『ミュージカル「黒執事」~NOAH'S ARK CIRCUS~』2度目のセバスチャン・ミカエリス役を演じる古川雄大の今の気持ち
古川雄大 (撮影=岩間辰徳)
原作コミックの深いドラマ性と美意識を見事に舞台化したミュージカル「黒執事」が、シリーズ最新作である『ミュージカル「黒執事」~NOAH'S ARK CIRCUS~』の上演を発表した。座長のセバスチャン・ミカエリス役を務めるのは、数々のミュージカル作品での活躍も目覚ましい古川雄大。前作『‐地に燃えるリコリス2015‐』に引き続き「悪魔で執事」な黒服のセバスに扮する“二度目の初心”を語ってもらった。
──今回、古川さんがセバスを続投されるとの発表は、作品ファンにも非常に嬉しいニュースとして届いていました。
ありがとうございます。舞台の本番中はよくファンの方からお手紙をいただくんですけど、そこにも「黒執事楽しみに待ってました」と書いてくださる方も多くて。期待してもらえてるのってすごくありがたいことですし、それにまたしっかり応えていきたいというプレッシャーも改めて感じているところです。
──ミュージカル「黒執事」は2009年が初演、古川さんは前回の『‐地に燃えるリコリス2015‐』よりセバス役をバトンタッチしています。まずは人気シリーズへの途中参加という点でのプレッシャーも経験して。
そうですね。役を引き継いだ前回は……でも、思い切りやれたなという気持ちです。今回は僕にとって2度目のセバスになるわけですが、さらにセバスを深めたい気持ちと共に、原作を読み、台本を読み、悩んでいく日々が始まるんだなぁと改めて覚悟しています。
──やはり、最初に立ち返るのは原作ですか?
まずはいち『黒執事』ファンとして原作を読んだときに自分の心に残ったモノ、それをお客様にもお届けしたいなって。前回もそうでしたが、余計なコトを抜きにして自分自身が作品から受けたインスピレーションや感動に誠実に創る──。それは、常に大切にしていますね。
──今回のストーリーは原作の〔サーカス編〕。すでに解禁されているメインビジュアルからも、大いに想像が湧いてきます。
サーカスのメンバーもたくさん出てきますし、いろんなキャラクターにそれぞれの見せ場がいっぱいあって、すごく盛り上がるんじゃないかなぁ。ビジュアル的にも舞台にするのに相性のいいエピソードだと思います。チラッと聞いたところでは……ま、サーカスですからね。空中ブランコとか、パフォーマンスの面でも各々で“難しいけれど挑戦!”という表現もありますし、お屋敷の使用人トリオ(バルドロイ・フィニアン・メイリン)がいよいよ本性を現して大活躍するのも嬉しいし、輝馬くんのウィリアムとの対決も楽しみです。もちろん、新たなミュージカルナンバーもどんな楽曲が出てくるのか待ち遠しいです。
──セバスが仕えるファントムファイヴ家の若き当主・シエル役の内川蓮生さんは、今回からの参加です。
まだ数回会えただけなので、早く打ち解けて本音を言ってもらえる関係になれたら。これが初舞台と聞いているので、まずは現場を愉しんでくれたらいいな。そのために僕も……そう、それこそセバスのようにいつも側にいて助けられるようにって思ってます。彼が笑顔になれるようにしたい。もし大好きなお菓子があるんだったら、もう箱で買って差し入れしておきますよ(笑)。
セバスチャン・ミカエリス役 古川雄大 (撮影=岩間辰徳)
──古川さん自身はつい先日ミュージカル『1789‐バスティーユの恋人たち‐』が無事千秋楽を迎え、今後もミュージカル『エリザベート』、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の出演を控えるなど、大作への参加が続いています。そして、並行していわゆる2・5次元舞台と呼ばれるミュージカル『黒執事』にも出演されていますが……。
自分としてはあまりそこでの線引きはしてないんです。単純に、どちらもそれぞれに個性と魅力がありますし、観たら絶対面白いですから。
──表現者として両方を体感している“強み”を感じることは?
強み……なんだろう……難しいですね。今はまだパッとは思い浮かびませんが、こういうジャンルに捕われない活動をもっと活発にどんどんやり続けていったら、絶対この先にたくさんのことが得られるだろうという確信はあります。今はそういうすごく抽象的な言い方しかできないんですけど(笑)、必ず糧となるでしょうね。あ、ちょっと具体的なコトで言うと、『黒執事』で僕を観てくださった方が「今度は帝劇のミュージカルに行ってみよう」と思ってくださるのもひとつの結果ですし、自分自身でなら『エリザベート』で体験した現代劇にはない重厚感とかは『黒執事』の世界感とも共通する部分があって、そこは前回の舞台の上で自然に活かせていけたように思います。
セバスチャン・ミカエリス役 古川雄大 (撮影=岩間辰徳)
──『~NOAH’S ARK CIRCUS~』は、特殊なサーカス内で起きる悲劇です。決してハッピーエンドではないけれど、そここそが『黒執事』という作品の揺るぎない個性であり魅力でもあり。サーカス編でのセバスはどんなセバスになりそうですか?
全体としては、さらに原作の魅力を忠実に描くエピソードになるような気はしています。僕は、華やかで賑やかなキャラクター揃いの中、より悪魔らしく、“ひっそりと存在する”というイメージでしょうか。スポットが当たる場所があればあるほど、セバスが影でいることで主役になれたら。セバスは基本、人間を見下してバカにしているというのがあるんですが。
──人外として永い永い時間、人間たちの愚行を散々見てきていますからね。
恐らく。そのセバスが、シエルがさまざまな事件や哀しいアクシデントに遭遇するたびに強くなっていく様とか人として成長していくことに、内心結構な衝撃を受けていると思うんですよ。僕はそういう「愚かかもしれないけれど、人間はあがいてあがいて強くなっていくんだ」という部分が『黒執事』の大切なテーマのひとつなんじゃないかと思っています。なので、セバスはとことん人間を見下す悪魔として存在して、あくまでも人間をバカにして、でもシエルを心底大切に扱って……という矛盾を突き詰めたい。今までのセバスの中にはなかった“特別な主従関係”、非常に複雑に深く強く繋がっていくセバスとシエルの姿が感じられるほどに、お客様にも作品の「核」の部分がしっかり伝わっていくんじゃないでしょうか。
──華やかさと残酷さが表裏一体で紡がれていくサーカス編。楽しみです。
演出の毛利さんも「ポップさをどんどん排除していきたい」とおっしゃっていて。それは決してエンタメ性が弱まるということではなく、より原作の持っている魅力を……ダークな部分も含めて、『黒執事』にしかない世界観をさらに深く追究していきたいとの思いですからね。僕たちもそこに向かって一丸となり、新作を立ち上げていきたいと思います。
セバスチャン・ミカエリス役 古川雄大 (撮影=岩間辰徳)
撮影=岩間辰徳 インタビュー・文=横澤由香
日時:2016年11月18日~11月27日
会場:TOKYO DOME CITY HALL
【福岡公演】
日時:2016年12月3日~12月4日
会場:キャナルシティ劇場
【兵庫公演】
日時:2016年12月9日~12月11日
会場:あましんアルカイックホール
【愛知公演】
日時:2016年12月17日~18日
会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
セバスチャン・ミカエリス:古川雄大
シエル・ファントムハイヴ:内川蓮生
ビースト:田野アサミ
ダガー:三津谷 亮
ウィリアム・T・スピアーズ:輝馬
アグニ:TAKUYA(CROSS GENE)
フィニアン:河原田巧也
メイリン:坂田しおり
葬儀屋:和泉宗兵
フレッド・アバーライン:髙木 俊
シャープ・ハンクス:寺山武志
ドール:設楽銀河
ピーター:倉知あゆか(G-Rockets)
ウェンディ:知念紗耶(G-Rockets)
ジャンボ:後藤剛範
ケルヴィン男爵:小手伸也
先生:姜 暢雄
※ドール役で出演を予定しておりました松井月杜は、変声期により本来のパフォー マンスを発揮できないという事情から、今回は大事をとりキャストを交代することにいたしました。新たなドール役は設楽銀河が務めさせていただきます。
■脚本:竜崎だいち/毛利亘宏
■演出:毛利亘宏
Sサイド席は、ステージに近いアリーナ席やバルコニー席を含みます。申込時に座席番号を確認して購入いただけます。
※サイド席は、舞台の一部で見えない箇所がございます。あらかじめご了承ください。