【SPICE対談】ラジオの中の人 第二回 DJ/MC/タレント 奥浜レイラ×構成作家 磯崎奈穂子(後編)

SPICER

音楽と人の声を届け続けるラジオ番組を作る人たちに、放送では聞けない裏話を聞く対談企画「ラジオの中の人」。
かつて洋楽に特化したラジオ番組を共に制作されていた、番組のDJをつとめた奥浜レイラさんと構成作家の磯崎奈穂子さんの対談の後編をお届け。

前編はこちら

番組を作る人:構成作家 磯崎奈穂子さん 
伝える人:タレント 奥浜レイラさん 

キュレーターとしてのメディア人の在り方

奥浜:キュレーターって今、いますか?Interfmとか聞いてると、ミュージシャンの方で伝え手としても優れていて、キュレーターとしても優れている方もいらっしゃると思うんですけど。DJの方で新しいキュレーターっているのかなって。自分が頑張れよって話なんですけど(笑) 
磯崎:ラジオ界のスターが生まれてないっていうのは感じざるを得ないかもしれないですね。私達がティーン・エイジャーの頃聞いてた音楽番組は音楽評論家の方々がDJだったので、有無を言わせぬ説得力があったし、そういう時代もあったんですけど。 
奥浜:私が好きな喋り手って、基本的にAMラジオの人なんですよ。昔からAM育ちだし。キュレーターとはちょっと違うけど、吉田照美さんとか永六輔さんとか聴いて。小俣雅子になりたくてしょうがなかった!
磯崎:ちょっと、それ私達より上の世代!(笑) 
奥浜:今でも私が聴いてて面白いなって思うのは、細野晴臣さんとか高橋幸宏さんとか。そういうミュージシャンの人がやるものが、面白くなっちゃってる。喋りが面白いし、音楽を聞き逃したくないっていうのもあるんだけど、その音楽に対してこの人が何を言ってるかを聞き逃したくないっていうのはわりと多いかもしれないですね。
磯崎:ただなんかミュージシャンのしゃべりはミュージシャンならではで、もちろん面白いんですけど、洋楽ファンを増やすってことにはあんまり繋がらないのが難しいところでもあり。ラジオ界のスターっていうのは本当に必要だと、いたらいいなって思います。
奥浜:私は映画の仕事もしていて、たとえば映画のキュレーターだと思っている人は町山智浩さんなんですけど、町山さんて自分でメディアをやるじゃないですか。音楽業界にはない、ああいう感じが必要なんじゃないかと思うんですよね。ひとりでもその作品について30分話せます、っていう。そこまで掘り下げてる新しい世代の喋り手、洋楽の業界にはいないかもしれない。 

——しゃべれるオタクですよね。やっぱオタクがオタクのことを誰かに伝える時がいちばんカロリー高いと思うんですよ。凄く伝えたい人たちじゃないですか。

磯崎:本当にそうだと思います。基本は、好きな人が好きなことを語るっていう。だからやっぱりラジオもそうだと思うし、もちろんテクニック的なものとか経験も必要だけど、やっぱり好きじゃないと伝わらないんですよね、言葉だけとなると尚更。  
嘉陽田:好きなモノとあんまりそうじゃないモノの違いが声に出ちゃったりとか。  
奥浜:プロとしてはたぶん同じにしなきゃいけないと思うんだけど、私はこの番組を通して、自分が得意でない分野のものに対してどういう視点で話せばいいのかっていうのはすごく教わりましたね。
結論から言うと、好きで熱量が高いものだけが私はいいと思っていなくて、じゃあそうでないものに対して、このアーティストがどの音楽シーンで何を残した人で、何が素晴らしくて、どういう功績を残してったのかっていう視点で見ていくと、案外熱量高く話せるようになる。 
それに実はそうでない(得意でない)ものの方がたぶん多いから、仕事してて好き嫌いだけで語らないようにしなきゃっていうのは、2人(磯崎さんと番組のプロデューサー)から教わったことなんですけど。熱量も勿論大事なんだけど、偏り過ぎるのも、シーン全体を伝えることにはならないから。  
磯崎:音楽の番組は、やっぱりシーンを語れないとダメなので。  
奥浜:前提として熱量は必要ですよ。そういう見方をする熱量。  
嘉陽田:愛がないとできないですもんね。  
磯崎:愛ですよ。愛。  

音楽業界・若手の後継者がいない問題

——カリスマはシーンを語れるまでにもならなきゃいけないけれど、作れないのも現状で、たとえば伊藤政則さんのようにメタルを語れる人はいないですよね。あの人の跡継ぎはいないんですよ。
 
奥浜:いないですね! 
磯崎:伊藤さんは本当に素晴らしくて、DJとしても本当に凄いんですよ。あの説得力とリズムね。 
秤谷:あと独特の言い回しね。  
奥浜:本当に!私、ラジオ局に行く前とかよく伊藤政則さんの番組を聴いて「あのリズム、あのリズム」ってお手本にしてたところはありますね(笑)
磯崎:わかりやすさもあるし、素晴らしいですよね。
 
——まさにそうで、音楽業界の由々しき問題として、各ジャンルに跡継ぎがいない問題ってすごいありませんか?取材でお世話になる通訳さんもそうだし。

奥浜:それって、本当にいないんですか?私は渦中にいるから、自分が跡継ぎになろうとしてやっているところはあるので、いないって言っちゃうとすごい自分だけいい感じに見えてしまうのだけど。
磯崎:だって、(目指しても)食べていけないじゃん。  
奥浜:そこの覚悟ができる人はなかなかいないのかもしれない。だって私がラジオ番組をやることになって音楽の仕事をちゃんとやっていこうって決めた時って、本当にラジオの仕事しかないから、普通にバイトしながらやってて。タレントっていう経歴を持って、でもラジオで音楽を語る仕事をしたくて、でも仕事がない。お金にはならなくてもこれは続けることにたぶん意味があるなと思って、アルバイトをしながら続けるっていう道を選んだんですけど。最初はお金にならなくても仕方がないけど好きなことをやるって人、出てきづらい気がするんですよね。ていうか選べないよね。そんなバカなことできないですよね(笑) 
磯崎:そこで、でもやっぱり好きだからどうにかしてやっていくっていう人が、きっと残っていくんじゃないかとは思うんですけどね。
奥浜:でもほら、それが必ずしも。
秤谷:アウトプットがないから、先のビジョンが見えないんじゃないですか? 
磯崎:私も洋楽の仕事始めたのは30歳くらいからですね。元々レコード会社で働いてて、ぜんぜん違うことして、その後戻ってきてフリーで洋楽の仕事を始めて。フリーになったのがそれくらいの年齢。三十代って大切ですよね。どれだけ経験したかですよ。  
奥浜:そうそう。何かをやりながらでも、音楽のシーンはちゃんと見続けて、伝え続けることを念頭に置いてやってる人っていうのがなかなか少ないから、次のスターが生まれない。
秤谷:次のスターになってくださいよ。
奥浜:周りを見てると、女性って継続してやる人あんまりいない気がします。結婚とか出産とかで、なんかグラグラしてしまう。どうしようもないのはわかるんだけど、これって結局毎日大学院で研究してる人みたいな生活なわけじゃないですか。 
嘉陽田:定点観察的なこと? 
奥浜:そうそう。ずーっと継続してやらなきゃいけないから、別の要素(結婚・出産など)が加わった時に、続けるのが難しいのはわかるんだけど。でもちょっと私は、継続してものを伝える人でいたいとは思ってるので。正直、子供を産むとかどうしようみたいなね(笑) 
磯崎:姉としては心配してるんだけどね。
奥浜:仕事と両立できるのか?みたいなね。まあ両立してる人もいるからね。  
嘉陽田:たまにいなくなって戻ってきたりとかね。 
磯崎:そういうテーマの時はまた呼んでください(笑) 
奥浜:仕事をする女のかっこいい先輩がまわりにいすぎて、そっちのモデルケースばっかりになっちゃうんですよ(笑)

——若い子たちにも洋楽を聞いて欲しいというのは業界全体のテーマでもありますが、洋楽を聞くきっかけって何だと思いますか?

磯崎:なんでもいいと思うんですよね。邦楽のアーティストが洋楽の話をしてたらそれを聴いてみればいいし。
奥浜:それは本当に推奨します。 
磯崎:Apple Musicで、コレ好きな人にはコレもどうぞみたいなのがきたら聴いてみればいいと思うし、きっかけはなんでもいいと思います。  
奥浜:最近亡くなる洋楽のアーティストが多くて、それに対して、たとえばデヴィッド・ボウイが亡くなってX JAPANのYOSHIKIさんがSNSに追悼文を書いていたら、じゃあそこからデヴィッド・ボウイも聴いてみるとか。彼を形成している一人にデヴィッド・ボウイがいるということだし、プリンスのことを誰かが言ってたら、聴いてみることでその邦楽アーティストをもっと深く掘り下げるきっかけになるかもしれない。この人にはこの要素があるんだよって。  
磯崎:LINE MUSICでもなんでもいいんだけど、特集になってたりするじゃないですか。そんなのからなんじゃないのかなぁ。  
嘉陽田:ラジオもそういうきっかけになりますよね?  
奥浜:それこそ自分が最近音楽から離れちゃってるなって思ったら、ラジオを速攻付けて、その時のプレイリストを見ますね。今こんなのが出てるのか、この新譜忘れてたわ、っていう聴き方をするから、radikoのオンエアリストとかスクリーンショットの嵐(笑) 
ちょっとでも耳に残ったり、フックがあったりしたらスクショして後で聴いてみたらいいんじゃないかなって。まあでも、ラジオさえ手が伸びないって人はいるのかもしれないですね。 
  
——そこでラジオを選んでもらうためには何が必要なんですかね?  

磯崎:面白い喋り?そこしかないよね。 
奥浜:聞くに値する喋りと音楽ですかね。
磯崎:ハガキ職人ならぬメール職人てまだ一定数いて、その人たちからメールが来るから、ラジオの人たちは勘違いしちゃうのかもしれないですね。でももっと本当はその裏に何百人、何千人のリスナーがいるのに、そこまで見えていないというか。いろんなメディアをやってると余計思うんですけど、もう一回ラジオのアイデンティティというか、存在意義をもう一回考えてほしいなとは常々思ってます。 
一昔前にメディアミックスみたいな言葉が流行ったんだけど、やっぱりなんかそういう風に一緒にやったりするみたいなことは必要なのかもしれないですけどね。ラジオでもやってて、インターネットでも一緒にやってて。そういうことなのかなとは思いますけどね。  
奥浜:いろんなメディアが連動することで、誘導していくっていうか、流れを作るみたいな。たとえば磯崎さんが手がけてるWOWOWの番組のファンがいるとするじゃないですか。そこから、このラジオ番組は同じ人が制作しているから聞いてみよう、って繋がっていくとか。喋り手にかぎらず「この人がやってるから好き」っていうキュレーターが必要ってことですよね。  
磯崎:今のラジオっていうよりは、私達が以前やっていたみたいな、もっとシンプルな、ちゃんといい音楽が流れるラジオ番組が増えたらいいなって思ってます。それが無理なら違うやり方を考えるしかないな、とも思っています。
奥浜:作る側から提案できるのは「いいものを作ります。でも選ぶのは皆さんです。」っていうところまで。必ずしもラジオを聞いて下さい、とは言いづらいのかもしれないですね。 

——もしこれからお二人で番組を作ることになったら、どんな番組にしたいですか? 

磯崎:もう一回ラジオはやりたいなと思いますね。
奥浜:こんなにラジオってニッチなものになってるのか、と思いながらも、やっぱりラジオだからできることがあると今も信じ続けてるのは何なんでしょうね(笑)またやるとしたら、以前やっていたように、一枚のアルバムをまるごと紹介するとか、一人のアーティストを掘り下げて、生き方まで全部話せる、一個聞くとすごく自分の知識になるっていう番組をやりたい。  
嘉陽田:それ、アーカイブ化したいですね。
奥浜:そう、辞書みたいに。知識と言っても洋楽は上から目線で伝えるんじゃなくて、こんなに面白いものがあるんだよーって言う風に横からくすぐってあげるぐらいの感じの方が伝わるのかもしれないですよね。 
磯崎:アメリカのラジオの何がいいかって、古いものも新しいものも一緒にかかるんですよね。聴いたことがない人は70年代の曲を新しいと思うかもしれない。そういう聞かせ方をするから、アメリカのアーティストってすごく成熟してるんですよね。インタビューとかしても、古い音楽の話もすごくしたりする。それをやりたいんです。それに、ラジオは自由度が高くないと面白くないから。 
奥浜:だったら時間帯とかもね。
磯崎:フェス会場だけで聴けるラジオとかね。アプリとかでやりたいですね、Podcastとか。インターネットで番組やりたいです。 
奥浜:ない席は作る。やりたいことを周りに言ってみないとこういう話にもならないってことですよね。


ない席は作る。そう言いきった奥浜さんの言葉通り、この対談企画をきっかけにお二人が手掛ける洋楽の番組が始まることになりました!
SPICEサイト内で6/17(金)〜スタート予定。詳細をお楽しみに!


●伝える人:タレント 奥浜レイラさん 
年間100公演以上のライブへ足を運んでいる、自他共に認める音楽オタク。TVK「洋楽天国EXXTRA」でMCをつとめるほか、ラジオDJ、映画イベントMCや動画サイトでの生放送番組MCなど幅広く活躍中。2008年からサマーソニックのステージMCも担当。

●番組を作る人:構成作家 磯崎奈穂子さん 
制作会社Office Plus 9所属。洋楽のラジオ・テレビ番組の制作を手掛けるほか、海外アーティストの日本でのパブリシスト/PR業など幅広く手掛ける。

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