仁左衛門、KERA、小池栄子、鵜山仁、高畑充希…、第23回読売演劇大賞贈賞式をレポート
第23回読売演劇大賞贈賞式
2月29日(月)、第23回読売演劇大賞の授賞式が帝国ホテルにて催された。古典から現代劇に至るまで、演劇全分野を網羅し、舞台芸術への活力を願って創設された本賞、今回各賞を受賞した顔ぶれを受賞コメントとともに紹介しよう。
大賞・最優秀男優賞:片岡仁左衛門(「菅原伝授手習鑑」「新薄雪物語」「一條大蔵譚」の演技)
この23年の間に素晴らしい芸を拝見してまいりました。そんな中、私が選ばれるというのは選考方法に間違いがあったんだと思います。今後ご検討いただけると幸いです(笑)。23回といえば、父の23回忌の追善を先日済ませました。また父が残してくれた菅丞相(「菅原伝授手習鑑」の登場人物)も大賞の対象に選ばれており、親孝行ができたな、と思っております。言い古された言葉ですが、芸は死ぬまで修行でございます。先日TVで父の映像が流れたときに、改めてすごい人だったんだなと感じました。
片岡仁左衛門 第23回読売演劇大賞贈賞式
優秀男優賞(坂部文昭、城田優、鈴木壮麻、山本耕史)
最優秀作品賞:「グッドバイ」(コメントは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ)
観た人に何も残らないコメディ。なんのメッセージもないバカなコメディに賞をいただけるというのは、ずっと喜劇をやり続けてきた人間にとって非常にありがたいことです。ちなみにKERA・MAPというのは似た名前のカンパニーがございますが、偶然です(笑)今日はアカデミー賞の授賞式もあったんですよ、WOWOWで。レオナルド・ディカプリオさんおめでとうございます。2007年にも「ヴァージニアウルフなんか怖くない?」という作品で賞をいただきました。何度でもいただけるのが読売演劇大賞のいいところだと思います。太宰治さんの作品の後半8割を勝手に書いてしまいましたが、著作権も切れているということで…(笑)僕にしては珍しく明るいコメディでした。じゃあまた9年後くらいに。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ、北牧裕幸 第23回読売演劇大賞贈賞式
優秀作品賞 第23回読売演劇大賞贈賞式
最優秀女優賞:小池栄子(「グッドバイ」の演技)
初めて舞台の世界に引っ張ってくださったのは、ラサール石井さんで、14年前にまだグラビアと深夜のバラエティ番組に出れるようになったくらいの頃に「小池は何をやりたいんだ」とラサールさんに言われて「舞台をやりたいです」と言ったらすぐ舞台の仕事をくださいました。いろんなお仕事をする中で、自分が持っていたものは、根性とあきらめない気持ちだったり、いろんな仕事をしてもきっと誰かが見ていてくれるだろうという信じる気持ちだったと思います。板の上に乗ったら私にとっては恥ずかしがることもなく、守るべきものもないので、最後まで役とともに旅をし、その命を全うしたいと思います。
小池栄子 第23回読売演劇大賞贈賞式
優秀女優賞(熊谷真実、小泉今日子、高畑充希、花總まり)
最優秀演出家賞:鵜山仁(「廃墟」「マンザナ、わが町」の演出)
昨年は戦後70年ということで、この70年を舞台芸術に捧げてこられた先輩たちのエネルギーや積み重ねに背中を押されたように思いました。「廃墟」の作者・三好十郎さん、「マンザナ」の作者・井上ひさしさんの執念というか祈りというか、二度と戦わないための文化の力をひしひしと感じました。そういう意味では政治的な旗印の違いを超えた話だと思います。右も左もないし、朝日も読売もない(笑)そういう志を継いでいけるように微力ながら、具現化していきたいと思います。
鵜山仁 第23回読売演劇大賞贈賞式
優秀演出家賞(上田久美子、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、藤田貴大、ラサール石井)
最優秀スタッフ賞:乗峯雅寛(「白鯨」「悲しみを聴く石」の美術)
「白鯨」は文学座の作品としては珍しく、一年間かけて役者のワークショップだったり、膨大なメルヴィルの原作を読んだり、そういうことをくりかえしながら稽古に臨みました。僕自身も和歌山県まで行って古式捕鯨の勉強をしてきたり。そういうことが最終的に生かされたのではと思います。いざ、稽古が始まったあとも演出の高橋正徳さんにスタッフの皆さんと役者のいろいろなアイディアが舞台上で実現しました。
乗峯雅寛
優秀スタッフ賞(高橋知伽江、松井るみ、松任谷正隆)
杉村春子賞:高畑充希(「いやおうなしに」「靑い種子は太陽のなかにある」の演技)
「いやおうなしに」は、以前からお世話になっていた脚本の福原(充則)さんと演出の河原(雅彦)さんから「面白いことをやるから一緒にやろうよ」と声をかけてくださって、小泉今日子さんの娘役で舞台に立たせてもらって、どんな役をやらせてくれるんだろうとふたを開けたら野球部のマネージャーで、部員全員と関係を持っているひどい女の子の役で…「アテ書きだから!」と言われまして(笑)稽古場も本番も本当に楽しかったです。「靑い種子~」はその逆で、とっても苦しくて、蜷川幸雄さんも怖いし(笑)頭がいっぱいいっぱいで。耐え続ける役柄だったんですが、周りの方が助けてくださり、蜷川さんもものすごく愛のある言葉を投げてくださって。稽古中は埼玉行きの電車が全部止まればいいのに、と思っていましたが、本番が始まってからは羽根が生えたように楽しくて仕方がない舞台でした。
高畑充希 第23回読売演劇大賞贈賞式
芸術栄誉賞:奈良岡朋子
考えてみると役者として才能があるかどうかは考えたことがありませんでした。事実今でもその可能性は残っているかな、と思ってそれを引き出そうとしている最中です。ただ、もし一つだけ才能があるとするならば、唯一「続けてきた」ということです。亡くなった大滝秀治と同級生だったのですが、よく二人で「私たちは何の才能もなく、たまたま劇団に入れてもらったんだけど、しいていうなら途中で挫折することだけはやめよう。二人だけは命果つるまで、続けよう」それが二人で交わした約束でした。あの人は約束を果たしてどっかに行ってしまいました。私も唯一続けてきたことが才能だと思っています。
奈良岡朋子 第23回読売演劇大賞贈賞式
選考委員特別賞:宮本宣子(「冬の時代」「ヴェローナの二紳士」「白鯨」の衣装)
舞台衣装の世界に光を当ててくださりありがとうございました。これからの衣装を目指す若者の励みになればと思っております。
宮本宣子 第23回読売演劇大賞贈賞式
第23回読売演劇大賞贈賞式