こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラによる木管四重奏

レポート
クラシック
2016.3.22
こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

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午後の昼下がりにぴったりな、木管楽器の柔らかな四重奏。
第16回 “サンデー・ブランチ・クラシック”2.28ライブレポート

渋谷の街が持つ独特の喧騒を抜け、乗り込んだエレベーター。扉が開くと、なんだかちょっと時間の流れが違って感じられる空間が広がっている。そんなLIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplusの、2月28日の午後の昼下がりには、木管楽器の奏でる優しい音色が響いた。

第16回目となる「サンデー・ブランチ・クラシック」には、こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラが登場してくれた。東京芸術大学に2011年度に入学した管楽器演奏者を中心に結成され、今注目を集める次世代吹奏楽団・ぱんだウインドオーケストラ。今回演奏してくれる〝こぱんだウインズ″は、ぱんだウインドオーケストラに所属するフルートの高橋なつ美、オーボエの藤本茉奈美、クラリネットの森卓也、ファゴットの古谷拳一によって結成された木管四重奏団である。

定刻になり、少々緊張気味の面持ちで、音程を合わせる4人。しかし、始まってしまえばそんなことは微塵も感じさせないメロディを紡ぎだす。この日の1曲目に演奏されたのは、イベール作曲『小さな白いロバ』。ひづめの音を思わせるスタッカートや、陽気な旋律を息の合った演奏を聴かせた。

「皆様、こんにちは。私たちはぱんだウインドオーケストラからやって参りました木管四重奏です」とオーボエの藤本が自己紹介。「本日の楽器はすべて木管楽器なんですけれども、それぞれ出てくる音がまったく違うんです。ちょっと聞いてもらいたいのですが・・・」とそれぞれ、代表的なフレーズを吹いてその違いを聴かせてくれたのだが、ファゴットの古谷が吹いたのはなんと“ぞうさん”!面白い選曲だったが、その音色の特徴がわかりやすく伝わった。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

「このまったく違う音色を持つ楽器が、2人で、3人で、そして4人で、など、組み合わせでどんどん音色が変化していくのが、木管四重奏のおもしろいところなので、ぜひそこに注目して聴いてみてください」と、次に演奏してくれたのは、リチャード・ロドニー・ベネット作曲『トラベルノート2』。この曲は4楽章からなっていて、それぞれの楽章に『気球』、『ヘリコプター』、『車いす』、『カーチェイス』と名前が付けられている。そのタイトルを連想させるような曲調の変化とともに想像を巡らせば、音楽で世界一周ができてしまいそうだ。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

次にマイクを取ったのは、フルートの高橋。続いての曲、ピアソラ作曲『タンゴの歴史』より ボルデル1900は、オリジナルはフルートとギターの曲であると紹介してくれた。この曲は、タイトルにもなっている“タンゴの歴史”を1900年から30年ごとに区切って描いた作品となっている。第一楽章は“1900年の酒場”、第二楽章は“1930年のカフェ”、第三楽章は“1960のナイトクラブ”、第四楽章は“現代のコンサート”を表現している。この日は、第一楽章を演奏してくれた。

「この曲の酒場というのは、ただの酒場ではなく、違法営業をしている酒場なんです。この酒場に警察が笛を鳴らしながら踏み込んでくる、というのを、フルートの音が曲の冒頭で表現しているんです」と高橋。原曲では、この笛の音の後に「コンコンコン!」とギターのボディを叩く表現が入るという。「これは、『警察が酒場の扉をノックする音』という説と、『酒場にいた女性が逃げるハイヒールの足音』という説があるんです」とのこと。木管四重奏の彼らは、“あるもの”を使ってこの音を表現。当日聞いた方には、果たしてどちらの光景が頭に浮かんだだろうか。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

この“あるもの”を担当していたのは、ファゴットの古谷。“あるもの”とは、カスタネット。とは言っても、私たちが幼い頃に慣れ親しんだ赤と青に色付けされたものとは、ちょっと形状が違う。ここで「実は、皆さんがよくご存じのあの楽器は、実は“カスタネット”じゃないんです」と、古谷から衝撃のマメ知識が!「あの楽器のもとは、“ミハルス”と言いまして、日本の舞踊家・千葉みはるさんが考案した本来のカスタネットを簡略化したものなんです」。私たちが使っていたのは、それをさらに教育用として改良したものだというが、なんと・・・。カフェに訪れていたお子さんも、目をまん丸くしていた。

続いて演奏されたのは、フランセ作曲『木管四重奏曲』より第四楽章。1912年生まれのフランスを代表する作曲家であるフランセは、この曲を21歳の時に作曲したという。木管四重奏のために描かれた曲ということで、4本の木管の音が軽快に絡み合いながら跳躍するメロディが印象的。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

最後は、クラリネットの森の紹介でビゼー作曲『カルメン・ファンタジー』を披露。「スペインを舞台に自由で恋多き女カルメンの愛と憎しみを描いた親しみやすいオペラの曲を、今回は木管四重奏バージョンでお届けします」。情熱的なメロディを木管のぬくもりある音色で聴くと、研ぎ澄まされたカルメンの中のまた違った一面が見えるようである。

温かい拍手に迎えられ、リムスキー=コルサコフ作曲『熊蜂の飛行』で、4人はアンコールに応えた。このほか、第二部では一部曲を入れ替え、イベール作曲『二つの断章』第一楽章なども演奏された。

終演後の4人を直撃すると、緊張から解き放たれほっとした表情を浮かべていた。フルートの高橋は「木管四重奏って曲が少ないし、一人一人の音が丸裸になるんです。でも、この4人のアンサンブルはしっくりくるというか、本番を重ねるごとに成長できる感じがするんです。今日のこの場も経て、またひとつ成長できたかなと思いました」と、緊張の中にも手応えを感じた様子。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

ファゴットの古谷は「僕たちが演奏するコンサートホールでは、お客さんとの間に距離があるので、こんなにお客さんの近くで演奏できる体験はなかなかないなと。すごく勉強になりました」と振り返った。

それぞれ小学校や中学校で楽器を始め、「演奏依頼のあった日にスケジュールの空いていたメンバーで集まったことから結成された」とその結成秘話を明かしてくれたが、それはすべて必然だったのだと思えるほど、相性の良いあたたかな音色を聴かせてくれた4人。

彼らの所属するぱんだウインドオーケストラが、東京藝術大学奏楽堂にて行うCDリリース記念コンサートもいよいよ3月20日(日)に迫ってきた。クラリネットの森は、当日コントラバスクラリネットを担当するという。「ぜひ、低音にもご注目ください!」とはにかんだ笑顔で語ってくれた。残念ながらチケットは完売してしまっているが、すでにお持ちの方はぜひ、4人の活躍をじっくり聴いてきてほしい。

最後に、今日のお客様に対し、オーボエの藤本は「木管四重奏を聞くのは初めてというお客様が多かったのではないかと思います。少しでも、木管四重奏の良さが伝わっていれば嬉しいです」とメッセージをくれた。

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ (撮影=岡崎 雄昌)

ぱんだウインドオーケストラのメンバーは、吹奏楽団としての活動の他にも、個々に活動の場を広げている。ソロでも、アンサンブルでも、演奏者の個性と楽器の音の組み合わせで、音楽の楽しみは無限に広がるもの。若き才能たちの活躍に、今後も注目していきたい。音楽と人との出会いの場「サンデー・ブランチ・クラシック」。次回もお楽しみに!


撮影=岡崎雄昌 文=友成礼子

プロフィール
こぱんだウインズ from ぱんだウインドオーケストラ
 
高橋なつ美(フルート)
東京藝術大学卒業。
第2回アジア・フルート連盟講習会にて、神田寛明、リー・ソヨン、陳三慶の各氏のレッスンを受講。
2014年横浜長浜ホー ルにてフルート、ヴァイオリン、ピアノによるトリオリサイタルを開催。同年、ラ・フォル・ジュルネエリアコンサートに出演。
これまでに黒田育子・金昌国・斎藤和志・高木綾子の各氏に師事。
桐朋オーケストラ・アカデミー研修過程在籍。ぱんだウインドオーケストラ団員。
 
藤本茉奈美(オーボエ)
東京藝術大学卒業。
学内において選抜され、「藝大定期【室内楽第41回】」出演。第13回、第14回、第15回 防府音楽祭に出演。芸術・文化若い芽を育てる会牛尾シズエ賞受賞。2016年2月、広島交響楽団と共演。これまでに柴滋、広田智之、小畑善昭、和久井仁の各氏に師事。D.ヨナス、H.シェレンベルガー、T.インデアミューレ、M.ブルグのマスタークラスを受講。
東京藝術大学大学院修士課程1年在学中。ぱんだウインドオーケストラ団員。
 
森卓也(クラリネット)
第9回横浜国際音楽コンクール審査員奨励賞、第28回市川新人演奏家コンクール優秀賞受賞。第1回K木管楽器コンクールクラリネット部門第1位。
これまでに谷尻忍、野田祐介、濱崎由紀、三界秀実、山本正治の各氏に師事。N.バルディルー、W.フックスのマスタークラスを受講。
東京芸術大学3年在学中。ぱんだウインドオーケストラ団員。
 
古谷拳一(ファゴット)
第30回日本管打楽器コンクールファゴット部門入選をはじめ、これまでに数々のコンクールで優勝、入賞を重ねる。 第21回浜松国際アカデミーを受講。選抜メンバーによる第13回若きヴィルトーゾコンサートに出演。2015年マルクノイキルヘン国際管楽器アカデミー(ドイツ)を受講、Final concertに出演。小沢征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIIに参加。 これまでに伊藤真由美、井上俊次、岡崎耕治の各氏に師事。ウルリッヒ・ヘルマン、ジョルジォ・マンドレージ、セルジオ・アッツォリーニ等のマスタークラスを受講。東京藝術大学3年在学中。2015年度よりヤマハ音楽奨学生。ぱんだウインドオーケストラ団員。


ぱんだウインドオーケストラ
吹奏楽へのアツイ思いを原動力に2011年に結成された吹奏楽団。団員は、同年の東京芸術大学入学生を中心としている。楽団名は時を同じくして、上野にやって来た二頭の“パンダ”に由来。
これまでに4回の定期公演を開催。黛敏郎作曲(長生淳編曲)《オール・デウーヴル》の初演を始め、ぱんだウインドオーケストラのためのオリジナル作品、前久保諒作曲《PANDASTIC!!》の委嘱など、吹奏楽の魅力あふれる作品にこだわったプログラミングで公演を重ね、好評を博している。TV朝日『題名のない音楽会』への出演や上野動物園「ぱんだの日記念イベント」への出演など、幅広く精力的に活動を行っている。
これまでに4枚のCDをリリース。最新アルバムは「PANDASTIC!~Newest Standard」(日本コロムビア)。2016年3月20日、東京芸術大学奏楽堂にてCDリリース記念演奏会を開催。
 
 
ぱんだウインドオーケストラ 公演情報
イマジン七夕コンサート 2016 ~名曲ガラ・コンサート~

日時:7月6日(水) 開演19:00
会場:サントリーホール
<出演>
ぱんだウインドオーケストラ、橘直貴(指揮)、カメラータ・ド・ローザン ヌ(弦楽アンサンブル)、須川展也(サクソフォン)、トルヴェール・カルテット (サクソフォン四重奏)、山形由美(フルート)、加藤昌則(作曲・ピアノ)ほか
曲目:未定
 
サンデーブランチクラシック 公演情報
4月10日(日)
林そよか/作曲・ピアノ
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30

会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500

4月24日(日)
前川ひろみ/ヴォーカル
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE: \500


公式サイト:http://livingroomcafe.jp/
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