると思うがこそですし、嫁いでしまったとしても自分の目の届くところにいれば、違う形で愛し続けることができる、すべて愛なんです。ですから、当たり前なのですが、舞台上で常に新鮮に、慣れになってしまわずに、その時に生まれた言葉のようにやることを大切にしています。大阪公演から東京公演までに少し期間が空きましたので、リフレッシュできてもいて、そこを大事にしています。(舞美に)これで違うことを言われたらすごいですね(笑)。
舞美 いえ、同じです!(笑)同じなんですけれど、大阪公演の時には全体的に揺らがないチェーザレさんに対して、色々な方と接することによって揺らいでしまうルクレツィアを演じた方がいいのかな?と自分の中では思っていたのですが、やはりそうではなくて、実際にチェーザレさんとお芝居させて頂くところでは愛の言葉を交わしたりなどはないのですが、本を読み返したり、今日の通し稽古などを通じて、私の出ていない場面でチェーザレさんがルクレツィアのことをとても思っていてくださるのを聞いて、改めてその想いを実感しました。「愛と裏切りの毒薬」と、今回のOSKの公演にだけ「愛」というタイトルがついたのは、その部分を表現する為だということを、私も東京公演に来る為のお稽古などですごく考えましたので、東京のお客様に愛をどっぷりと感じて頂けるように、その部分を1番大切にしたいです。
 

──改めて舞台上で感じるお互いの魅力は?
 
舞美 桐生さんのオーラと香りまでもに、守られていると安心できて…
桐生 柔軟剤じゃないの?(爆笑)
舞美 いえ(笑)、視覚的にや、聴覚だけではないものが感じられるのが魅力です。
桐生 大阪公演を経て感じるのですが、かなり中身から私を見てくれるようになったのではないかと。それが客席からご覧になってどういう効果になっているかは、まだわからないのですが、一緒に舞台に立っていて思うのは、全身で私を受け入れ、受け留めてくれているということです。大人になるってこういうことなのかな?と。彼女は階段を上がっている途中で、もちろん私も途中でその1段を大切にしていますが、彼女は何段も駆け上がるような、そういう途中にいる中で立派に私に向き合ってくれるのはすごいことだと思いました。私自身が自分のことを一緒にやるには難しいタイプだと思うのですが、技術は別にしても互いの気持ちに嘘がなければ全く問題はないはずで、そこがお互い真っ直ぐなので、すごく魅力的な子だなと思います。これから学年を経て行く魅力も出てくると思いますし、その意味でもこういう経験ができるのは財産ですね。もちろん私にとっても財産ですけれども。
 

──東京公演への意気込みを。
 
舞美 大阪公演の時には自分もまだいっぱいいっぱいの部分もあったのですが、東京に来て思いがあふれて、今ちゃんと台詞を言ったのかどうか意識がないくらい集中できているのを感じていて、どちらかと言うと自分のことよりもチェーザレさんの表情ですとか、台詞の声が心に残っているくらい思いが強いので、是非大阪とはちょっと変わったルクレツィアとチェーザレさんの関係を観に来て頂ければと思います。
桐生 東京には様々な劇場がありますし、本当に色々な種類のステージをご覧になっている方々がいらっしゃると思いますが、私達OSK日本歌劇団、「歌劇」というものを越えて、何か新しい魅力がまたお届できるのではないかと思います。華やかなレビューだけではない、今回はちょっとドロドロした部分も表現していますので、東京の目の肥えたお客様にどう感じて頂けるか、怖い部分もありますが、とても楽しみでもあります。
 
──カーテンコールで「桜咲く国」の傘のシーンもありますが、客席で開閉するコツは?
 
舞美 ためらわずに、好きなタイミングで思いっきり開いてください。
桐生 客席でも傘を広げてくださっている、嬉しいなと思いますので、その空気を感じ取って舞台もやっています。
 

──『カンタレラ』という作品を通じて、初めてOSKをご覧になるお客様も多いと思います。是非メッセージを。
 
舞美 私達OSK日本歌劇団とニコニコミュージカルの『カンタレラ』がめぐり会ったのも何かのご縁だと思うので、初めて観に来てくださるお客様にも、この作品がめぐり会いになって頂ければありがたいと思っていますので、東京の皆様にお1人でも多く観に来て頂けたらと思います。
桐生 私の周りにも、OSKは観たことも聞いたこともないけれど、ボカロはよく耳にしているという若い方が多かったんです。そういう方達に、今回の舞台で歌う3曲「カンタレラ」「サンドリヨン」「パラジクロロベンゼン」を通して、こういう劇団があって、この曲を歌っているんだ!と思って頂けることを大事にしたいです。OSKは後付けでも良くて、その楽曲を聞きにいらっしゃるということでも、例えば学生さんでしたら2.000円で観て頂けるので、あぁ、この楽曲聞いてた、見てたと思われたら是非足を運んで頂けると嬉しいです。映画を観るより少し高いですが(笑)、でもこの時間を観て頂けるので是非よろしくお願い致します。
 

少女歌劇として取り扱い禁止事項だった、兄妹の愛に挑戦して、この『カンタレラ』という作品を愛してくれている方と、博品館劇場を馴染みとしているお客様、双方をお招きしたOSK日本歌劇団初めての博品館劇場公演にしたい、という歌劇団側からの力強い意気込みも語られて会見は終了。充実した公演が展開されることが確信できる時間となっていた。

〈公演情報〉

OSK日本歌劇団
『カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~』
演出・振付◇上島雪夫
スーパーバイザー◇片岡義朗、古林浩一
出演◇桐生麻耶、舞美りら ほか OSK日本歌劇団
●2/18~21◎博品館劇場(東京)
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003(10時~20時)
〈料金〉SS席 7,500円、S席 6,000円、A席 4,000円/学割 2,000円(小学生~大学生・専門学校生)
※U-25(S席)5,000円(25歳以下の方がご利用になれます。ご入場前に受付にて生年月日がわかる身分証明書などをご提示して頂きチケットに確認印を押された方のみご入場いただけます)

【取材・文・撮影/橘涼香】
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