心理スリラーミュージカル『ブラック メリーポピンズ』再演が間もなく開幕! 上山竜治インタビュー

『ブラック メリーポピンズ』上山竜治

『ブラック メリーポピンズ』上山竜治

 
2012年に韓国で誕生し、大評判を呼んだ心理スリラーミュージカル『ブラック メリーポピンズ』。

1920年代のドイツを舞台に、著名な心理学者の豪邸で起きた火災から助け出された4人の子供たちと家庭教師をめぐって、封印された過去と衝撃の真実が、繊細なメロディーによって描かれていく、わずか5人の出演者で綴られる濃密な舞台だ。
この作品が日本で上演され好評を博した2014年の本邦初演に続いて、今年も5月14日から再演の幕が上がる。初演に引き続いて出演する小西遼生、良知真次、上山竜治の兄弟たち、そして家庭教師役の一路真輝、そこへ今回新たにヒロインとして加わる中川翔子。そんなカンパニーの様子や白熱している稽古のこと、そして自身の最近のことなどを、次男ヘルマンを演じる上山竜治に語ってもらった。
 

ヘルマンの抱く疑問が観客の理解につながる
 
──待望の再演ですが、改めてこの作品『ブラック メリーポピンズ』の魅力をどう感じていますか?
 
ミュージカルでミステリーというのはとても珍しいですよね。そこに着眼したソン・ユンミさんがまず素晴らしいと思います。しかも脚本、作詞、作曲をすべて1人で手掛けられていて、韓国の初演では演出もされている。1人の人によって作られたミュージカルだからこそ独特の世界観が上手く音楽に乗せられていて、そこも魅力だと思います。
 
──上山さんが演じる役柄について教えてください。
 
ヘルマンという4人の血のつながらない兄妹の次男の役です。今回再演にあたって、また1からキャラクターを掘り下げていったのですが、改めて愛に溢れた、家族を守るんだという強い愛情を持った役だなと感じています。小西(遼生)君の演じる長兄のハンスは、僕たち兄妹が忘れてしまっている、トラウマともなっているある事件のことを、冷静に見つめて分析しているのですが、そんなハンスとは対照的な、熱い感情で生きているような役柄がヘルマンだと思います。
 
──そのヘルマンを今回はどう表現しようと?
 
自分としては、基本的にあまり大きなお芝居をせずに、必要最小限の芝居で表現していきたいという思いがあるのですが、そうした自分の芝居とヘルマンのリアルな感情をどう擦り合わせるかが課題で、今はまず感情が反応するものを制御せずに素直に出していこうとしています。例えば、今回初めてご一緒させて頂く中川翔子さんのアンナの台詞を聞いて、そのときに生まれた感情をすべて出していく。兄のハンスに対しても、家族を守りたいヘルマンの反発や怒り、生まれてくるそれらをそのままぶつけています。まずは喜怒哀楽をすべて表現していこうと思っています。
 
──そうすると稽古は精神的にもハードですね。
 
そうですね。それに作品全体がミステリーなので、観てくださる方は、わりと普通の人に近い感覚のヘルマンを通して、ストーリーを理解してくださるのではないかと思うんです。だからヘルマンには「おかしいな?」と思ったポイントを、きちんとお客様に伝えていく役割があると思いますし、すごく神経を研ぎ澄まさなければならない。とても疲れますが、やりがいを感じています。
 

新しいアンナ役とともに周りも変化していく
 
──この作品の韓国ミュージカルならではの特徴についてはいかがですか?
 
なんといっても音楽がドラマチックですね。ヘルマンとアンナのデュエットのシーンも、『冬のソナタ』みたいな(笑)、甘~いメロディが何のてらいなく使われていて、そういうストレートな表現だからこそ胸にくるものがあると思います。特に僕の役は感情を顕わにする役ですから、曲もわりとダイレクトですね。良知(真次)君が演じる一番下の弟のヨナスは、不安神経症を患っている役の為、また違う感情の出し方をするのですが、ヘルマンは本当に思ったことをそのままストレートに表現するので、パワフルに歌わないといけない。アニメの主題歌にも負けないような劇的に始まるナンバーもありますから、それに負けないパッションや感情を必要とされています。
 
──鈴木裕美さんの演出も含めて、初演とはかなり違いがあるのですか?
 
全然違います。今回はまた1から新しい解釈でということで、初演でなぜ気づけなかったんだろうという発見もたくさんあります。とても新鮮に感じますし、まるで初演の作品に取り組んでいるような気持ちです。それに中川さんが新たに参加されたことはすごく大きくて、当然のことですがアンナ役として全く違うアプローチをされるので、周りも変化しなくてはならない。全員が新しく作り直しています。
 
──その中川さんを含めて、カンパニーの雰囲気はいかがですか?
 
本当に兄妹みたいなんですよ。久々に会う方々とは最初こそちょっと照れくさいのですが、すぐに一緒にふざけたり話したりできるので、親戚や兄妹の感覚にとても近いです。小西君には「敬語で話していたかな?どうだったかな?」と一瞬思ったりしたのですが、すぐタメ口になりました(笑)。中川さんは人見知りされるそうで、最初は全然目も合わせてくれなくて(笑)、しかも僕も結構人見知りだったりするので、話していても目が合わない(笑)という状態だったりしましたが、最近になってやっと目が合うようになりました(笑)。周りに合わせて僕のことをちょっといじってくれるようにもなったり、和んで仲良くなっています。
 
──中川さんの魅力はどんなふうに感じていますか?
 
魅力の塊のような人です。皆で食事会に行って、ご飯を食べた時の感想など、ちょっと神がかっていて。普通は「美味しい!」と言うところを「刺さる~刺さる~」と(笑)。でもそのとき食べたものは本当に「刺さる」という感じで、沁みる美味しさでした。そんな風に人と違う感性や表現を持っている方なので、アンナの魅力にも一致するなと感じています。
 

ミュージカルや時代劇など沢山の夢や目標に向かって

──上山さんは初演の『ブラック メリーポピンズ』を含めて、大きな作品への出演が続きましたが、ご自身で振り返っていかがですか?
 
やはり『レ・ミゼラブル』(2015年)への出演は僕にとって大きかったです。ちょうどその前に、自分として目標の1つだった「月9」ドラマ(フジテレビの月曜午後9時からの連続ドラマ)の『信長協奏曲』に出演させて頂くことができ、小栗旬さんや山田孝之さんなど、年の近い尊敬し目標とする先輩方とご一緒させて頂けた。それがすごく大きな刺激になりました。そのあとすぐに『レ・ミゼラブル』に出演することが叶って、全くの別の世界ですけれど、その2つができたことは大きな出来事でした。とくに『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役は、それまでストレートプレイを中心に演じてきた僕にとって、ミュージカルにはまだ苦手意識もあった中での挑戦でした。
 
──そうだったんですか?
 
それが、『レ・ミゼラブル』の演出助手であるエイドリアン・サープルという方と出会い、彼に「歌うと思わずにもっと気持ちを出して」と言われて、「あ、芝居をする気持ちのままでいいんだ」と思えたことでラクになったんです。もちろん今でも自分の中の課題をすべてクリアできたわけではないですし、並行して歌唱力をつける努力も続けています。やはりミュージカルは音楽ですし、メロディーが持つ魔法があるのを感じていますから、ちゃんと歌えるようになりたいので。
 
──もう1つ、今年の初めに『花より男子 The Musical』もありましたね。
 
つくし役の加藤梨里香さんをはじめ出演者に10代、20代の方が多かったので「俺、先輩なんだ!」と思った作品でした(笑)。原作のイメージをきちんと守った上で、自分にしかできないものをやりたいという思いもあって、その意味では演出の鈴木裕美さんがある程度自由にやらせてくださいました。でも、だからこそ美作あきらの役のイメージは壊さないようにしたいなと。優しさや仲間を思う気持ちとか、ちょっとおせっかいなところなど(笑)、役のポイントは押さえていきたいと。ただ、流れの中で割りとふざけているシーンが多かったので、原作の神尾葉子先生にご指摘を受けるのではないかと、ちょっと不安だったのですが(笑)、「イメージにピッタリですごくリアルだった」と言って頂けて。神尾先生は、どの人物も普通の人をお書きになりたかったそうで、美作もお坊ちゃんだけれど中身は普通で、恋愛に不器用だからこそ、包容力のある年上の人しか好きになれないという悩みを持った普通の男の子だと。それを伺って、あまりカッコつけたりせず、人間らしく演じていたから許していただけたのかなと(笑)。脚本の青木豪さんも、演出の鈴木裕美さんも、昔から僕のことをよく知ってくださっている方々なので、僕が美作をやるのであれば、というアプローチをしてくださったこともありがたかったです。
 

──先ほど、「月9」ドラマが1つの目標だったとおっしゃいましたが、今後やってみたいことなどヴィジョンや目標はありますか?
 
僕は時代劇がとても好きで、幼い頃に『暴れん坊将軍』を正座して観ていたくらいだったんです。先祖が武士だったらしく、その血を引いているせいもあるのかなと。なので、その血が騒ぐのか、『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスもどこか武士のような役だなと解釈して演じていましたし、時代劇をちゃんとやってみたいとずっと思っていて、いつかは大河ドラマにも出られたらと、それも目標です。
 
──これからの活躍も本当に楽しみにしています。では改めて『ブラック メリーポピンズ』に対する意気込みと、舞台を楽しみにされている方達にメッセージをお願いします。
 
内容はとても濃いのですが、ほぼ2時間で終わる濃縮されたミュージカルです。曲もとても綺麗で、さらに中川翔子さんの声が本当に綺麗なんです。その綺麗な声に添うことができるように、相手役でもある僕も頑張ります。劇場でしか味わえない生の臨場感を感じて頂けると思いますし、ミステリーですから、最後の結末がわかった上でまた観て頂くと全く違う見方ができます。初演をご覧になった方にも是非また観に来て頂きたい。新しく楽しめるものになっていますので。


かみやまりゅうじ○86年生まれ、東京都出身。01年に男性ユニットRUN&GUNを結成。(14年8月に退団)。03年に主演映画『ROUTE58』をきっかけに俳優デビュー。04年宮本亜門演出の『イントゥ・ザ・ウッズ』のジャック役に抜擢され、以降俳優業を主として、舞台、映像と幅広く活躍している。近年の主な舞台作品に『宝塚BOYS』『Paco パコと魔法の絵本~fromガマ王子vsザリガニ魔人』『ブラック メリーポピンズ』『レ・ミゼラブル』『花より男子 The Musical』などがある。

【取材・文/橘涼香 撮影/安川啓太】

〈公演情報〉


ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』
脚本・作詞・音楽◇ソ・ユンミ
演出◇鈴木裕美
上演台本◇田村孝裕
訳詞◇高橋亜子
出演◇中川翔子、小西遼生、良知真次、上山竜治、一路真輝
●5/14~5/29◎世田谷パブリックシアター
〈料金〉S席9,000円 A席7,000円
●6/3~5◎兵庫県立芸術文化センター  阪急 中ホール
●6/9◎福岡市民会館
●6/17◎愛知県芸術劇場  大ホール
〈お問い合わせ〉キューブ 03-5485-2252(10:00~18:00)
〈公式ホームページ〉http://m-bmp2.com/

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