サヌキナオヤ インタビュー Homecomingsメンバーと作り上げたジャケットイラストが持つ"寂しさ"を語る

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サヌキナオヤによるHomecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』イラスト全長版

サヌキナオヤによるHomecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』イラスト全長版

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音楽ジャケットのアートワークを担当するクリエイターを取り上げてゆく連載企画『アートとミュージックが出会う場所』。第二回目はイラストレーター・サヌキナオヤ氏に登場してもらった。

2016年春に発売された、Homecomingsの2ndアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』。ジャケットを担当したサヌキナオヤは、イラストレーターとして様々なミュージシャンのアートワークを手掛けるほかにも、漫画家やアニメーターとしての顔も持っている。現在は東京在住のサヌキ氏だが、Homecomings(以降、ホムカミ)の活動拠点でもある京都が、彼の生まれ育った故郷だ。多彩な才能は、古都でどのようにして育まれていったのだろうか。『SALE OF BROKEN DREAMS』の制作秘話を手がかりに、紐解いていこう。

 

――まずはサヌキさん自身が影響を受けたものについてお伺いします。お気に入りのCDジャケットはありますか?

僕の中でbloodthirsty butchersとサニーデイ・サービスの二つのバンドはでかいんですけど、特にサニーデイのアートワークを担当している小田島等さんが昔からすごく好きで、現在の仕事についているのは間違いなく彼の影響だと思います。なので、部屋にずっと飾っているのは、小田島さんのものが多いですね。サニーデイの「スローライダー」とか、LABCRY『LABCRY』とか。。彼のことは高校生くらいから知ってはいたんですけど、意識するようになったのは大学生の頃です。京都にトランスポップギャラリーというところがあって、そこで小田島さんの展覧会をやってたんですよね。

サヌキナオヤ

サヌキナオヤ

――小田島さんもサヌキさんも、いわゆる流行しているイラストの画風からは一線を画した、独自のスタイルを貫いているように感じられます。

流行とかは全然関係なくて、僕自身について言うと所謂オルタナって事なのかなと思います。アメリカのオルタナティヴコミックスと呼ばれる漫画群がすごく好きで、エイドリアン・トミネとかダニエル・クロウズとか、そういう人達に強い憧れを持ってやってます。彼らも、コミックスを描きながら、ロックバンドのアートワークをやったりもしているんですよ。

――サヌキさんが思う、オルタナティヴコミックスの魅力とはなんでしょう?

オルタナ音楽と同じように、ちょっと寂しい匂いを感じる部分が好きなんだと思います。あとは、依頼を受けてからペンを握るのではなく、作家自身のペースで活動しているスタイルにも、めちゃくちゃ憧れてますね。漫画家も、週刊とかじゃなくて、一部の絵描きや小説家のように自由なペースで創作できたらすごくいいですよね。

――ご自身でイラストを手掛ける際にも、そうした"寂しさ"がテーマの一つとなっているのでしょうか。

テーマというより、どうしようもない資質としてあるんだと思います。どう描いても”寂しさ”があらわれてしまう。あと僕のイラストには「考える人」とか「物思いにふけっている人」とかが登場しがちなんですが、そういうメランコリックな所は特別出そうと意識している訳ではないんです。そういうところでは、割とホムカミのメンバーとも似ていますね。多分、彼らも全員そういう感覚を持っていると思います。

――オルタナティヴコミックスとの出会いも、大学生の頃でしたか?

そうですね。さっきも話した、トランスポップギャラリーの大元のプレスポップという会社が、ダニエル・クロウズやエイドリアン・トミネの日本語訳を出していたんですよ。少人数だけど、すごく誇りを持って仕事をしている、尊敬すべき会社です。だから、自分にとってはトランスポップの存在がめっちゃデカいですね。

――トランスポップギャラリーとは、どのようにして出会ったのでしょうか。

京都の出町柳というところに、コンサート会場で有名な京都大学西部講堂や、その近くにメトロっていうクラブがあるんですけど、そこの行きしなにあるギャラリーなんですよ。だから、ライブに通っているうちに、いつの間にか知っていました。

――サヌキさんの中で、そうした京都カルチャーの影響は大きくありますか?

東京と違って、京都は狭いですからね。市内で栄えているところは、1日で回りきれてしまうくらいで。見渡せば四方に山があるという箱庭っぽい環境は僕に少なからず影響を与えていると思います。端から端まで把握出来てる感じというか。イラストの仕事は東京の方が何倍もやりやすいので、京都にこだわっているわけではないですけど、やっぱり自分のルーツとして京都の存在は大きいと思います。

――ホムカミも京都を拠点にしたバンドですが、彼らと出会ったのもサヌキさんが京都にいた頃でしょうか。

いえ、僕は大学卒業後に上京したので、京都での生活は彼らと被っていないんですよ。ホムカミは、僕がアートワークを担当しているシャムキャッツというバンドと仲がいいので、東京で何度かライブを見て、話したこともありました。僕は前々から彼らの音楽がかなり好きだったんですけど、2015年の7月くらいに、TwitterのDMで仕事のオファーが来たんです。それで、その年のクリスマスに出た7インチのジャケットと、バンドのロゴを作ることになりました。それが、ホムカミとの最初の仕事ですね。そこから1年ちょっとしか経ってないんですけど、今ではすごく仲が良くなりました。

Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』

Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』

――『SALE OF BROKEN DREAMS』のジャケット制作の流れを教えてください。

アルバムのコンセプト自体が、「ひとつの街を舞台とした映画のサントラ」というものだったんですよね。なので、最初にホムカミのギター・福富くんから、スチュアート・ダイベックの短編集『シカゴ育ち』と、漫画『タンタンの冒険』の2冊を渡されて、「この本のイメージで、ひとつの街を描いてください」って言われたんです。なかでも、短編集の中の『ペットミルク』という話が、特にイメージに近いとのことでした。それでまあ、読んでみたら最高でしたね(笑)。なので、この本を読み、ホムカミの音楽を聴きながら描いたという感じです。

スチュアート・ダイベック短編集『シカゴ育ち』

スチュアート・ダイベック短編集『シカゴ育ち』

――ということは、このジャケットに描かれているのもシカゴの街並み?

いえ、これは、どこでもない架空の場所です。でも、Google Earthでアメリカのいろんな街をめちゃくちゃ見て、気になる場所があったらスクショを撮って、参考にしていましたね。細部にわたってひとつの街をイメージして作り上げました。ただ、最初に出した街のイメージは、メンバーに「違う」って言われてしまいましたけど(笑)。この作品に関しては、福富くんとボーカル・畳野さんの2人のチーム”MURRAY”がアートディレクションという形で入っているので、実質3人で作っています。

『SALE OF BROKEN DREAMS』ジャケットの初期案

『SALE OF BROKEN DREAMS』ジャケットの初期案

『SALE OF BROKEN DREAMS』完成稿直前のイラスト案。構図は完成稿とほぼ同じだが中央に人が描かれている。

『SALE OF BROKEN DREAMS』完成稿直前のイラスト案。構図は完成稿とほぼ同じだが中央に人が描かれている。

――サヌキさん個人で仕事をする時と、メンバーのディレクションが入った場合では制作に違いがありますか?

全然違うと思います。バンドメンバーのディレクションが入ると、臆することなく、一つの世界に飛び込むことができるんです。曲を作った本人たちですからね。線一つひくことの、これ以上ないくらいの根拠になるというか。一人でやっていると、もうちょっと自分のオリジナリティを出そうとする気がします。やっぱり、一人の解釈だとどうしても個人的な感じになってしまうかな、と。それはイラストの良さに繋がるとは限らないですからね。

Homecomings presents "BASEBALL SUNSET" フライヤー /サヌキナオヤと、Homecomings・畳野&福富によるユニット"MURRAY"がアートワークを担当

Homecomings presents "BASEBALL SUNSET" フライヤー /サヌキナオヤと、Homecomings・畳野&福富によるユニット"MURRAY"がアートワークを担当

――シャムキャッツの場合にも、メンバーがディレクションをして作られたアートワークがあります。そうやってバンドとかなり近い距離で制作に携わるスタイルは、サヌキさんならではですね。

ホムカミとシャムキャッツは、ちょっと特別かもしれませんね。現に友達ですし。大人同士でのやり方もあると思うんですけど、友達になってしまった方が「あれいいやん、これいいやん」って、遠慮なく言い合って作っていけるんです。

――他のインタビューで「僕はデザイナーではない」との発言がありました。これは、そうした独自の制作スタイルを指しての発言だった?

他意はなくてそのまんまの意味なんですけど、、あくまでも自分はイラストを描く人という自意識でいるようにしてます。自分のイラストとデザインは分野的には違うものだと認識しているので、このホムカミのジャケットでも僕とは別でデザイナーさんがいて、最後に文字の配置なども含めて整えてもらい入稿をやってもらったんです。デザインには、経験と勉強を積み重ねないとできない部分があると思うので。とはいえ、最近は腹を決めて、僕もそういったデザインのことを勉強していかないとなとも考えています。

――最後に、音楽作品のアートワークと、個人で制作している漫画作品などを手掛ける際の考え方の違いについて教えてください。

漫画は完全にプライベートワークって感じですね。何をしてもいいので、こっちでも自分を証明するぞってところが少なからずあります。バランスを取っている感じですね。ただ、最近漫画はあまりできていないので、ちょっとストレスが……(笑)。イラストは仕事なので、ちゃんと周囲の期待に応えようとやっています。期待されてることを実現するために、これからも頑張っていきたいですね。

 

 
プロフィール情報
サヌキナオヤ|Naoya Sanuki
 
サヌキナオヤ

サヌキナオヤ


1983年 京都市生まれ。イラストレーター/漫画家/アニメーター。
音楽、書籍、雑誌のイラストや、漫画執筆、CSTVでのアニメーションなど。「MUSIC ILLUSTRATION AWARDS 2015」にて、BEST MUSIC ILLUSTRATOR 2015受賞。近年の仕事としてチャールズ・ブコウスキー著/翻訳柴田元幸「パルプ」の装画を担当。
公式サイト:http://sanukinaoya.com/
Twitter:https://twitter.com/okomen 
Instagram:https://www.instagram.com/naoyasanuki/

 

イベント情報
Homecomings presents "BASEBALL SUNSET" Vol.1
日程:2016年12月23日(金)
会場:東京・渋谷WWW
LIVE:Homecomings and more...
開場:17:15 / 開演:18:00
前売 3,300円

Homecomings presents "BASEBALL SUNSET" Vol.2
日程:2016年12月24日(土)
会場:京都・京都MUSE
開場:17:15 / 開演:18:00
LIVE:Homecomings ※ONE-MAN LIVE
前売 3,000円(ドリンク別)

Homecomings presents "BASEBALL SUNSET" Vol.3
日程:2016年12年25日(日)
会場:愛知・名古屋Live & Lounge Vio
LIVE:Homecomings and more...
開場:17:30 / 開演:18:00
前売 3,300円

 

リリース情報
Homecomings 『SALE OF BROKEN DREAMS』
 
Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』

Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』


発売日:2016年5月11日
CD / PECF-1133 / felicity cap-251 / 2,400円 (+税)
felicity / SECOND ROYAL RECORDS

01.THEME FROM SALE OF BROKEN DREAMS
02.ALPHABET FLOATING IN THE BED
03.HURTS
04.DON'T WORRY BOYS
05.BLINDFOLD RIDE
06.MAYBE SOME OTHER TIME
07.ANOTHER NEW YEAR
08.MORE SONGS OF PAIN
09.PERFECT SOUNDS FOREVER
10.BUTTERSAND
11.CENTRAL PARK AUDIO TOUR
12.LIGHTS
13.BASEBALL SUNSET

Homecomings公式サイト:http://homecomings.jp/
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