『オフェリアと影の一座』演出・振付の小野寺修二インタビュー
小野寺修二
『モモ』や『はてしない物語』などで、日本でもよく知られているミヒャエル・エンデ。そのエンデの絵本『オフェリアと影の一座』をもとにした同名の舞台が新潟で幕を開け、いよいよ明日、11月30日から東京で上演される。(12月4日まで。その後、兵庫公演あり)
主人公は小さな声で囁くプロンプターのオフェリア。劇場が閉鎖になり、オフェリアは集まってきた「影」たちと一座を組んで旅をする──。
その そんなファンタジックで、演劇へのオマージュに溢れた舞台の出演者は、オフェリアに白石加代子。そして旺なつき、彩吹真央、彩乃かなみ、真瀬はるかといった宝塚出身の女優たちや、舘形比呂一やフィリップ・エマールといった身体性に優れたキャストが顔を並べる。
演出は小野寺修二、新たな身体表現で演劇の可能性を切り拓いている彼が、今回はエンデの世界に取り組む。
小野寺修二
年齢も性別も超えてしまう白石加代子という存在
──この作品と出会ったときの印象から話してください。
エンデの他の作品はいくつか読んでいましたが、これは初めてで、こういう絵本があったのだと。演劇や人間そのものについての話が詰まっている本で、その部分と2つの劇中劇の見せ方を考えながら作っていこうと思っています。
──小さな声の女性・オフェリア役は白石加代子さんで、色々イメージが膨らみます。
白石さんとは昨年、リーディング公演の『笑った分だけ、怖くなる』でご一緒させていただいて、とても勉強になりました。自分の色があると同時に自由度があって、しかも臆せず色々なことにチャレンジしてくださいます。それだけに一つ一つ丁寧に積み上げていきたいという気持ちになります。今回は劇中劇の『オンディーヌ』で15歳の少女を演じていただきますが、白石さんは年齢も性別も超えてしまう方なので、どんなオンディーヌを見せていただけるか楽しみです。言葉であらゆるものを演じ分けられる方ですが、例えばそこに立っているだけで見えてくるものを大切にして、言葉だけで物語を埋めていかないようにしたいなと。
──白石さんにとっても新境地になりそうですね。劇中劇は『オンディーヌ』と『トゥーランドット』だそうですが?
その劇中劇で、今回出演してくださる宝塚のOGの女優さんたちに活躍してもらおうと思っています。ただ、オムニバスにはしたくないし、その2本とオフェリアの人生をうまく繋げて1つの作品にするのが命題で、そのためには出演する方々の特性に頼りすぎないようにしたいなと。何でもできる方々ですが、いつもと違う面を引き出せたらいいなと思っています。また、この作品の中に流れる「憧れや夢」「人生の儚さ」「孤独」「心の闇」などを表現するために、個よりも群で大きな動きを作っていくことが必要だと思っています。
避けられないこと、そのうえでどう生きるか
──伺っていると、この作品にはエンデらしい人生論や演劇論が書かれているのですね。
哲学的な要素の強い本だと思います。大きな意味で「死」についての物語で、さらに2つの劇中劇から「愛」も浮かび上がります。主人公のオフェリアがやがて「死」を受け入れていくという話でもあるのですが、あまり哲学や宗教の匂いは出さずに、人の生と死というところに着地させたいと思っています。
──今の日本は「終活」という言葉が流行るような時代ですから、若い観客の方にも響くと思います。
誰にでもいつかは訪れるし、避けられないことだとしても、そのうえでどう生きるか、それを説教くさくなく伝えられれば。でも、そういうことも白石さんは全部飛び越えて、存在そのもので生きていることの素晴らしさを伝えてくれるので。僕は迷わずに書かれているものを素直に出せばいいんだと思います。
──小野寺さんらしい自由度のある舞台を期待しています。
今ちょうど『あの大鴉、さえも』という作品の演出をしたばかりで、70年代、80年代の演劇を改めて読み返しているのですが、舞台の表現はもっと自由でもっともっと色々なことができるんだなと。今回のこの作品も、普通の演劇ではないものを観たいから、僕に依頼されたのだと思うので、そこを大事に作りたいですね。
小野寺修二
出演する彩吹真央と彩乃かなみのインタビューはこちら
(文/中山圭 撮影/アラカワヤスコ)
『オフェリアと影の一座』
11/26(土)19:00、11/27(日)14:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
問合せ:りゅーとぴあ専用ダイヤル025-224-5521
問合せ:MTP 03-6380-6299
12/6(火)~16/12/7(水) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)
問合せ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255