Swimyミニアルバム『おひとりさま』インタビュー ひとりを見つめて、その先へ

インタビュー
音楽
2016.6.24
Swimy

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バンドであって、どこか“Swimy劇場”のようなファンタジックな世界観を持つ彼ら。アニメ『銀魂°』エンディングテーマに起用されたデビュー・シングル「あっちむいて」のMVがYouTubeで70万回以上再生されるなど、やはり物語性のあるバンド像はクセになる要素が強い。そして今回、いよいよ“Swimyというもの”の輪郭がさらにクリアになりそうなミニ・アルバム『おひとりさま』を6月29日にリリース。昨今、「その方がラク」とか「本当に好きなことに没頭できる」という意味で肯定的に捉えられるワードだが、Swimyがテーマに掲げた“ひとり”があぶり出す感情は一体どんなものだろう?

――デビューシングルの「あっちむいて」の作詞のプロセスでTakumiさんの行方不明事件を前回のインタビューで読んだんですけど……

一同:ははは!(笑)

――衝撃的でした(笑)。“ふんわりした仲良しなバンド”みたいに見えるけど、結構ガチなんですね。

Takumi:たしかに。楽曲制作の時は割とガチになりますね。

平成のまお:それ以外はふわふわしてるってよく言われる(笑)。

――メジャーシーンに登場して3ヶ月経ちましたが、慣れましたか?

Takumi:そもそも実感がないので、慣れたのかどうかもあまり……変わってはいるんですが、実感なくナチュラルに移行してきたので。でも、やりたいことだったり、衣装でインタビュー受けるっていうのも、今までだったら考えられないことですね。

みっけ:普段絶対着ない服なので、そういう意味ではスイッチが入る、うん(笑)。

――今回の『おひとりさま』は、非常にコンセプチュアルなミニアルバムだなと思ったんですが、実際はどうだったんですか?

Takumi:コンセプトありきで曲を作りましたね。最後の曲(「dance」)はインディーズ時代からあるものなのですが、それ以外の楽曲はコンセプトを決めてから作りました。

――コンセプトを決めた動機は?

Takumi:一つの作品を作る上で、音楽を聴いて欲しくて作ってるだけではなくて、一つの作品として感じるものを多く受け取ってほしいですね。物語として受け取ってほしいなって時に、何か一つテーマを持たせた方がいいと思うんです。僕は、映画を観るのがすごく好きなんですが、ミニアルバムの収録時間って、大体30分ないぐらいですよね? その中で、ストーリー性がバラバラになるより、今回は一つの作品としてストーリーをしっかりと感じて受け取ってほしくて、コンセプトを一つ持って作りたいなと思ったんです。

Swimy・Takumi

Swimy・Takumi

――割と一人の人の視点や感情で聴けるというか。

Takumi:そうですね。感情の部分を掘り下げて言葉を紡ぐことをあまりしたことがなくて。でも今回の作品はしっかりと自分と向き合って、誰かに届くような作品になってほしいなと思った時にずっと考えてたのが、誰かの立場を考えたり、苦しんでる人を見て、その人に届くような言葉を書くというのは僕にとってまだおこがましいというか……身の丈に合ってないなと。誰かにとって響く言葉を狙って紡げないなと思ったんです。それならとにかく自分が今まで感じてきたこと、苦しかった時とか、自分自身に対して支えになる言葉や、自分自身に対しても背中を押してあげれるような言葉を紡げれば、もしかしたら同じような立場の人に届くかもしれないなと思って。今回割とパーソナルな部分や、自分に向き合って感情の部分をもろに出して書いた言葉が多くなりました。それが誰かに届けばいいなと。

――いやもう大成功だと思いますよ。だって1曲目の「御一人様」はおひとりさま状態というよりは、誰かを好きになっちゃったから、むしろ自分の行動が一人になっちゃうっていう歌ですよね。

Takumi:そう捉えてもらえたら嬉しいですね。僕自身が“ひとり”をテーマにして今回コンセプトを持って作品にする時に、おっしゃられたように物理的にひとりというよりかは、対象があった時の方がよりひとりを感じるじゃないですか。恋愛でも片思いをしてる時の方がひとりの実感をより強く持つというか。誰かと関わることによって“ひとり”をすごく感じるんだと僕は思ったので、今回の作品はひとりということがテーマなのですが、登場人物がひとりというより、複数いたりするんです。中でも「御一人様」は典型的な曲ですね。

――Takumiさんが持ってくるそういうテーマはTakumiさんっぽいんですか? それともSwimyっぽんですか?

平成のまお:もう、まさにTakumiですね!(笑) Swimyの根本って、作詞作曲もそうですけどTakumiが軸になってのバンドなので、まずTakumiっぽさを出すのが逆にSwimyっぽさみたいな感じなんです。Swimyのアルバムであり、Takumiのアルバムでもあるっていうぐらい、“Takumi!”っていう感じですね(笑)。

――(笑)。SwimyってTakumiさんと平成のまおさんが生身っぽいというか人っぽくて、みっけさんとタイキロイドさんは人造人間ぽくて、いい対照を描いていると思います。でも最近、女性メンバーが半分を占めるバンドも多い中で、“どういう歌か”がすぐ飛び込んでくるのはいいですね。

Takumi:ありがとうございます! そこはやはりバンドとしても意識してるところでもあるので。男女4人で女性もいたりすると、誰が主役じゃなくてもいいという感じだったりするんですが、Swimyの統一性というか、楽曲やSwmiyはどういう言葉を発するのかっていう部分は、誰かがしっかり発信しないと。そこはバラけちゃいけないところだと思うんですね。プレーヤーとしてだったり、ビジュアルは誰が好きとかはいいと思うんですけど。音楽としてはどういった部分でSwimyの音楽を好きになってもらうのか軸がないと。例えば僕が作る音楽でファンになってくれた方が、次の作品で違う人が作ったものを聴いてくれるのか……そこはあまり惑わしたくないというか。バンドのスタイルとしてそこはちゃんと統一して、メンバー自身もみんなで共有して意識的に発信したいなっていうところはありますね。

平成のまお:どの歌詞を見てもTakumiらしさがどこかに絶対潜んでる感じなんです。意外性で言えば、5曲目の「唯」っていう曲はどストレートな恋愛の歌で。ここまでストレートな恋愛の歌詞は初めてやったんで、「あ、こんな歌詞も書くんや」っていう意外性というか、驚きはありました。

――「唯」はメロディに対する皆さんの歌の乗せ方も面白い曲で。ちょっと日本的な感じのメロディですね。

Takumi:もともと僕が歌謡曲が好きだったのもあるんですけど。日本人ならではのメロディ・和の音階って、洋から入ってきたドレミファソラシドの8音階にはなく、日本古来の音っていうのはやはり覚えやすいですし、馴染みがあるので。そういう部分ばかりではないんですがよく入れたりするので、そういったテイストも感じてもらえたら嬉しいです。

――“孤独な時に自分がどういう言葉を探すのか?”っていうテーマがあったからこそ、アレンジではいろいろとチャレンジできたり?

Takumi:そうですね。今回はよりサウンド面が好き放題……って言葉はどうかと思うんですけど(笑)、言葉のテーマはもう決まっていて、その時点で重たくなることは自分で分かっていたので、サウンド方向でSwimyの色をさらにどう出していくのか。僕らちょっと異世界感というかファンタジックな部分も音楽で表現したいと思ってるので。今まではちょっと不思議な言葉を入れてみようっていうのがあったんですが、今回は言葉でそういうチャレンジは一切ない状態で。音楽だけでどれだけそういう世界を出せるか?ということだったんです。割と幅広く音もいろいろ入れてチャレンジすることができたので、そういう部分も聴いて欲しいところではあります。

Swimy・平成のまお

Swimy・平成のまお

――他のメンバーのみなさんは、演奏や歌の部分で挑戦だったところはありますか?

みっけ:曲によって思い入れをちゃんと聞いて、歌ったという感じですね。

――3人とも感情は入れすぎない感じですよね。

Takumi:そうですね。みっけは、ドラムソロをあまりやりたがらなくて。どちらかというと曲ありきのドラムですね。他のメンバーも歌ありきの自分の楽器だと思ってくれてるフシがあるので、より今回は“Takumiワールド”と言ってくれてるんですけど(笑)。そこは意識してくれたんかな?と思ってます。

平成のまお:「あっちむいて」の時はデビューシングルというのもあって、曲はもちろん、ベーシストとして結構難しいことをやって自分を出す部分が多かったんです。今回はテーマもしっかりしていたので、一番には歌詞やメロディが耳に入ってきてほしくて。メロディを邪魔しないように、でもある程度ベースも引き立つようにと思って。そこは前作と意識が違いましたね。

――とはいえ、「御一人様」でタイキロイドさんは弾きまくってますが(笑)。

タイキロイド:コンカイノミニアルバムハ、ゼンサクガワリトオトナシカッタノデ、コンカイハテクニカルニセメヨウカナト。ウタノナイトコロデハ、ガツガツト。

――イントロからコウモリとかゾンビが出てきそうな展開も面白いです。

Takumi:音を聴いて情景や絵が浮かんでほしいっていうのは常に思ってることなので。特に「御一人様」は表題曲なので、このミニアルバムやSwimyの音楽をどういう風に聴いてほしいか?というのを一番わかりやすく、より情景が浮かびやすくっていうギミックを仕掛けていきました。だからゾンビとかコウモリとか出てきそうって捉えてもらえるのはすごく嬉しいです。

――しかもタイキロイドさんの印象的なリフの繰り返しが効果的で。ちょっと思いつかないですよね、ああいうフレーズ。どんなイメージがあったんですか?

タイキロイド:デモヲツクッテルトキニ、ナニカイレトイテッテカンジデイワレタンデ、オフロハイッテルトキニカンガエマシタ。

Takumi:タイキロイドに、楽曲制作で常にイメージは伝えるんですよ。例えばアーティストさんのなんかの曲のこういう方向性のリフを入れてくれみたいなこととか。チョーキングをウィーンってやってとか、大きくダーンってやるだけのやつを!とか、方向性だけは伝えて、この曲は表題曲なのでやはりインパクトがほしいと。手数というか、テクニカルなところを出して欲しかったし、タイキロイドの武器でもあるので。そういう僕からのオーダーをいつも応えてくれるからありがたいですね。いつも一回できても変えてもらうことが多いんですが、この曲の頭のリフとかはもう一発めで「それで行こう!」って、上手いこと仕上げてくれましたね!(笑)

3人:ははは!

――すごく頭に残るんで、曲の目印的なリフだと思います。軽快なままでは終わらず、途中でナイトメア感のある展開に入ったり。それはTakumiさんの中でできていたものですか?

Takumi:ありましたね。この曲を表題曲にすると決めたことも大きいんですけど、ちゃんと異世界感みたいなものも感じれる場所だったり、聴いていて飽きて欲しくないっていうのもありますね。だからこそテンポを速くするんです。曲が長くなるとまったりして最後まで聴かない人もいると思うんです。今はYouTubeなどでカジュアルに音楽が聴けるじゃないですか。流し聴きする時に1曲聴いてしまうような尺におさめたいけど、中身も充実させたいってなると、単純にテンポを速くすればよかったりするんです。1番・2番歌って大サビを歌ってとなると、5分の曲が3分になったりするんですよ。で、速くするとでてくる弊害が、さらっと終わってしまうっていう(苦笑)。そういう風にはなりたくないので、引っかかる、聴いててつまづくようなセクションを入れようと。そういう部分は、割と全部狙って作っています。

Swimy・タイキロイド

Swimy・タイキロイド

――Takumiさんの中にはそういうロジックとエモーションが両方あるんですね。

Takumi:サウンド面に関しては、あえて仕掛けていく部分が今回は特に多くて。でも言葉は感情のままに、徒然なるままに書いたんですけど。

――歌詞はまずメンバーが腑に落ちないと、歌や演奏の説得力も出ないですよね。

平成のまお:そこは入り込みやすいですね。Aメロとか歌う時もベース弾く時も感情を入れやすいというか、分かりやすいんで。感情的にやりやすいですね。

みっけ:たまたまなんですけど、自分が歌ってる<頭でわかっていても 心がわからない>の部分にすごく共感したんですよ。だからより心がこもってますね。

――全体的なことを言うと、アルバムタイトルが『おひとりさま』なので、最近ソロ活動とか単独行動は当たり前みたいになってきてるじゃないですか……最初、そういうことを表現してるアルバムなのかなと思ってたんですが。

Takumi:“一人焼肉”とかですか? そういうのってSNSが広がったおかげと言いますか、そこでお互いの“ひとり”を認知できるじゃないですか。で、それって一人焼肉が流行ってるっていう情報を得たから自分も一人焼肉ができるんですよね。

――ある種の安心感なんですよね。

Takumi:その安心感はSNSのおかげだと思うんですよ。他人のひとりを垣間見れるというか。より“ひとり”というものが身近になったからこそ、そこに対して歌えることがあると思って。僕はそこに対してネガティヴな感情とか、嫌いだったりする部分はあるんです。それが当たり前になっても、ひとりでいる時間に対して、どこか受け入れられてない人がいたら、そういう人に届いてほしいなっていう思いはあります。

――そういう人を否定するわけではなくて?

Takumi:そうですね。割と自分に対する言葉が多くて、安易に肯定はしてないんですが、やっぱり自分を戒める気持ちもあるので(笑)。だけど自分みたいなどうしようもない人間を救えるような言葉を自分自身で書いたので、いい意味でも悪い意味でも、好きなところや嫌いなところがあってくれたら嬉しいなと思ってます。思いのままに言葉を書いたので「こんな言葉を言う人は嫌やな」とか「考え方が偏ってる」って。でもその代わり「こういう部分は好きだな」とか。僕も作品を通して「このシーン好きやけど、このシーンは嫌いや」とかあるので。全部を受け入れるような感じで作ってないので、好きなところ、嫌いなところを感じてくれた方がむしろ嬉しいし、思いのままに受け取ってほしいですね。

Swimy・みっけ

Swimy・みっけ

――このアルバムのテーマの“ひとり”は、これからSwimyをイメージする際の形容詞にもなっていきそうですね。

Takumi:そういう風になってくれても全然……というか、なってほしいです。Swimy自体、メンバーがもともとすごく人見知りで群れをなすことが苦手なバンドなんですね。ちょっと不器用な人に対してちょっと外に一歩踏み出すような、例えば僕らのライブに来るとか、そういう音楽で救えたら一番嬉しいよねって話はしてたので。

――そういう人がライブには集まってくるだろうから、面白いですよね。

Takumi:そうですね。ひとりで来てくれる人も多いので、気にせず来て欲しいです。

――そしてライブもありますし、イベントもサーキットイベントも控えていますね。

Takumi:頑張って乗り込んで(笑)行きます!

――関西出身のバンドは面白いバンドがたくさんいますけど、フェスでトリを務めているようなバンドはみなさんの一つ上の世代でしょうか。

Takumi:そうですね。やっぱり関西のバンドの先輩や同世代のバンドは、フェスで盛り上げるのがすごい上手いと思うので。そこは負けてられないなと思います。

――熱いバンドと思ってなかったら意外と……っていう(笑)。

Takumi:ひねくれた関西人感を出したくて。やっぱ滋賀出身っていうのもあって。

平成のまお:そやな、関西に入れてくれへんときもあるもんな。

Takumi:ど直球で関西を出せないときもあるんですよ。「所詮、滋賀やしな」って(笑)。大阪で関西弁とか関西感を出すのは僕は良いと思っているんですけど、東京とかのライブで僕らが関西色を出すと、それの方がちょっとこっぱずかしいというか、気を使うんですよ……。

――それは気にしすぎです!(笑)

一同:ははは(笑)。
 

撮影=菊池貴裕 インタビュー・文=石角友香

リリース情報
ミニアルバム『おひとりさま』
2016年6月29日発売
 
収録曲
「御一人様」(読み:おひとりさま)
「毒と花」
「Killer Killer」
「ナイトミュージック」
「唯」(読み:ゆい)
「dance」
BVCL-730  ¥2000(税抜)/ ¥2160(税込)
All songs written by Takumi
Produced & Arranged by Swimy, keiichi wakui
 
<「御一人様」配信URL>
iTunes
http://hyperurl.co/f7l0gn
※iTunes「おひとりさま」まとめ売り予約も受け付け中!

 

イベント・ライブ情報
●6/19(日)ららぽーと立川立飛
●6/28(火)渋谷Milkyway「pisca-pisca present’s『光彩vol.1』」
●7/2(土)大阪ミナミアメリカ村 見放題2016
●7/4(月)京都MUSE「京都叙情」
●7/5(火)神戸VARIT「神戸VARIT.12th Anniversary Kansai college presents「NEXT STAR」
●7/13(水)渋谷La.mama「New Age ldeology vol.25」
●7/23(土)名古屋APOLLO BASE「1st mini album“SURVIVE”release「SURVIVERs TOUR」FINAL
●8/5(金)新代田FEVER「TRY TRY NIICHE 1st Mini Album「FLOWERING」リリースパーティー
●8/13(土)名古屋TREASURE05X 2016~TRIPLE AUTHORITY~
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