宅間孝行によるプロジェクト『タクフェス』に初出演する酒井美紀にインタビュー

インタビュー
舞台
2016.6.21
『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

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宅間孝行によるプロジェクト“タクフェス”の第4弾公演『歌姫』が9月15日(木)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでの公演を皮切りに全国7都市で上演される。
『歌姫』とは、宅間が主宰した東京セレソンデラックスの代表作のひとつ。舞台での上演だけでなく、2007年にはTVドラマ化もされ、さらに2014年には、劇団EXILE版も上演されている人気作だ。

今回、物語を大きく動かす存在・及川美和子を演じるのが、タクフェス初登場となる酒井美紀。パンフレット撮影の現場にお邪魔して今の気持ちを伺ってみた。


――出演のお話をいただいたときのお気持ちは?

私、宅間さんとお仕事するのは初めてなんですけれど、宅間さんの舞台『くちづけ』を観てとても感動して!いちファンのように感じで観ていました。その宅間さんと「歌姫」でご一緒できるということも私の中では楽しみな部分です。
 

――今回、及川美和子を演じることになりますが、美和子という人物、そして作品にどんな思いを抱いていますか?

切ないですよね。正直、みんながそれぞれにまだ戦争の影を抱えつつ生きているわけですから。美和子は新婚のすごく楽しい時期にわずかな時間しか夫と過ごせなくて、夫はそのまま戦争に行ってしまいましたからね。戦争で夫は亡くなった、と思いこんでいることがベースにあるから、実は夫が生きていたことを知り、会おうと思っていても、どこか会いたいけれど会えない複雑な想いを抱えている。「私が妻です」って言いたいけれど、言えないという大きな切なさ、やりきれない気持ちがあるんです。だから美和子が登場するだけで切ないんですよ。明るくふるまっているからこそなんですけれど。観た目の感情と心の中が反対方向に動いているような表現をしないといけないので。役を演じる上で、ちょっと頑張らないと、って思っています。

――美和子の気持ちは、今の酒井さんとしても強く共感できるのでは? 

そうですね、実際に私にも子どもがいるので。美和子は夫無しで子どもを育ててきているんです。子どもにはお父さんは天国にいるという説明はしているんですけれど。
 

――本当だったら美和子としては妻として夫を取り返したいと思うでしょうね。

最初はそのような思いでいたから会いに来たんだと思いますが、ちょっと状況が違うことを彼女は彼女なりに感じているはずだし、果たして夫を元いた場所に戻すことが本当にいい事なのか、それが夫にとっても幸せなことなのか。いろんなことを考え悩んでしまっているかなと。
 

――美和子をどう演じるか、今考えているプランはありますか? 

さっき宅間さんと「最初と最後の場面の美和子は何歳くらいですか?」という話をしていたんです。最初は還暦くらいで登場して、途中の回想シーンでは30歳くらい。それで最後は再び還暦くらいになる、と。美和子は強くて明るいタイプの女性。性格的にはお茶目なタイプだと思います。物語の中では30歳になった設定でしかはじけるところができない、明るくすればするほど逆に辛くなっていく人なので、最初の部分とのギャップを出していきたいと思います。

『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

――今回のキャストの中に過去共演された人がいらっしゃらないそうですが、そういう現場に入っていくのは得意な方ですか?

得意じゃないです。人見知りなので本当に不得意ですね。「声かけてくれないかな」とか思っています。本当は話したいのに話しかけられなくて。
 

――誰かが話しかけてくれたらそこから一気に?

話しかけてくれたら一気にワーッ!って嬉しくなりますね。でもなかなかこちらから話しかける勇気がなくて。何を言っているんだって話ですよね、38歳にもなって(笑)昔からこうなんです。38年生きてきて全然変わっていないなと思ってて。
 

――少し大きな話を。酒井さん自身が考える「舞台に出る魅力」とは? 

映像とは違って、お客さんが入って観劇しますしね、演劇は。お客さんも含めてみんなで作っている、その一期一会みたいな点が舞台の魅力だと非常に思うし、こちらは毎回同じ脚本で演じるんですけれど、やはり生き物なので同じにならないんですよね。お客さんの雰囲気もその時その時で違うので、その日ならではの空気ができてくるというか。そういったところが舞台の魅力的な部分で、惹かれるところですね。
 

――酒井さんはもともと『白線流し』などのTVドラマ、映像の世界からこのお仕事をスタートされましたが、そこから舞台という世界に入ったとき、いろんなことがこれまでと異なっていて大変だったんじゃないですか?

最初は大変でしたね。よく分からないんですよ。20歳くらいだったかな、初舞台は。動けないんですよ、自分が。何もない空間でここに何があるって印がつけられていて。実際は何もないんですけれど。そして見えない段がここにあって、それを意味するテープが床に貼られていて。とにかくとても戸惑った記憶はあります。芝居に達者な方たちとご一緒させてもらったんですが、皆さんどんどんいろんな場所に動くんですけれど、私はぜんぜん動けなくてずっとその場にいる…みたいな。一つ一つ、演出家の方に「ちょっとこっち動いてみて」って教えていただきましたね。それくらい全く映像の世界とは違っていました。空間のサイズが違っていたんです。たぶん“映像”って顔の周りだけ、とか限られた空間だけで撮ろうと思えば撮れるんですが、舞台はそうではなく。身体が全部お客さんに見えているし。すごく戸惑っていましたね。居残り稽古も結構やりましたね。
 

――最後になりますが、今回の「歌姫」を観てくださるお客様へのメッセージを。

前回の『歌姫』を観ている方もいらっしゃって、お話も分かって観に来られる方も、また、内容を全く知らないという方もいらっしゃると思いますが、とにかくみなさんと一緒に舞台を作りたいです。役者としては一つ一つ、自分の役割を全力でやるしかないと思うので、観客のみなさんには一緒に芝居作ってくださいってお伝えしたいです。

『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

『歌姫』酒井美紀 (撮影=こむらさき)

公演情報
タクフェス第4弾公演『歌姫』

■日時・会場
2016年9月15日(木)~19日(月・祝)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2016年9月21日(水)~25日(日)ウインクあいち
2016年9月30日(金)・10月1日(土)道新ホール
2016年10月5日(水)~16日(日)サンシャイン劇場
2016年10月22日(土)・23日(日)福岡県 キャナルシティ劇場
2016年10月29日(土)宮城県 電力ホール
2016年11月3日(木・祝)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

■脚本・演出:宅間孝行

■出演
宅間孝行、入山杏奈
阿部力、黒羽麻璃央
酒井美紀
樹里咲穂
滝川英治、越村友一、北代高士、安田カナ
かとうかず子
斉木しげる
藤木孝

 

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