意外と知らなかった!? 「鎖国」の実態に迫る意欲展
岡崎市美術博物館『大鎖国展ー江戸に咲いた異国の花ー』チラシ
アニバーサリーイヤーだからこそ実現した、“鎖国再考”の優品が岡崎に集結!
キリスト教禁制や貿易港の制限、海外渡航禁止令など、江戸幕府による外交政策としてかつての日本で行われた「鎖国」。2代将軍・徳川秀忠、3代将軍・徳川家光の時代から徐々に体制が整備され、ペリー来航の翌年、1854年の日米和親条約締結まで200年以上もの間続いたが、「鎖国」という言葉が広く一般に使われるようになったのは明治時代以降のことで、近年の研究では当時の状況を「鎖国ではなかった」とする見方も。
そもそもこの間、日本は完全に「鎖(とざ)された国」だったわけではなく、オランダや朝鮮、琉球などを介して世界とつながっていた。現在、愛知県岡崎市で開催されている『大鎖国展ー江戸に咲いた異国の花ー』は、そんな状況の中で大名家に伝わった舶来品やこの頃作られた芸術作品、古文書などを通して、当時の日本と世界のつながりを探るものである。
緑豊かな岡崎中央総合公園内にあり、ガラス張りの美しい建物が特徴的な「岡崎市美術博物館」
会場の「岡崎市美術博物館」は、改修工事のため1年間休館していたが、本展開幕とともに再オープン。岡崎市制100周年と開館20周年という記念すべき年だからこそ、全国40ヶ所以上から国宝・重文20点あまりをはじめとする選りすぐりの作品約160件が集結し、「今年でなければ開催できなかった、非常に珍しい展示内容になっています」と、担当学芸員の湯谷翔悟さん。
当時の異文化の広がりを示し、江戸時代のイメージそのものを見直そうという試みのもと、【鎖国再考】を大きなテーマに掲げた展示は、プロローグの<異国の眼ー鎖国という言説>から、<「鎖国」の成立>、<異国に臨む四つの窓>、<江戸に咲いた異国の花>、<江戸の好奇心>、エピローグの<異国の眼ー泰平の世>まで6章で構成されている。
ヨーロッパ製の甲冑をアレンジした徳川家康着用の鎧に、教科書でもおなじみの平賀源内作エレキテルやキリスト教排除に使用された踏絵、異文化の影響が見られる日本画や庶民が使用していた日用品に至るまで、実にバラエティ豊かな品々が並ぶのも魅力のひとつだ。中には、当時の外国に対する誤解から生まれた迷品(!?)や、ユニークな視点で製作されたものなど、思わず見入ってしまう興味深い作品もしばしば。
重要文化財《南蛮胴具足》(徳川家康所用)紀州東照宮 ヨーロッパ製の兜と胴を日本風にアレンジした和洋折衷の鎧。強度を試した「試し胴」とされ、火縄銃による10カ所の弾痕が残されている
谷文晁《ファン・ロイエン筆花鳥図模写》神戸市立博物館 江戸後期の名絵師・谷文晁が西洋画を模して描いた作品。当時の日本人にとっては初めて見る写実表現だったとか。原画の油彩画は、徳川吉宗がオランダ商館に注文し輸入された
重要文化材 平賀源内自製《エレキテル》郵政博物館 6年の歳月をかけ、1776年〜79年の間に平賀源内が作ったとされる摩擦起電機
小野田直武《鷲図》歸空庵 大きく描かれたサギは、足や羽根まで細かく描かれ今にも飛び出しそう。遠景を極端に小さく描く秋田蘭画の代表作
上田公長《双駱駝図》個人蔵 江戸時代に日本にやってきたラクダを描いた作品。初めてみる異国の珍獣にみんな興味津々だったようで、特徴をよく捉えている。長いまつ毛がチャーミング
歴史や美術の枠にとらわれない、美術博物館ならではの幅広い展示によって見つめ直す「鎖国」や「江戸時代の日本と世界」。それらの実物資料を前にすると、「鎖国」に対して抱いていた従来のイメージがくつがえるはずだ。限られた異国の文物を通して世界を知ろうとした、当時の人々の好奇心を会場で体感してみよう。
別棟には、5月1日にオープンしたばかりの見晴らしの良いレストラン『YOUR TABLE』も。(9:30〜22:00 月曜定休)
美術博物館裏手には回遊式庭園「恩賜苑」が。石灯籠や手水鉢が散策路沿いに設置され、ちょっとしたハイキングが楽しめる
『大鎖国展ー江戸に咲いた異国の花ー』
■期間:2016年4月9日(土)~5月22日(日)
■会場:岡崎市美術博物館(愛知県岡崎市高隆寺町峠1)
■開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
■休館日:月曜
■料金:一般(高校生以上)1,000円、小中学生500円
■アクセス:名鉄「東岡崎」駅北口バスのりば2番より中央総合公園行で「美術博物館」下車、徒歩3分
■問い合わせ:岡崎市美術博物館 0564-28-5000
■公式サイト:http://www.city.okazaki.aichi.jp/museum/index.html