【blur映画公開記念】アルバム「ザ・マジック・ウィップ」収録曲全曲解説+インタビュー特集 第4弾

インタビュー
2016.5.19

ブラーの最新ドキュメンタリー映画『ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ』の日本公開を記念して、メンバー4人によるアルバム収録曲全曲解説とオフィシャルインタビューをご紹介するブラー特集の第四弾をお届け。

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グレアムとデーモンが親友に戻るためには、リハビリが必要だった

ブラーというバンドの歴史に於いて、グレアムが脱退したことは忘れがたき大事件といえる。
レコード会社との契約どおり2001年には4人でアルバムのレコーディングを開始していたが、音楽性の相違により作業は難航を極めた。当時精神的な問題も抱えていたグレアムがバンドとの距離を置くようになり、2002年には正式に脱退を表明することとなった。
その後2009年にデーモンとグレアムが和解し、バンドがリユニオンする。ファンにとっては夢にまで見たような瞬間だった。
2003年には前作(といっても実に13年も前の話になるが)のアルバムをグレアム抜きで発表しているが、その間にメンバー間で起こった関係の変化について尋ねてみた。

デーモン:素晴らしかった、すごく新鮮な気分だったよ。これはグレアムと僕が長年の親しい友人に戻るリハビリにおける画期的な出来事だと感じた。これは真のコラボレーターとして、そしてひとりの友人として、彼が戻って来るためになくてはならない最後のステップなんだって感じがしたんだ。

アレックス:まったく変わらなかったよ。ボックスセットをやったとき(注:2012年にリリースされた、CDとDVDが合計21枚セットになった『BLUR 21 BOX』)、これまでやってきたあらゆるものをまとめたデカいコンピレーション盤を作って、すべてを網羅したかったから全員が屋根裏やらクローゼットの奥まで引っ掻き回して、それでグレアムが持って帰ってた最初のリハーサルのカセットが出てきて、俺は1988年以来一度も聴いてないものだった。
“シーズ・ソー・ハイ”を作ったのが最初のリハーサルだったんだよ。その曲でオリンピックのライヴを始めたんだ。つまり、俺達4人が初めて一緒にスタジオ入りしたときに最初のシングルができたってこと―すぐにできた曲で、そのデモ・テープを聴くと9分間ジャムってる感じなんだけど、聴いたらこれはまさにブラーでしかありえないっていう音なんだ。
すぐにブラーだってわかる音なんだよ。デーモンらしいヴォーカルとメロディ、グレアムのギター、ベースは完全にその他すべてと逆のことをやっていて、それこそまさに直球のブラーで―あんなケミストリーが生まれたのは信じられないくらいの幸運だった。そして本当に、それ以来何ひとつ変わってないんだ。
今でもデーモンが歌って、グレアムが狂ったようにギターを弾いて、俺が逆のことをやってるっていう。それこそがまさにブラーの最高の状態なんだ。そんなケミストリーがあるなんて、俺達は本当に、本当に運がいいんだよ。
それなのに4人でスタジオ入りしてアルバムを作るのに14年もかかった理由っていうのは、複雑なんだ。


このバンドの歴史は、彼等の友情の歴史でもある。
もちろん慣れ合いでやっているバンドがいいとも限らないし、私生活では連絡先も知らないのに、長年うまくやっているバンドだってたくさん存在する。そういう意味での「親友」とはまた違った意味あいなのだろうが、彼等がクリエイティブなものを作るためにはある種の友情みたいなものが不可欠であったことは、このインタビューを読んで映画を観たら手に取るようにわかるだろう。
彼等には、よくも悪くも長年積み重ねてきた輝かしい歴史がある。それが彼等にとって、新しい作品を生み出す上でのプレッシャーになったことはあったのだろうか?


デーモン:俺にとって一番重要なのは、聴いてみてすごくよかったってことなんだ。
自分がブラーをやってるんだと思いながら曲を書いたのは随分久しぶりだった。でも、それに影響されるべきじゃないし、今回だってただのアルバムで、今の俺達を映し出したもので、俺の頭の中にあるものだというのは変わらないんだ。
無理をしてこのアルバムを作ったっていう感じはしないから、それが一番重要なことなんだ。

グレアム:うん、だからこそあんまりやりたくなかったし、公式な発表はしたくなかったんだ。
僕達4人の間でさえも、お互い秘密にしていたというか、スタジオ入りはするけど、これはアルバムじゃなくて、ただ一緒にプレイしてみるだけなんだって感じで。誰にも話してなかったんだよ。
仕事に出掛けるとき家族にはこう言っていたんだ。『じゃあ、仕事に行ってくるよ……スティーヴン・ストリートのところに行って帰ってくるから』って。『今日はどんな日だった、パパ?』って訊かれたら、『いい日だったよ』って答えて、『どこにいたの?』って訊かれたら、ただ『仕事だよ』って答えるだけとか、そんな感じだった。

▲Blur - The Magic Whip Live (Secret London Show)


【アルバム全曲解説】7.マイ・テラコッタ・ハート

▲My Terracotta Heart (Official Audio)

グレアム:“マイ・テラコッタ・ハート”は、もちろんデーモンが完成させるまで僕は歌詞を知らなくて、メンバー全員で集まって、数人招待して一緒に聴いたんだけど、そのとき僕は、『ああ、こりゃどうも』って感じだった。あれはちょっと、僕のことを歌ってるのかもしれないと思って、それで、うん、実際デーモンが言ったんだ、この曲は僕達の関係が長年経験してきた浮き沈みについて歌ったものだって。でも僕にしてみれば、デーモンが気味悪いくらいに僕の目をとおして見たような歌詞を書いてきたことはこれまでも何度かあったと思うし、彼が僕の経験を共有してるっていう印象はずっとあったし、もしくは僕達はお互いの経験を分かち合ってきたというか、彼には見えていたというか、僕の経験を二次体験して使って、それを曲に込めることができたんだっていう。僕にはまったくわからないよ。たぶんデーモンは形を変えられる人で、ただみんなを観察してるだけなのかもしれないけど、一体どうすればそんなことができるのかはまったくもって謎だよ。

【アルバム全曲解説】8.ゼア・アー・トゥ・メニイ・オブ・アス

▲There Are Too Many of Us (Official Video)

デーモン:『子供達にこんな質問を投げかけて/道に迷わせてしまう/そして僕らがしたのと同じ過ちの/小さな家に住まわせる』。
これってすごく、すごく怖い曲で、ライヴで演奏したときに曲の終わりでステージが真っ暗になるところが想像できる。思うにライヴだと、すごく変わったものになるかもしれないね。
このアルバムにはたくさんのイメージがあって、そのいくつかをステージ用にドラマ化するのはすごく楽しくなると思うし、それってすごくブラーらしいことだよね。もう一度それを、今度は最新のやり方でやるんだっていうのはいい気分だよ。
だからと言ってノスタルジックな感じはまったくしなくて、これが今の世界なんだって感じで、それが何十年もさかのぼるあの頃にも俺達にパワーを与えたものなんだと思う。ある意味、似たようなものだっていう感じがするというか。俺は何かを追いかけようとしてるんじゃなくて…あの頃の経験を再現しようとしてるところはまったくなくて、単に、またおもしろいと感じられて、少なくともあの喜びをもう一度表現する価値があるって感じがするんだ。

グレアム:ああ、大好きな曲だよ。一風変わったラフなシンセ・ストリングスから始まった曲で、足踏みするようなリズムがあって。
“ゼア・アー・トゥ・メニイ・オブ・アス”っていうのは、そういうフレーズが香港で出てきたのを覚えてる。
香港で毎日地下鉄に乗りながら、すごく不安になって、さらなる不安がすでに重なり合っていた不安の上にまた重なっていった。とにかく、地下鉄に乗ると不安な気持ちになるんだ。ああいう、すし詰め状態の車内にいると。
でも“ゼア・アー・トゥ・メニイ・オブ・アス”はあの頃何度も繰り返し聴いていて、どうしようもなく不安な気持ちにさせられる曲で、そこで僕がやったのは、コード進行で変化を起こして、それから…シンセが突然『宇宙戦争』の殺人光線みたいな感じで入ってくる。それからコード進行が変わって、それでいてメロディ・ラインが保たれていて、そういう類のことをたくさんやってみたのがおもしろかった。別にやらなくてもよかったんだけど、これはなんとかしなくちゃいけない、変化をつけないといけないものだから。
でもメロディ・ラインはキープしたままでコードを変えなくちゃいけないわけで、それでいてメロディ・ラインがうまくそこに収まるようでないといけないんだよね。そんなわけで、奇妙な曲になって、すごくおもしろいやり方だった。

作品情報
ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ


出演:デーモン・アルバーン/グレアム・コクソン/アレックス・ジェームス/デイヴ・ロウントゥリー
監督:サム・レンチ 撮影:ブレット・ターンブル、バド・ガリモア 編集:ハミッシュ・リヨン/ベン・ウェイン
ライト-ピアース/レグ・レンチ 製作:ニーヴ・バーン/レジーヌ・モイレット/ビル・ロード
2015年/イギリス/カラー/93分/原題:BLUR: NEW WORLD TOWERS
配給:松竹メディア事業部 宣伝:ビーズインターナショナル
協力:S-O-C-K-S INC./フレッドペリー/British Music in Japan/ワーナーミュージック・ジャパン
(c)Blink TV 2015 
blur-movie.jp

 

作品情報
Blur / ブラー
The Magic Whip / ザ・マジック・ウィップ


発売日:2015年04月29日
価格:¥2,457(本体)+税 / 規格番号:WPCR-16444
収録曲:
1. Lonesome Street / ロンサム・ストリート
2. New World Towers / ニュー・ワールド・タワーズ
3. Go Out / ゴー・アウト
4. Ice Cream Man / アイスクリーム・マン
5. Thought I Was A Spaceman / ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
6. I Broadcast / アイ・ブロードキャスト
7. My Terracotta Heart / マイ・テラコッタ・ハート
8. There are Too Many of Us / ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
9. Ghost Ship / ゴースト・シップ
10. Phyongyang / ピョンヤン
11. Ong Ong / オン・オン
12. Mirror Ball / ミラー・ボール
13. Y'All Doomed / ヤオール・ドゥームド (*日本盤ボーナス・トラック)
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