崩壊シリーズ『リメンバー・ミー』主演・山崎樹範インタビュー

インタビュー
舞台
2017.2.10
『リメンバー・ミー』 山崎樹範

『リメンバー・ミー』 山崎樹範


注目俳優が語る役作りから最近の涙まで

2017年4月13日より俳優座劇場(東京)にて、崩壊シリーズ第2弾『リメンバー・ミー』が上演される(大阪、名古屋、福岡でも巡演)。前作『九条丸家の殺人事件』に続き、主演は山崎樹範。作・演出はオークラが手がける。

「崩壊シリーズ」の名のとおり、前作では、劇中の素人劇団「荻窪遊々演劇社」の団員たちの小さなミスやハプニングで、舞台セットのドアが壊れたり小道具がなくなったり。次々に壊れ、最後には舞台のすべてが見事に崩壊した。計算されつくした演出は、2015年に英国オリヴィエ賞で最優秀コメディ賞を獲得した『The Play That Goes Wrong』を原案としている。

オリジナル脚本となる第2弾で、オークラがどんな「崩壊」を見せてくれるのか、来春が待ち遠しい。主演の山崎樹範は、今月に入り本作の上演決定、出演映画『幸福のアリバイ』の全国公開、プライベートでは女優・吉井怜との入籍と、目の離せない俳優だ。2016年11月の結婚発表からほどなくして、都内スタジオでインタビューに答えてくれた。好評を博した第1弾の裏話、プライベートのエビソードをきいた。

イギリス発、日本製の崩壊コメディ第2弾

--ご結婚おめでとうございます! 

どうもありがとうございます!

--チラシのシルエットを思わせる和装ですね。

今、この衣装でPR映像を撮ってきました。

--第2弾決定ということですが、前作の公演中から続編を望む声がありましたね。

前回は、口コミでお客さんが増えていくという、一番ありがたい形で盛り上げていただきました。

--原案はイギリスの舞台と聞き、重厚な作品、あるいは辛辣な風刺をきかせた喜劇を想像される方もいらっしゃるかもしれません。そのどちらでも……。

ないですね(笑)。ほぼ中身はない、ただただ笑える舞台でございます。原作があるといっても前回もほとんどオリジナルなんですよ。作・演出がオークラさんなので。

--オークラさんといえば、バナナマンさんや東京03さんのコントや、『ゴッドタン』など人気番組に多く関わる構成作家さんですね。

西洋と日本で、笑いのポイントが違いますよね。そこをオークラさんが日本の笑いに寄せて。たとえば登場人物の元ホストとか元キャバ嬢という経歴は、オークラさんのオリジナルですよ。

--次回も舞台セットは崩壊していくんでしょうか。なにか伺っていますか?

大筋はできているみたいですが、どうなんでしょうね。今から台本を読むのが楽しみです。稽古が始まると、台本がどんどん変わっていくんですよ。オークラさんってジャッヂが早い方なんです。やってみて違うと思えば「ここ変えます」って直して、どんどん面白くなっていくんですよ。すごいんですよ!

荻窪遊々演劇社、表と裏の劇団員

--共演者の演技に笑ってしまうこともあったのではないでしょうか? アドリブも含めての作品ですか?

そこは意外ときっちりしているんです。前回は「自由にお任せで」というシーンはありませんでした。個々丁寧に、忠実に同じことを再現するんです。「このシーンではこの人に視線がいくように他は全員黙る」とか、お客さんの視線をすごく考えて稽古していました。この作品は、舞台のあちこちでドタバタと色んなことが起こります。これを見逃すと次の笑いにつながりにくくなる場面もありますから、みんなで1つの笑いを作って、それを立て続けに起こしていく。チームプレイでした。

--アドリブだなんて失礼しました。

いえ、それでいいんです。どこまで台本なんだろうと思っていただければ成功です。時々本当のハプニングもありましたけれどね(プロデューサー:思わず笑い大きくうなずく)。セットの壊れちゃいけないところまで壊れてしまい「ちょっと出られないんだけど!!」とか(笑)。

毎日壊して、直すので、裏方さんも大変ですよ。本番中、芝居にあわせてセットを壊すのもその方々で、こちらと呼吸をあわせて、セットのこっちをぶっ壊したらあっちで小物を落として。あれ3人でやってくれていたんですよ?それに僕がとんでもなく汗かいちゃうのも、すぐに乾かしてくださる衣装さんも大変。舞台裏の方が忙しいっていう、影の劇団員たちですね。

山崎の考える役作りとは?ミッションとは?

--前作に続き「荻窪遊々演劇社」座長・栗須健司役ですね。山崎さんは、あまり役作りをなさらないそうですね。

僕の場合、基本は引き算です。自分の中からいらないものを引いていく作業です。自分にないものをもってきて嘘を重ねるよりは、リアリティがあるんじゃないかという考えです。役作りには色々なアプローチがあって、役の履歴書を作ったりノートに生い立ちを書く方もいらっしゃって、それは純粋にすごいなと。

ただですね、正直言うと「役作りなんか全然しないっすよ」って言う方がかっこいいと思っているタイプなんですよ。(山崎以外、全員笑う)本当のことを言ってしまえば、役者として何もしないわけではありません。すかしたスタイルっていうんですか?「してないです」って言うのも込みのそれみたいな。どうですか、かっこよくないですか? かっこいいですよね?! ぶっちゃけかっこいいと思いますか? どうですか?!

--(一同、笑)

--役者として私生活で心がけていることはありますか?

プライベートは大事です。見たり聞いたり本を読んだり景色をみたり、あとは人に会って、いろんな感情を。役者は、感情をつかさどるお仕事だと思っているので。あとは、飲み屋にいっても自分にミッションをたてたりとか。

--ミッション?具体的には?

昔やったのは、バーの隣りの席に失恋した女性がいたんです。常連さんなのか、マスターとの会話からそれを知り、僕は「この女性を笑顔で帰そう」とミッションを立てるわけです。僕もマスターと喋っていれば、なんとなく女性とも話すようになりますよね。色々聞いたり話したりして2時間後には女性がケラケラ笑って帰っていく。それをきっちり、僕の中のお芝居としてやりきるみたいなミッションです。お芝居って、相手の気持ちをどんどん動かしていく作業なので。

--その時の優しさは、お芝居だったんですか?

そう……、なりますね。いやな話ですね。

--いやな話ですね(笑)。

切り口じゃないですか?!いや、これ、いい話ですねとなるはずなんです。女性が笑顔で帰っていくいい話、という方向性もあったはずなんですけれど(一同、笑う)。

昔からなんです。バイト先で「人気者をやってみよう。人気者という役がきた時に役者ならそれをやれなくちゃいけないから」とか。僕は、役者として望まれる人になりたいという欲望が強いのかもしれません。役者って、人に必要とされる存在でないと独りよがりになっていまいますから、望まれたいと思ってしまうんです。でも言葉を返すと、人の顔色ばかり窺っていることにもなって。役者をやっていくために、時には真逆の、わがままな自分になれないといけないと考えるときもありますね。

--第2弾の劇中でも結婚されるそうですね。プライベートの奥様の前では、どんな山崎さんになるのでしょうか?

本当になんっの努力もしない、だらしない姿でいられます。

--わがままも言えそうな関係ですね

来客があるから掃除しなくちゃいけない日があったんです。その時、言いました。「ほんっとに申し訳ないんだけれど、俺は今、掃除したくない。何にもしたくない。俺は風呂に入りたいのだが」と。そんな自分を出せる関係です。はい(笑)。

すっごい笑って泣けたら最高にいい舞台

--次回作のテーマを教えてください。

「涙」です。お芝居はおもしろくていいんです。けれど、すっごい笑って泣けたら最高にいい舞台じゃないですか。そういう舞台がすごく好きなんです。

--「涙」にちなんで、最近泣きましたか?

このあいだカラオケに行ったときですね。おっきな声で歌ってたら自分の声に自分でグッときちゃったことがありました。

--どんな曲を歌われていたのでしょうか?

BUMP OF CHICKEN​の「とっておきの唄」というラブソングです。歌詞が好きなんですよ。気心知れた友達と、まったく上手くはないんですけれど、自分の声にね。おっきな声で歌うとグッとくるじゃないですか。歌ってハートだなって思いました。大事なことだから書いておいてください。歌ってハートだなって。(一同、笑う)

違う文化の人間が集まる崩壊シリーズ、荻窪遊々演劇社

--劇中の団員である共演者の方々にメッセージはありますか?

役の栗須も、僕自身も、つたない人間です。こんな僕に座長を務めさせてくれてありがとうという気持ちがまずあります。地位が人を作ることってあると思うんです。地位に見合わない人が、与えられたポジションに追いつく努力をするという。その意味で、役者人生の中ですごいいい経験をさせていただいています。もう一個二個、ちゃんと、人になる作業をさせていただきます。

本当にすばらしい役者さんばかりですからね。劇中の団員と同じで、みんな出どころはばらばらです。小劇場、ミュージシャン、芸人さん、宝塚、夢の国のキャラクターで大人気だった方もいて。お越しくださるお客さんには、違う文化の人間が集まるからこその化学変化も楽しんでいただけるはずです。

「結婚指輪はこれから買う予定です」山崎樹範

「結婚指輪はこれから買う予定です」山崎樹範

取材・文・写真撮影:塚田史香

公演情報
~崩壊シリーズ~『リメンバー・ミー』

■作・演出:オークラ
■出演:(敬称略)山崎樹範、松下洸平、味方良介、上地春奈、大水洋介(ラバーガール)、伊藤裕一、彩吹真央、梶原善​
 
<東京公演>
■劇場:俳優座劇場
■日程:2017年4月13日(木)~4月30日(日)
■終演後 アフタートーク開催
4月14日(金)19:30回:山崎樹範・上地春奈・大水洋介
4月17日(月)19:30回:山崎樹範・松下洸平・味方良介
4月18日(火)19:30回:山崎樹範・大水洋介・オークラ(作・演出)
4月19日(水)19:30回:山崎樹範・上地春奈・彩吹真央
4月21日(金)19:30回:山崎樹範・味方良介・梶原 善
4月24日(月)19:30回:山崎樹範・松下洸平・彩吹真央
MC=全日程 伊藤裕一

 
<大阪公演>
■劇場:松下IMPホール
■日程:2017年5月3日(水・祝)~4日(木・祝)
■終演後 アフタートーク開催
5月3日(水・祝)16:30回:山崎樹範・味方良介・彩吹真央 MC=伊藤裕一

 
<名古屋公演>
■劇場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
■日程:2017年5月11日(木)18:30開演
■終演後 アフタートーク開催
5月11日(木)18:30回:山崎樹範・上地春奈・大水洋介 MC=伊藤裕一

 
<福岡公演>
■劇場:都久志会館
■日程:2017年5月13日(土)~14日(日)
■終演後 アフタートーク開催
5月14日(日)13:30回:山崎樹範・松下洸平・梶原 善 MC=伊藤裕一

 
■公式サイト:http://www.houkai-st.com/
一般発売日:2017年2月11日(土)10:00

 
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