明治座でミュージカル!?木村了にインタビュー『TARO URASHIMA』とは

インタビュー
舞台
2016.5.2
木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

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2016年8月に明治座で上演される『TARO URASHIMA』。明治座でミュージカル!?「浦島太郎」ではなくて『TARO URASHIMA』!? しかも脚本は池田鉄洋、演出は板垣恭一とくれば、演劇ファン・ミュージカルファンがいやがおうにも注目してしまう訳で!
本作で主演を務めるのは、「【最終章】學蘭歌劇『帝一の國』-血戦のラストダンス-」で主役を務めた木村了。インタビューの2日前に『帝一の國』の楽日を迎えたばかりの木村に話を伺ってきた。



――「帝一の國」の興奮も冷めないうちに、今回の『TARO URASHIMA』のビジュアル撮影、お疲れさまです!この作品、完全新作オリジナルミュージカル、と聞きましたが…。

すごいことをしますよね!さっき浦島太郎のコスチュームになって撮影をしたんですが、再現率が高くて僕自身がびっくりしました。こんな格好をする機会なんてそうそうないですから、これを仕事としてできる喜びってありますね。
 

――今回明治座でミュージカル…と聞いていったい何をやるんだろう、と思っているのですが。

ええ。僕はいったいどこに向かっているんだろう、と(笑)しかも脚本がイケテツ(池田鉄洋)さんで、演出が板垣恭一さん。どちらも初顔合わせですから、奇跡が全部重なっているようで。まだ全貌が見えていないんです。
 

――イケテツさんとは初仕事ですか?

まだ一緒にお仕事したことがないんです。個人的に一方的に知っているだけ。以前【第二章】「帝一の國」で小林顕作さんの仕事を見たいということで稽古場にいらしたときにお会いしたくらい。あとは、 新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號「IZO」を観たくらいです。板垣さんとも初めてのお仕事になりますね。
 

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

――ただの「浦島太郎」ではなくて『TARO URASHIMA』という横文字表記な本作ですが、どんな話になりそうですか?

大人向けのミュージカルですが、もれなく子どもも楽しめる、という感じになりそうです。シュールな感じで。常々思うんですが、シュールなおとぎ話って絶対面白いと思うんです。イケテツさんもシュールな話が好きだと聞いたので『TARO URASHIMA』に盛り込んでくるんじゃないかなあ。大人向けってところで「ジブリ」っぽくトトロが出てきたりするのかなあ…海だからびしょびしょのトトロとか(笑)
 

――そもそもの「浦島太郎」の話自体、日本書紀には「めでたしめでたし」で終わるようなハッピーエンドで描かれているのに、明治時代に「教訓」を持たせるために書き換えがされたようですね。

俺の記憶ではハッピーエンドで終わらない話だったと思う。でも教訓がいっぱい詰まっている作品。今でいうなら、キャバクラとかで思いっきり遊んで夢のような時間を過ごしてて、店の外に出たらもう何十年も経っていて、お土産を開いたら老人になっちゃう…っていう。一番謎に包まれた物語のようですね。
 

――「浦島太郎」といえば竜宮城で乙姫さまにもらう玉手箱ですが、もし自分が「玉手箱」をもらったら開けないで我慢できますか?

「じゃ、いらないよ」って言っちゃう。もらったらその場で開けちゃうもん。「開けないで」って言われたら「ええー!?」っていいながら紐をほどいてそう。「お土産ですが開けないで」って言われてもねえ…その矛盾たるや!今回、感動で終わるのか、号泣で終わるのか…新しいお芝居になりそうですね。
 

――今、まさにイケテツさんが書いている最中ではありますが、もしこの物語のラストを自分で書き換えられるならどういうオチにしたいですか?

最後に大立ち回りが用意されているかもしれない。おじいさんになって大立ち回りとか…意味がわからない(笑)おじいさんになった浦島太郎が諸国をさまようって話になれば(舞台の)続編が作れるなって思います。おじいさんが若返るために旅に出るとか。桃太郎とかかぐや姫とかいろいろなおとぎ話と絡んで―お客さんはどんなラストを望んでいるんだろう。
 

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

――今年28歳になる木村さんですが、舞台の仕事において、自分自身のターニングポイントとなったのはどの作品でしたか?

いちばん最初の舞台仕事は、17歳のときの「山口百恵トリビュート・ミュージカル「プレイバック part2~屋上の天使」でした。10代のときは舞台が嫌いだったんです。
うちの事務所には藤原竜也さんという先輩がいて、俺はその弟分としてデビューしました。藤原さんの舞台は有無を言わさず連れて行かれましたが(笑)、演劇に興味があるわけではなかったんです。また、若かったので反発精神もあって「なんで舞台?」的な態度で。演劇の面白さがわからなかったんです。ミュージカルとストレートプレイっていう違いもわからず、全部一緒くたで「舞台」だと思ってたくらいだったし。
だから最初の舞台では、何もわからずに加わり「ミュージカルとは歌うものだ」ってそこで初めて知って。歌わされて踊らされて芝居もやって…自分にノウハウは何もなかった。ましてや、デビューしたときから「歌はやりたくない」ってずっと言ってたくらい、苦手意識がすごいあったんです。

そこから19歳になって、三島由紀夫さんの「弱法師」をやることになりました。別の作品の収録中に、三谷幸喜さんの作品みたいなものなら出てみたいな、ってふと言ったことがあったんです。以前ちらっと三谷さんの舞台を観ておもしろかったので。そうしたらその時のマネージャーは「わかった」って言ったきりだったんです。
その後「ちょっと新国立劇場に来てくれ」って言われ、通された部屋には演出家、プロデューサー、マネージャーがいて、そして俺がいて。「これ、とりあえず読んでみて」って本を渡されて。
「これは何やらおかしな流れになってきてるぞ…」と思いつつも読まされたのが「弱法師」という脚本で。以前に藤原さんの「弱法師」を観に行って「舞台って辛そう…俺にはできないな」ってイメージを持ったのでよく覚えていた作品でした。
そして長ゼリフのところを読み終えたら、「じゃ、よろしくお願いいたします」っていきなり言われて!「うわ、これマネージャーにハメられた!」って(笑)

 

――当時マネージャーさん、木村さんはこうでもしないと舞台に出ないと思っていたんじゃないですか?(笑)

でもいざ稽古が始まったらすごい楽しかったんです。先日亡くなられたんですが、演出の深津篤史さんという方がすごい上手に全員をコントロールされるんです。物腰も柔らかな方で。
ダメ出しもダメ出しではなく、抽象的なことをいうんです。時にお手紙もくださるんですが、その内容も抽象的で。ある手紙には「100人の子どもたちが手をつないで」って書いてあり、稽古が始まる直前にそれをぽんとくださったんです。すぐ読んで稽古に入ったんですが、稽古の間にも頭の隅にその言葉が残っていたんです。そうしたら稽古中に「あ、この場面のことだ!」ってわかる瞬間があって。不思議とそういう形でコントロールしてくださるんです。ミザンスがどうの、とかいう演出はしないんですが、不思議とみんな自由に動いているようでコントロールされている。「ああ、楽しいな、舞台って」って思えるようになりました。

稽古も独特でした。セリフを全部を抑揚なくして読む、あるキーワードを消して読むとか。例えば「炎」という言葉だけを読まずにセリフをいう。でも気持ちはそのまま残す。難しいんですけど、それをやっているうちにその言葉をすごく言いたい気持ちになる。感情のフラストレーションがどんどん溜まっていって、それを全部とっぱらったときにうわーっとものすごいエネルギーが放たれるんです。
 

――その効果がわかると納得できますね!最初に説明なしで「こうやって」と言われたら「え?」ってなりそうですが。

出演者のなかにはフラストレーションがたまりすぎて「ああ、キレそう」って言ってた人もいました(笑)でも最終的にはみんな「深津さん、すごいよね」ってなるんです。
 

――それがきっかけで木村さんが舞台好きになって本当によかったです。

でもそのあとが劇団☆新感線「蜻蛉峠」で。いのうえひでのりさんから千本ノックされて「ああ、やっぱり舞台ってしんどいなー」って(笑)でも大阪公演が楽しかったので、そこからですかね。深津さんといのうえさんの影響で舞台が好きになりました。
「蜻蛉峠」のときは、女だけど男の姿をしていて、でもイキっている感じを出してくれ、女なんだけど、と言われまして…この人(いのうえひでのり)、よくわからないことを言っていると思いました(笑)

 

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

――いのうえさんの演出を受けると舞台はすごくしんどいのに、終わるとまた出たいと思ってしまう、という役者さんの話をよく伺います。

不思議ですよね。でも稽古中は「いのうえさんに面白いことをさせたら終わり」と思っていたから必死でした。最初は口立てで「こういう言い回しで」って言われるんです。そのとおりにできると面白いんですが、いくらやってもできないときもあるんです。するといのうえさんが演出家の席から出てきてやっちゃう、答えを見せちゃうんです。もうミジメな気持ちになりますよ。いのうえさんがやっちゃうともう他の人が何をやってもおもしろくなくなっちゃうから。だから、いのうえさんだけには負けないぞって空気になるんです。
 

――舞台「嫌い」から「好き」になった木村さんですが、木村さんから見た舞台の魅力って何ですか?

「自分の弱さを突き付けられること」稽古場は失敗をするところだし、思い切ってやっちゃえばいい、と思っているのにそこで思い切れない自分がいたりする。すると「俺、クソみたいな芝居しているな」って思う。そういうのをいちいち突きつけられるんです。
そして毎日同じ芝居に出演しているけれど、同じ芝居は一つとしてないんです。終わった後の疲労感は映像では味わえないものですね。

だから最近はむしろ映像の仕事のほうが怖いです。稽古もほぼやらないしドライとリハですぐ本番、限られた時間の中でやっているから「もう一回やりたい」って言いだしにくい空気もあるし。さっき俺噛んだ、と思ったのに「OK」って言われて「本当にいいの?」って思うこともありますし。
 

――さて、夏に向けての稽古がこれから徐々に始まりますが、座長としてどのようにありたいと思っていますか?

あまり自分のスタンスは変えないようにしようと思っています。僕より年上の方もいらっしゃると聞いたので、全力で甘えていこうかと(笑)
 

――普段、プライベートでは仲間をひっぱるほう?ひっぱられるほう?

その場のノリに合わせて常にニュートラルなポジションにいますね。舞台もそういう現場のほうが好きですね。
 

――そろそろ30代。20代のうちにやっておきたいことってありますか?

もうアラサーなんですよねー。でも、30歳間近になって不思議と学生モノが続いたんです。「ライチ☆光クラブ」「花より男子」「帝一の國」…って。だから今ならまだ学生役ができるなって!30歳越えてからはさすがに厳しいっしょ?(笑)
 

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

木村了『TARO URASHIMA』 (撮影=こむらさき)

公演情報
明治座 『TARO URASHIMA』

■日時:2016年8月11日(木)~15日(月)
■会場:明治座
■脚本:池田鉄洋
■演出:板垣恭一
<出演者>
木村了、上原多香子、斉藤暁、崎本大海
滝口幸広、辻本祐樹、原田優一
土屋シオン、碕理人、森田涼花、竹内寿、中村太郎、月岡弘一、桝井賢斗、香山佳祐、塩川渉、
角島美緒、二瓶拓也、高木稟、大堀こういち
舘形比呂一、坂元健児
和泉元彌(特別出演)/とよた真帆

 

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