GUG、ココロオークション、ウソツキによる“禁断の三角関係”に、歌うロックの地力を観た
ウソツキ 撮影=結城さやか
ウソツカナイトツアー~禁断の三角関係~ 2016.6.19 代官山UNIT
6月19日に行われたウソツキの全国3マンツアー『ウソツカナイトツアー~禁断の三角関係~』ファイナル公演。会場となった代官山ユニットに集ったのは、GOING UNDER GROUND、ココロオークション、そしてウソツキだ。“王道歌ものバンド”を標榜するウソツキだけに、今回集ったメンツもまさに歌を中心に据えてギターロックを奏でるバンド達。世代や持ち味は違えど、バンド同士もそれぞれのオーディエンス達も高い親和性を見せたのは、やはり普遍的なグッドメロディが持つ力と言うべきなのだろう。
GOING UNDER GROUND 撮影=結城さやか
まず場内に現れたのはGOING UNDER GROUNDだった。松本 素生(Vo/G)がスーッと息を吸い込んで「トワイライト」を歌い出すと拍手が巻き起こる。傍らで中澤 寛規(G)のスライドギターが哭き、そこに生まれた一瞬の静寂ののち、シンプルな8ビートに乗ってライブは走り出した。
言うまでもないがゴーイングは百戦錬磨のバンドである。メンバーの脱退で3人体制となったりはしたものの、そのキャリアの中で生み出してきた珠玉の楽曲達と、それを歌と演奏で届けていく彼らの熱は変わらない。「今日、良い! 良い気が漲ってる」などと松本が口にしながら「STAND BY ME」、中澤がメインボーカルを採る「ショート バケイション」などを高いテンションで披露していった。
キャリアを経て変わったところがあるとすれば、それはステージングの熟練度。この日も良い感じに力の抜けたMCトークや自虐ネタで笑いを起こしながら、いつの間にかオーディエンスをグイグイと巻き込みながらライヴを進行させていき、パンキッシュなロックンロールナンバー「LISTEN TO THE STEREO!!」が流れ出す頃には自然に多くの手が挙がるように。「歌詞がわかんなくたって良いんだ」との呼びかけに観客はコーラス部分を大合唱する。そのまま無茶ぶり気味に石原 聡(Ba)の独唱へ。そこまで淡々としながらも歌うように豊かなベースサウンドでサウンドを支えていた彼による渾身のシャウト、そしてそれを長々と続けさせる松本、という光景に、会場は笑顔と歌声で満ちていった。
最後は新曲「the band」。石原の「ワン、ツー!」のコールから繰り出されるとてもストレートなロックナンバー。タイトルからしてそうだが、この甘酸っぱさは何だろう。これこそゴーイングの真骨頂だ。たくさんの経験や紆余曲折を経る中で、それでも彼らがバンドとしてのピュアネスを貫いてきた結果、その魅力であるメロディやバンド感の強度、純度はどんどん増している。心の琴線に触れるどころかジャカジャカと掻き鳴らされるような、痛快でほんのちょっとセンチメンタルなステージであった。
ココロオークション 撮影=ハヤシマコ
二番手はココロオークション。彼らもまた、その歌とサウンドにおけるメロディセンス叙情性においてはシーンでも一際光るものを見せているバンドだ。コールドプレイの「Lovers In Japan」をSEに登場すると、そのまま井川 聡(Dr)がラテンのリズムを打ち鳴らし、「ここに在る」でスタート。印象的なギターリフを奏でながらピョンピョンと飛び跳ねるテンメイ(G)、大野 裕司(Ba)も全身でグルーヴを表すような大きなアクションだ。彼らの生み出すアンサンブルの真ん中を、粟子 真行(Vo/G)の優しくも芯の通った歌声が真っ直ぐに突き抜けてくる。
このツアーについて粟子は「学生時代から大好きで聴いてたゴーイングと、仲良しのウソツキと(ツアーを)回れて最高」と口にした。”歌もの”とされるバンドの中でもギターを主体としたサウンド、爽快感と切なさを併せ持ったようなメロディという系譜と、それが今なお根付いていることを象徴するようなMCだ。
共通項も多い3組であるが、その中でも当然、それぞれの色を打ち出してくれたこの日。ココロオークションは「スパイダー」では硬質で攻撃的なデジタルサウンドを、「夢の在り処」ではスクエアなリズムに乗ったリズミカルな演奏を、「Orange」や「蝉時雨」では歌とメロディ、コーラスを前面に押し出した組み立てで、個々の楽曲の生み出す情景や肉体性、多幸感といったカラーを余すことなく伝えていった。
ライヴの締めは、粟子が即興風に迫力の歌声を響かせながら弾き語ってスタートした「フライサイト」。明るく照らされた場内に向けて放たれる強力なナンバーは、多くのオーディエンスの視線と心を鷲掴みにする威力を持っており、早くも彼らのアンセム的な役割を十分に果たしていた。40分ほどの持ち時間の中で実に8曲を並べた彼ら。それはメジャーデビューを果たした現在の充実度と自信の表れに違いない。もっとたっぷりとその音世界に浸りたい、そう思った観客も多くいたはずである。
ウソツキ 撮影=結城さやか
この日の主役であるウソツキは、客電の点いた状態でBGMも流れっぱなしという中、突然ステージに現れた。暗転した次の瞬間に鳴るディストーションギター、バスドラのビート、フロアから湧き上がるクラップ。「ミライドライバー」だ。
続いては「ネガネガ」のコール&レスポンスから「ネガチブ」。ポップなメロディとダークなグルーヴが聴く者の体を揺らしたかと思えば、唐突に吉田健二(G)によるハードロックばりのギターソロや、和の音階のコーラスを打ち込んでくる何でもアリっぷりが実にハイセンス。「僕らなりのダンスナンバー」と竹田昌和(Vo/G)と紹介したのは「旗揚げ運動」。ミラーボールが回転し光の粒が場内をめぐる中、オールドスクールなディスコサウンドに合わせて会場全体が右手を上げて、両手を上げて……とアクションしながら一体感を増していく。これはなかなか楽しい。
7月にリリースする_ニューアルバムからの新曲も披露され、「ボーイミーツガール」では林山拓斗(Dr)と藤井浩太(Ba)により生み出される力強いビートと吉田のクリーンなギターサウンドに、竹田が切なさを帯びたグッドメロディを乗せた。他の楽曲にも言えることだが、竹田のイノセントな響きを持った歌声とときおり見せるエモーショナルなシャウトが良いアクセントとなっている。
同じくニューアルバムのタイトル曲でもある「一生分のラブレター」では、清々しいくらいド直球のラヴソングをサラリと歌ってみせた。かと思えば、その前の「ピースする」ではゆったりとしたテンポに合わせ、ジャンケンをモチーフに人間や社会の業までをえぐり出していたり。ときにシニカル、ときに逆説的な表現を用いながら、伝えたいことの輪郭をハッキリと曲の中で提示できる言葉選びは抜群だ。
汽笛と蒸気機関の音を模したギターが鳴り響き、本編のラスト「新木場発、銀河鉄道」へ。途中の歌詞を<新木場発、代官山へ>と変えて歌い、大きな盛り上がりをみせるオーディエンスへサービス。最後は演奏しながら最前列まで出て「どうもありがとう」とオフマイクで告げ、ダイナミックにアンサンブルを響かせてからステージを後にした。
アンコールでは、かつてゴーイングのオープニングアクトをしたことがあること、そんな大先輩バンドとツアーを回れたことへの素直な感慨が語られ、間も無くリリースとなるアルバムのこと、そして9月10日に新代田FEVERで開催されるワンマン『地獄のUSOTSUKANIGHT FEVER』の告知がなされた。嬉しい知らせに大きな歓声で応える会場に向けウソツキは「水の中からソラ見てる」を届け、ライブを締めくくった。余談だが、この曲の入りで「行けんのか、東京!」という煽りをどうするか、ステージ上であれこれ段取りしていた彼ら。オフになると完全にオフってしまうキャラクターも魅力的であった。
シンプルなもの、ラウドなもの、踊れるもの――ロックシーンのトレンドは移り変わり、細分化されてきたけれど、歌を中心に据えたロックの文化は、その中で脈々と、確かに受け継がれてきた。ルーツや時代によってその姿は多少違えど、多くの耳に届く普遍的なメロディとサウンドが持つ力。それを存分に味わえる、とても意義のあるツアーであったと思う。いつの日か、ウソツキやココロオークションに続く世代も交えた「3世代の競演」なんていうのも大いにアリだ。
撮影=結城さやか / ハヤシマコ レポート・文=風間大洋
ウソツキ 撮影=結城さやか
GOING UNDER GROUND
1. トワイライト
2. STAND BY ME
3. ランブル
4. ショート バケイション
5. LISTEN TO THE STEREO!!
6. the band
1. ここに在る
2. ヘッドフォントリガー
3. スパイダー
4. 夢の在り処
5. Orange
6. バース
7. 蝉時雨
8. フライサイト
1. ミライドライバー
2. ネガチブ
3. 旗揚げ運動
4. ボーイミーツガール
5. ピースする
6. 一生分のラブレター
7. 新木場発、銀河鉄道
[ENCORE]
8. 水の中からソラ見てる
場所:新代田FEVER
open/18:30 start/19:00
料金:前売 ¥4,000 当日 ¥4,500(税込/ドリンク代別)
問い合わせ:新代田FEVER 03-6304-7899
open 17:30 / start 18:00
場所:岡山CRAZYMAMA2ndROOM
料金:前売 ¥3,000 +1drink
受付期間:6/27(月)12:00~7/4(月)23:59
※お申込みにはe+会員登録(無料)が必要
※先着順ではございません。お申込み多数の場合抽選となり、入場整理番号も含めて抽選となります。
※お申込みは、お一人様4枚まで
※第1、第3木曜日AM2:00~8:00、システムメンテナンスのため受付不可
■手売り先行
5/28(土)~
一般
7/10(日)10:00~
場所:新代田FEVER
OPEN 17:30/START 18:00
料金:前売¥3,000/当日¥3,500(1ドリンク別)
6/19(日)22:00~6/30(木)23:00
<一般発売>
7/23(土)~