鈴木雅美の日本で5年ぶりに響かせる歌声に会場が大興奮、『サンデー・ブランチ・クラシック』に拍手の嵐

レポート
クラシック
2016.8.18
鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

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ヨーロッパで活躍中の鈴木雅美が故郷で響かせる魂のソプラノ。 第36回“サンデー・ブランチ・クラシック” 7.24ライブレポート

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGの涼しい空間で身体を休ませつつ、クラシックの音色で心は熱く! 真夏の日曜日の午後、『サンデー・ブランチ・クラシック』には、ソプラノ歌手の鈴木雅美が登場した。鈴木は2012年に渡欧し、演奏活動の場をヨーロッパに移した。日本のステージへの登場は、これが約5年ぶりとなる。

淡いピンク色のドレス姿で登場した鈴木。ピアノに手をつき一呼吸を置くと、顔つきがガラリと変わった。ピアノの連打による前奏から始まったのは、オブラドルス作曲『エル・ビート』だ。この曲は、スペインのアンダルシア地方に伝わる民謡の旋律をテーマに書かれた曲で、少しノスタルジックな雰囲気を含みつつ情熱的なメロディを、全身を使い豊かに歌い上げた。

鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

続いて、2曲目はドリーブ作曲『カディスの娘たち』。こちらも、闘牛に出かけたスペインの娘たちが、男たちに自分たちの魅力を歌い上げ、誘惑していく曲だ。2曲続けて、聞く耳を火照らせるような熱いソプラノを聞かせてくれた。

「皆さん、こんにちは。ソプラノの鈴木雅美です。本日は、お越し頂きありがとうございます。たくさんのお客様のお顔をを拝見できて嬉しく思っております。」

会場には懐かしい顔も多くあったのか、挨拶を終えると少々緊張気味に見えた顔がふっと和らいだ。久しぶりの帰国で、東京の夏の暑さに驚いたという鈴木だったが、暑いだけでなく、とてもお天気がよかったので冒頭2曲はスペインの曲を選んだと語ってくれた。

村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

高田絢子 (撮影=荒川 潤)

高田絢子 (撮影=荒川 潤)

ここで、この日の鈴木の共演者となるバリトンの村松恒矢とピアニストの高田絢子が登場した。村松は、オペラやコンサートで活躍する若手注目株。そして、高田は伴奏のスペシャリストとして活躍中だ。そんな二人を「同じ国立音楽大学卒業生ということもあって、共演を楽しみにしていました」と鈴木が紹介する。

「まずは、それぞれのソロの声を楽しんで頂きましょう」と村松はガスタルドン作曲「禁じられた音楽」を、鈴木はサティ作曲「おまえが欲しい」をそれぞれ披露し、カフェに響き渡る歌声に会場からはブラボーの声が飛び交った。

村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

鈴木にMCを託された村松は、「ホールでの歌うことが多く、MCが慣れなくて(笑)。続いては、オペラ『カルメン』の中に出てくる闘牛士の大スターが登場シーンで歌う曲をお届けします」と若干緊張の面持ちで楽曲を紹介してくれた。高田の伴奏が始まると、村松はサイドテーブルにさりげなく置いてあったピンクバラを片手に、客席へ……。客席に歌いかけながら、MCの緊張の面持ちからは一転、ニコニコとお客様にバラを捧げる。一旦ステージへと戻った村松の手には、再び白いバラが。今度は、サイドの席のお客様へ捧げられた。受け取った女性のお客様は、びっくりしていたが、とても嬉しそう。

そして……二度あることは三度あるもの! なんと、胸ポケットからもう1本バラを取り出した村松。その楽しい仕掛けに、会場全体が笑顔で溢れる。最後は、会場全体に投げキッスで愛を捧げ、情熱的なパフォーマンスを締めくくった。

鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

鈴木雅美 (撮影=荒川 潤)

再びステージのバトンは鈴木へ。歌われたのは、カールマン作曲オペレッタ『チャールダッシュの女王』より「山は我が故郷よ」。切れのいいスタッカートのリズムに乗り、鈴木はドレスの裾をつまみ踊りだす。それに合わせ、会場からは手拍子が沸き起こり、カフェはにぎやかな酒場のような盛り上がりぶり。

それぞれのパフォーマンスを終えた二人が、最後にレハール作曲オペレッタ『メリーウィドー』より「唇は黙して」で声を重ねる。ソプラノとバリトンの二重唱が、甘美に響く。やがて二人は、うっとりとした表情で手を組み、ワルツを踊って見せた。最後、手を繋ぎ歌い上げた鈴木と村松、そして歌手に寄り添い完璧な伴奏を聞かせた高田に、会場からは惜しみない拍手が送られた。

拍手に包まれる3人

拍手に包まれる3人

2部では、ガラッとラインナップの雰囲気を変え、ラヴランド作曲「ユー・レイズ・ミー・アップ」、ガーシュイン作曲オペラ『ポーギーとべス』より「サマータイム」、ガーシュイン作曲「アイガットリズム」、「ウエストサイドストーリー」メドレーなどが歌われた。

ライブを終えた鈴木は、「最初、ちょっと緊張しました(笑)」と言いながらも、笑顔を見せた。約5年ぶりの日本でのライブについて「選曲が大切」と考えたそうで、「馴染みのある曲だけでなく、初めて聞くかもしれないけれども知って頂きたいなと思う曲を選びました」と明かす。

終演後の様子 (撮影=荒川 潤)

終演後の様子 (撮影=荒川 潤)

楽しい演出で会場を沸かせた村松は「クラシックなのに、ちょっと笑いが起こってしまいましたね(笑)。こうやってクラシックを身近に感じて頂ける場所があることは、演奏者にとってもとてもありがたいことです」と噛みしめるように、高田も「このカフェができたと聞いた時、すぐにチェックして、ずっと演奏してみたいと思っていたんです。今日、演奏の機会を頂いて、改めてここは空間をエンジョイしながらクラシックの良さを知ってもらえる、そんな可能性がいっぱいある場所だなと思いました」と感想を語ってくれた。

鈴木が次回また日本で歌声を聞かせてくれるのは、来年の2月2日になる予定だ。最後に鈴木は、「貴重な夏の午後に足をお運び頂き、ありがとうございました。これからも楽しい企画を考えていきますので、ぜひまたお会いできることを楽しみにしております」と、改めてメッセージをくれた。

ワールドワイドな活躍を見せる鈴木が再び日本に戻ってくることを楽しみにしたい。

(左から)高田絢子、鈴木雅美、村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

(左から)高田絢子、鈴木雅美、村松恒矢 (撮影=荒川 潤)

『サンデー・ブランチ・クラシック』、次回もお楽しみに!

プロフィール
鈴木雅美(ソプラノ)
国立音楽大学声楽学科卒業。尚美ディプロマコース修了。二期会オペラ研修所第54期マスタタークラス修了。フランス音楽コンクール奨励賞、コンセールヴィヴァン新人オーディション、レ・スプレンデル音楽コンクール審査員賞、Japan Classical Impressionist Audition奨励賞等数多くの受賞歴を持つ。オペラでは茂原市民オペラ、東総ホールオペラ共に“魔笛”パパゲーナ役、調布市民文化祭公演“カルメン”ミカエラ役、アミーチ・ダモーレ公演“ラ・ボエーム”ミミ役(ハイライト)等に出演。また2003~2005年にはBS日テレ『日本こころの歌』にコーラスグループFORESTAのメンバーとして出演、好評を博しその後各地でコンサート活動を行う。
「小澤征爾オペラプロジェクトIX」塾生。また活動はクラシック音楽のみに留まらず、アカペラシンガー、ポップスバンドのコーラスシンガーやTVの挿入歌を担当するなど、多彩な音楽のバックグラウンドを生かし、数々の音楽イベントの企画や構成も手掛けるなど、Directorとしての一面も持ち合わせる。2012年より渡欧し、現在はヨーロッパを拠点に演奏活動を継続している。レパートリーは様々なオペラ作品の他、長年に渡ってライフワークとしているフランス歌曲に益々の情熱を傾けながら、ドイツ語のオペレッタや、スペイン、カタルーニャ、ガリシア、また南米のスペイン歌曲に魅了され、新たなレパートリーとして探究している。

村松恒矢(バリトン)
国立音楽大学卒業、卒業時に矢田部賞受賞。同大学大学院修了。新国立劇場オペラ研修所第14期修了。オペラには『フィガロの結婚』伯爵、『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロール、『魔笛』パパゲーノ、『ナクソス島のアリアドネ』ハルレキン、『スペインの時』ラミーロ、『ラ・ボエーム』ショナール、『みづち』天河役等、他多数出演。またフォーレの『レクイエム』やベートヴェンの『第九』のソリスト等も務める。

高田絢子(ピアノ)
国立音楽大学鍵盤楽器専修声楽コース、修了。同大学院器楽科伴奏(歌曲)コース、修了。ピアノを奥村京子、小林光裕、芝治子、安井耕一の各氏に師事。伴奏法を河原忠之、ディヴィッド・ガウランドの各氏に師事。現在、コンサート伴奏やオペラの稽古ピアニストとして活動するほか、ボランティア団体「らんたん」を立ち上げ、被災地への支援活動を行っている。現在、新国立劇場オペラ研修所ピアニスト。
 

 

サンデーブランチクラシック情報
8月21日(日)
鈴木愛理/ヴァイオリン&阪田知樹/ピアノ
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
9月4日(日)
仲田みずほ/ピアノ&ロー磨秀/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

9月18日(日)
青木美樹/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
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