これぞアナザーサイドのGLIM SPANKY キネマ倶楽部に描き出したさまざまな"夜"の情景

レポート
音楽
2016.7.10
GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

画像を全て表示(7件)

Velvet Theater 2016 2016.7.9 東京キネマ倶楽部

「褒めろよ」も「ワイルド・サイドを行け」もやらないライブだった。

7月9日、東京キネマ倶楽部を舞台に2年連続の開催となったGLIM SPANKYのワンマンライブ『Velvet Theater』。ツアーではなく単発の開催で、コンセプトが「真夜中だけ現れるサーカス」ということもあり、夜を歌った楽曲、夜の空気をまとった楽曲によって構成されていた。松尾レミ(Vo/G)から、バンド名について”GLIM”は物語性や音楽的にはサイケやアシッドフォークといったジャンルを表し、”SPANKY”は攻撃的なロックを表しているのだ、という説明もあったが、そこでいえばこの日披露されたのは圧倒的に”GLIM”側の楽曲。それゆえ夜の世界へと深く深く沈み込み、鳴らされる音にとろけていくような気持ち良さを存分に味あわせてくれた。

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

会場がキネマ倶楽部であったこと自体も重要な要素。半円形のフロア、2階席もステージのほぼ真横から半円形を描き、柱や壁面などはどこか妖しげで、旧時代のダンスホールやキャバレーにタイムスリップしたような、レトロな会場である。そこにサーカスを想起させる三角旗と裸電球が吊られ、ステージ後方の暗幕にも電球を並べてツアータイトルを浮かび上がらせていた。演奏中には隣に月も浮かぶ仕掛けだ。

ステージに現れた2人。亀本寛貴(G)はいつものようにロックギタリスト然とした細身の格好だが、松尾は裾がふわっと広がった白のワンピース、アメリカ中部あたりのカントリー娘みたいな雰囲気だ。軽く裾を持ちあげてクイっと会釈をすると場内が湧く。SEが止み、一瞬の静寂が訪れた会場は、松尾のスーッと息を吸う音で一気に惹きこまれる。ライブタイトルにもなっている「ヴェルヴェットシアター」。1コーラスたっぷり弾き語ったあとバンドINし、気だるさを帯びたドラムと枯れたギターの音色が会場を外界から遮断し深度を増していく印象だ。アップライトベースがボン、ボン、と一定のリズムを刻んだあと、2曲目の楽曲は松尾の朗読風の語りから。真夜中にしか現れない街に向かった男の話だ。サウンドは幻想的で、人力のアンビエント然とした佇まいからじわじわと熱を帯びていく。外はまだ明るい時間だが、ここはすっかり深夜の香りが充満する。

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

先にも述べたが、GLIM SPANKYを構成する要素のうち、いかにもロック然としたアップテンポな楽曲ではない、ブルース、フォーク、サイケといった色が全面に押し出た楽曲が並んだこの日。それに加え、間もなくリリースされる新アルバム『Next One』に収録される楽曲をはじめとした新曲や未発表曲がかなりの割合で入っていたのだが、オーディエンスの反応は上々だ。元より彼女たちのライブは思い思いに楽しむスタイル。手を挙げる人もいれば、時折頷くようにしながら音に身を委ねる人もいる。また、キメの部分やギターソロなど「カッコいいな」と思わされる箇所では自然と拍手や手笛が起きるあたり、海外のライブのような雰囲気だ。

「焦燥」「踊りに行こうぜ」と比較的ハードな楽曲を並べたあとは、新曲「grand port」。アメリカ南部の香りがするビンテージなギターリフからスタートするのだが、サビではシンガロングできるコーラスと軽快な4つ打ちのリズムへと展開する楽曲だ。続いても新曲「NIGHT LAN DOT」。ゆったりとしたテンポのブルージーなナンバーは叙情的でありながら、どこか荒涼とした景色を描き出す。この曲は松尾のルーツでもあり敬愛する小説家・稲垣足穂とシンガー・あがた森魚の作品から着想をえた楽曲で、この『Velvet Theater』のコンセプトとも深い関わりがある、という話もあった。普段のライブ以上に松尾の嗜好や原点に近いライブ、生身を感じられるライブとも言えるだろう。

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

夜の曲、と一言で言っても、GLIM SPANKYの奏でる夜は様々な情景を見せる。月の浮かぶ広野、寂れたネオンが瞬く街角、幻想的な深い黒、青白く浮かび上がる夜明けの風景……それらを楽曲と歌詞によって、また音色とフレーズのチョイスによって巧みに描き出していくのだ。「夜明けのフォーク」ではUKギターロックのエッセンスと起伏に富んだ展開がライブ全体の良いアクセントにもなっていたし、歪んだギターと4つ打ちがダーティーな「いざメキシコへ」はガンガン腰にくる。「闇に目を凝らせば」では、ゆったりとしたナンバーに乗せ四家卯大(しか うだい)氏によるチェロと亀本のギターが響き合う。中学生の頃に見たウッドストックの映像から着想を得たという「ミュージック・フリーク」は、アコギの不協和音とアップライトベースが主役のかなりサイケに寄った楽曲。徹底して60’s~70’sの空気を纏わせながらも、GLIM SPANKYの楽曲が実に多彩であることを改めて感じることのできるライブでもあった。

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

後半に入ると、これまでも多くのライブで披露されてきた代表曲が続いた。ハイハットがチャチャチャ、チャという聞き覚えのある刻みを入れ、観客がクラップで応えてスタートしたのは「リアル鬼ごっこ」。ここまでの楽曲でもそうだが、松尾の歌は本当にブレない。低く抑えたクールな歌い回しと天性のハスキーボイスを張り上げる高音パートの対比も鮮やかで、その表現力も深化している。ラストは「大人になったら」。アウトロで亀本のギターソロが余韻たっぷりに歌う。スッと数歩前に出て体を反らせ、アドリブを入れながらテクニカルなフレーズも当たり前のように弾きまくる。往年の(ジェフ・ベックやクラプトンのような)ギターヒーロー然とした佇まいに磨きがかかっていた。MCもほとんど挟まずに新曲もたっぷり入れた本編の16曲がここで終了。2人はステージを後にする。

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

アンコール。夜のサーカスの幻想的空間は本編までで、ここでは何気ない会話も繰り広げられる。松尾は、この日のライブに夜行バスで遠征したというファンの報告を喜び、かつては自分も仮病で学校を休んで名古屋まで遠征していた(そしてバレた)と明かす。亀本は、お祝いに届いた花の中に「麦わら海賊団」からのものがあったと嬉しそう。ここで、「麦わら海賊団」といえば……映画『ONE PIECE FILM GOLD』主題歌になった「怒りをくれよ」を投下した。勢いよく疾走し各パートとも手数の多いこの曲は、この日のセットリストの中では最も激しいナンバー。当然、場内も大いに盛り上がる。そして、あたたかく郷愁を誘うギターが導く「ロルカ」へ。
<さようならだね、今日も一日ありがとう 明日もお互い元気でありますように>
最後は優しく寄り添うように『Velvet Theater』を締めくくった。

ジャニスの再来!とか60’sビンテージロック・リバイバルの旗手!という風に語られがちなGLIM SPANKY。確かにそれも間違いではないが、それは”SPANKY”のほう。実はもっともっと引き出しが多く造詣も深い。言い方はアレだがマニアック。この日はその一端を感じさせる”GLIM”なステージを存分に魅せてくれた。どちらもあって”GLIM SPANKY”。どちらかに偏ることなく、より鋭角に尖りながら大衆に届く王道のロックを鳴らしていってほしいと思う。その中で、普段とはガラリと違う楽曲で挑むこの『Velvet Theater』シリーズが果たす役割はとても大きいはずだ。


撮影=上飯坂一 レポート・文=風間大洋

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

GLIM SPANKY Photo by KAMIIISAKA HAJIME

セットリスト
Velvet Theater 2016 2016.7.9 東京キネマ倶楽部
1. ヴェルヴェットシアター
2. タイトル未定
3. MIDNIGHT CIRCUS
4. 焦燥
5. 踊りに行こうぜ
6. grand port
7. NIGHT LAN DOT
8. 夜明けのフォーク
9. サンライズジャーニー
10. Gypsy
11. いざメキシコへ
12. 闇に目を凝らせば
13. ミュージック・フリーク
14. WONDER ALONE
15. リアル鬼ごっこ
16. 大人になったら
[ENCORE]
17. 怒りをくれよ
18. ロルカ

 

リリース・ツアー情報
セカンド・アルバム『Next One』
初回盤:CD+DVD(TYCT-69104/¥3700+税)
通常盤:CD(TYCT-60086/¥2700+税)
CD:映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌「怒りをくれよ」を含めた全10曲収録
 
【CD】
1. NEXT ONE(ブラインドサッカー日本代表公式ソング)
2. 怒りをくれよ(7月23日(土)公開 映画『ONE PIECE FILM GOLD』 主題歌)
3. 闇に目を凝らせば (10月8日(土)公開 映画『少女』主題歌)
4. grand port
5. 時代のヒーロー (福田雄一監督Amazonオリジナルドラマ『宇宙の仕事』主題歌)
6. 話をしよう (高橋留美子原作 NHK Eテレアニメ「境界のRINNE」第2シリーズエンディングテーマ)
7. NIGHT LAN DOT      
8. いざメキシコへ
9. 風に唄えば
10. ワイルド・サイドを行け

【DVD】
“ワイルド・サイドを行け”ツアー(2016.4.16恵比寿LIQUID ROOM)ライブ映像約50分収録予定
ワイルド・サイドを行け
褒めろよ
リアル鬼ごっこ
ダミーロックーとブルース
夜明けのフォーク
BOYS&GIRLS
時代のヒーロー
NEXT ONE
太陽を目指せ
大人になったら
話をしよう
CD購入先着特典「ONE PIECE スペシャル黄金スリーブケース」
※一部対象外の店舗、WEBストアもございます。

■iTunes 『Next One』
SmartURL→ smarturl.it/it_glim_nextone
Po.st URL→ http://po.st/itglimnext
元URL → https://itunes.apple.com/jp/album/id1125483077?app=itunes&at=10I3LI
*「闇に目を凝らせば」は7月8日(金)0時より先行配信スタート
 
■レコチョク 「闇に目を凝らせば」
Po.st URL→http://po.st/reco_glim_yami
元URL →http://recochoku.com/u0/yaminimewokoraseba/
*「闇に目を凝らせば」は7月8日(金)0時より先行配信スタート

『Next One TOUR 2016』
9/22(祝・木)長野 CLUB JUNK BOX
9/24(土)京都磔磔
9/25(日)高松TOONICE
9/30(金)福岡the voodoo lounge
10/1(土)岡山ペパーランド
10/6(木)金沢vanvan V4
10/7(金)新潟CLUB RIVERST
10/10(祝・月)札幌BESSIE HALL
10/14(金)仙台MACANA
10/16(日)広島CAVE-BE
10/22(土)梅田umeda AKASO
10/28(金)名古屋BOTTOM LINE
10/30(日)新木場STUDIO COAST
 
≪チケット先行予約スケジュール≫
CD封入先行:7月20日(水)12:00~7月31日(日)23:00 <受付方式:先着>

シェア / 保存先を選択