宮藤官九郎、瑛太、怒髪天・増子が目指すはブルース・ブラザーズ? ステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』

インタビュー
舞台
2016.8.12
増子直純 瑛太 宮藤官九郎

増子直純 瑛太 宮藤官九郎

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大人計画の宮藤官九郎が手掛ける、大パルコ人(3)ステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』が、11月13日(日)からサンシャイン劇場にて、その後大阪、仙台にて上演される。歌あり踊りありの大パルコ人企画の第3弾となる今回、瑛太とロックバンド・怒髪天の増子直純がヤクザの兄弟役で出演するという。ロックオペラに出演するのが初めてという瑛太と舞台に出演するのが初めてという増子。宮藤とともにいったいどんな舞台を作り上げていくのか、3人に話を伺ってきた。
 

――今回の舞台の企画が生まれたきっかけは?

宮藤:音楽モノをやるとしたら、一度は『ブルース・ブラザーズ』をやりたいって、誰もが思う人はずです。僕も映像作品で何回か挑戦したんですができなくて。でもこういう話にすればできるんじゃないかな、と思って。瑛太くんと増子さんは、前回の大パルコ人2 バカロックオペラバカ『高校中パニック! 小激突!!』を観にきていただいたので、たぶん印象は悪くないはずだと(笑)。
 

――宮藤さんとの出会いはどこから? 

瑛太:映画『なくもんか』から。もちろん、その前から知ってはいたんですけど。

増子:俺はバンドとして知り合ったよね。あと、家が近くて飲みに行ったりとかね。

宮藤:行きましたね。

増子:まさかこんな形で呼ばれるとは思わなかったけど。ちょい役だと思っていたからびっくりしちゃった。(キャスト紹介で)瑛太くんの次に俺の名前があるから「ちょっと、待ってよ!」って。だって舞台やったことないんだから。
 

宮藤官九郎

宮藤官九郎

――二人に演じていただくのは、歌のうまい、サンバイザーを付けた兄弟ということ?

宮藤:そういう話にしようかな、と。

増子:まだ、何も聞いていないからね。

宮藤:今年に入ってTVドラマ『ゆとりですがなにか』をやって、次の劇団☆新感線の舞台の脚本を書いていたんですけど……なんか俺、ヤクザに憧れているのかっていうくらいヤクザものを書いていて。『ヤクザと拳法』という映画を観たんです。ヤクザがむしゃくしゃしている日常が描かれているんですけど、それがすごく新鮮だったんですよ。現在の理不尽なことに対して戦う、古くさい考えを持った二人……そんな話になるといいなと思っています。
 

――そんな宮藤さんにオファーいただいたときの印象は?
 
瑛太:「芝居、やりたいです」って言いましたけど、実際お受けして「しまった、大丈夫かな」って思っています。楽器を弾くのかな?とか、歌うのかな?とか。

宮藤:歌はある!

増子:踊りも!? ジタバタするくらい!?
 

瑛太

瑛太

――瑛太さん、歌は自信ありますか?

瑛太:舞台で歌ったことはないです。この間、原田芳雄さんを偲ぶライブに出させてもらったんですけど、手が震えてずっと変なポーズになっていました。絶対おかしい奴だと思われていると思う。今回の舞台も、すごく不安ですが、本番までいっぱい練習できますもんね。

宮藤:そうですね。早めに何を練習するか決めましょう。

増子:ジャージを用意しないとね!
 

――練習用のジャージですか?

増子:練習用の! 舞台裏ドキュメントとかで、みんなでジャージ着て稽古場の箱馬に座っているっていうのを一回やってみたい。名前を入れたのをちゃんと用意してね。
 

――お二人は前回の作品をご覧になったそうですが、どのような感想を持たれたんでしょうか。宮藤さんの作品の印象、魅力を教えてください。

瑛太:まずは「おもしろい」ということですね。あと、前回の公演に弟(永山絢斗)が出ていたので……絢斗ばかりに目がいってしまい、そして絢斗は思い切り弾けていて、素晴らしく、かなり気持ち悪い動きも精一杯演じきっていて(笑)。でもよくこれを毎日やってるなあって感動しました。今回僕にもあんな動きがあるのかなって。
 

――音楽は大事な要素になる舞台なんでしょうか?
 
宮藤:なるべくそうしたいなって。それで上原子友康(怒髪天)さんにアレンジも含めて作ってもらって。怒髪天の歌って、増子さんがやっているからこそ成立している気がするんですけど、みんな歌いたいだろうな、気持ちいいだろうなって思っていたので、今回は完全にそういう曲調にしていきたいなと思っています。

増子:バンド的に荷が重いよねえ。フロント二人で舞台の曲作ってしかも一人は舞台に出るわけだからね。もうみんな、買えよって思うわ(笑)。
 

増子直純

増子直純

――怒髪天の音楽の中で演じるということなら、初舞台とはいえ、少しは安心感が出るのでは?

増子:でもね。自分が怒髪天としてバンド(音楽)をやるのと、芝居の中の音楽ってまったく違うんだよ。バンド(音楽)って俺がやることは全部「正解」なんだよ。曲も全部作っているしね。全部俺がOKって言えばOK。そのかわり全責任も俺にある。でも芝居って俺がOKだと思ってもそうではない。まあ、その辺が逆におもしろいかなとも思うんだけどね。今回は誰かに叱られたいかな。「それ、ちょっと違うんだよね~」って。

宮藤:増子さんがOKならOKです(笑)。
 

――この二人でどんな兄弟像を描こうとしているんですか? 

宮藤:めちゃくちゃな兄弟だと思うんです。『ブルース・ブラザーズ』もそうなんですが、「二人の中では正解!」と信じているんだけど、そのせいでひどい目に遭う……みたいな感じにしようと思っています。どんどん周りが巻き込まれていくような。二人だけが正解だと思っている、“ボケとボケ”みたいなバカ兄弟がいいなと思っていますね。
 

増子直純 瑛太 宮藤官九郎

増子直純 瑛太 宮藤官九郎

――池袋が舞台になるといえば、『池袋ウエストゲートパーク』を思い出すんですが。

宮藤:今ならその要素もまだ入れられますね! やって、と言ってくれれば“キング”とかやります……皆川猿時くんとかが(笑)。前回、前々回が渋谷のパルコ劇場で、渋谷を舞台にした話をやったので、今回は池袋ですし、池袋からスタートする話にしようかなと。
 

――増子さん、今回この舞台で挑戦してみたいことは何ですか?

増子:この間50歳になったんだけど、50にしては新しいことをやるっていうね。バンドで怒られることもほぼないので、新しいことやればいろいろ学ぶことも多いかなと。そしてバカバカしいことも学ぼうと。舞台そのものが試してみたいこと、だね。新しい事をやらせてもらえるっていうのは、本当に嬉しい。「これやりたい」って自分で言っても呼ばれなかったらできないからね。急に乱入するわけにもいかないしね。
 

増子直純 瑛太

増子直純 瑛太

――瑛太さんのファンが舞台を観てどんな感想を抱かれるのかも楽しみですね。お客さんにどういうところを見せたいと思っていますか?

瑛太:もちろん歌と……「バカになるところ」ですよね。思いっきりバカになると終わった後のビールが美味しくなるし。バカなことをやるって、普段できないじゃないですか。だからこそお芝居が大好きなんです。思いっきりはじけてやってみたいなと思いますね。

増子:瑛太くんの弟が観に来たら「気持ち悪い」って思うかも。いっそ「気持ち悪い」って思わせてやるくらいの気持ちでいこうか。

瑛太:そうですね。
 

――この大パルコ人企画、1回目がメカロック、2回目がバカロック、そして今回が「ステキロック」というタイトルが付いています……ということで、最近あった「ステキなこと」を教えてください。

宮藤:ステキな事……村杉蝉之介の結婚式かなあ。
 

――三宅弘城さんが噛みまくったという噂の!?

宮藤:ガチガチの司会で。始まって一行目からずっと噛んでいて。それがステキだったかどうかは分からないですけど楽しかったです。顔田顔彦さんが余興でマジックをやろうとしたら後ろが鏡ばりでネタが全部丸見えだったりとか(笑)。一つ一つが全部ステキでした。

瑛太:この間ちょっと時間があったので、僕の車でマネージャーとお蕎麦屋さんに行ったんですよ。その時コインパーキングに車を停めたんです、停めづらいところに。パッと見たらマネージャーが車を前進させていて、そのままガリガリってバンパーの下のところをパーキングのロック部分でこすってて。「ちょっと!!!」ってなったんですけど、だんだん笑えてきて。すぐ車を修理に出したら、バンパーだけ全部取り換えるとなると莫大な金額になると。でもその下のプラスティックの部分だけの交換ならそんなにしませんよって言われて見積もりに出しました。そうして昨日、「ちょっとした交換だけでイケますよ。修理代もそんなにいきませんよ」って連絡がきたので、すぐマネージャーにその話をメールしたんですよ。そうしたら「本当?ありがとう!」って。なんで俺にありがとうなんだよ!って……ともあれステキな事でした(笑)。

増子:4月23日に50歳の誕生日を迎えたんだけど……、その時、ツアー中で石川県の粟津っていう日本舞踊とか落語とかをやる会場でライブをやってね。今年たまたまそこで誕生日を迎えたから、サプライズでケーキくらい誰かがくれるだろうと思っていたら、最後の曲の途中で暗くなって、スッポンからうちの両親が出てきて! しかもうちの親父、すごい怖い親父だったんだけど、今は80歳になってね。誕生日のケーキの形をした帽子を被ってね。その恰好で出てきたもんだから俺、号泣しちゃって。親父がここまでやるかっていう。父ちゃんも母ちゃんも来てくれて。石川県に縁もゆかりもないのにね。しかも奈落から出てくるなんて誰も思わないし。すごくステキでありがたかったな!

宮藤:いい話でまとまりましたね!

瑛太:本当にステキな話!
 

増子直純 瑛太 宮藤官九郎

増子直純 瑛太 宮藤官九郎

公演情報
大パルコ人(3) ステキロックオペラ
『サンバイザー兄弟』

 
■日程・会場
2016年11月13日(日)~12月4日(日) 東京 サンシャイン劇場
2016年12月8日(水)~18日(日) 大阪 森ノ宮ピロティホール
2016年12月21日(水)~23日(金・祝)仙台 仙台サンプラザホール
 
■作・演出:宮藤官九郎
■音楽:上原子友康(怒髪天)

<出演>
瑛太 増子直純(怒髪天)三宅弘城 皆川猿時 清野菜名
少路勇介 よーかいくん 篠原悠伸 上川周作 宮藤官九郎 りょう

■公式サイト:http://otonakeikaku.jp/2016daiparco/

 

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