川本嘉子(ヴィオラ) 深遠なる無伴奏の世界を紡ぐ

インタビュー
2016.7.16
川本嘉子(ヴィオラ) Photo:Yoichiro Nishimura

川本嘉子(ヴィオラ) Photo:Yoichiro Nishimura

 サイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管の常連で、昨年の「東燃ゼネラル音楽賞」奨励賞受賞も記憶に新しい、日本が誇るヴィオラ奏者・川本嘉子。待望の新録音ではしっとりと艶やかに深遠なる「無伴奏」の世界を紡ぎ出した。
「バッハの無伴奏曲はどれも軽い気持ちで演奏できる作品ではないので、お話しをいただいてからは、できるだけ前向きに自分を奮い立たせてレコーディングに臨みました。チェロ組曲も、特に調弦を変えて収録した5番が手ごわかったのですが、やはり『シャコンヌ』(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の終曲)は移調によって音色も変化し、身体に荷重がずっしりとかかるので、練習するだけでヘトヘト(笑)。収録も最後になりましたが、技巧に流されることなく本来の舞曲が持つテーマを、ヴァリエーション豊かに膨らますことができたと自分では満足しています」

 バッハと同時代のテレマンによる無伴奏ヴァイオリンのための「12のファンタジー」から、教会ソナタの形式に沿った構成を持つ第7番も必聴だが、ロマン派時代のベルギー出身のヴュータンがヴィオラのために書いた「カプリッチョ ハ短調」は、シューマンをして「小さなパガニーニ」と言わしめた鬼才の芸風を巧みに伝える。
「テレマンは一つひとつのフレーズに古典としての雰囲気を滲ませることに留意し、音程も“古めかしさ”を狙いました。ヴュータンは手の小さい私にとってはことさら難曲で、これまでそれとなく避けていたのですが(笑)、今回のタイミングで録音できて嬉しいです」

 7月にはHakuju Hallで『生誕半世紀記念』と題した3部からなるチャリティ・イベントを実施。多彩なゲストを迎え、自身にとっては初めてシューマンを中心としたプログラムを用意する。
「第1部は医師でピアニストの上杉春雄さんをゲストに、そのユニークな視点ならではの講演会とセッションを。演目は『女の愛と生涯』を予定しています。このほか第3部ではピアニストの小菅優さんをお迎えすることが決まっていますが、第2部のスペシャル・ゲストは当日まで秘密ですのでお楽しみに! ハーモニーの美しいシューマンは、倍音がヴァイオリンより多いヴィオラで弾く方がずっと心地いいはず。これまでもヴィオラの芸域の広さのおかげでいろんな音楽体験ができましたが、最近指揮を学ぶことで自分の役割も見えてきた気がします。今回は自分へのお祝いというよりは、これまで支えてくれた周囲へ感謝の気持ちを示したいですね」

取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)


川本嘉子 生誕半世紀記念 チャリティイベント
7/20(水) 第1部 14:00 第2部16:00 第3部18:00
Hakuju Hall
問合せ:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp
CD
『シャコンヌ〜無伴奏ヴィオラ作品集〜』
マイスター・ミュージック
MM-3080
¥3000+税
6/25(土)発売
WEBぶらあぼ
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