noon どんな曲でも自身の歌として昇華させる表現力、シンガーとしての心持ちを訊く

インタビュー
2016.9.28
noon 撮影=鈴木恵

noon 撮影=鈴木恵

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2003年にアルバム『better than anything』でデビューし、その翌年には新人としては異例の全国ブルーノートを中心としたソロツアーを成功させたnoon。どんな曲でも自身の歌として昇華させる表現力と存在感がありながら、その歌声は聴き手に寄り添うような優しさと癒しに溢れている。この秋も各所でのライブを控えているnoonに、音楽との出会いからシンガーとしての心持ちを訊いた。

根性と度胸というか、無知だからできることってある(笑)。
何かできる自分が絶対いるはずだとずっと思っていました。

――ハリー・コニックJr.を聴いたことが、音楽の道を目指すきっかけになったとお聞きしましたが、それはいくつの時なんですか?

中学2年生の時でした。

――マセてる中学生ですよね?(笑)

そういうタイプではなかったはずなんですが(笑)。もちろん当時流行っていたJ-POPも大好きで聴いていましたし。初めて映画館で観たディズニー映画で、映像はもちろんのこと、その音楽に耳を奪われました。その時に、ハリーの音楽と、自分が好きなディズニークラシックの音楽の世界観は、メロディとサウンドの美しさとロマンティックな部分が共通していると思いますので、それが好きになったきっかけになっているのかもしれません。

――ハリー・コニックJr.にハマってからは、作品を買い揃えていったんですか?

そうですね。でもハリーのCDを買いに行ったら、全然違うJ-POPアーティストのCDを買ってしまったり、洋楽のポップスも好きだったり。なので私の歌にも出ていると思うのですが、あまりジャズ一辺倒という感じではありませんでした。自分で音楽を探し求めるというよりは、TVや映画、ラジオから聴こえてくるものに反応していたタイプで、その中で先ほども出ましたが、メロディとサウンドがきれいなものというのが、自分の中での“いい音楽”の判断基準になっていて、特にジャンルは気にしていませんでした。

――noonさんはジャズシンガーというよりも、どんなジャンルの歌も自分のカラーで染めることができる“シンガー”という呼び方の方がいいのかと思いました。

そう言っていただけると嬉しいですね。

――プロの歌手を志すきっかけはわかりましたが、実際目指すためにオーディションを受けたり、レコード会社にデモテープを送ったりしていたのですか?

それが特にアクションを起こしていなくて。“いつか何か起こる”という変な自信がありながらも、でも何かしないとという想いはマグマのように沸々とあって。デビューするきっかけになったのも、23歳の時に最初のプロデューサーの方に歌を聴いてもらう機会があって。実はそれまでライブハウスでジャズを歌ったりした経験がなくて、でも絶対歌いたいんだと悶々としていました。

――それでチャンスをつかんだというのは凄いですね。

なめてるって言われますけど(笑)、本当にご縁ですよね。最初のプロデューサーに歌を聴いていただいた時も、その方がスタジオでレコーディングをしているというので会いに行って、そこでジャズのスタンダードナンバーを歌わせてもらって、そこから物語が始まった感じなんです。

――音楽学校でジャズを勉強したりということもなく、声一本で勝負したって感じなんですね。

そうですね、それと根性と(笑)。度胸というか、無知だからできることってあるじゃないですか(笑)。自分を信じるという自信みたいなものを軸に、何かできる自分が絶対いるはずだとずっと思っていました。

――ハリー・コニックJrを好きになってジャズが好きになって、でも色々な音楽に触れていって、プロの歌手のスタートとしてはやはりジャズだったんですね。

ハリーのライブを初めて観た時に、CDで聴いた好きな曲が全然違うアレンジで、いい意味で“何これ?”って思ったんです。そういう音楽の聴き方って初めてだったので、すごく衝撃を受けました。その時に自分もこういう音楽をやってみたいという感情が湧いてきたんです。同じ曲だけど、ライブではまた違った表現、自分なりの表現でお客さんに聴いてもらいたいと思いました。そこからジャズのスタンダードナンバーにものめり込んでいきました。

――ハリー・コニックJr.もジャズもやればファンキーなものもやって、色々な曲をカバーしたり、変幻自在なシンガーですよね。

そうですね、そういうところもツボなんです、私的には(笑)。根底に音楽の力を持っている方なので、何をやっても深いし、どんな人も楽しめるものを作り上げるんですよね。

――なるほど。変幻自在なところはnoonさんもそうだと思いますが、noonというアーティスト名は、どこから来ているんですか?

デビューする時に、ジャズのフィールドの中からも、ポップス的な発想を組み込んでいくのも面白いんじゃない?という話になって、記号のような名前の方が音楽が拡がっていくのでは? ということになったんです。そのタイミングでいただいた知り合いの方のアルバムが『MOON AT NOON』というタイトルで、それを見てピンときました。Noonというのは正午、真っ白で、キャリアのない私がその後デビューすることが決まったから真っさら、真っ白な世界観は合っているはずだし、今後もそういう気持ちを大切にして歌い続けようという想いを込めて付けました。私は大阪育ちの韓国人なんですが、韓国では降る雪のことをヌーンって言うんです。実はその事を私は知らなくて、友達に教えてもらったんですけど、出会うべくして出会った名前だと思いました。

――noonさんの声は温かい感じがしつつも、どこかに陰も感じて、女性らしい凛とした佇まいも感じる声です。これまで西脇辰弥、トランペッターのリロイ・ジョーンズ(Leroy Jones)、笹路正徳、村田陽一、ホセ・ジェイムス等、色々なプロデューサーを迎えて作品を作ってきましたが、きっとnoonさんの声と歌にプロデューサの方達は創造力を掻き立てられたのだと思います。それぞれの方にそれぞれのやり方があったと思いますが、noonさんのスタンスとしては、自分をどう料理してくれるのか楽しみ、という感じだったのでしょうか?

ポンと出されたものの中にダイブするという気持ちはいつもあって、でも結局いつも言われるのは「誰とどうやってもnoonだね」って。それを聞いて自分は間違っていないんだなって思いました。

――そんなつもりはないと思いますが“譲らない”感じです(笑)。

いいところでもあり悪いところでもあるかもしれませんが、そういう部分はどのアーティストも大切な部分だと思います。でも色々なプロデューサーさんとやることで、色々な新鮮な味を楽しめるというのは、歌い手としての醍醐味だと思います。

noon 撮影=鈴木恵

noon 撮影=鈴木恵

その時その時に似合う洋服やメイクを合わせるべきで、
音にも必ずそういう部分があるはず。

――ジャズのスタンダードをカバーしたり、邦楽のカバーをしたり、ボサノバを歌ったりと様々な国の音楽を歌っていますが、言葉についてどういういう風に考えていますか?

英語にしてもポルトガル語にしても自分の中で惹かれるのはやっぱりその言葉が持つ“音”なんです。だからどんな言葉でも、わかってもわからなくても歌ってみたいという気持ちになるのは、知らない音がたくさん詰まっているからだと思います。それぞれの国の言葉が持つ音色の良さがあるので、音遊び的な感覚かもしれませんが、色々な言語で歌ってみたいという気持ちは強いです。

――最近気になっているアーティストはいますか?

最近よく聴いているのがルーマーですね。あんなにサラッとしているのに何回聴いても味わい深いですし。ブルースのフィーリングをサラッと歌っているところが素敵です。彼女の曲も歌ってみたいなと思います。サム・スミスも大好きですし、この前友人に「ローリングストーンズを歌って欲しい。あえて全然違うところをやってみてよ」って言われ、自分と真逆の分野にいるアーティストの歌を歌うと、また違う世界観が見えるかなと思ったりもしています。

――シンガーとしてこれまでに様々な名曲達をカバーし、歌っていますが、やはり歌い継ぐ、後世に残すという意識が強いのでしょうか?

そうですね。すごく素敵なメロディがあって、いい音の世界観が作れているものは、時代が変わろうが絶対にいいものだと信じています。私が選ぶ曲も昔の曲が意外と多くて「こんな曲なんで知ってるの?」って言われることもありますが、それを逆に若い人が聴いて「noonさんが歌っているのを聴いて初めて知りましたが、いい曲ですね」と言われると、歌を歌っていて良かったなと思える瞬間です。だから歌い続けてきているのだと思います。

――ジャズ、ボサノバ、なんでも歌いこなせるnoonさんですが、自分で歌っていて一番
心地いいジャンルはありますか?

どんな音楽もやればやるほど奥が深いからこそ、歌っていても前は気になっていなかったところが気になったり、もっと理解しなければいけないなと思います。ボサノバも浮遊感がありますが、あれこそ言葉ひとつとっても、深くて難しいんです。それぞれの音楽を追求すればするほど簡単ではないですよね。まだまだわかっていないことがたくさんありますが、日本語の名曲は、他のジャンルよりは深く理解できていると、歌えば歌うほど思います。

――デビュー当時の声と、昨年リリースしたアルバムの歌声を聴いてみると、当たり前ですけど声と、声の肌触りが変化していますよね。

そうですね、特に最初のアルバムはプロデューサーの意向もあって、意識的にライトに歌おうと取り組みました。ライトな世界観で表現したいものを抽出しようと思ってやっていました。自分の中でしっくりきたのは、声のトーンがやや抑え目になった2枚目のアルバムからですね。

――これからのnoonさんが歌うジャズは楽しみですよね。もっとキャリアを重ねると声に皺が刻まれてきて、味わい深くなって歌がどんどんふくよかになっていきそうです。

その時その時に似合う洋服やメイクを合わせるべきで、それは全てにおいてそうだと思います。音にも必ずそういう部分があるはずなので、そこをちゃんと受け入れて、そこで自分の良さみたいなものを表現していけたらいいなと思います。

――歌を歌うことは人にエネルギーや癒しを与えることだと思いますが、そうやってアウトプットしている時間が多い中で、インプットをいつどうやってしているのか教えて下さい。

音楽もそうですし、周りにのんびりした生活を尊重してもらえているのは、歌にいい形で響いているんだなって最近思うようになりました。やっぱり普段の生活スタイルが自分のペース、歩幅を大切に生きることに繋がるのだと思います。それはインプットのうちのひとつになっていると思います。ちょっとした選択の中でも、自分に必要なものをきちんとチョイスするように心掛けています。そういう部分では以前よりも意志がハッキリしてきました。旅行も大好きで、旅行に出かけた時にギュッとたくさんいいものをもらって帰るというのは、歌のロマンティックな部分に繋がっていると思います。

――昨年アルバムを出されていますが、次はこんな作品を作っていきたいという展望はありありますか?

先ほどのローリングストーンズの話に繋がりますが、敢えて今までとは違うことにチャレンジして、新鮮に楽しく響くのであればありだと思いますし、そういう意味では、ちょっと変わったことをやってみたいモードになっているのかもしれませんね。最初の頃は自分がやることに対しては、狭い視野でしか考えることができませんでしたが、時間を経て、こういうのもいいなとか色々な人の声に耳を傾けられるようになりました。

――その頑なだった自分から抜けたのはいつ頃だったんですか?

いつの間にかでした。でも5年間くらいは、自分の事は自分で守らないと誰が守ってくれるの?という気持ちが変に強かったんだと思います。もう少し柔軟に上手に生きていくべきだったかもしれませんが、器用じゃないからこそ、ひとつの事に対してもちゃんと意見が言えないというのは、歌手として失格だと思っていました。

――逆にそういう時間があったからこそ、確固たるベースになるものができて、どんな音楽でも歌えるという今のスタイルが出来上がったのではないでしょうか?

そうかもしれませんね。年を重ねて少し余裕も出てきたのだと思います。信頼できる方にも出会え、この世界はやはり出会いが大切だと思いますのでそれを大切にして、新しいことをどんどんやっていきたいです。

――noonさんにとってライブとはどういう存在ですか?

栄養剤のような感じですね(笑)。漲るものを一番感じるのは結局ライブなんだなって思います。ライブの瞬間瞬間の空気に対して、スリルを覚えたり興奮したりしますので、そういう意味では栄養剤のような存在ですね。ライブが終わった後、反省もしますが良かった部分を噛みしめることができるあの瞬間って、他では味わえない、独特のものだと思います。

――9月30日には渋谷のLiving Room Cafeでライブがありますが、どんなライブになりそうですか?

今回は『la voyage de filles』と銘打って、旅をテーマにしたものに。今年はロシアやヨーロッパに行って、旅が続いていますので、その気持ちが音に出たらいいなと思い、世界各国の名曲を中心に歌いたいと思っています。

――最後にnoonさんにとって“人生のSPICE”とは?

やっぱり旅ですね。刺激的なものだと思いますので、これからも旅を続けていきたいです。

取材・文=田中久勝  撮影=鈴木恵

noon 撮影=鈴木恵

noon 撮影=鈴木恵

 
ライブ情報
Living Room Presents
noon cafe live ~la voyage de filles~

9月30日(金)Living Room CAFE by eplus
<出演>noon(vo)、tama(pf/from 227)、yuki(per/from 227)
<時間>1st 20:00~20:40、2nd 21:30~22:10
<料金>500円(飲食代別途)
10月1日(土)大阪 ミスターケリーズ
<出演>noon(vo) 中島徹(p) 予定
http://www.misterkellys.co.jp

10月2日(日)名古屋 スターアイズ
<出演>noon(vo) 砂掛康浩(g) 日景修(b) 砂掛裕史朗(ds)
http://www.stareyes.co.jp

10月16日(日)埼玉 停車場
<出演>noon(vo) 吉田智(g)
<時間>17:00 open 18:30 start 2stages
<料金>予約 4,500円+drink別 当日5,000円(税別) 学割3,000円
http://www.jazz-teishaba.com/top.html

 

リリース情報
アルバム『LOVE VOYAGE』
noon『LOVE VOYAGE』

noon『LOVE VOYAGE』

2015年11月25日発売
VICJ-61744 ¥2,800+税
<収録曲>
01. ばら色の人生/LA VIE EN ROSE
02. ダンシング・クィーン/DANCING QUEEN
03. ブラックバード/BLACKBIRD
04. チーク・トゥ・チーク/CHEEK TO CHEEK
05. アマポーラ/AMAPOLA
06. オール・ザ・シングス・ユー・アー/ALL THE THINGS YOU ARE
07. ラヴ・ダンス/LOVE DANCE
08. 夢見るシャンソン人形/POUPEE DE CIRE, POUPEE DE SON
09. ニュー・シネマ・パラダイス/CINEMA PARADISO
10. テル・イット・ライク・イット・イズ/TELL IT LIKE IT IS
11. トリステーザ/TRISTEZA
12. アヴェ・マリア/AVE MARIA

http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A018348.html​
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