映画『シン・ゴジラ』の首相官邸に飾られていた、あの絵の正体は?
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片岡球子 東京美術倶楽部ロビー展示風景
皆さま、映画『シン・ゴジラ』はもうご覧になりましたか? 公開40日間で、なんと観客動員数420万人を突破し、今なお快進撃が止まっておりません。先日筆者も、そんな『シン・ゴジラ』を遅ればせながら鑑賞。観終わった後、しばらく放心状態になるくらいの衝撃を受けました。
上映時間中、ずっと映画の世界に引きずりこまれていたのですが、一か所だけ"アートテラー"という職業柄、気になって気になって仕方がなかったシーンがありました。それは、首相官邸での緊急会議シーン。壁に飾られていた絵画作品が、どうにも本物くさいのです。どう見ても、片岡球子の作品《めでたき富士》のようなのです。片岡球子(1905~2008)とは、日本を代表する女性画家です。色彩豊かでパワフルな作風で人気を博しました。中でも、特に富士山の絵を多く描いたことで知られています。
あれは、映画内のセットとして作られた精巧なレプリカなのか。それとも、本物の絵画を使用しているのか。非常に気になるところです。そんなことを思いながら本編終了後のエンドロールを眺めていると、筆者が日頃よりお世話になっている画商さんの名前を発見! きっと、彼なら真相を知っているはずです。ということで、早速アポイントを取り、真相を直撃して参りました。
取材に快く応じてくれたのは、ギャラリー広田美術の代表にして、100年以上にわたって美術界の発展に貢献してきた株式会社 東京美術倶楽部のメンバーでもある廣田登支彦さんです。
廣田登支彦さん
――本日はよろしくお願いいたします。まず単刀直入にお伺いします。ズバリ、『シン・ゴジラ』に登場したあの絵は本物ですか?
本物です。
――どういう経緯で本物の絵が飾られることになったのですか?
まず、『シン・ゴジラ』の美術監督は、林田裕至さんという方なのですが、この方は東京藝術大学の出身なんですね。そういうバックグランドがあるからなのかもしれないですけれど、首相官邸に飾る絵は本物の巨匠の絵で、それも富士山の絵のようなものがいいと思ったそうなんです。
――簡単に言ってますけど、なかなか無茶な話ですよね(笑)。
そうなんです(笑)。普通の美術館は、貴重な美術品を映画のセット用に貸し出すことは、まず無いですよね。
――もし、美術品に何かあったら一大事ですからね。
そこで、まず林田さんは知人のギャラリストさんに相談したんです。でも、そのギャラリストさんは、現代アートを主に扱っている方でしたので、そのギャラリストさんから僕に相談がありました。「今度公開されるゴジラ映画のセットの中で、50号くらいのサイズの日本画の巨匠が描いた絵を飾りたいそうなんだけど。何か心当たりあるかな?」と。
――心当たりはあったんですか?
僕が所属している東京美術倶楽部が所蔵している絵画が何点かあるので、それがいいのではと思いました。そのうちの数点をピックアップしたところ、片岡球子の《めでたき富士》が林田監督の目に留まったというわけです。
片岡球子 東京美術倶楽部ロビー展示風景
――レプリカではなく、本物の絵が飾ってあったからこそ、あの緊迫したシーンに説得力があったのかもしれないですね。東京美術倶楽部のほうで何か告知はありますか?
実は、10月14日・15日・16日の3日間に、3年に1度しか開催される日本で最も歴史のあるアートフェア『東美特別展』が開催されます。絵画、近代美術、古美術、茶道具、工芸など、美術館クラスの名品に会えるアートフェアですので、ご興味がある方は是非ご来場くださいませ。
――ちなみにそのときに、片岡球子の《めでたき富士》は展示されますか?
いや、『東美特別展』の会場には展示されないと思いますけど……。
――僕もですけど、あの『シン・ゴジラ』に登場した絵を観たいって人は少なくないと思いますよ!
わかりました。掛け合ってみます。
そして、その数日後、廣田さんよりこんなメールが届きました。
東京美術倶楽部外観
映画『シン・ゴジラ』で興奮した皆様、首相官邸に飾られていたあの絵を生で観られるチャンスです。ぜひ足を運んでみては。
古美術・現代美術の各分野を代表する美術商が、選び抜いた逸品を一堂に集めた、3年に1度開催されるアートフェア。
日程:
10月14日(金)午前10時~午後7時
10月15日(土)午前10時~午後7時
10月16日(日)午前10時~午後5時
会場:東京美術倶楽部
※詳細は当サイトに順次掲載予定。
http://www.toobi.co.jp/event/index.html