【新感覚ブラックムービー「DOPE/ドープ!!」公開記念】劇中で激しくdisられるマックルモア、マムフォード担当A&Rによる渋谷”DOPE”対談!!

インタビュー
2016.8.1

昨年の「ストレイト・アウタ・コンプトン」の大ヒットも記憶に新しいさなかの2016年7月、新たな感覚のブラックムービーが日本で公開される。その作品は「DOPE/ドープ!!」。あのファレルがプロデューサーをつとめ、劇中に登場する主人公が親友たちと結成するバンドの曲を含め、多くの楽曲提供まで行っているという話題作である。

LAの”DOPE”タウンで生まれ育った黒人の青年たちがバンドや友情、恋やドラッグを交え奮闘する様子はまさに青春映画そのもの、そこに音楽と黒人に生まれた宿命めいたものが絡みあう。リズミカルかつコミカルに描かれているから後味はスッキリ、でも少し考えさせられるような味わい深さもある今作は、観たあと誰かと語り合いたくなる。

さて、ブラックカルチャーのどまんなかで生活するティーンの日常を描いたこの作品中で、2組の白人アーティストがdisられるシーンが登場する。とにかく面白くて、観たあと誰かとこの映画について語り合いたくなった筆者は、この2組のアーティストの日本のA&R担当者に白羽の矢を立て、対談を行うことにした。

2016年7月某日、渋谷某所、かつて某未解決事件が起きた”DOPE”な居酒屋にて。

左・マックルモア&ライアン・ルイス 担当A&R:小野誠二さん
右・マムフォード&サンズ 元担当A&R:竹野竜治さん

人種差別、格差問題…シリアスな問題も軽やかに表現する新感覚ブラックムービー

小野:「DOPE/ドープ!!」って、ストーリー的には割とポピュラーな映画ですよね。昨年公開になった「ストレイト・アウタ・コンプトン」もそうだったけど、ヒップホップファンにとっては“あるある”な小ネタも多くて楽しめました。でも、ヒップホップ知らない人でも、青春映画として楽しめるんじゃないかな。
竹野:僕は「ストレイト・アウタ・コンプトン」は「クール・ランニング」(※ボブスレーを題材にした青春映画)だと思って見てたところがありますね。
小野:スポ根的な要素はあったかもしれないね。個人的には、90年代の「ジュース」「ニュー・ジャック・シティ」などのブラック・ムービーと比較すると、「DOPE/ドープ!!」は意外とセオリー通りの設定なんだけど、今風のアレンジだなと感じました。将来を夢見る彼らが結成するのが、パンク・バンドだったりとか。
竹野:僕もその設定が新鮮でした。黒人で、90年代のヒップホップおたくで、でも結成するのがバンド。それが今の時代なんですよね。
小野:そこはやっぱりファレルらしいというか。
竹野:N.E.R.Dをやってた人が作った映画って言われると、すごく納得いきますよね。
小野:今のヒップ・ホップのアーティストたちは、ロックも普通に聞いてるよね。ルーペ・フィアスコなんかも、覆面でパンクバンドやってたし。こういうブラック・ムービーって、昔だったらシリアスな内容で終わっちゃうところが、「DOPE/ドープ!!」ではライトに描かれてる。ドラッグとか、殺人とか、当時のはとにかく救いが無いのが多い。
竹野:確かにああいう黒人の成り上がっていくものって、どうしてもシリアスになってしまいがちですよね。
小野:仲間同士で殺しあったりとか。
竹野:なんかそういうのがなくて、割と軽く明るく観れるところが僕はすごい新鮮でしたね。
小野:描かれてるシチュエーションだって、本来ならかなりシリアスになるような、だいぶ追いつめられてるシーンとかもあるんだけど。
竹野:全くなんかこう、ひょうひょうと切り抜けていく感じが、新鮮で今っぽい。

――そういう意味では、人種差別問題などに対してもすごく入りやすい映画だったんではないでしょうか。

竹野:ライトなタッチの映画なのに、やっぱり人種の壁とかシリアスなメッセージがきちんと入ってて、それを共存させてるってなかなか日本人には簡単には理解できないところだと思う。今年のフジロック前に、フジロックに政治を持ち込むなっていう意見がSNSでちょっと話題になったじゃないですか。あれとかってやっぱり、そもそも政治に対するリアリティがない発言だなと思うんですよ。Ken Yokoyamaがいいこと言ってたんですよ、ステージで。「(政治に対して)何も思わずに来るんだったら、ラジカセ持ってピクニック行けばいいんじゃない?」って言ったのと、「俺にとっては政治とちんことロックンロールは全部一緒だ」と。僕はそれ聞いて、改めてこの映画のこと思い出したんですよ。考え方に違いはあっていいけど、発信することは別に他人事じゃなくて、それもあなたの日常なんじゃないですか?っていう問題提起。そういう意識を持つことから始めることが大切なんじゃないかと思いましたね。
小野:でも映画の世界でいうと、自分の力ではどうしようもない環境っていうのがあって、そこが日本とは違うところだよね。日本だとほぼみんな中流階級で、普通にやってれば教育も受けられる。でもそうはいかない日常が映画の中の彼らの世界で。実はそういうテーマって昔のブラックムービーと一緒なんだけど、「DOPE/ドープ!!」はそれをすごいポップに描いてる。
竹野:あと、僕は基本ロックが好きなので、オタクでバンドやってますっていう設定は、すごく入りやすかったですね。
小野:今の時代はたぶん、当時みたいにシリアスなことやっても、絶対ヒットしない。

――あれだけ抜け感があったほうがいいんでしょうね。いちばん笑ったシーンってどこでしたか?

小野:僕はマックルモア。と、あとはヒップホップ・ファンが思わずニヤリとする“ニヤニヤ・ポイント”としては、マルコムたちがナキアを遠くから見つめるシーンで『All I Wanna Do is boom boom boom and a zoom zoom(訳:ズコズコやってみたい)』ってジブが言うんだけど、これは実はWrecks’n’Effectっていうアーティストの「Ramp Shaker」の一節だったりするんですよ。​
竹野:俺もマムフォード(笑)劇中の一番手っ取り早く商品を売る方法を考えるシーンで、「そもそもAmazonでCDを買わないし、ましてマックルモアなんて買わない」っていう揶揄が出てくるんですよね。
スタッフ:そんなもん買わねえよ、みたいなニュアンスでしたよね(笑)。
竹野:そうそう。試写会で見た時に小野さんがすぐ前に座ってて、そういえば小野さんマックルモア担当だったな、と思って笑った(笑)。僕は僕のほうで、過去にマムフォード&サンズを担当していたんですけど、これも劇中に「マムフォード&サンズ歌いながらヒッチハイクか?」っていうセリフが出てきて、あ、こんど俺かぁってなりました(笑)。
小野:ああいうのはけっこう、業界ネタですよね。

――お二人にお声かけさせていただいたのも、そのネタがあったのが理由です(笑)。

竹野:自分が担当してたってのもありますけど、ネタとしてうまく使ってるなと思いました(笑)。
小野:やっぱりアメリカ人もああいうふうに思うんだ、あれがリアルなんだって思いました(笑)。
竹野:でも結局そうじゃないと思ってる人の方が多いわけですよ。結局マムフォードだって、どこでライブやっても全員が大合唱するわけで。その設定が良かったですよね。黒人のオタクが主人公ってなると、マジョリティが嘲笑される対象になるっていう。
小野:あとあのジャンキーのおねえちゃん良かったよね。
スタッフ:あれ、エイサップ・ロッキーの元カノなんですって。
小野:俳優としてのエイサップ・ロッキーも良かったよね。僕は、ちょいちょいかかる90年代の曲がツボでした。冒頭で朝起きるときのノーティー・バイ・ネイチャーとか、ナズ、トライブ、バスタ・ライムスとか。
竹野:この3人の親友が、バラバラになるかもしれないっていうシーンあったじゃないですか。僕、あそこも良かったですね。3人がこの先どうなるってなった時、僕は若干「スタンド・バイ・ミー」を思い出しました(笑)。
小野:当時のブラックムービーだったら確実に全員黒人だし、ゲイっていう設定も出てこない。その辺は非常に、時代を投影してる気がしますね。(※バンドメイトの一人は女の子で、レズビアンという設定)
竹野:メキシコ系で、ロック・バンドやってて、バンド名が”オレオ“。
小野:よくリリックでも出てきますね。白人に魂を売った黒人みたいな意味で。
竹野:あれは知っといてよかったなと思いましたね。
小野:こういう小ネタが多いからね。

――なるほど。オレオの意味は予習必須ということで。他に予習しておいた方がいいことってありますか?(※オレオは、見た目は黒人でも中身・マインドが白人ということを揶揄して使用されているスラング)

竹野:僕は前述の通り、オレオですね。
小野:僕は出来れば当時の映画も見て欲しいですね。「ジュース」とか「Menace II Society(邦題:ポケットいっぱいの涙)」とか。そういう当時のリアルタイムの映画を見てちょっと比較して欲しい。昔のはやっぱね、仲間割れして殺されちゃうとか、「DOPE/ドープ!!」と違って救いがないのも多いんだけど。そういえば「ジュース」はNYのハーレムが舞台だけど、西海岸の2PACが主演でしたね。(※「DOPE/ドープ!!」ではNY出身のエイサップ・ロッキーがドム役で出演)
スタッフ:後はデトロイトだけど、「8 Mile」じゃないですか。こういう映画って基本、マジメなんですよね。
小野:基本、笑いはないですよね。笑いがあるのはストレートなコメディだったり。そういう意味で「DOPE/ドープ!!」はすごくバランスが良い。テーマ的には重いんだけど、すごく軽やかに描いてるのが凄い。
スタッフ:こういう映画だと本来、スポットが当たるのは(ドム役の)エイサップ・ロッキーの方だと思うんですよ。それを、本来はスポットが当たんないはずのギークが主役になっていることで、違った展開になってる。
竹野:それでいうと、すごくヒップホップが好きってわけじゃない人でもすごく入りやすくなってると思いますけどね。僕なんかもやっぱり、最初にこの映画が公開されるっていうのを聞いた時に、普通に見たいと思いましたもん。それは別にコンプトンが良かったからというよりも、そんな設定の映画ってあんま聞いたことないな、と。実際観てみると、極端な話「DOPE/ドープ!!」は音楽じゃなくても別に良い位、ちゃんとストーリーがあって、コミカルに描いてる。今の音楽シーンてジャンルというより、王道のポップスがいかに売れるかみたいなところに向かってしまうところがあって、メインストリームがそうなのは当然としても、そうでないところまでそうなっている。それがそのままこの映画にも出てるのかなとは思いますね。例えば、テイラー・スウィフトの恋愛ネタをゴシップサイトだけじゃなくて、日本のメディアでいうとRO69も記事にするような。そういう今の時代っぽさがうまく出てていいんじゃないかと思いますね。あと、主人公が恋する女の子のネルシャツの感じなんか良かったですよね。
スタッフ:ゾイ・クラヴィッツですね。レニー・クラヴィッツの娘。
竹野:ネルシャツを前で結んでる感じ、あれよかったですね。
小野:(ディギーが着てる)原色のウインドブレーカーとかね。あとマルコムの髪型ね。
竹野:この髪型って厳密にいうと80年代の髪型ですよね?
小野:80年代後半とか?井上三太さんの漫画でお馴染みの世界ですね。
竹野:僕は日本人以外で、ああいう昔のヒップホップおたくみたいな人っていないんだと思ってたんですよ。わりとヒップホップって昔を大切にする音楽で、それをサンプリングして今に蘇らせるっていうことをやってるジャンルだと思ってるんだけど、と言いながら意外にオタクみたいな人って、いないんじゃないかと思ってて。
小野:でも、アリアナ・グランデがベイビーフェイスをフィーチャリングしたりとか、マックルモアがDJプレミアやKRSワンとか呼んだりとか。今、結構リバイバルは来てるんじゃないかな。

――そういうのってヒップホップ特有の文化じゃないですか?

小野:プロデューサーだったりフィーチャリングだったりっていう文化が根底にあるから、そういう昔の人を引っ張り出してきて一緒にやるとか、そういうのは多い。あとサンプリング文化もね。
竹野:なんかロックにもそういうのもっとあればいいのにって思いますよね。シングルだけ誰とフィーチャリングしてるとか。最近増えてはいるんだろうけど、まだまだ少ない印象。ディスクロージャーが、シングルだけメアリーJブライジとやったり、そういう感じの。
小野:ディスクロージャーも多いですよね、黒人系のゲスト。
竹野:ディスクロージャーも、シングルだけプロモーション用にコラボするみたいな感じだったんですけど。そういうフィーチャリングみたいなの、バンドの方にもあったらきっと面白いんだろうなって。
小野:それで言うと、スクリレックスみたいな存在は、一番すべてをつなげるポジションにいるのかも。あの人はDJでかける曲も、時代もジャンルも縦横無尽じゃないですか。モンテル・ジョーダンの「This is how we do it」から日本人のKOHHの曲をかけたり。ああいう人によって、今の子もどんどんヒップホップを知っていくっていう側面があるのかもしれない。ワーナーで、Matomaっていうスウェーデン人のトロピカルハウスのDJがいるんですけど、彼は最初に有名になったのって、Biggy(The Notorious B.I.G.)の「Old Thing Back」っていう昔の曲を勝手にリミックスしてYoutubeにあげて、それがバズって公式リミックスになって、ワーナーと契約してちゃんとリリースされた。そんな、スウェーデンのハタチそこそこの若者が昔の曲をリミックスするのって、「DOPE/ドープ!!」の主人公の感覚にすごく近いと思う。

――いい意味で今の若い子の方が節操ないですよね。

小野:それが一時的なブームっぽいとこはあるかもしれないけど、日本でもフリースタイルダンジョンとかが流行ったり、ラップっていうものがちょっとトレンドみたいになってる。今日ネットのニュースで見たんだけど、トヨタのCMの最新作は、スネオとのび太がラップバトルしてるっていう内容だったり。スゲーとこまで来たなと思って。

――流行ってますね。今年はさんピンCAMPもありましたしね。

小野:ああいうイベントは前からいくつかあったけどね。テレビのおかげでグレーゾーンに訴求してる。この前ZIPでも日本語ラップ特集やってたしね。まずラップの歴史てとこから、リップ・スライム、キック・ザ・カン・クルーが2000年代に流行って、その後水曜日のカンパネラとかぼくのりりっくのぼうよみみたいな新世代が出てきた。なんかこう、現象みたいになってるよね。

――そのムーヴメントって、アメリカのヒップホップまでたどり着くんですかね?メッセージ性の強いものだとか、それこそ差別や政治について歌ったりとか。

小野:ケンドリック・ラマーとか、ああいうコンシャスな人はいつの時代にもいるし、かたやフロー・ライダーみたいに女と酒とパーティーみたいな人もいるし。
竹野:でも今ドレイクとかすごい勢いですもんね。ケンドリックとドレイクが両極端といった印象。
小野:しかもドレイクは日本で評価されてないよね。
竹野:伝わりにくいんじゃないですかね。すごいカンタンなこと歌ってるんだけど。
小野:尋常じゃない人気ですけどね。
竹野:ドレイクは、それでいうと「DOPE/ドープ!!」の最後にあるみたいな社会コンシャスなこと、一切言わないですもんね。ケンドリックはそれしかないみたいなとこありますけど。

90年代くらいのものが一周して戻ってきているのが今

――映画とは関係ないんですけど、フジロックどうでしたか?

小野:僕はジャック・ガラットが超絶に良かったです。本人ナンパして写真撮っちゃいました(笑)。
竹野:パフォーマンスの素晴らしさは、CDだけ聞いてても伝わらないですね。彼の良さはライブとセットでようやくわかるものだと思いました。
小野:完全にアウェーだと思うんだけど、頑張ったと思ったのはKOHH。節回しがすごい独特で、ある意味新世代ですよ。でも、今までの日本のヒップホップと比べたら、ダントツで「DOPE/ドープ!!」の世界を彼は体現してる。王子の団地で生まれ育って、お父さんがいなくて、お母さんがヤク中で、俺が初めてマリファナ吸ったのはおふくろから貰ったから、っていう。そういうリアリティは、彼にしか出せない。
竹野:しかも、いわゆるヒップホップの人はもちろん、そうじゃない人が絶賛してますよね。
小野:洋楽の若いスタッフも今いちばん好きなのKOHHだって言ってた。それこそケンドリック・ラマーに近いのかも。その人にしか出せない蓄積されたエッセンスというか。
竹野:その人の人生を聞くというか。なんとなくこの「DOPE/ドープ!!」の主人公も、ケンドリック・ラマーもこんな感じだったのかなあって思うとこありますよね。あの人はコンプトンだけど、中流階級で育って、周りはとんでもないことになってて。ケンドリック・ラマーってやっぱり、僕もそうですけど、ロックの人から評価が高いと思うんですよ。
小野:KOHHもそうですよね。
竹野:僕はフジロックはBECKですね。ダントツで良かったです。あの人も90年代の人で、フォークもロックもあるよっていうのをこの人がすごいわかりやすく提示したことで、90年代の音楽という定義が広がったんじゃないかなと。それを有無を言わせぬ説得力で、ちゃんとステージに反映してくれたのが良かったと思います。

▲KOHH「Business and Art」
 

――そう考えると、その時代のものが一周して戻ってきてるタイミングなんですよね。

小野:今年いろんなものが20周年なんですよ。さんピンCAMPもそうだし、あとヒップホップでいうと、「THE SHOW」っていうドキュメンタリー映画があって、当時のアメリカのヒップホップのアーティストがほぼ出てた。それも96年公開なんですよね。その映画に出てるアーティストたち、たとえばウータン・クランは二年前くらいに再結成してるし、NASもちょっと前に20周年で映画やったり。あの「イルマティック」の誕生秘話とかはすごく面白い。
竹野:あとあれですよね。プロフェッツ・オブ・レイジ。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとChuck D(パブリック・エナミー)と、サイプレス・ヒルのB-Realの新しいバンド。あれが今年動き出した。

▲Prophets of Rage「Prophets of Rage」
 

小野:だから90年代今、再評価ですよ。今年BAD BOY RECORDSも20周年企画があって、ボックス出るんですよ。
竹野:ロックで言うと、25周年でいうと、今年ニルヴァーナの「NEVER MIND」とパール・ジャムの「TEN」が25周年。単純にメインストリームだけじゃなくて、音楽の多様化が始まった年。
小野:やっぱり圧倒的にヒップホップは90年代ですよね。
竹野:まあそうですよね。トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)って、純粋なメタル少年だったはずなんですよ。去年オズフェスに出て、オジー・オズボーンの横で、『Bark at the Moon』とかめちゃくちゃうまく弾くわけですよ。でも、その時にヒップホップが彼の中でリアリティがあって、それを表現したのがレイジなんですよね。ハードロック少年のトム・モレロをああいう音楽へ向かわせるぐらいの力が、当時のヒップホップにはあったんでしょうね。90年代ってわりと、ロックの人でヒップホップに憧れる人って、僕も含め多かったと思うんですよ。そこはロックとヒップホップが近かったのかなって思うんですけど。
小野:映画のサントラで「ジャッジメント・ナイト」っていう作品があるんですけど、VS方式で、ロックとヒップホップのアーティストがコラボレーションする。しかも全部書き下ろしで。今でもなんかそういう感じじゃなくても、プロデューサーでロックもヒップホップもどっちもやるみたいな人はいるよね。Alex Da Kidとか、イマジン・ドラゴンズとエミネムやったりとか。やっぱ曲調が似てる。
竹野:あれは93年でしたね。衝撃的だった。でもそれでいうと、メタル畑出身の僕から言わせてもらうと、その93年の2年先に、アンスラックスがパブリック・エナミーと『Bring The Noise』をやってるんですよ。アンスラックスの方から働きかけたらしい。メンバーがデモとか作って、Chuck Dに聴かせてOKを貰って。そこからも25周年ですよ。

――改めて、映画「DOPE/ドープ!!」のオススメポイントってどんなところでしょう?

竹野:ヒップホップを好きな人は何の問題もなく見ればいいですよね。
小野:別に音楽好きじゃなくても、ストーリーとしておもしろいからオススメできますね。それで言うと、今フリースタイルダンジョン見てる人には見て欲しいかな。ヒップホップとか詳しくないけど、純粋にいいなと思ってる人に入門編として見てもらうには一番良いと思います。
竹野:音楽好きな人にとって、どんな音楽が好きかってある意味ファッションのように、自分自身を体現するものだと思うんです。「DOPE/ドープ!!」の主人公って、90年代のヒップホップを自分のアイデンティティとしてものすごく前に出してる。そういうところで、音楽が好きな人だったら誰でもシンパシーを感じることができるんじゃないかなと。そういう人が、自分をもっと高い位置に持って行きたくて頑張るっていう映画であるって言う風に考えると、別にヒップホップに限らず音楽好きな人にはいい映画ですって薦められるんじゃないかなと思います。でもそれが、今だと単純に「オタク」っていう一言で片付けられちゃうかもしれないんですけど、でも90年代なんてそんな人いっぱいいたんですよ。今いう「オタク」と90年代でいう「オタク」って全然意味が違う。この映画に出てくるそれは、「一生懸命何かを好きな人」って言う風に、考えて良いのかなと思うんですよね。そこに自己投影できるというのは凄く良いのではないでしょうか。

――「一生懸命何かを好きな人」、ってすごくよいですね。

竹野:それが悪いことじゃないっていうのがこの映画から感じられて、僕はとてもそれが良いと思いました。
小野:一個象徴的なのは、主人公の彼は90年代のヒップホップが凄い好きで、ファッションとかそういう要素も多いと思うんだけど、いざ自分がバンドやるってなった時に決してそういうのをやらないっていう。自分たちは今の時代のパンクをやる。そういう、決してそこにとらわれない自由さ。
竹野:それ、すごく今っぽいですよね。
小野:それが、今フリースタイルダンジョンとかにはまってる人たちに共通する要素だと思うんですよ。ラップとかフリースタイルとかの持つ要素には凄くひかれるけど、彼らが必ずしもヒップホップ命かっていうと、そういうわけではない。
竹野:別に人間ていつも怒ってるわけでも、いつも笑ってるわけでも、いつも泣いてるわけでもないのと同じ。笑ってるときもあれば怒ってるときもある、みたいな感じでロックもヒップホップも好きな自分をフレキシブルに受け入れてる。
そう考えると、あなたはどうですか?って問われてる気がしてきますね。あなたはその自由さを持っていますか?ああ、自分どうだっけなって考える機会になる。
嘉陽田:あの映画に出てくる誰よりも、日本に住む我々は自由なはずですもんね。自由なはずなのに、何を選んで生きてますかっていう問題提起っていうのはあるかもしれないですね。

――さきほどもお話にあがりましたが、水曜日のカンパネラやぼくのりりっくのぼうよみのように、ヒップホップを独自に解釈した新しい日本人アーティストが盛り上がっている中で、彼らを支持する若い世代にも、入門編として受け入れられやすい映画なのかもしれませんね。

小野:そういう人たちを惹きつける要素があるっていうのは、この映画の特徴だと思いますね。
竹野:それって「DOPE/ドープ!!」にあって「ストレイト・アウタ・コンプトン」にない要素ですよね。ちょっと肩の力が抜けたユーモア感というか。でもそれってBECKなんですよ。90年代にBECKに出会って、当時、今の時代っぽいなと思った感覚って、今この映画を見た時のそれと一緒なんですよ。
小野:あー。たしかにねえ。
竹野:だからこそ、ぼくりりやカンパネラが好きな人も楽しめると思います。肩の力が入ってないし、ユーモラスで。「ストレイト・アウタ・コンプトン」て、成り上がりか暴力かみたいな、わりとガチな内容だったけど、もっと軽くていい。「DOPE/ドープ!!」にも描かれてるシリアスさが軽くなることはないけど、表現の仕方は色々あるんじゃないかな。そういう意味では、日本人の感覚にも受け入れられやすい映画になると思います。


マックルモア&ライアン・ルイス 担当A&R:小野誠二さん
1992年、ワーナーミュージック・ジャパン入社。HIPHOP/R&B/SOULなどアーバン系をメインに洋楽の制作宣伝業務に従事。現在はフリーのA&R/プロデューサーとして暗躍中。ジェイ・Zと誕生日が一週間ちがいの自称セイ・Z。

マムフォード&サンズ 元担当A&R:竹野竜治さん
ユニバーサル ミュージック合同会社、ユニバーサル インターナショナル所属。現在は同部署の海外アーティストのCDや映像作品の国内盤プロダクションを担当。「人を昂揚させる音楽にジャンルの壁はない」がモットーと言いながら、だいたい「バンドっていいよな」というところに落ち着きがち。

SPECIAL THANKS:ビーズインターナショナル 井瀧さん、パルコ 岡さん


 

作品情報
ファレル・ウィリアムスがプロデュース、そして楽曲提供もしているコメディ映画『DOPE/ドープ!!』。
リック・ファムイーワ監督が青春時代を過ごしたL.A.犯罪多発地域イングルウッドを舞台にした本作のプロデューサー陣にはファレルの他、アカデミー賞俳優フォレスト・ウィテカーやショーン・コムズという錚々たるビッグネームが名を連ね、エイサップ・ロッキー、タイガ、カップGほかHIP HOPアーティストも多数出演。2015年のサンダンス映画祭、カンヌ映画祭にて絶賛された話題の最新ブラック青春ムービーがついに公開!
 
監督/脚本:リック・ファムイーワ
製作総指揮:ファレル・ウィリアムズ、マイケル・Y・チョウ、リック・ファムイーワ、デヴィッド・ロンナー
プロデューサー:フォレスト・ウィテカー、ニーナ・ヤン・ボンジョヴィ、PGA 共同製作総指揮:ショーン・コムズ
CAST:シャメイク・ムーア、トニー・レヴォロリ、カーシー・クレモンズ、ゾーイ・クラヴィッツ、ブレイク・アンダーソン、エイサップ・ロッキー、リック・フォックス、シャネル・イマン、タイガ、キース・スタンフィールド、ヴィンス・ステイプルス、ケイシー・ヴェジーズ、フォレスト・ウィテカー(ナレーション)

2015年/アメリカ/103分/原題:DOPE (c) 2015 That's Dope, LLC. All Rights Reserved.
提供:パルコ 配給:ビーズインターナショナル
7月30日(土)より渋谷HUMAXシネマにて、8月13日(土)よりシネマート心斎橋にて、名古屋シネマテークほか全国順次公開!
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