日本初上演の『アルカディア』に挑む井上芳雄へインタビュー

インタビュー
舞台
2016.3.29
『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

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舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』や映画『恋におちたシェイクスピア』の脚本で知られるトム・ストッパード。彼の最高傑作と称される『アルカディア』がついに日本で初上演される。演出に栗山民也、キャストに堤真一、寺島しのぶなど豪華なカンパニーで構成されたこの作品。キーマンとなるセプティマス役を演じる井上芳雄は「これは日本最高峰の舞台と言っても過言じゃない」とすでに強い手応えを感じているようだ。

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)



――この作品はイギリスの豪壮な屋敷の一室で、“ある謎の追求”をめぐり、19世紀と現代が交錯する二重構造となっています。

セットは同じで、2つの時代の登場人物たちが交互に現れる。その構成がお客さんにどのように映るのか、すごく興味がありますね。しかも、ときには200年の時代を超えて、それぞれの人物たちが同じ空間に存在することもあるんです。お互い直接会話を交わすわけではないんですが、同じノートを見ながら、同じテーマの話をする。ノートに限らず、その部屋で200年もの間、多くの人がいろんな会話をしてきたんだなと思うと、すごくロマンを感じますよね。

――井上さんが演じるセプティマスは19世紀に生きる人物で、屋敷に住み込んでお嬢様の家庭教師をしている青年です。博識で礼節を重んじる一方で、ときおり早熟なお嬢様に翻弄される役どころですが、どのような印象をお持ちですか。

彼は実直な性格ではあるので、規律を守る姿をしっかりと見せていかないといけないんですよね。ただ、たまにたがが外れる時がある。僕も普段は感情の波が少ないほうなんですが、そうじゃない別の一面を僕自身が感じたくてお芝居の仕事をしているところがあるので、そうした二面性は少し似ているかもしれませんね。それに、先日デヴィッド・ルヴォーさんにお会いしたんですが、彼は、この『アルカディア』を演出していて。僕が今度出演すると言ったら、『芳雄はセプティマス役だろ?』ってズバリ当ててきたんです。そのことにすごく驚いたんですが、ルヴォーもこれが僕に適役だと感じてくれているんだと思うと、なんだか嬉しかったですね。

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)


――現在は(取材時)、稽古の真っ最中ですが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

作品の性質上、19世紀組と現代組に分かれて稽古をしていることが多いんですが、それぞれにカラーの違いがあって面白いですよ。19世紀組は結構ストイックですね。当時は階級社会なので、その階級の中での登場人物の立ち位置や発言がとても重要になってくる。そのため、セリフの一つひとつに気を遣って繊細に表現しています。一方、現代組はライトな雰囲気。しかも、堤さんも、寺島さんも、演出家が求めるその先の表現を求めてお芝居をされているので、どんどんいろんなアイデアが生まれてくるんです。たまにやり過ぎて芝居が崩壊することもありますが(笑)、それも含めて楽しい稽古場になってますね。


――また、今回の舞台では、ともにユニット「StarS」で活動を行っている浦井健治さんとも共演されてますね。しかもお2人がストレートプレイで同じ舞台に立つのは初めてだとか。

もう、お互いのことを知り尽くしたと思っていたんですけど、ストレートプレイでの役作りのアプローチの仕方を見ていると、意外な一面があって刺激を受けます。浦井君は天然なところもあるけど(笑)、すごく勉強熱心で、自分の出番がない日でも時間があれば稽古場に来て、共演者の演技を見ているんです。もう、僕とは正反対。僕は稽古場にいると緊張しちゃうので、ギリギリに来て、終わったらすぐに帰っちゃいますから(笑)。それと、彼は緊張しているとすぐに分かりますね。どんどん声が小さくなっていくので(笑)。これが「StarS」の現場であれば、“声、ちっさ!”って突っ込めるんですけど、今回は先輩方がたくさんいらっしゃるし、僕も緊張しているので、それができなくて。一緒に稽古をしていて唯一ツライのは、そこですね(笑)。


――井上さん自身は、普段のミュージカルとは違うストレートプレイに対して、苦手意識はないのでしょうか。

ずっとありました。経験が少ないぶん、今でも怖さを感じています。でも、矛盾するようですが、今はお芝居が楽しくて仕方がないんです。経験とかキャリアとか関係なく、自分も思いもよらないような演技が出来た時に、役者もお客さんも大きく感情が揺さぶられる瞬間が訪れることがあって。そんな時、生きてるなって感じます。今回の『アルカディア』は、その興奮がぞんぶんに味わえる作品だと思うので、ぜひ多くの方に観に来ていただきたいですね。
それに、この舞台のテーマは “熱”なんです。そこで生きている人たちの情熱や愛情、それに愛欲などが描かれている。それってどの時代でも誰しもが持っているものだと思いますので、時代を超えてもあふれだす人間の壮大なエネルギーを舞台上で表現したいです。

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

『アルカディア』 井上芳雄 (撮影:加藤孝)

公演情報
『アルカディア』

■日程・会場
東京:2016年4月6日(水)~4月30日(土)
   Bunkamura シアターコクーン
大阪:2016年5月4日(水・祝)~5月8日(日)
   森ノ宮ピロティホール

■作:トム・ストッパード 
■翻訳:小田島恒志 
■演出:栗山民也

■出演者
堤真一/寺島しのぶ/井上芳雄/浦井健治/安西慎太郎/趣里
神野三鈴/初音映莉子/山中崇/迫田孝也/塚本幸男/春海四方

■公式HP: http://www.siscompany.com/arcadia/gai.htm


 

 

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