間もなく開幕! ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』海宝直人・矢崎広インタビュー
矢崎広・海宝直人(撮影/岩村美佳)
トニー賞最優秀ミュージカル賞、グラミー賞などを受賞し、名匠クリント・イーストウッド監督による映画化も好評を博した伝説のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が、選り抜きの日本人キャストによって7月1日からシアタークリエで上演される(31日まで。)
演出を手がけるのは、蜷川幸雄の演出助手として鍛えられ、2014年に演出したミュージカル『The Beautiful Game』で読売演劇大賞の杉村春子賞と優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎。リードヴォーカルのフランキー・ヴァリ役は中川晃教、ほかの3人のメンバーはREDとWHITEというWキャストで演じる。
その2チームの中で、「ザ・フォー・シーズンズ」の数々の名曲を書き、優れたプロデュース能力を発揮し、今も現役として活躍するボブ・ゴーディ役を務めるのが、海宝直人と矢崎広。同じ役柄で作品に向き合う2人に、『ジャージー・ボーイズ』という作品のこと、出会いやお互いの魅力を語り合ってもらった演劇ぶっく6月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
矢崎広・海宝直人(撮影/岩村美佳)
優れたクリエーターならではのシビアさもある役柄
──『ジャージー・ボーイズ』という作品について、まず感じていることを教えてください。
海宝 僕は映画でしか観たことがないのですが、ジュークボックスミュージカルという形でありつつ、その楽曲を歌ったアーティスト本人を描く作品というのは、あまり他にないですよね。『マンマ・ミーア!!』にしても他のストーリーがつきますから。そういう意味で、楽曲の素晴らしさをライブとして楽しむこともできますし、それと同時にアーティストの人生を描いているドラマとしての面白さを楽しむこともできる。色々な楽しみ方のある作品だなと思いました。ミュージカルとライブの両方の醍醐味がありますね。
矢崎 僕も映画版を観て、初めて作品を知ったのですが、映画が公開された時に、先輩方から「『ジャージー・ボーイズ』面白いんだよ」という話を聞いて、映画館に観に行ったんです。確かにとても面白かったですし、シアター・オーブでの来日版の上演もあり、僕の周りでは『ジャージー・ボーイズ』ブームと言えるような状態だったんです。今回、自分がそんな作品に出ることになって改めて驚いています。プレッシャーもありますが、頑張って演じないといけないなと思っています。
──演じる役柄についてはいかがですか?
海宝 ボブ・ゴーディオさんは今もお元気でいらして、プロデュースもされている。更にこれだけ素晴らしい楽曲を書かれた方ですので、そういうクリエイティブで音楽的な部分を、演奏するシーンなどを通じて表していけたらいいなと思っています。
矢崎 僕もスタンスは同じですが、ボブ・ゴーディオさんはこの『ジャージー・ボーイズ』という作品中でも、「ザ・フォー・シーズンズ」やフランキー・ヴァリのプロデュースをどんどんされていく方だけに、ある意味すごくシビアな面も持ち合わせています。そして「ザ・フォー・シーズンズ」を、「フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズ」という形にして、フランキーを立てて自分は退く時の決断などは、フランキーをとても愛していて、成功させたいという気持ちと、プロデューサーとしてのシビアな目線の双方を強く感じるので、そこをどう演じるかですね。稽古を通じてそれぞれのチームでどんなボブ・ゴーディオになるか、皆さんと相談しながら作っていきたいと思います。
矢崎広(撮影/岩村美佳)
全く異なる個性が楽しいチームREDとチームWHITE
──お互いの目から見たそれぞれの魅力をどう感じていますか?
矢崎 僕が初めて声優の仕事をした『僕等がいた』(テレビアニメ・06年)という作品の現場に、学生服の海宝君が来ていたのが最初だよね。
海宝 高校生の時です。
矢崎 その後、1回電車で会ったりもしていて。
海宝 あ、そうそう!
矢崎 偶然なんだよね。乗り換えの時に僕の前に海宝君が立っていたという(笑)。
海宝 総武線でしたね(笑)。
矢崎 そういう縁があっての今回の『ジャージー・ボーイズ』なんだけど、ここ数年の海宝君の活躍は本当にすごいと思っています。今、勢いのある、そしてきっと色々なことを吸収している彼とダブルキャストということで、これは僕も頑張らないとなと。僕にとっても憧れの舞台に色々出ているし、学生服の海宝君がいつの間にかキラキラした海宝君になっている(笑)、という印象です。
海宝 僕もやはり『僕等がいた』の時の矢崎さんの印象がとても強くて、初めての声優の仕事だということだったのに、自然体で構えずにスッとやっていて、それがすごく魅力的だなと感じていました。アニメの声の仕事は、ついつい作ってしまったりしがちなのかなと思うのですが、それを本当にナチュラルにやりながらも、役にハマっていて、素敵な芝居をする方だなぁと思っていました。
海宝直人(撮影/岩村美佳)
──そんなお2人が、今回同じ役を演じるわけですから、話し合うことも多くなるかと思いますが。
矢崎 海宝君が年下なので、『僕等がいた』の時は僕がお兄ちゃん的な気持ちでいましたが、今回は海宝君からバンバン盗んでやろうと思っています(笑)。彼の今のような怒涛の仕事ぶりには何か秘密があるはずなので、それを吸収したいと思います。
海宝 同じ役で切磋琢磨できるのが、Wキャストの魅力ですよね。シングルキャストですと自分の役を観ることはできませんが、それを客観的に観ることができるのは、自分にとっても大きなチャンスですし楽しみです。もちろん先に行かれてしまった!と焦りが生まれることもあると思いますが、ああいうふうにやると素敵だなという発見もあったり、じゃあ今度は自分も取り入れてみようと思ったり、そういうところがWキャストだと刺激的だと思います。
──今回は「RED」と「WHITE」のチーム同士という形ですが、それぞれのチームの特色などは?
矢崎 皆さん先輩なので僕が言うのもおこがましいのですが、チームREDはジャージー・ボーイズたちのちょいワル感がすごく出ています(笑)。それは強く感じますね。
海宝 チームWHITEは、振りをお互いに確認しあったりしながら、とても和気藹々としていました。PV撮影の時から個性が出ていましたよね。
矢崎 アッキー(中川晃教)さんもそうおっしゃっていたから、それぞれが全然違う面白いものになるんじゃないかなと思います。
矢崎広・海宝直人(撮影/岩村美佳)
2つの新しい『ジャージー・ボーイズ』を体感してほしい
──楽曲の魅力についてはいかがですか?
海宝 僕は『ジャージー・ボーイズ』で初めて「ザ・フォー・シーズンズ」の曲を聞いた世代なのですが、今聞いても少しも古くない。とても面白いし楽しいですね。
矢崎 テレビなどで「ザ・フォー・シーズンズ」とは知らないまま聞いていた曲があったという方も、多いのではないかと思います。名曲揃いですし、彼らのファンの方はもちろん、色々な世代の方に楽しんで頂ける作品と楽曲の数々ですよね。
──では、改めて楽しみにされている方達に抱負とメッセージを。
海宝 演出の藤田俊太郎さんも「新しい『ジャージー・ボーイズ』を作る」とおっしゃっているので、僕自身とても楽しみですし、チャレンジのし甲斐があります。両チームで新しい『ジャージー・ボーイズ』を作っていきたいです。観に来てくださるお客様には、ミュージカルが好きな方はもちろん、音楽を聞きに、ライブを聞きにくる感覚の方にも、幅広く体感して頂けたらと思っています。
矢崎 やはり藤田さんの「新しいものを作りたい」という言葉に、自分として燃えるものがありました。海宝君をはじめ、僕よりミュージカル経験の豊富な共演者の方達ばかりの中で演じさせて頂けるのは、幸せなことだとワクワクしています。この気持ちのまま作品にぶつかっていって、お客様の期待も大きい作品だと思いますから、その期待に応えるのはもちろん、良い意味で裏切れるくらいのおもしろい舞台になればいいなと思っています。作品にも共演者にもしっかり食らいついて、頑張ります。
海宝直人(撮影/岩村美佳)
矢崎広(撮影/岩村美佳)
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
■日時:2016/7/1(金)~2016/7/31(日) ※プレビュー6/29(水)30(木)
■会場:シアタークリエ (東京都)
<フランキー・ヴァリ>中川晃教
<トミー・デヴィ―ト(Wキャスト)>藤岡正明/中河内雅貴
<ボブ・ゴーディオ(Wキャスト)>海宝直人/矢崎 広
<ニック・マッシ(Wキャスト)>福井晶一/吉原光夫
<ボブ・クルー>太田基裕
<ノーム・ワックスマン>戸井勝海
<ジップ・デカルロ>阿部 裕
綿引さやか、小此木まり、まりゑ、遠藤瑠美子、
大音智海、白石拓也、山野靖博、石川新太
■音楽:ボブ・ゴーディオ
■詞:ボブ・クルー
■翻訳:小田島恒志
■訳詞:高橋亜子
■演出:藤田俊太郎
■音楽監督:島 健
■音楽監督補・歌唱指導:福井小百合
■振付:新海絵理子