反田恭平が佐渡裕指揮 東京シティ・フィルと全国ツアー~音楽は進化し、また深化する、“今”を聴き逃せない稀有な才能

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反田恭平

反田恭平


2017年は2つの全国ツアーを敢行、ますます人気に火が付く予感。目覚ましい活躍である。

2015年7月に『リスト』というストレートなタイトルのCDでメジャー・デビューを果たしたかと思えば、2016年1月に東京・サントリーホールで行われたデビュー・リサイタルはソールドアウト。日本だけではなく、その当時拠点としていたロシアでも重要なコンサートに抜擢されるなど、反田恭平の名前はまたたく間に広まった。そしてCDデビューから1年たった2016年8月から9月にかけては、東京・浜離宮朝日ホールでの「3日連続(3プログラム)リサイタル」が行われ、こちらも即日ソールドアウトで追加公演が3日間も行われたほどの人気に。2017年はすでに全国規模のツアーが決定している。

―― 2016年に、3日間、追加公演も含めると6日間(3プログラム×2セット)というリサイタルを経て、ご自分の中ではなにか変化がありましたか。

確実に言えるのは、自分にとって大きなチャレンジだったということです。演奏する曲も事前まで悩み、聴いていただいた曲の半分以上は、新たな挑戦でした。自分のことながらまだ限界点が見えていないこともあり、今までコンサートでは弾いていない曲もやってみたかったし、体力や精神力がどこまでもつのかも知りたかったのです。自分をどれだけ追い込めるかについて考えた6日間でもありました。また、コンサートはCDと違って、そのとき限りのライヴであることを常に意識していますから、同じ曲であってもホールの空気やお客さんの雰囲気によって演奏が変化するのは当然。ですから今回は同じプログラムや曲であっても、1セット目と2セット目では演奏が違いました。僕はホールに足を踏み入れた途端「時が止まる」という感覚をおぼえるのですけれど、自分が音楽でその「時」を操るというイメージを大事にしているのです。

―― 2014年からモスクワ音楽院で勉強をしてきましたが、現在も活動の拠点はロシアですか。

モスクワ音楽院にはもう籍を置いていません。ヨーロッパのどこか、たとえばドイツ、イタリア、フランスあたりを拠点にして活動を続けながら、違う学校で音楽を学びたいと考えています。ただし、ロシアに住むことで得たことは本当に多く、あの国ならではの風景を見たり、言葉を知ることでチャイコフスキーやラフマニノフなどロシア音楽との距離が近くなりました。特にサンクトペテルブルクへ行ったときの印象が強烈で、空港を出ると広い大地が広がり、遠くに森が見える中、雪の結晶が空気中にきらきらと舞って幻想的な風景を目の当たりにしたのです。不思議な静けさと包まれるような暖かさを感じ、自分がイメージしていた昔のロシアに触れたような気がして感動しました。

―― ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と「パガニーニの主題による狂詩曲」を収録したCDが発売されましたけれど、そうした経験があったからこそ生まれた演奏だと言えそうですね。

ラフマニノフたちが見ていた風景はこれなのかな、という大切なインスピレーションを得たのは間違いないですね。ラフマニノフは自分の名前を書くとき「Rachmaninov」ではなく「Rachmaninoff」という表記にこだわっていたと聞いたのですが、ロシア風の発音とイントネーションで彼の名前を口にしてみると、ピアノ協奏曲第2番の最後にある「タンタタタン」という音型にピタリとはまるのです。ロシア語を知れば「なるほど」と納得できることですし、もちろん自分の演奏にも大きな影響を与えてくれます。こうしたことは住んでみて肌で感じられることですから、ロシア以外の国にも住んで、その国の作曲家や音楽のことをもっと深く知りたいと思えてくるのです。

―― ラフマニノフのCDではイタリアの俊英指揮者であるアンドレア・バッティストーニ(東京フィルハーモニー交響楽団首席指揮者)と共演し、録音の模様はテレビ番組『情熱大陸』でも放送されました。 

まだまだコンチェルトの経験が少ないため、いろいろな指揮者の方と出会いたいと思いますが、バッティストーニとはリハーサルも含めて3日くらいしか仕事をしていませんけれど、音楽の方向性が奇跡かと思うほどぴったりでした。自分がこうしたいと思うことを彼も同じように考えていて、その上で互いが思うことをぶつけ合い、7歳年下の自分を大きく受け入れてくれる感じがしたのです。自分が弾かないときにもリハーサルをずっと見ていましたけれど、参考にするべきところがたくさんありました。ピアノ協奏曲第2番は名曲中の名曲ですし、これまでにもたくさんの名盤がありますから、そういった曲を弾くというのはとても難しいことだと思うのです。でも、だからこそ「自分は何ができるのか、どう弾けるのか」と考えることができますし、今回は本当に100%以上の自分が出せたと思っています。 

―― 今年(2017年)4月には佐渡裕さんとの共演で、そのピアノ協奏曲第2番を全国で演奏するツアーがあります。

佐渡さんとは初めてご一緒いたします。ツアーの期間が長いのでいろいろなお話しをさせていただきながら、CDとはまた違ったアプローチで演奏を組み立てていきたいと思っています。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団も僕にとっては思い出深く、高校3年生のとき(2012年)に日本音楽コンクールで1位をとった際、本選でラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏したオーケストラが東京シティ・フィルでした。僕は日本の大学に通っていればちょうど4年生になりますが、楽員やツアー・スタッフには同年代の知り合いがたくさんいますから、フレンドリーな雰囲気のツアーになるような気がして楽しみにしているのです。もちろんその中で演奏はいつも変化していくでしょうし、スケジュールがとてもハードですから、また自分を追い込む状況になるのかもしれません。そう考えれば、やはり浜離宮朝日ホールでの6日間リサイタルで経験したことが生きてくると思っています。  ―― さらに7月から9月にかけては、やはり全国を縦断するリサイタル・ツアーが決定しました。  これまで日本音楽コンクールで1位をとったときに、副賞として各地でのコンサートはしましたが、これだけの規模で全国ツアーができるのは本当にうれしいですし、いろいろな街の方にようやく自分の演奏を聴いていただけます。演奏する曲についてはまだ迷っていますが、僕は2~3年後も考えた上で曲目を決めるようにしていますから、今回のツアーが次へのステップに生かされるよう、じっくりと考えたいですね。プロコフィエフやリストのピアノ・ソナタにも興味をもっていますし、シューベルトの「即興曲」も魅力的です。

―― 2017年の意気込みをお聞かせいただけますか。

2016年は演奏会を重ねるたびにCDのサイン会へ残っていただけるお客様も増え、『情熱大陸』の影響もあるのだと思いますが、街の中で声をかけられることも多くなりました。もちろん自分にはまだまだやるべきことがありますし、演奏会や録音の現場で調律師さんのお話しをうかがいながら、ピアノという楽器の可能性をあらためて思い知っているところです。そういった知識や経験を生かしながら自分の音楽を作っていきたいと思っています。

(取材・文:オヤマダアツシ  写真撮影:岩間辰徳)

公演情報
佐渡裕指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 特別演奏会2017

■公演日程・会場
2017年
4/14(金)東京 府中の森芸術劇場 完売
4/15(土)埼玉 サンシティ越谷市民ホール 完売
4/16(日)静岡 静岡市清水文化会館マリナート 完売
4/17(月)愛知 刈谷市総合文化センター     完売
4/18(火)岐阜 バロー文化ホール(多治見市文化会館)
4/21(金)長野 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
4/22(土)山梨 コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
4/23(日)神奈川 藤沢市民会館     完売
4/26(水)福島 須賀川市文化センター
4/27(木)秋田 秋田県民会館 
4/28(金)青森 リンクステーションホール青森        
4/29(土) 岩手 北上市文化交流センター さくらホール

 
■指揮:佐渡裕
■ピアノ:反田恭平
■演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
■演奏予定曲目:
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64
■公式サイト:http://soritakyohei.com/
■ファンクラブページ:http://soritakyohei.club/

2017年夏・全国縦断リサイタルツアー → 北海道、岩手、福島、東京、神奈川、静岡、名古屋、兵庫、福岡、etc.(詳細後日)。

 
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