『Kalafina Arena LIVE 2016』武道館で開いた彼女たちの“新たな扉” SPICE独占動画も到着
SPICE では、今秋9月にアリーナライブを控えるKalafinaに独占密着取材を敢行。彼女たちのアリーナライブまでの道のりを、稽古場レポートや、 Wakana・Keiko・Hikaruのそれぞれへの単独インタビュー、そしてライブレポートを通じて連載で追いかけます。
Kalafina Arena LIVE 2016 2016 9.17 (Sat)日本武道館
Kalafinaアリーナライブを追いかける連載である『Road to Arena LIVE』アリーナライブを追いかける連載である今回の企画。最終回となる今回はいよいよ本番を迎えたアリーナライブ最終日、日本武道館公演をレポートする。
ここまで見続けてきた今回のアリーナライブ、いよいよその全てを見れるということも含めて、少しの緊張を抱きながら武道館の客席に座った。相変わらずアリーナレベルから見上げる武道館の天井は高く、少しだけ厳かな雰囲気になる。神戸ワールド記念ホールでの2DAYSを終え、やってきた終着点日本武道館。前日に東京初日公演を終えたとは言え、今回のアリーナライブの最終地点となる9月17日の会場は開演前から大きな期待と、少しの寂しさが混ざりあうような空気を持っていた。
ここ最近のKalafinaの快進撃は目をみはるものがある。5月には「上海之春国際音楽祭」の中のステージ企画として『Kalafina LIVE 2016 “far on the water” in Shanghai』を成功させ、谷村新司とのデュエットソング「アルシラの星」もリリース。テレビ出演も増え、今まで以上にKalafinaを知る人が多くなった環境で行われたアリーナライブ。その中で彼女たちは再三「全て音楽でつながるライブにしたい」と言い続けた。
その言葉が気になり、稽古場から3人それぞれのインタビュー、最終リハまで追えるだけ全てを追い続けた。それが今、始まり、終わろうとしている。
舞台は黒幕で覆われ、セットの形も何もわからない、開演を待つ満員の武道館の客電がいきなりつき、何の音もなく舞台にはKeikoが現れた。最終リハの時に見た振り袖を模した衣装は大きなステージでも存在感を保っている。1万人近い人間が居る武道館が静寂に包まれる中、大きく息を吸う音。アカペラで歌い出されたのは「アレルヤ」。Keiko自身が自分の転換期になったと語ったKalafinaにとって“切り札”とも言える一曲、それを一曲目に伴奏なしで持ってきた。不意のことに息を呑むといきなりの暗転。照明がついたときにはステージにはWakanaとHikaruの姿もあった、ここからがKalafinaだ。既に心は彼女たちの術中にある。
振り落とされる暗幕の向こうには音楽を支えるバンドチーム。ピアノバージョンの「アレルヤ」に続いてはストリングスで紡がれた「believe」。もう皆気付いている。これは今までのKalafinaのライブではない。彼女たちの気持ちが見える気がするほどの覚悟の選曲、演出。それならば僕らはそれを見届け、委ねるしかない。「今日のKalafinaワールドは、みなさんの心の旅です」そう最初のMCで言ったKeiko。Kalafinaと共に征く音楽の旅が始まる。
プロジェクションマッピングで表現される映像での世界観をバックに「storia」「花束」「君の銀の庭」「胸の行方」と立て続けに曲を披露していくKalafina。「ring your bell」後のMCでは「この曲で最も高い音が私が歌うF#なんです、私達Fに縛られてるよね、Fのネックレス作ろうか?」とWakanaが語り、それを楽しそうに賛同する二人。
見ていて感じたのは、映像や衣装、見せ方など演出が今まで以上に練られ、考えられているのに、今までのKalafinaのライブの中で最も彼女たちを“近くに”感じたことだ。
事ある毎に照明は客席を照らし、僕達の表情を彼女たちに伝えようとしていた。天井が高く開放感のあるステージだったから余計にそう感じたのかもしれない。インタビューで語ってくれていたことはそのままライブに反映されていた。
今まで以上に壮大で驚きに満ち、視覚でも音楽を楽しめ、誰よりも近くに感じられるライブ。それをアリーナレベルの会場で行おうというのはある意味無謀な挑戦なのかもしれないが、あくまでそこに挑戦することこそがKalafinaが越えようとした“扉”ではないのか?歌の力のその先へ。あくまで音楽を信じる3人は息継ぐことなくステージで躍動していく。
Hikaruをステージに残し、演技的な表現で描いた「Magia[quattro]」そこから一転して客席をあおりながら「to the beginning」を歌い上げる。一曲一曲歌う度にアンコールが終わったかのような大きな歓声と拍手が巻き起こる。「武道館!今日は皆でつくるよ!」と叫び新曲「blaze」へ、そして激しい曲の流れからキラーチューン「音楽」が鳴り響く。光が武道館中に飛び交う中、汗だくで駆け回るKalafina。
「立っていても座っていてもいいの、皆で作りたかったんだよ」
大声でそう叫ぶ彼女たちの決意は深々と胸に刺さった。ここまで一緒にライブを作ろう、と表明する彼女たちを見るのは初めてだ。
Kalafinaは音楽の誘い手だ。アニメソングの主題歌から生まれたユニットとは思えないほど、彼女たちは音楽という文化を受け入れ、出来る限りの表現で届けようとする。誰しもそのライブを見れば、音源に触れれば彼女たちのやろうとしていることの豊かさを感じるだろう。
どこかシンボリックでもあった彼女たちはどこまでも観客に近づこうとし、歌い、思いを届けようとしていた。それは今までもそうであったのだろうが、この日僕たちは共感としてそれを感じることができた。今観客はKalafinaと同じものを感じ、目線は違えども同じものを見て、思いを共有している、そう信じられた。
「今までの点を線にしたかったんです、皆さんがこのライブを完成させてくれたんです」そう語ったあと、本編ラストに奏でられたのは「into the world」。
「この曲を渡された時、自分たちが何をできるのかと考えました。3人で考え抜いたものを見てもらう、聞いてもらうというのはどういう事なのか、これからもそれを考えて行きたいと思います」そう言う彼女たち。新たな決意のように語るその歌声は輝きに満ちていた。人はきっと一人で生まれ、誰かと共感したり反発しながら、どこかでつながりを求めて生きていく。この日Kalafinaが全てを絞りきって行ったライブで観客に求めたことは、「繋がっていたい」というメッセージなのかもしれない。
新たな扉は三人の力だけでは開かない。プロデュースを行う梶浦由記、演出を担当した南流石氏、そして彼女たちを支えるスタッフ陣、何より客席を埋め尽くしたファンの力も借りて開いた扉は、たしかにそこにあった。
アンコールではまさかの客席から登場、客席通路に設置されたミニステージで「in your eyes」を熱唱。間髪入れず客席を疾走しステージに上がり「武道館でこんなにみんなを近くに感じて、歌って、幸せです」とWakanaが語り。Hikaruは「心の旅を楽しんでもらえたなら嬉しいです」と笑みを浮かべる。最後に披露されたのはこれからを予感させる「ひかりふる」、「未来」。降り注ぐ光のような2曲を終え、満面の笑みでステージを去ったKalafina。セットに最後に書き記した「ありがとう。」の文字がどこか誇らしげに見える中も万雷の拍手は鳴り止まず、それに呼応するように再登場。
「本当に何も決めてないよ!」目をうるませながら登場した3人は何やら相談。
「初めての武道館の最後の曲を、ここでやろうか」そう言ってピアノの伴奏と共に披露したのは本当のボーナストラック「sprinter」。客の目線でいよう、と開演前に決めていたという彼女たちが「ありがとう。」の文字を背負い歌う歌唱はどこまでも伸びやかに武道館の天井に響き渡る。
「君に会いたい 君が恋しい 君に会いたい 君が愛しい」と武道館全員と歌いあったKalafinaは、満面の笑みと深い感謝を述べてステージを降りた。まるで相思相愛のような歌詞をリフレインする中でふと思ったことは、彼女たちが表現しようとしていた“視覚でも感じられる音楽”はその言葉の意味を遥かに超え、五感全てを刺激する体験としての音楽として観客に降り注いでいたということ。これから様々なアーティストのライブを見て、感動することも衝撃をうけることは沢山有るだろう、でもこの日の経験を忘れることはない。そんな多幸感あふれる空間。
鳴り止まぬ拍手と賛美の声、会場を後にする観客の顔は皆満ち足りてみえた。全ての存在が音楽で繋がる空間。濃密な三時間を共に過ごした僕たちは名前も知らない他人だが、今Kalafinaを共有した事で繋がれている。そう心から言えるライブだった。
11月には冬をテーマにしたコンセプトアルバムを発売することを発表し、クリスマスストリングスライブツアーも控えたKalafinaの道はまだ続いていく。きっとこれからも彼女たちは遠く高く、でも僕達と歩幅を合わせるように音楽を伝えてくれるだろう。そのメロディーを楽しみにする、それもKalafinaが与えてくれる“希望”なのだと、僕は思う。
ライブ終演後すぐのKalafinaからSPICE独占コメントが到着!
レポート・文=加東岳史
01. アレルヤ
02. believe
03. storia
04. 花束
05. 君の銀の庭
06. 胸の行方
07. ring your bell
08. 夏の朝
09. 追憶
10. red moon
11. Magia[quattro]
12. to the beginning
13. blaze
14. destination unknown
15. identify
16. signal
17. 音楽
18. into the world
<encore>
19. overture 〜 in your eyes
20. One Light
21. ひかりふる
22. 未来
<double encore>
23. sprinter
12月2日(金) [富山公演]会場:富山県民会館
12月3日(土) [東京公演]会場:東京オペラシティ コンサートホール
12月9日(金) [京都公演]会場:京都コンサートホール
12月11日(日) [宮城公演]会場:仙台市民会館
12月15日(木) [岡山公演]会場:岡山市民会館
12月17日(土) [福岡公演]会場:福岡国際会議場
12月18日(日) [山口公演]会場:周南市文化会館
12月20日(火) [愛知公演]会場:愛知芸術劇場 コンサートホール
12月21日(水) [大阪公演]会場:ザ・シンフォニーホール
12月23日(金・祝) [東京公演]会場:Bunkamuraオーチャードホール
12月24日(土) [東京公演]会場:Bunkamuraオーチャードホール