ザ・キングズ・シンガーズ(ヴォーカル・グループ)「僕らと一緒に旅をしているような気分を味わって欲しい」
インタビューを受けたジュリアン・グレゴリー(左より4人目)、ジョナサン・ハワード(左より2人目) ©Chris O’Donovan
1968年の結成以来、メンバーを入れ替えつつも、常に合唱王国イギリスを代表する名門・男声グループとしてシーンの頂点に君臨し、世界中の聴衆を魅了し続けている6人組(カウンターテナー2人、テノール1人、バリトン2人、バス1人)。今年は6年ぶりの来日公演が決定し、5〜6月にかけて東京・紀尾井ホールなど全国を巡回予定。
2014年に加入したばかりのテノールで、母親が日本人というジュリアン・グレゴリーは「中世のマドリガルからビートルズまで、レパートリーの幅が広いのが僕たちの強み」だとしながら、「それぞれがソロ的な歌い方ではなく、感情を抑えたノン・ビブラートで6人のハーモニーを第一に考えた歌唱を目指しているのも特色です」と語る。
そして、10年からのメンバーで大学時代にはラテン語やギリシャ哲学を専攻し、広告会社に勤務していた経歴を持つバスのジョナサン・ハワードは「欧州だけではなく、世界各国をツアーで回れるのが旅行好きな僕には特に嬉しい。行く先々で現地の作曲家の作品や民謡をとり上げているので、レパートリーはどんどん広がっています」と続ける。
今回のツアー・テーマはそんな彼らにぴったりの「世界の絵葉書」と名付けられたプログラム。
「様々な国の音楽を披露するので、僕らと一緒に旅をしているような気分を味わって欲しい。個人的に推しているのは南アフリカのコンポーザー、ピーター・ルイス・ヴァン・ダイクの『地平線』という曲。政治的なメッセージが込められた曲だけど、とても美しくて心にふれる。僕らの編成によく合っています」(ジョナサン)
「僕のお薦めはテノールのソロがあるカンツォーネの『ヴォラーレ』(笑)。グループに加入する前にヴェローナで1ヵ月程イタリア語の勉強をした時に観た、あの素晴らしい風景を皆さんに歌でお伝えできたらと思います」(ジュリアン)
もちろん日本語歌唱の曲もいくつか予定されているはずだ。
「ステージでその国の曲を歌い出したとたん、会場全体が幸福感に包まれるのを感じる、あの瞬間にワクワクします。ジョナサンは特に外国語の発音が天才的にうまいので、日本の皆さんもぜひ期待して下さい!」(ジュリアン)
「日本語の響きが大好きです。僕にとっては中国語やタイ語よりは比較的歌いやすいかもしれません。漢字やひらがなが混在する文字にはお手上げですが(笑)。音楽的にも他の国にはない独自の雰囲気を持っている点も興味深いです。僕たちが音楽に感じる喜びや愛を皆さんと共有したいですね」(ジョナサン)
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
紀尾井ホール
問合せ:テンポプリモ03-5810-7772
http://www.tempoprimo.co.jp
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