不朽の名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』ついに開幕! 霧矢大夢インタビュー 

2016.7.16
インタビュー
舞台

霧矢大夢 撮影/岩村美佳



ロンドンの下町の花売り娘が、言語学者のレッスンを経て麗しい貴婦人に変貌する。
オードリー・ヘップバーン主演の映画版でも広く親しまれ、世界初演から60年を数える不朽の名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』。心躍る珠玉の名曲に乗せて、ミュージカルの醍醐味を全て詰め込んだ舞台が、新たなキャストを加えて、7月10日に東京芸術劇場 プレイハウスで開幕した!(8月7日まで。その後、名古屋・大阪公演もあり)

日本初演50年を期して、2013年に演出を一新。長い歴史の中からリボーン(再誕生)した『マイ・フェア・レディ』で、再びヒロイン・イライザをWキャストで演じる霧矢大夢。宝塚月組の男役トップスターとして活躍したのちの、女優としてのスタートでもあった2013年の舞台から3年。多くの舞台で多彩な経験を積んできた彼女の目に今、イライザ、そしてこの作品はどんな風に写っているのだろうか? 演劇ぶっく8月号の記事を別バージョンの写真とともにご紹介。
 

霧矢大夢 撮影/岩村美佳

絶妙に描かれる男女のバランスの機微
 
──初演を経て、『マイ・フェア・レディ』という作品、またイライザについてどう感じていますか?
 
英国の社会背景も描かれていて、かつ楽しいミュージカルに仕上がっていて、私自身、長年親しんできた作品でしたが、いざ演じるとなるとその楽しさをきちんとお客様にお伝えする大変さがありました。一見、「シンデレラ・ストーリー」なのですが、イライザのどんな状況にも屈しない強い気持ち、繊細さとたくましさをすごく感じます。レッスンのシーンなどもコミカルに描かれている中にも、彼女がしている苦労をちゃんとにじませたいなと思いましたし、ただ綺麗なドレスを着させてもらって喜んでいるというのではなく、皆が応援したくなるような向上心を持った健気な女性だと思います。そもそも何故イライザがヒギンズの邸に行ったのかと言えば、スキルアップしたかったからで、それは現代社会の女性にも通じるところだし、打たれ強くて、冷静な分析もできる女性の強さを感じます。と言っても、じゃあ「男性はいらない、1人で生きていける!」と思っているのかと言えばそうではなくて、やはりイライザはヒギンズを頼りにしているし、彼に認められたいと思っている。そういう男女のパワーバランスの機微も描かれているので、心の距離感も大切にしています。
 
──そうした繊細な関係の相手である、寺脇康文さんのヒギンズ教授の魅力は?
 
普段の寺脇さんも色々な着眼点をお持ちのとても楽しい方で、稽古場で起きたことに対してもすかさずツッコんでくださる方なのですが、そういう茶目っ気や、やんちゃ感がヒギンズによく表れています。一方で兄貴分的な面も加味されて、温かみがあって頼れて、でも面白いところもある、寺脇さんならではのヒギンズになっているのが魅力だと思います。今回再演に当たって演出のG2さんともお話ししたのですが、イライザとヒギンズは、ストーリー的には、第一印象最悪だったカップルが、いつしか惹かれあうという王道の恋愛パターンに即していますが、それだけではなく、美しい言葉を身に着けてスキルアップしたいイライザと、言語によって人は変われるというその可能性を信じているヒギンズという、同じ目標を持っている2人だということをちゃんと持っていたい。その根っこにある思いが、楽しい場面やミュージカルナンバーにかき消されないように挑みたいなと思っています。
 

霧矢大夢 撮影/岩村美佳

再演といっても決して同じものではない
 
──Wキャストでイライザを演じる真飛聖さんと共に稽古されていかがですか?
 
自分の役柄を客観的に観られる機会でもありますし、同じ役に対して違うアプローチをしている人が近くにいるということでもあるので、その中で如何に自分がブレずにいられるかが試される場ともなっています。お互いが掴んできたイライザ像があるので、発見も多くありながら、自分をしっかり固める必要性もあり、面白さと難しさの両方がありますね。でもシングルキャストでは決してできない、良い経験をさせて頂いています。
 
──ミュージカルナンバーも、名曲揃いですが。
 
その名曲だというところで、まずハードルが高いです。皆さんが名曲だと思っているし、メロディをよくご存知という難しさがあります。自分自身も知り過ぎているがために、役としてきちんと歌い込めるまでには時間がかかるので、日々積み重ねです。
 
──再演に当たって新たな目標などはありますか?
 
もちろん前回よりも絶対にブラッシュアップしていきたいという思いは強いですし、新しいキャストの方も入られて、出演者側だけでなく、スタッフサイドにもより良いものにして行こうという思いがあります。また、昨年『ラ・マンチャの男』に出演させて頂いて、私は初参加でしたが、(松本)幸四郎さんをはじめ、身体に役が染みついてしまうほど長く演じている方々が、再演に際しては、また新たにもがいていらっしゃる。そういう姿を拝見しましたので、再演と言っても決して同じものではないのだなと。今回の『マイ・フェア・レディ』も、前回公演から3年の間に私も歳も重ね、周りの状況も変化し、経験も積んで来た中で、またもう一度イライザを演じさせて頂ける。その機会に感謝して、これだけ長く愛され続けてきた作品に出演させて頂く誇りを持って、取り組みたいです。宝塚卒業直後だった前回の必死さと一生懸命さは保ちつつ、周りの空気も感じられる余裕を持って演じていきたいです。
 

霧矢大夢 撮影/岩村美佳

きりやひろむ○大阪府出身。94年宝塚歌劇団で初舞台。10年月組トップスターに。12年宝塚退団後、13年『マイ・フェア・レディ』のイライザ役で女優として活動を開始。舞台を中心に、ライブ活動も積極的に展開している。近年の主な舞台作品に、『I DO ! I DO ! 』『ヴェローナの二紳士』『ラ・マンチャの男』『レミング』『THE LAST FLAPPER』などがあり、17年には『ビッグ・フィッシュ』への出演が控えている。
 

〈公演情報〉



ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
脚本・作詞◇アラン・ジェイ・ラーナー
音楽◇フレデリック・ロウ 翻訳・訳詞・演出◇G2
出演◇霧矢大夢/真飛聖(Wキャスト) 寺脇康文 田山涼成
松尾貴史 寿ひずる 水田航生 麻生かほ里 高橋惠子 他
●7/10~8/7◎東京芸術劇場プレイハウス
〈料金〉S席¥12,500 A席¥8,000(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
●8/13~14◎愛知県芸術劇場大ホール
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466 
●8/20~22◎梅田芸術劇場メインホール
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800
http://www.tohostage.com/myfairlady/ 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
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