Base Ball Bear、野音で4人のギタリストと迎えた新体制初の東京公演 年内に新アルバム宣言も
Base Ball Bear 撮影=緒車寿一
“10th&15th Anniversary” Base Ball Bear Tour「日比谷ノンフィクションⅤ~LIVE BY THE C2~」 2016.4.30 日比谷野外大音楽堂
とても気丈夫なライヴだった。Base Ball Bearは音楽至上主義を貫くタフなロックバンドだということを、しっかり見せつけてくれた。ライブ前に多くのオーディエンスが覚えていたに違いない不安や感傷も受け止めつつ、しかしやはり彼らは音楽の求心力と説得力をもって、止まらず、折れないバンドの生き様を示した。
Base Ball Bear 撮影=緒車寿一
『“10th&15th Anniversary” Base Ball Bear Tour「日比谷ノンフィクションⅤ~LIVE BY THE C2~」』は、最新アルバム『C2』を体現するツアーのファイナルであり、Base Ball Bearにとって特別な会場である日比谷野外大音楽堂で開催するライブシリーズ「日比谷ノンフィクション」の5回目となる公演である。
既報のとおり、ツアーがスタートする前の3月にギターの湯浅将平が脱退。この日の野音公演までは、サポートギタリストにフルカワユタカを迎えてツアーを実施した。そして、野音公演ではフルカワに加え、石毛輝(lovefilm/the telephones)、田渕ひさ子(toddle/LAMA)、ハヤシ(POLYSICS)がゲストギタリストとして名を連ねた。結成以来、それがまるで不文律であるかのように、メンバー4人が人力で鳴らす音だけでバンドの音楽像を構築することに徹底してこだわってきたBase Ball Bearである。だからこそ、この状況とどう対峙し、乗り越えるかでバンドが今後どのように音楽と生きていけるのか、その真価が問われるとメンバーは思っていたはずだ。
Base Ball Bear 撮影=緒車寿一
小出祐介、堀之内大介、関根史織は、この3人でBase Ball Bearを続けていくことを決意した。スリーピースのBase Ball Bearを本格始動する前夜にあたるこの日、穴埋めではなく、いまこのタイミングしかできないチャレンジをするためにギタリストでありボーカリストでありソングライターでもある4人のゲストを野音に招いた。
Base Ball Bear 撮影=緒車寿一
ライヴの始まりを告げるお馴染みのSE、XTCの「Making Plans For Nigel」が会場に流れるなか、メンバーはまずフルカワとともにステージに登場。1曲目「それって、for 誰? part.1」を皮切りに「不思議な夜」、「曖してる」と、『C2』の収録曲をここまでツアーを回ってきた編成の磐石な呼吸によるアンサンブルで紡いでいった。
Base Ball Bear/フルカワユタカ 撮影=緒車寿一
ファーストブロックを終え、フルカワを送り出す前に小出が口を開く。
「東京のみなさんにはお話するのが遅くなっちゃいましたけど、2ヶ月前にギターの湯浅が脱退することになりまして。これからもBase Ball Bearは3人組のバンドとして活動することに決めたので、引き続きよろしくお願いします。今回のツアーはこの方なしでは最後までやり遂げることができなかったと思います。フルカワさんです」
それを受けて、フルカワが続ける。
「今日は俺も含め、ハヤシくん、石毛くん、田渕さんと、解散や活動休止や脱退とか毒をいっぱい経験したメンツが毒をいっぱいドロップして大人のBase Ball Bearに生まれ変わってもらうので。最後まで楽しんでください」
オーディエンスから大きな拍手が上がる。この時点で、決定的に何かが変わった気がした。Base Ball Bearの新現実に向けた何かが。
Base Ball Bear/田渕ひさ子 撮影=緒車寿一
続いて登場したギタリストは、田渕ひさ子。NUMBER GIRLに多大な影響を受けたBase Ball Bearにとって、田渕はリビングレジェンドのような存在だ。事実、小出は「NUMBER GIRLがいなかったら、Base Ball Bearはここまでいびつな進化を果たせなかった」と語った。田渕のギターの音色を思い浮かべながら作ったという「こぼさないでShadow」のフレーズが、彼女のプレイと有機的に調和する。「Short hair」で見せたギターを抱え込むようにストロークする田渕独特のフォームとすごみのあるノイズを帯びたギターが印象的に響き渡った。
堀之内が叩くビートをバックに登場した3番手のハヤシに小出は「せっかくいつものツナギとサングラスで来てくれたのに言うのはアレですけど、絶対に『Toisu!(トイス)』って言わないでくださいね!」と会場の笑いを誘う。「ぼくらのfrai awei」のニューウェーブ感の強いフレーズはハヤシの音楽的なアイデンティティとリンクし、逆に小出いわく「POLYSICSにはない曲調だと思うからあえてお願いした」という「どうしよう」におけるメロウネスが浮遊するギターをハヤシが奏でるのはなんとも新鮮だった。
Base Ball Bear/ハヤシ 撮影=緒車寿一
石毛輝は、ツアー前に開催されたチャットモンチー主催の『こなそんフェス2016』において最初にBase Ball Bearのサポートギターを務めた。Base Ball Bearと昨年末に活動休止したthe telephonesは同世代で、同じレコード会社に所属しているが、これまで深く交わることはなかった。このタイミングで音楽を共有することに双方が深い感慨を覚えているだろうし、それと同時に長きに渡って演奏してきたのではないかと思うほどBase Ball Bearの楽曲を躍動させる石毛のギタープレイはナチュラルだった。特に「十字架 You and I」で表出した濃厚なファンクグルーヴはあまりに刺激的だった。
Base Ball Bear/石毛輝 撮影=緒車寿一
本編終盤のブロックは再びフルカワが登場。「ホーリーロンリーマウンテン」から本編ラストの「HUMAN」まで、エモーショナルでありながら深淵なムードを帯びた音像が会場を包み込んだ。
「5月に入ったら新作の制作に入ります。アルバムも作ります。年内に出します。そのアルバムを出して、またツアーもやります」
アンコールのMCでそう小出は宣言した。そして、小出、堀之内、関根の3人で「それって、for 誰? part.2」と「The End」を鳴らす。3人の音と声がクリアに迫ってくるそのアンサンブルは、紛れもなくいままさに新章の扉を開けたBase Ball Bearの覚悟の塊だった。 そう、〈終わりはそう、終わりじゃない〉し、〈ラストシーンはスタートラインでしかない〉のである。Base Ball Bearの物語は、これからも、まだまだ続く。
撮影=緒車寿一 レポート・文=三宅正一(Q2)
Base Ball Bear 撮影=緒車寿一
2016.4.30 日比谷野外大音楽堂
M-2 不思議な夜
M-3 曖してる
M-4 こぼさないでShadow
M-5 short hair
M-6 PERFECT BLUE
M-7 ぼくらのfrai awei
M-8 UNDER THE STAR LIGHT
M-9 どうしよう
M-10 17才
M-11 changes
M-12 十字架 You and I
M-13 ホーリーロンリーマウンテン
M-14 カシカ
M-15 真夏の条件
M-16 LOVE MATHEMATICS
M-17 HUMAN
[ENCORE]
EN-1 「それって、for 誰?」part.2
EN-2 The End