細田守はなぜ親子、故郷の映画を作るのか?作品の真意を赤裸々に語る

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2016.10.27


第一線で活躍し続ける映画監督・細田守の創作の軌跡を辿るアニメーション特集「映画監督 細田守の世界」が今年の東京国際映画祭で開催されている。タイトルに「世界」とあるが、細田作品の世界とはどんな世界で、今後どんな広がりを見せるのか…?

ここでは、開催期間中に行われる全7回のトークイベントから、細田監督の発言をピックアップして、その答えを探っていきたい。10月26日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた第1回は、『おおかみこどもの雨と雪』(12)の上映後に細田監督が登壇した、映画監督・是枝裕和とのトークショー。細田作品が論じられる際によく語られる“家族”というテーマへの言及があった。

■ 「父親の不在…それが作品に出ているのかもしれない」

以前対談した際に、是枝監督に「『バケモノの子』(15)の“父親の不在”ということをズバッと聞かれた(笑)」という細田監督。是枝監督は「『バケモノの子』で、血の繋がっていない存在が男の子の成長を助ける。そこが面白い」と指摘したが、細田監督には、思い当たる節があるようだった。

「僕の先輩や親たちの世代が考える親子関係は濃厚すぎて、80年代に青春期を生きてきた僕には反発があったのかもしれない。僕は父親とお酒を一緒に飲んだり、語り合ったりする前に亡くなってしまった。父親の存在がその距離感で止まっているんです。居心地が悪い宙ぶらりんの状態、それが作品に出ているのかもしれません」。

■ 「『おおかみこども』は“売れる”から一番遠いところにあった」

いまやヒット作として定着している『おおかみこどもの雨と雪』だが、企画の出発点は個人的な思いだったと細田監督は言う。「母はずっと入院していたんですが、『サマーウォーズ』(09)の完成前に亡くなってしまって…。自分としては母親という題材を作らざるを得ない、そういう気持ちで『おおかみこどもの雨と雪』がスタートしました。母と過ごした時間を違う形で表現して、映画を通して母に謝りたいというか。だから、“売れる企画”ということから一番遠いところにあったんです」。

父だけでなく、母も含めた“親”の存在は細田作品に影響していたようで「家族を通して“現代”や“日本”を描くのは映画の王道。でも、アニメでやるのはちょっと変わってる。頭がおかしいんじゃないかって自分でも思うんですけど、やらなくては!という思いもあります」と分析した。

■ 「親の存在や故郷を描くことから結局は逃れられない」

『おおかみこどもの雨と雪』は親だけでなく、細田監督が育った故郷の思い出も映画に反映されている。「まさか自分の母だけでなく、故郷も映画で描くなんてアホだな、希薄だなって自分でも思う(笑)。みんなが共感できるところを作るのが監督の仕事ですから、よもや母との体験なんて普通は距離を取ろうとします。『おおかみこども』のロケハンで映画のスタッフを故郷に連れてきたときは、本当にどうかしていると思った(笑)」。

そう自嘲しながらも、描くのには漠然とワケがあると細田監督は語る。「親もそうですけど、故郷も自分では選べない。素晴らしいところだとは思わないけど、映画では描いてしまう。自分の故郷が美しいと思って育ったわけではないのに。そこにいたということを映画に描いて、自分にとって意味があるものだと思いたくなっちゃう。結局は“逃れられない”ということなんじゃないでしょうか」。

■ 「その映画を作る資格があるか?と言い聞かせながら作る」

細田監督は、個人的な思いを作品にする作家だとよく言われるという。しかし、単純に盛り込んでいるわけではなく、そこにははっきりとした線引きがあるという。

「“資格”が大事なんです。映画を見せるお客さんに対しての敬意というか、お見せする態度として僕がそれを語る資格があるかどうか。『おおかみこども』を作る時、僕にはまだ子どもがいなかったんですが、子どもが欲しくてもできなくてずっと不妊治療をしていた奥さんを見ていたので、それでも作る資格があるんだ、と自分に言い聞かせながら作っていた。それがないと、勇気を持って映画を作れないと思います」。

この日のトークのなかで細田監督は、次回作の脚本が決定稿まで完成して2018年の公開に向けて動いている、と明かした。第29回東京国際映画祭の「映画監督 細田守の世界」は10月31日(月)までトークイベントが開催されるので、今後の発言でその最新作の輪郭も見えてくるかもしれない。【取材・文/トライワークス】
 

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