flumpoolが自らの殻を破ったアルバム『EGG』とそのツアー、集大成を観た
flumpool 撮影=古渓一道
flumpool 7th TOUR 2016 「WHAT ABOUT EGGS?」 2016.6.25 東京国際フォーラム・ホールA
flumpoolにとっておよそ3年半ぶりとなったフルアルバム『EGG』。バンドが作品を生み出すインターバルとして決して短くはない期間であり、しかもそれまでハイペースでリリースをしてきた彼らだけに、3年半という時間の経過がバンドにもたらしたものは非常に大きかったはずだ。メンバー個人でみても20代から30代になっている。そんな久々の新作を引っさげて幕を開けた今ツアーの14都市21公演目、セミファイナル。東京国際フォーラムで彼らがみせたものは、新たなフェーズへと進む意志と、変わらずに守り続けるべきものを確信した姿であった。
flumpool 撮影=古渓一道
flumpoolはとても華のあるバンドだ。それは見た目が、というだけの話ではない。もちろんルックスが良いこともあるかもしれないけれど、ギタリストの代役を募った件に代表されるような型にはまらない仕掛けや、エンタテインメント性を持たせたステージ作り、王道のド真ん中を射抜くようなポップなサウンドとストレートな言葉をそのまま届けることのできる楽曲センス……それらを当たり前のように成立させられること自体、彼らが華のあるバンドである証だ。そして、アルバム『EGG』は、そんな自身の強みを一旦傍に置くことも辞さず、flumpoolがロックバンドとして次のステージに進もうとした意欲作である。そこに収録される楽曲の数々は果たしてライブでどのように表現されるのだろうか。
flumpool 撮影=古渓一道
オープニングSEが流れ出し、ステージ貼られた紗幕に映し出される映像にヒビが入っていく。そこへ地球、大地、緑あふれる森、脱皮する蝶など、生命の息吹を感じさせるような映像が目まぐるしく映し出されたあと、紗幕中央の卵型のオブジェに並び立つ4人ーー山村隆太(Vo/G)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の姿が映った瞬間、大歓声が会場を包んだ。逆光状態でフラッシュが連打される中、一曲目として披露されたのは「解放区」。アッパーな楽曲ではないものの、内なる興奮が確実にジワジワと増していくような、スケールの大きいナンバー。マイクスタンドを両手でしっかりと握り、高らかに歌い上げる山村は実に堂々としている。そのまま阪井のギターが唸りを上げ「覚醒アイデンティティ」へと繋ぐと、場内にはレーザーが乱れ飛ぶなど、エッジの効いたハードな演出が続く。このままロックモードが続くかと思いきや、走り出すピアノが奏でたのは「夏よ止めないで ~You’re Romantic~」。「東京! もうすぐ夏、今日は一緒に燃え尽きようぜ」という山村の声に導かれ、場内の空気は一転して爽やかなサマーチューンに染まった。尼川の軽やかなベースも心地良い。
flumpool 撮影=古渓一道
陽性の空気が満ちたところで、これまた彼らの強みにもなっているMCコーナー。山村と阪井がお互いに話を振ったりツッコんだりしながら進行し、尼川が時折そこに一石を投じ、それらを小倉が見守るという構図は、彼らにしか出せないグルーヴと言っても良い。この日は何かを勘違いしたらしい山村が何度も「3階席」に向けて呼びかけ、阪井が「3階席、どう見ても無いよ」と冷静に指摘(ホールAは2階席まで)。「……え?」という山村の素のリアクションに爆笑が起きた。
flumpool 撮影=古渓一道
『EGG』は収録楽曲の多彩さも特筆すべきで、彼らのクリエイティビティが存分に発揮された作品であるが、ライブでもサポートの磯貝サイモン(Key/G)と吉田翔平(Vn)も交えた自在なバンドアンサンブルで高い再現性を見せてくれた。シティポップ風味の「DILEMMA」、UKロックを思わせるギターと優しいメロディが響いた「Dear my friend」。重々しいシーケンスや掻き鳴らされるノイズで場内を圧倒したのは「輪廻」や、「絶体絶命!!!」での一旦紗幕を落として文字や映像を投影しながらのスリリングな演奏も見事。7拍子の変則的なインプロから雪崩れ込んだ「夜は眠れるかい?」では、フードを目深にかぶった山村によるエフェクトが掛かった声色と歯切れの良いサウンドで、美しく危険な音世界を構築してみせた。かと思えば「LINE」ではビターな低音ボーカルと寄り添うようなハーモニーで場内を酔わせる。「産声」のおおらかなメロディとアコースティックサウンドは力強い生命力を、「明日キミが泣かないように」のグロッケンやピアノといったバンドサウンドの枠に収まらない音色は深みのある立体的音像を、それぞれ描き出してゆったりと会場を包んでいった。
flumpool 撮影=古渓一道
そうやって様々な手法を駆使しながら”最新型のflumpool”を提示していく一方で、これまでも大切に演奏されファンにも愛され続けてきた楽曲もちゃんと用意されていた。「今日の出会いも、アルバム『EGG』も、みんなこの曲から始まりました。みんなも多分知っている曲だと思います」と山村が語り、尼川のベースとストリングスが「花になれ」のイントロを奏で出すと一斉に歓喜の声が上がる。今まで何度となく演奏され、そのたびに聴く者の心を揺さぶってきた名曲。小倉が淡々としながらも温かみを感じさせるビートを刻み、阪井と尼川が向かい合い楽しそうに音を重ねる。山村は歌いながら笑みをこぼす。新曲が多く披露されあらゆる面で新しさを感じられる一方、そんな見慣れたシーンもより際立つ。
flumpool 撮影=古渓一道
まばゆい光の中でオーディエンスが飛び跳ねて会場を揺るがした「reboot ~あきらめない詩~」が、まさにアンセムといった雰囲気で歓喜を呼び、ライブをクライマックスへといざない、フロント3人が代わる代わるメインボーカルを務める「Hydrangea」へ。そこからファンキーなベースラインとスクエアなリズムが腰にくる「夏Dive」と繋ぎ、ラストは「World beats」だった。虹色に照らされた場内を無数のタオルが旋回し、大シンガロングが巻き起こる。この人力EDMとでもいうべきダンサブルなナンバーは、『EGG』収録曲の中でも一際ライブでの輝きを放っており、カラフルな紙吹雪の舞い散る中、チアフルに本編を締めくくった。
flumpool 撮影=古渓一道
アンコール。山村は『EGG』のリリースを経た心境を少し明かしてくれた。「自分たち自身と向き合って、自分たちの殻を破ってこれて良かった」とした上で、「前のflumpoolの方が良かったって言われることもあるよ」と。バンドが自らに変革を求めること、前に進んでいくことは、必ずしもすべてのファンにとって喜ばしいわけではないのかもしれない。それでも彼らは止まることを良しとせず変化を選んだ。山村の口から、自分たちの信じる方へ進んでいく意志と、そんなバンドを信じてついてきてくれるファンへの感謝をまっすぐに伝えたあと、ラストナンバーとして「明日への賛歌」が歌われる。力強い言葉の一つ一つを、熱をこもった歌唱と演奏で届けた彼ら。最後にはオフィシャルファンクラブ会員限定ツアー開催という嬉しい報せも飛び出し、ライブは幕を下ろした。
flumpool 撮影=古渓一道
『EGG』リリース前のインタビューで、彼らは「これまでのお互いのノウハウがあって、それで今バチバチやりあってる」「幼なじみ感は、抜けました」そう話してくれた。30代を迎えた彼らは『EGG』とそのツアーで、要所においてはちゃんとこれまで培ってきたベースを踏襲しながら精度を上げていた。そこから大胆に一歩も二歩も踏み出したバンドとしての表現の幅と奥行きも体現していた。まさに「殻を破った」彼ら。次なる一手がどんなに王道でも、どんなに意外な角度から飛んできても、最早不思議ではない、そんなバンドになった。だが、どちらに転んでもきっと、flumpoolの華は聴くものを魅了してくれるはずだ。
撮影=古渓一道 レポート・文=風間大洋
flumpool 撮影=古渓一道
flumpool tour 2016 「WHAT ABOUT EGGS?」
flumpool tour 2016 「WHAT ABOUT EGGS?」 ~Taiwan Special~
◆日程:2016年7月9日(土)
◆会場:台北国際会議中心(TICC)
◆START:19:30
◆プレイガイド:拓元售票https://tixcraft.com
◆問い合わせ:拓元客服諮詢專線 02-2627-2669(平日 10:00-19:00)
flumpool tour 2016 「WHAT ABOUT EGGS?」 ~Singapore Special~
◆日程:2016年7月23日(土)
◆会場:MILLIAN(3 Sentosa Gateway #01-05 Singapore 098544)https://millian.sg
◆OPEN/START:19:00 / 20:00
◆プレイガイド:Peatix: http://peatix.com/?lang=en-sg
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