冒険の船旅へ一緒に出かけよう!『ソラオの世界』西田シャトナー・多和田秀弥 インタビュー
西田シャトナー・多和田秀弥
演劇界の革命児として次々に話題作を演出する西田シャトナー。その代表作のひとつ『ソラオの世界』が、彼のプロジェクト「SHATNER of WONDER」の第4弾として、7月28日から31日まで、Zeppブルーシアター六本木で上演される。
ある日昏睡状態に陥り、自分の夢の中に閉じ込められてしまったソラオ。
普通なら目覚めようと必死になるはずなのに、能天気なソラオはどうせならと夢の世界を楽しみ始める。現実ではテキトーだったバンド活動もメジャーデビュー、片想いだったヨルダさんとも恋人同士になり、夢の世界では輝いていくソラオの日々!
だが、この世界の遠い果てから夢の主を食い殺すほどの凶暴な魔物が近づいてくる。所詮夢の中の出来事なのか、それとも夢の中では済まされないのか?
夢と現実をめぐる孤独なソラオの冒険譚!
主演の多和田秀弥は、2011年ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで手塚国光役を演じて人気になり、また『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015年)では追加戦士として戦隊史上最速加入した。映像でも活躍中で、ドラマ『不機嫌な果実』への出演、『めざましテレビ』(CX)でレポーターもつとめるなど人気急上昇の若手俳優。初の主演にひときわ期待が集まる。また共演には小野建斗、平牧仁、桑野晃輔、はねゆり、加藤啓、村田充など、若手人気俳優から実力派までが顔を並べている。
その開幕を前に、西田シャトナーと多和田秀弥が『ソラオの世界』について語った演劇ぶっく8月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
西田シャトナー・多和田秀弥
スターニンジャーが何かやってる!
──今回のソラオ役、多和田さんの印象はいかがですか?
西田 僕は最近、たとえば「戦隊もの」をテレビで観て、その人が稽古場にいることがちょっと嬉しいんです(笑)。多和田くんはスターニンジャーですからね。だから台本もがんばるけど、その人と一緒になるんだという気持ちのセッションを、劇場にそのまま持って行きたいというか、大げさに言うなら「わ! スターニンジャーが何かやってる!」という僕の気分を、そのままお客さんにも観てもらいたい。だから多和田くんに何してもらったら、お客さん嬉しいのかなとか考えるんです。
多和田 嬉しいです。そんなふうに見てくださっていたんだと。
西田 今、ちょっと時代が一巡りしてきて、昔からあった「芝居を観ることは役者を観る」という、歌舞伎などはそうですが、演者を見る楽しさから入ってくる人が多いんです。僕もむしろそのほうが好きで、その揺り戻してきた時代の初まりの頃に『ソラオの世界』は作ったので、今回は改めてそういう方向を意識して作ろうと思っています。
多和田 もしかしてそれと繋がるのかなと思うのですが、西田さんのお芝居はどこまでが台本なのかアドリブなのかわからないところがあって、台本を見てみたいな、明日はまた違う感じになるのならそれも観てみたいなとか、そんなことを思わせてくれるんです。
西田 セッションの出来がいいときはそうなるんです(笑)。
多和田 そういう空間に僕が入ったらどうなるんだろうと、いつも想像していたので、今回、それが確かめられるのが嬉しいです。
西田シャトナー・多和田秀弥
何が夢で何が現実かわからないのが「生きること」
──『ソラオの世界』が生まれたきっかけというのは?
西田 高校時代に、夢で自分の50年間を見てしまったんです。目覚めて1週間くらい現実に戻りにくくて、何が夢で何が現実かわからないような。まるで「胡蝶の夢」みたいな話ですけど、あの夢の中で一緒に暮らしていた家族はどこにいってしまったのか、もしかしたら僕の意識が及ばないような深層で生きてるのかもしれないとか。夢の中の友人たちにまた会えるのだろうかとか。そう考えると、現実で会ったあの人は今も生きているのだろうかと思うし、自分が自分なのかさえわからなくなるんです。でもわからない中に答を探そうとするのではなく、わからなさの中に世界の美しさはあるような気がして、そういう果てしのなさを演劇でも体験できないかなと思うんです。
多和田 僕は夢をあまり見ないんです。インパクトのある夢でも起きると忘れてしまって(笑)。でも夢を見たはずの自分が確かにいたから、そういう感覚なのかなと。
西田 たとえばスターニンジャーを多和田くんが演じなくなっても、観た人はまだいると思っている。多和田くんが演じる他の役も、それを観た人はいなくなったとは思わないですからね。
多和田 わかります。よく言われるんです。スターニンジャーにまた会わせてねとか。自分もその人物として会えることは、とても楽しみですし。僕自身子供時代に本当にいると思っていましたから。
西田 みんな現実と夢とを行ったり来たりしながら生活している。ただ改めて意識しないだけなんです。
西田シャトナー・多和田秀弥
世界はすごいスピードで変化していく
──今回の『ソラオの世界』ですが、2016年ということで違ってきたことは?
西田 劇中に脳内の情報をプラウジングするという技術が出てくるんですが、当時はSFとして書いたのが、今は開発が現実化しているんです。僕らの世代あたりから、世界は変化するのが当たり前で、いつまでも同じまま続くというのは信じなくなったけど、多和田くんたちはもっとすごいスピードで世界が変化していく中で生きているからね。
多和田 SF的な情報とか科学の話は、僕たちはゲームとかアニメで見て、わりと馴染んでいるので、理解しやすいです。
西田 スターニンジャーだって、相当振り切ったファンタジーだしSFだからね。
──では最後に、『ソラオの世界』への抱負を改めて。
多和田 シャトナーさんと色々お話できて、僕の中に湧いてくるものがあるので、2人で想像を超えた世界に行きたいし、お客様も一緒に行きましょう。
西田 座長と作・演出はどっちが船長と言えない間柄ですから、『ソラオの世界』という船に2人で乗って、未知の大陸に冒険に行って、そこはヤバイ化け物も出てくると思うし、逆に何もない凪の中を行くことになるかもしれない。でも船旅を楽しんで、お客様に冒険の報告をできればと思っています。
西田シャトナー・多和田秀弥
SHATNER of WONDER #4
【取材・文/吉田ユキ 撮影/田中亜紀】