鼓童の若手と「真田丸」題字の挾土秀平が出会って生まれた特別公演「若い夏」
「鼓童」前田剛史 撮影=こむらさき
太鼓芸能集団「鼓童」の若手メンバーが中心となってこの夏上演する浅草特別公演「若い夏」。演出を務めるのは、今年30歳になる鼓童メンバーの前田剛史だ。そして本公演フライヤーの題字を務めたのは、NHK大河ドラマ「真田丸」オープニングに登場する印象的な題字を手掛けた左官・挾土秀平。前田は、挾土と出会って多大な影響を受けた、と語る。本公演の見どころなども含め、話を伺ってきた。
――前田さんは、鼓童に入る前はどこで叩いていたんですか?
地元のアマチュアの和太鼓グループに入ってたんです。「太鼓交換」(ワークショップのようなもの)で鼓童に来たのは高校生のときでした。僕、小学校のころからずっと鼓童に入りたかったんです。
――小学生とかならサッカーやゲームなど、他にもいろいろ興味を持ちそうな年齢ですが。
全くぶれなかったです(笑)環境がそうさせたんでしょうね。
「鼓童」前田剛史 撮影=こむらさき
――さて、今回の「若い夏」ですが。左官の挾土さんとの出会いが大きな刺激となった、と伺っていますが、そのあたりをもう少し詳しく教えていただけますか?
「鼓童」35周年ですが、坂東玉三郎さんが芸術監督を務めるようになってから4年目。この期間は、これまでの鼓童のスタイルを一度置いて、新しいことにチャレンジをしてきた期間だったと思うんです。太鼓を芸術としてしっかりお客さんに見せる、作品として見せるために、この4年間にいろんなチャレンジをしてきました。
一方、挾土さんは職人さんですよね。その地域の人たちと繋がりながら、環境のことも考えた壁づくりをなさっている。地に足をつけてやっていらっしゃいます。
太鼓は、もともと見世物ではなく、祝祭が目的だったりします。雨を降らしてください、災いを避けてください、といった地域の人たちの気持ちを大切にする。そういう点では両者には通じるところがあって。もちろん、お金をいただく「興業」として回していかなければならないことはわかっています。時代に合致し、売れるようになってきたが、その後、不景気になり。前に進もうと思ったら、捨てないといけないものもある。鼓童として鼓童のことを改めて考え、いろいろな方向から見つめなおそうとしていたんです。過去は大事だが先にも進まないと、と。
そんなときに挾土さんが「大事なのはこれじゃないの?」ってすっとおっしゃってくださって。「太鼓は見せるもんじゃない。むしろ営んでいるものを外から見られている、くらいでいたほうが素直にいられるんじゃないかな」と言われたんです。
まずは足元をみる。そして自分ちの畑を持つ。それでいいんだよ、そうしていかないと、帰って来るところがなくなるよ、って思えたんです。その辺の感覚が職人さんと和太鼓の共通点かなと思っています。挾土さんの口から出る言葉にはまったく嘘がない。それゆえ刺激を本当にいっぱい受けているんです。
――挾土さんとの出会いで気が付いたことを形にしようとしたのが、今回特別公演と銘打たれている本作です。どのような舞台となる予定ですか?
出演者は若手が中心です。鼓童のメンバーの最年少は20歳なので下の世代から数えたほうが早いです。でも50,60代のベテランたちも出ますよ。何をやるかは、今模索しながら作っているところです。「正解」はないと思っているので。今大事なのは、足元を見つめなおすこと。若手が増えたので、法被を着て演奏するもともとの鼓童スタイルでステージに立っていたメンバーって今は案外いないんです。でも鼓童の質感や「鼓童」ってこういう人たちが作り上げてきたもの。だから、往年の曲をやりこんできた人たちが作り上げていった質感を僕らも持ちたいと思ったんです。まず若い人たちが、改めて何が大事かを考えて取り組もうとしているんです。
自分たちがこの先、鼓童を担っていくことになるので、自分たちでしっかり考え直して見つめなおして、新しいものを作りたい…という単純な想いを抱いています。
今年30歳になりますが、自分は大台に乗ったとも思ってなくて、まだまだ若輩者だと思っています。10年やってきていろんなことが見えてき出した、という感じです。自分が太鼓をたたく上で変わったこと、新しいこと、大事なこと、それらを凝縮してみたいです。その結果、こうしたほうがいい、といえる言葉を7月の本番に繋げるためにずっと模索していきたいです。
今までの鼓童のファンはもちろん、若い人に見てもらいたいですね。鼓童のお客さんって古くから長年応援して下さっている方も多いので、若い方々にもこの機会に興味を持ってもらいたいと思っています。
「鼓童」前田剛史 撮影=こむらさき