「すごく前のめりな気持ちでいっぱい」ACIDMAN 20周年イヤーの幕開けにフロントマン・大木伸夫がその胸中を明かす

2016.10.31
インタビュー
音楽

ACIDMAN・大木伸夫 撮影=菊池貴裕

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2017年は、ACIDMANにとって結成20周年&デビュー15周年というアニバーサリー・イヤー。リリース、ライブ、主催フェスと多彩なプログラムが発表されているが、その皮切りとなるのが10月26日のシングル「最後の星」と、ファンからのリクエストを元に作られたファン・ベスト『Your Song』だ。誰にも似ていない音と世界観を貫いて道なき道を切り拓く、唯一無二のバンドの軌跡とこれからの展望を、大木伸夫(Vo/G)が語ってくれた。

――20周年プロジェクトの全貌がいよいよ明らかになってきまして。今回のシングルとベスト盤の同時リリースから始まって、対バンツアー、1年後の主催フェスまで続くという。

そうですね。11月23日のさいたまスーパーアリーナまで。

――1年かけての予定を、綿密に考えたんですか。

フェスをやろうという話はずっと前から、制作のスタッフからも言われていて。でも10-FEETとかもやってるし、フェスはほかにもいっぱいあるからと思ってたんですけど、このタイミングだったらいいのかなと。いただいたアイディアであるんですけど、やろうかと思いました。

――それが最初に決まった?

順番的には覚えてないですけど、まずベストを出すというのはユニバーサルからのアイディアで、そういう話があったんだけど、5年前に一度出してるからちょっと現実的じゃないなと思ってたんですよ。でも何回か打ち合わせをやってるうちに、制作のスタッフから「ファン投票でのベスト・アルバムだったらいいんじゃない?」というアイディアをもらった時に、イメージが湧いて、自分たちも聴きたいものになるなと思ったので。これは有りだなと。

――その、ファンが選んだリクエスト上位20曲を入れたベスト『Your Song』。どうですか、このランキングを見た感想は。

意外な曲ももちろんあるんだけど、自分の中で本質的なものを投げかけていた曲が上位にいるので、うれしかったですね。ニューアルバム(『有と無』)からの「最後の景色」とか、自分の死生観、思想や哲学が詰まっている曲がランクインしたのはうれしかった。自分的には「リピート」を一番入れたかったから、ぎりぎり20位になってよかった(笑)。

――これは操作してないですよね?

何の操作もしてない!(笑) ただ、僕は自分で投票しましたけどね(笑)。

――「ALMA」の1位は予想していた?

もともとファンの方からライブのアンケートをもらって、好きな曲ランキングでずっと1位だったんですね。とはいえこういうベストだったら、もしかしたら少しマニアックなものが入って来るのかな?と思ったんですけど、順当に決まった感じがします。

――逆に、意外だと思った曲は。

「風、冴ゆる」(ランキング3位)はアルバムには入ってなくて、シングルのカップリングなので。ライブでもすごく盛り上がるのはわかってはいたんですけど、ここまで順位が上がってくるのは意外だった。

――基本、ライブ・チューン中心なのかな。いや、そうでもないか。

そうなんですよね。

――定番の「Your Song」とか入ってないし。

入ってないんですよ。タイトルなんだけど(笑)……20位台の後半だったかな。

――メンバーは何か言ってました?

メンバーも同じような感覚で、もっと激しいロックなものが入るかと思ってたけど、大木の思想の強いものが上位にあるねと言ってました。

ACIDMAN大木伸夫 撮影=菊池貴裕

――ボートラにもひとこと。インストが2曲入ってます。

これは頼まれて、インストの曲を過去に2回作ったことがあって。1曲目の「CHRISTMAS FANTASY」は大阪のHEP FIVEという商業施設のクリスマス・イベントのために作った曲で、無料配布してた楽曲なんですよ。もう一個の「Rainy」は、シャンプーのテーマ曲を作ってくれと言われて作った曲で、ここで陽の目を浴びて良かったなと思います。

――そしてニューシングル「最後の星」。この曲はいつ、どんなふうに?

半年ぐらい前かな。メロディはすごくシンプルなんだけど、静寂からどんどん爆発していくような、もう一度自分が好きだったロックの良さを振り返って、そういう曲を作ろうと思って作りました。サビのメロディは、ケータイのボイスメモをさかのぼったら、2011年ぐらいに似たようなメロディを作ってたんですね。でもその時はここまで突き抜けてはいなかったので、ネタとしてストックしておいたものを、今回この形できれいにはめられたから、すごくよかったなと思います。

――大木節だと思いましたよ。ACIDMANとしての王道感あるメロディ。

そうですね。合わせてる時もすごく手ごたえがあって、やっててすごく気持ちいいんですよ。メロディの流れを堰きとめないというか、そのまま流れていく感じがすごくいいなと思って。

――右チャンネルのギターが4つの音階をループして、左チャンネルは生々しいストロークが聴けて。これってライブでルーパーを使って作るギターサウンドに似てると思ったんですよ。

まさに。曲を作る時もそうやって作ったんで。最初にフレーズを弾いて、ルーパーを踏んでからそれに合わせて弾いて、その流れでサビまでメロディが湧き出てきたので、そのまんまを録れた感じですね。

――ルーパーって最近使う人多いですけど、ACIDMANの音には特に合ってると思います。

ありがとうございます。テクニック的にはかなり難しいですけどね。ちょっとでもずれたら、ずっとずれたままなので(笑)。で、今回のリフは……自分の中のテーマとして、今まではカップリングに新曲を入れてなくてリアレンジしたものが多かったんですけど、今回は1枚のシングルとしてかなり力を入れようと思ったんで、3曲で完結するようにしようと。今回の企画としては、同じギターフレーズが3曲とも入っているという実験的なことをやってみた。面白かったですね。

――それは最初からアイディアとして?

いや、レコーディング数日前とかに思いついて、収録する曲もがらっと変えて。自分でもすごくうまくいったなと思います。

――3曲で完結させるのって、初期のシングルがずっとそうだったじゃないですか。

そうそう。あれをもう一度やりたいなと思って。

――原点に回帰するみたいな感じもあるのかな。20年ということで。

そうですね。それと「風、冴ゆる」とかもそうですけど、カップリングの曲がまだアルバムに入ってないので、いつかB面集を作りたいと思っていて、あと5~6曲足りないんですよ。そこに合いそうな曲を今作って行ってるんです。B面アルバムのために(笑)。2曲目の「Sore」はそこに入れたいと思ってる曲ですね。

ACIDMAN大木伸夫 撮影=菊池貴裕

――あらためて「最後の星」は、世界観としては?

自分の勝手な思いとしては、「ALMA2」なんですよ。詞の世界もちょっと似せていて、「ALMA」の最後の歌詞で<最後の星>が出てくるので。あと(「ALMA」に)<重ねた指のその暖かさに約束しよう>という歌詞もあって、今回は<その手を離さないでいて>と歌ってる。自分がもともと好きな“星”というテーマと、人間の生き死にの問題と、その裏側の目に見えない世界とが、一番好きな世界なので、20周年のタイミングではそういうところをより強く打ち出したくて。歌ってる内容はずーっと一緒だから、そこにもっと自信を持って掲げてる感じですね。

――変わらないけど、より優しさというか、暖かさを感じますね。そしてあらためてカップリング「Sore」については?

これはすごく気楽に作れたというか、B面だと思って臨むと余計なプレッシャーがなくなるので、肩の力を抜きながら作りましたね。

――AメロとBメロ、サビの部分がかなり雰囲気が違って、2曲くっつけたのかな?と思うぐらいに。

最初にAメロのアイディアがあって、レコーディングが決まってからサビを作り直したからかもしれない。

――こういうアコースティックで緊張感のある曲調も、ACIDMANの得意技の一個ですよね。もう1曲はインストの「アルフヘイム」。意味は、妖精の国?

という、北欧神話の中に出てくる言葉です。この曲を作った時に、ちょっとアイスランドっぽいなと思って、妖精感あるなと思ったんで(笑)。

――これは大木さん主導で?

ほぼ作り上げていきました。ただドラムに関しては口で伝えて、(浦山)一悟くんにリズムパターンを組んでもらって。何回かデータのやりとりをして作っていきました。

――どうですか。最近のイチゴさんとサトマさんは。

頑張ってますよ(笑)。ただ、今回ベースはスピード感が大事だったんですけど、佐藤くんが弾けなかったので、2曲目のベースは実は俺が弾いてるという。ちょっと難しいフレーズで、練習する時間もなかったから、「俺弾いちゃうわ」って。

――そうなんだ。それ書いていいんですか。

全然いいです。もうあちこちで言ってるので(笑)。

――あと、このシングルはジャケットがまたかっこいい。

いいですよね。「最後の星」が虹をテーマにした楽曲だったので、虹の写真を探していて。ちょうどいい写真をみつけて、入稿して、2日後に中津川のフェス(『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016』)があって。自分たちの出番の5分前に、同じような虹が出た。会場もざわつくぐらいのきれいな虹が出たんですよ。それが思い出深かったし、この曲のMVも、また海外に行ってニューメキシコの白い砂漠で撮ったんですけど。

――ああ、ホワイトサンズ。

そうです。最後のシーンで自分が祈っているシーンで、雨も降っていないのに空に虹がかかったんですよ。映像にも入ってるんですけど、それはすごかったですね。嘘みたいな話ですけど。だから今回、虹なんでしょうね。

――運命ですねそれは。

すごく不思議でした。俺は気づいてなかったんですけど、スタッフの一人が気づいて、写真を撮ってくれて。くっきりではないんですけど、雲間に虹がかかってるんですよ。ビデオでも、最後にそのシーンがちらっと映ります。

――つながるんですね。思いが通じたというか。

ご褒美をいただいた感じですね。

――ジャケットの話で言うと、『Your Song』のほうは鏡になってるのかな。

そうです。これは佐藤くんのアイディアで、『Your Song』というタイトルだから、鏡にしたいって。それはいいアイディアだねって。

ACIDMAN大木伸夫 撮影=菊池貴裕

――そして、もう2017年のツアーも発表されてます。驚くのはこれが全部ツーマンで、ワンマンは1月21日のリリース記念ライブのみ。2017年のワンマンライブはこれ一回だと聞いて、そんな20周年ってあり?と思っちゃったんですけどね。

そうなんです。でも今まで俺らはずーっとワンマンだったので、逆にこのタイミングでしかできないことかなと思って。ほとんどイベントに呼ばれる側で、自分たちはワンマンだったんですけど、20周年で振り返ると、先輩も後輩も含めていろんな人たちに影響を受けたし、その全員を呼ぶことはかなわないですけど、一緒にやることで刺激にもなるし、ぜひやってみたいなと。来年が終わったらまたワンマンにしようと思ってるんですけど、やっぱりこういうシンプルな、当たり前のことでもあるんで。対バンって。

――誰もがそこから始まりますから。

それは、このタイミングでしかできないかなと。それを1年かけて、11月23日のフェスまでやっていきたいと思ってます。

――もう11月のツアーからその企画は始まっていて、ストレイテナー、Suchmos、Aggressive Dogs、SPECIAL OTHERSという対バンが発表されてます。

自分でもこの振り幅はすごいなと思ってますね。変だなというか(笑)。ストレイテナーやSuchmosはわかるけど、そこにAggressive Dogsが入って来るという。

――そこがACIDMANらしいところですけどね。最近特にそうじゃないですか。coldrainとかCrossfaithとか、ラウド系のバンドに呼ばれることが増えていて。

そうなんですよ。

――接点なさそうなんですけどね。なぜああいうタイプのバンドに好かれるのか、自分でどう思います?

いや、うれしいですよ。彼らみんなが言うには、ラウド系のバンドをやってる人こそバラードが好きだったりするんですよ。俺もバラードが好きなんだけど、だからこそラウド系が大好きで、Crossfaithはファンと言っていいぐらい好きなんで。やってることは違うけど、お互いリスペクトしあえてるんだろうなって。それは面白いですね。キャパの広さというか。

――そんなバンド、今なかなかいないと思う。

そこは、ありがたいことだと思います。声をかけてくれなければできないので。

――実際どうなんですか。Crossfaithのお客さんとか、モッシュもダイブもやる気満々じゃないですか。どういう反応なんですか。

あ、でもね、ちゃんとバラードの時には聴いてくれるし。ほとんどロビーにいないでみんな見てくれたらしいし。それはうれしかったですね。

――20年ですからね。ロックシーンの中での重鎮感、感じてるんじゃないですか。

ないです(笑)。全然まだまだですよ。ここからだなと思ってます。

――長くやっている実感は?

あっという間の、ですね。当たり前だと思うんですけど、長くやったなという感慨には全然染まってないし、すごく前のめりな気持ちでいっぱいなので。焦りもあるし。気づけばもう20年たってしまったなと。なしえてないことが多すぎるので。まだまだやっていきたいと思います。

――それは創作の面ですか。それとも活動の規模とか。

どっちもですね。振り返って曲を聴いて、いいなと思う曲もあるけど、言葉ひとつ取ってもまだまだだなと思うし、ライブも、セールスも、動員も。もちろん今の状態はとても贅沢で、感謝はしてるんだけど、まだ一定の満足度は得られてないので。という感じですかね。

――いいですね。ずっと貪欲。満足しない。

満足しないですね。

――来年、2017年のアニバーサリーは、どういう楽しみ方をしますか。

この曲を持って、これがスタートなので。アンセム的な楽曲ができたと思うし、ライブも見えるし、すごく手応えがあります。これが太い木の中心みたいなもので、1年を過ごしていきたいですね。幹の太い1年を。もともとそういうバンドなんで。大木という名前に恥じないような形になっていきたいなと思います(笑)。


取材・文=宮本英夫 撮影=菊池貴裕

ACIDMAN大木伸夫 撮影=菊池貴裕

リリース情報
「最後の星」
 発売中

シングル「最後の星」

価格:¥1,200+消費税
品番:
<初回限定 紙ジャケット仕様>TYCT-39048
※初回仕様終了後、通常仕様(TYCT-30061)に切り替え
(収録曲)
M1. 最後の星
M2. Sore
M3. アルフヘイム -instrumental-
 
ACIDMAN 20th Anniversary Fans’ Best Selection Album “Your Song”
発売中

『20th Anniversary Fans’ Best Selection Album “Your Song”』

価格:¥3,500+消費税
品番:
<初回限定生産スペシャルパッケージ仕様>TYCT-69106/7
※初回仕様終了後、通常仕様(TYCT-60092/3)に切り替え
2枚組CD 全曲リマスタリング
(収録曲)
【Disk1】
1. ALMA
2. ある証明
3. 風、冴ゆる
4. 式日
5. OVER
6. and world
7. migration 1064
8. 酸化空
9. イコール
10. 培養スマッシュパーティー
【Disk2】
1. アルケミスト
2. 季節の灯
3. 静かなる嘘と調和
4. Stay on land
5. 世界が終わる夜
6. FREE STAR
7. 今、透明か
8. 最期の景色
9. 赤橙
10. リピート
11. CHRISTMAS FANTASY -instrumental-
12. Rainy -instrumental
-

 

ライブ情報
「ACIDMAN 20th Anniversary Fans’ Best Selection Album “Your Song” 」リリース記念プレミアムワンマンライブ
日時:2017年01月21日(土)
開場・開演:17:30 / 18:30
会場:Zepp Tokyo (東京都江東区青海1-3-11)
席種・料金:1F立見・2F指定 / 4,800円
問合せ:SOGO TOKYO (03-3405-9999 ※12:00~13:00/16:00~19:00日・祝除く)

ACIDMAN 20th Anniversary 2man tour
2016年
11月16日(水) 東京:Zepp Tokyo w / ストレイテナー
11月19日(土) 新潟:新潟LOTS w / Suchmos
11月25日(金) 宮城:石巻ブルーレジスタンス w / Aggressive Dogs
11月27日(日) 宮城:仙台PIT w / SPECIAL OTHERS
 
2017年(*対バン相手は順次発表)
02月04日(土) 香川:高松オリーブホール
02月12日(日) 鹿児島:鹿児島CAPARVOHALL
02月18日(土) 広島:広島クラブクアトロ
02月26日(日) 福岡:drum logos
03月03日(金) 石川:金沢EIGHTHALL
03月05日(日) 岡山:岡山CRAZYMAMA KINGDOM
03月11日(土) 福島:いわき市文化センター
05月14日(日) 北海道:Zepp Sapporo
05月19日(金) 愛知:Zepp Nagoya
05月21日(日) 大阪:Zepp Osaka Bayside
05月27日(土) 東京:Zepp Tokyo
06月03日(土) 沖縄:桜坂セントラル


ACIDMAN主催『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』
2017/11/23(木・祝)
故郷・埼玉県、さいたまスーパーアリーナにACIDMAN主催『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』開催決定!
●ACIDMAN MOBILE / acidman.mobi
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