TESTAMENT来日公演を記念してスラッシュ・メタルと彼らのルーツに迫るコラム

コラム
音楽
2016.12.16

来年2月に米スラッシュ・メタルの雄、TESTAMENTの来日公演が東名阪の3カ所で行われる。

昨年の『LOUD PARK 2015』出演以来の来日となり、個人的にはドイツのメタル・フェス『ROCKAVARIA 2015』でも彼らの熱いパフォーマンスを目撃した。ただし、今回は最新11thアルバム『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』を引っ提げての来日であり、何より新作の出来映えが良かったこともあり、単独公演でじっくり彼らの凄味を体感したい人も多いだろう。

そこで、ここでは、そもそもスラッシュ・メタルとは何なのか。そこから掘り下げて話を進めたい。

まず”Thrash”の語義は、ピシッ!ピシッ!と"鞭打つ"という意がある。平たく言えば、スラッシュ・メタルとは鞭打つかのごときビート感で迫るメタル・サウンドのことだ。そのスラッシュ・メタルが産声を上げたのは、VENOMの1stアルバム『WELCOME TO HELL』(81年)が発火点だ。速い、うるさい、ダーティーの三拍子を揃えたサウンドは、後続のスラッシュ・メタル(またデス・メタル、ブラック・メタル)に絶大なインパクトを与えた。

SLAYERもカヴァーした「Witching Hour」  

ゆえに80年代は有象無象のスラッシュ・バンドが世界各地で萌芽した。今年約8年ぶりになる『HARDWIRED…TO SELF DESTRUCT』を発表し、全米アルバム・チャート初登場1位を獲得したMETALLICAを筆頭に、MEGADETHSLAYERANTHRAXは「スラッシュ・メタル四天王」、  

 さらにドイツ産のSODOMKREATORDESTRUCTIONは「ジャーマン・スラッシュ三羽烏」と呼ばれ、今なお現役バリバリのスラッシュ勢がたくさん生まれた時代なのだ。  

そして、ここで紹介するTESTAMENTも例外ではない。METALLICAのカーク・ハメット(G)が在籍していたことでも知られるEXODUS、FORBIDDEN、HEATHENなどと並び、カリフォルニア州で結成された。この地域で生まれたバンドたちはザクザク刻むギター・サウンドが特徴的で、それらは"ベイエリア・クランチ"と言われ、ベイエリア・スラッシュという呼称が付くほど独特の音色を鳴らしていた。  

そんな中、83年にTESTAMENTはエリック・ピーターソン(G)を中心に前身バンドとなる、THE LEGACYを結成。それからチャック・ビリー(Vo)が加入し、現バンド名に改名した後、87年に1stアルバム『THE LEGACY』を発表。EXODUSの1stアルバム『BONDED BY BLOOD』同様、名盤の誉れ高き作品を世に放つ。3rdアルバム『PRACTICE WHAT YOU PREACH』ではメロディに磨きをかけたフック抜群の曲調を揃え、バンド初のビルボード・チャートのトップ100位にランクインした。もし初めて彼らに触れるなら、入りやすい作品だろう。続く4thアルバム『SOULS OF BLACK』も良質作なので、こちらもお薦めしたい。  

90年代はグランジ/オルタナティヴ・ロック勢の台頭、あるいはバンド本体やメタル・シーン自体が活気を失い始めたタイミングも手伝って、6thアルバム『LOW』(94年)発表後の95年に一度バンドは解散。 今年結成33年を迎える彼らだが、メンバー・チェンジも多かったものの、不死鳥のごとくよみがえり、これまで11枚のオリジナル・アルバムを作り上げている。TESTAMENTは作品ごとに音楽的変遷はあるものの、常にアグレッションを失わず、スラッシュ特有のヘヴィネスを保持し続けてきた。

現時点での最新作『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』はまさにその顕著たる尖鋭的な作品で、このアルバムから入っても全く問題ナシ!  

現在のラインナップはチャック・ビリー(Vo)、エリック・ピーターソン(G)、アレックス・スコルニック(G)に加え、出戻り組(アレックスもそうだが)として、フロリダ発のデスメタル・バンド、元DEATHの肩書きを持つスティーヴ・ディジョルジオ(B)とジーン・ホグラン(Dr)が一堂に会すという最強メンバーが揃っている。ザクザク刻むギターはもちろん、クセの強いダミ声を放つチャック・ビリーは熱情的な咆哮をかます一方で、メロディアスな歌心でも聴く者をグッと引き付ける。また、テクニカルな演奏力を見せる楽器陣のアンサンブルは素晴らしく、楽曲の攻撃性やダイナミズムを的確に炙り出しているゆえ、スラッシュ勢の中でも非常に聴きやすい部類に入ると思う。

魂を揺さぶるヘヴィネスと叙情的なメロディ・センスの配合バランスも最高だ。誤解を恐れずに言えば、前述した「スラッシュ・メタル四天王」に勝るとも劣らない、わかりやすい歌とリフ・ワーク、キャッチーなメロディ・ラインを配した楽曲を多く持っている。これを機にスラッシュ・メタルの扉を叩いてほしい!


文=荒金良介
 

イベント情報
TESTAMENT JAPAN TOUR 2017
 
TESTAMENT

TESTAMENT

2017/2/18 (Sat) Umeda AKASO 
OPEN 17:00 START 18:00

2017/2/20 (Mon) TSUTAYA O-EAST 
OPEN 18:00 START 19:00

2017/2/21 (Tue) Electric Lady Land 
OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥8,000


 

 

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