パリの展示レポート:2500もの骨格標本に圧倒される『古生物学比較解剖学展示館』
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古生物学比較解剖学展示館
今回は期間限定で見られる展示ではなく、パリをいつ訪問しても見学できる変わり種の展示を紹介してみようと思います。
その展示とは、パリ自然史博物館にある展示館のひとつ『古生物学比較解剖学展示館』(Galerie de Paléontologie et d’Anatomie comparée)の常設展示です。ここでは動物や人間の骨格や解剖が、2500以上にも及び一堂に展示されています。1900年から展示館としてオープンした荘厳な建物に足を踏み入れると、人体モデルを先頭にクジラやキリン、クマ、サル、ヘビといった脊椎動物の骨格標本が、こちらに迫ってくるような迫力で迎えてくれます。
骨格とはいえ、その迫力からは生きた動物の"気"のようなものが感じられ、展示空間に入ってくのも躊躇してしまうほどです。
筆者が訪れた平日の午後には、中学生の団体が先生に引き連れられて見学に来ていましたが、最初は気だるそうだった学生たちもその圧倒的な展示の数々に、それぞれ興味をそそられているようでした。学校の授業の一貫として活用されるその展示は、世界でも類を見ない程の数、数、数……。まずどこからどう見たらよいのかわかなくなるほどです。
人間の進化がわかる頭蓋骨の陳列や、絶滅してしまった珍しい動物の骨格。宝石を保存するようなガラスケースに 閉じ込められた小さな鳥の骨格や、建築物のように巨大なクジラの骨格まで。じっくりと見て行くと、それぞれの骨に肉がついて生きていた時の姿を想像できるような姿で展示されています。
この展示館は、床一面は古く味のある木製の床張りや、標本が閉じ込められたガラスケースや、休憩用の椅子まで、展示館のあらゆるデコレーションが100年の時をそのまま経たことが感じられるビンテージもの。骨格標本の美しさだけでなく、展示館のすみずみで発見できる"美"に、毎度息を飲むことになりました。博物館や水族館というと、モダンで冷たいイメージがありますが、この展示館はまるでパリの歴史ある老舗ブティックにでも迷い込んだよう。
恐竜遺跡のレプリカなどが現れる二階、三階へとつづく階段は、アールデコ調の草木のデザインでかたどられた鉄格子。これがまた美しく、薄暗い階段を登るだけで21世紀の現代にいることを忘れてしまいます。いつか恐竜の大好きな私の甥っ子がパリに来た際には、必ずここに連れて来てあげようと思うような展示内容もさることながら、この建物の中に入る体験自体が、大人も十分ワクワクさせてくれる展示館となっています。
場所:パリ自然史博物館 敷地内
開館日時:10時〜18時(休館日)毎週火曜日、12月25日、1月1日、5月1日
オフィシャルサイト:http://www.mnhn.fr/fr/visitez/lieux/galerie-paleontologie-anatomie-comparee