平野玲音(チェロ) “ウィーンの音”を求めて
平野玲音(チェロ) ©篠原栄治
東京大学で学んだ注目の知性派チェリスト、平野玲音。両親共に演奏家の家庭に育った彼女は、大学卒業後にウィーンに留学。その後、ウィーンを中心に欧州で活動を続け、2012年に「東京-ウィーン三重奏団」を結成した。メンバーは平野に加え、ヴァイオリンの大石智生、ヴィオラの太田英里。全員がオーストリアを代表するヴァイオリニスト、エドゥアルト・メルクスが率いる楽団に所属している。
「お二人とも、私より長くオーストリアで活動していらっしゃる“現地人”。音楽的な方向がぴったりですし、日本出身同士で組むのも良いのでは? ということになり結成しました」
現在、ウィーンを拠点にオーストリア各地で活躍の場を広げている彼ら。15年には来日公演も行い、そのライヴを収録した初CD(2枚組)がリリースされた。演目はすべてウィーンにゆかりのある作品ばかり。1枚目には、シューベルト「三重奏曲第1番」と、ベートーヴェン「セレナーデ」が並ぶ。
「シューベルトは、“繊細な優男”だったという彼の人柄を表現するために、フォルテの弾き方に細心の注意を払いました。一方、ベートーヴェンは全7楽章もある大曲。メルクスさんのアドバイスもあり、聴き手が自然体で楽しめるように通常の楽章順とは異なる順番で演奏しました」
2枚目の収録曲は、モーツァルト「ディヴェルティメント K.563」と、2つのアンコール曲(シュトラウス兄弟「ピツィカート・ポルカ」と、ランナー「ウィーンのレントラー」)だ。
「モーツァルトでは、全6楽章を通じて、可能な限り自然で流れのよいアゴーギクを追求。アンコールにも、私たちが暮らすウィーンの古き良き日の情緒が薫る名曲を選びました」
近年、日本での公演も着実に増えている平野は、4月と7月に帰国してコンサートを開く。前者はピアノとのデュオ(平野が11年より開いている「Reine pur シリーズ」の10回目)で、後者はカルテット(東京-ウィーン四重奏団)だ。
「私のウィーンでのパートナー、ペーター・バルツァバさんと共演するデュオのテーマは、”ピアニストのチェロ”。作曲家でもある彼が私に捧げてくれたソナタを中心に、ベートーヴェン、リスト、ショパンなど、ウィーンに縁のあるピアニストが書いたチェロ作品を集めました」
そして7月のカルテットは、東京-ウィーン三重奏団の3人(太田は第2ヴァイオリンを担当)に、ヴィオラのヴォルフガング・クロース(当盤の「ピツィカート〜」で編曲を担当)が加わる編成。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンというウィーン古典派の弦楽四重奏作品3曲を披露する。徹底して「ウィーン風」にこだわる彼ららしいプログラムだが、中でも力を入れているというベートーヴェンの“後期”から選ばれた第16番に期待が高まる。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
Reine pur 第10回 「ピアニストのチェロ」
4/9(土)14:00
サントリーホール ブルーローズ(小)
7/18(月・祝)17:00
浜離宮朝日ホール
3/22(火)発売
問合せ:平野玲音ファンクラブ事務局080-6552-2949
CD
『ディヴェルティメントToppan Live/東京-ウィーン三重奏団』
ディスク クラシカ ジャパン
DCJA-21032〜33
¥3200+税