愛知県長久手市在住の劇作家・刈馬カオスが描く市民劇とは?

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2016.11.18
 『長久手人物語〜ナガクテビトモノガタリ〜』チラシ表

『長久手人物語〜ナガクテビトモノガタリ〜』チラシ表

2050年、長久手市が独立国家に!? 未来から現在を見る、11月19日たった1日限りの市民劇公演

東洋経済新報社が全国の都市を対象に毎年公表している「住みよさランキング」で、千葉県印西市に次ぐ第2位に輝いた愛知県長久手市。名古屋の中心部から電車で約30分の場所にあり、ベッドタウンとして近年めざましい発展を遂げている街だ。加えて、東海エリアの演劇関係者にとっては、とてもなじみ深い街でもある。それは「長久手市文化の家」の存在があるからだ。

1998年に開館した「長久手市文化の家」は、演劇、音楽、伝統芸能から子ども向けイベント、アウトリーチまで幅広く開催し、年間100本以上の自主事業も意欲的に行っている。中でも、2003年からは長久手市が主催し日本劇作家協会東海支部がプロデュースする年に一度の短編演劇イベント「劇王」がスタートし、今や全国各地にも波及、独自開催されるまでに。当地での「劇王」は2013年に一旦休止しているが、以降も形を変えながら毎年「長久手市文化の家」で行われ、来年1月にも東海支部イベントが予定されている。

こうしてもはや東海エリアの演劇人にとって無くてはならない存在となった同館で、ようやく、といった感もある市民劇『長久手人物語~ナガクテビトモノガタリ~』が、11月19日(土)の1日限りで上演される。

劇作と演出を担当するのは、自身も長久手市に暮らす刈馬カオス(刈馬演劇設計社主宰)だ。依頼を受けて、
「待ってました! と。僕にとって長久手は演劇のまち。市民劇はいつかやらなくてはいけないと思っていたので、公演が決まったこと自体嬉しかったし、その依頼が僕に来たこともとても嬉しかったです」と刈馬。

出演者一同。前列中央が作・演出の刈馬カオス

出演者一同。前列中央が作・演出の刈馬カオス

依頼にあたり、劇作のテーマとして提示されたのが《長久手未来まちづくりビジョン》というものだ。2050年頃まで人口増加を続けると予想される長久手市だが、やがて訪れる人口減少期を見据え、少子高齢化の課題に対応していくため作成されたもので、「人をつなぐ」「場をつなぐ」「時をつなぐ」「夢をはぐくむ」という4つの要素で“長久手人”が育っていく姿とまちの姿をイメージした物語になっている(詳細は長久手市のHPを参照)。

ここから刈馬が発想したのは、構想通りにまちづくりが進んだ結果、理想郷のようになり全国から人が集中した2050年の長久手市。殺到する移住希望者への対応をめぐり日本政府と対立、ついには独立国家〈長久手国〉を築くという極端な政策に至った状況を変えるべく、未来の長久手人が《長久手未来まちづくりビジョン》を阻止しようと2016年にタイムスリップしてくる…というストーリーだ。

稽古風景より

稽古風景より

執筆にあたって刈馬は、街歩きをしたり、市役所の協力を得て昔から住んでいている人の話を聞いたり、図書館で古地図を調べたり…と、多くの取材を重ねたという。それによって長久手という街をより肌で感じる部分が強くなったと言い、戯曲には「愛・地球博」(2005年開催)の長久手会場跡地にできた記念公園(モリコロパーク)や、人気の天然温泉施設『ござらっせ』、来年オープン予定の『IKEA』といったご当地ネタも満載に。

さらに、今から34年後の2050年に対比させ、34年前─1982年当時にも着目。未来をベースとしたストーリー展開ながら、過去の出来事も包括して長久手を描いた。
「取材をしてみて感じたのは、思った以上に古い町並みや昔から住んでいる人が多かったということ。その方達が皆、新しく移り住んだ人のことを歓迎しているんですね。新しい店も増えたり活気があって上昇期にある街ですけど、元の住民の意に反した発展ではないんです。観客の方もこの作品を通して、長久手の新しい魅力を発見してほしいですね」

また、全22名の出演者はオーディションによって選ばれたが、刈馬作品常連の二宮信也と元山未奈美は指名キャスティングで、オーディション組の演技指導にもあたったという。採用基準については、「出演者の多い作品なので、年齢層の幅を意識したことと、グループワークで積極性や協調性が高かった人を採用しました。今回が初舞台の人もいますが、やる気があって仲の良い座組で、選んだ人は間違いないと思っています」と。

刈馬といえば、毎回趣向を凝らした舞台装置も見ものだが、今作では長久手の起伏に富んだ地形に想を得て、高低差のある舞台にしたという。
「誰もわからないと思いますが、頂上は、かつて家康が「小牧・長久手の戦い」で陣を張った色金山をイメージしています。全体としては、敢えて長久手感を出さず外に開いたものにしたかったので、異国情緒を意識しました。長久手は「愛・地球博」でかつて世界中の人が訪れた場所でもあるので」

稽古風景より

稽古風景より

最後に、市民劇を創るにあたって意識されたことは? と尋ねると、
「フェスティバルの意味合いが強い公演なので、祝祭的なものにしようと思いました。いつもの僕のやり口とは違ったバカバカしくて荒唐無稽な設定にすることで、共感性の高い、壮大で面白い話になれば」と語った。

鎖国状態の長久手はいったいどうなるのか? そして、刈馬が描く理想的な未来の長久手とは…!? たった1日の上演ではもったいない本作。15時の1回公演のみなのでお見逃しなく!
 

公演情報
第31回 国民文化祭・あいち2016
『長久手人物語〜ナガクテビトモノガタリ〜』


■作・演出:刈馬カオス
■出演:二宮信也(スクイジーズ)、元山未奈美(演劇組織KIMYO)、麻原奈未、石谷梨那、いっこ、稲田幸子、金田治、佐藤裕二(オレンヂスタ)、澤邉彩奈、新宮虎太朗、田口まり子(劇団かがやき)、鶴丸美紀、西尾寿江(長久手市劇団 座☆NAGAKUTE)、野沢美月、服部朱葉、日坂朱里、ぴょん(名古屋大学劇団新生)、古河初美(長久手市劇団 座☆NAGAKUTE)、古部未悠、松原亜美、宮田頌子(オレンヂスタ)、村上真菜(とよた演劇アカデミー9期)

■日時:2016年11月19日(土)15:00
■会場:長久手市文化の家 森のホール(愛知県長久手市野田農201)
■料金:無料(要整理券) ※長久手市文化の家の窓口または電話で要予約 0561-61-2888
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「藤が丘」駅下車、リニモで「はなみずき通」駅下車、徒歩7分
■問い合わせ:長久手市文化の家 0561-61-3411
■長久手市文化の家HP http://www.city.nagakute.lg.jp/bunka/ct_bunka_ie.html
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