綾野剛は「加齢臭と歯垢が欲しい」白石和彌監督が撮影秘話を明かす 映画『日本で一番悪い奴ら』

レポート
イベント/レジャー
2016.6.5
左から、白石和彌氏、安川午朗氏

左から、白石和彌氏、安川午朗氏

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6月4日、映画『日本で一番悪い奴ら』監督の白石和彌氏と劇中音楽担当の安川午朗氏が、Apple Store銀座店でイベントMeet the Filmmakerに登壇した。

『日本で一番悪い奴ら』は、覚せい剤取締法違反などの容疑で2002年に逮捕された北海道警察の元警部・稲葉圭昭氏の著書『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』の映画化したもので、「日本警察史上の最大の不祥事」と呼ばれる"稲葉事件"をモチーフに描いた問題作だ。悪事に手を染めた北海道警察の警察官・諸星要一の26年間の半生を、主演の綾野が狂気を持って演じている。

白石監督と安川氏が登壇したMeet the Filmmakerは、第一線の映画作家の声を聞くことができるイベント。白石監督は、日本アカデミー賞優秀作品賞など数々の賞を受賞した前作『凶悪』に触れ、「次の作品は? とよく聞かれていました」とエピソードを明かす。同作の評価を受けて制作することとなった『日本で一番悪い奴ら』については、「この企画は、脚本の池上さんがとある有名なスター俳優主演の企画を出さないといけない状況でたくさんプロットを出していた中の一つでした。さすがにそのスター俳優の企画には当てはまらず、そこでプロットを読んでほしいと言われたのが始まりでした」といきさつを語った。

また、「シリアスに見せるのは『凶悪』でやりきったので、次はエンターテインメント作品をやりたかったんです。よりエンターテインメントに寄せることを意識しました」とも。続けて「この作品は、ギャング映画にしたかったんですが、日本でギャング映画というとヤクザ映画。それはちょっと違うなと。このプロットを見て、警察を主人公にしたらギャングになるんだと気づきました。マーティン・スコセッシ監督作品でいうと『ウルフ・オブ・ストリート』よりも『カジノ』のほうが参考になりましたね」とも語り、『凶悪』と大きく変わることとなった同作のテイストの秘密を明かしている。

また、白石監督は原作者の稲葉氏にも言及。「人たらしで女性だったらコロッといくだろうなという色気がありました」と印象を語り、「男っぽさと色っぽさがあったほうがいいなと思い、綾野くんに依頼しました」とキャスティングの経緯にも触れた。さらに、稲葉氏について「基本的には真面目で一生懸命で、根本的に優秀な人。マル暴で拳銃をあげようとしても、普通は五丁から十丁。拳銃を出すには企業努力が必要、お金が必要、それをやっていた。取引先がヤクザなだけで、どの組織も同じ」と同作が社会的な構図を描かいていることを明かしている。

 音楽に関して、安川氏は、稲葉氏本人の写真を見たことも明かし、「リアルに青春を謳歌していた。『犯罪者の青春ムービーなんですよ』とキーワードをくれて、そこから音楽を作り始めたんです」とコメント。会場に、劇中で使用された中近東とデジタル感が融合した独特の楽曲が流れると「中近東の音楽は、死生観がすごくある。死が裏側にあってそれを受け入れられる人たちにはそういう音楽があるのかなと」とイメージの源泉について明かした。

また、白石監督は綾野の役作りについても明かしている。「おっさんの時期を演じる際には、『加齢臭がほしい』ってずっと言っていて、撮影前日は焼き肉を食べて、朝歯をみがかなかった」と暴露し、「映画を見ると、そこが生きていると感じると思います。『歯垢がほしい』とずっと言っていましたから。すごいですよね、普通なら思いつかないです」と、綾野の役作りに感嘆していた。

イベント会場には、先月末まで刑務所入っていたという方も駆け付けていた。「こういうジャンルの映画は刑務所内では見せないようにするんですが、ぼくは(半面教的な意味で)こういう作品をみせたほうがいいと思っています。監督からぜひ(刑務所)にプレゼンをお願いします」という声に、白石監督は「この作品が刑務所にいる人たちによいか分かりませんが(笑)、世の中がインモラルなものに蓋をして終了になっている。そうじゃなくて、必要なものは見せるべき。インモラルなもの、不道徳なものを観て、学んでいくことが必要。両方知ってどう判断させていくのが教育だと思います。プレゼンしてみます(笑)」と応えていた。

映画『日本で一番悪い奴ら』は6月25日(土)より全国ロードショー

 

作品情報

映画『日本で一番悪い奴ら』 
 

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会


出演:
綾野剛 ・ YOUNG DAIS 植野行雄(デニス)  ピエール瀧 ・ 中村獅童
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
音楽:安川午朗
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社文庫)
配給:東映・日活

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
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