マイケル・メイヤー日本初演出! 柚希礼音主演『お気に召すまま』稽古場レポート
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『お気に召すまま』稽古風景
トニー賞受賞コンビと元宝塚トップスターの挑戦
この世は舞台。男も女も、人はみな役者にすぎない。
この名台詞で知られるシェークスピア劇『お気に召すまま』が、2017年1月4日、日比谷シアタークリエで幕を開ける。主演は、元宝塚歌劇団星組トップスター柚希礼音。演出は、ブロードウェイの鬼才マイケル・メイヤー。
『お気にめすまま』チラシ
マイケル・メイヤーは、『春のめざめ』で2007年トニー賞最優秀演出賞を受賞。『アメリカン・イディオット』『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』など立て続けにヒットを飛ばす世界的演出家だ。さらに音楽は、トム・キット(2009年『ネクスト・トゥ・ノーマル』トニー賞楽曲賞、オーケストラ編曲賞受賞)が手がける。メイヤーが日本で演出を務めるのは本作が初めてであり、メイヤー作品の世界初演を日本で観ることができる貴重なチャンスだ。NY現地メディアも注目する本作の、公開稽古をレポートする。
’60のヒッピー文化をシェークスピアで
伊礼彼方
アミアンズ(伊礼彼方)のギター弾き語りではじまる第2幕第1場。シェークスピアの原作では、1600年ごろの宮廷と、羊飼いたちがのどかに暮らす“アーデンの森”が舞台だった。本作では、時代を1967年に。舞台をベトナム戦争下のワシントンD.Cと、10万人のヒッピーが集結し社会現象となった「Summer of Love」へと大胆に置きかえている。
追放されたロザリンドの父(小野武彦)と、それを囲み水タバコを燻らせ、酒瓶をまわすヒッピーたちが、ゆったりと耳を傾ける。のびやかな歌声とシンプルな編成の楽曲は、ヒッピーの聖地“ヘイトアシュベリー”の何ものにも縛られないスピリットを感じさせる。
『お気に召すまま』稽古風景
このシーンでは、トム・キットの書下ろし曲を聴くことができる。劇中では、キットの新曲以外にも、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」などが流れる予定だ。
もっとも幸せな、不朽の恋の物語
稽古の合間の風景
『お気に召すまま』は、シェークスピア作品の中でもっとも幸福な物語と言われている作品だ。
主演の柚希礼音は、上流階級の娘・ロザリンドを演じる。訳あってワシントンを追放される身となったロザリンドは、素性を隠すために男装し、ギャニミードと偽りの名を語り、従妹シーリア(マイコ)と共にヘイトアシュベリーにいた。稽古の合間に言葉を交わし場を和ませる柚希と、マイコ。
ジュリアン(オーランド―役)、橋本さとし(ジェークイズ役)
第3幕第2場、ロザリンドへの恋心を募らせるあまり森の木々にロザリンドへの恋の詩を刻むオーランドーと、本作のスパイス的な役割を担う皮肉屋で憂鬱症のジェークイズ。
「シニョール・恋愛病!」「ムッシュ・憂鬱病!!」と、あくまで紳士的に罵り合う2人だが、この後、大爆笑の展開に・・・。橋本さとしは、ジェークイズとル・ボーの2役を演じる。
柚希礼音、マイコ
木の陰からみていたロザリンドとシーリア。
男装のギャニミードとして、オーランドーの前に現れるロザリンド。オーランドーは、ギャミニードの正体が、恋い焦がれるロザリンドだと気づかない。
オーランドーの愛の告白の練習相手をかって出るギャニミード(=ロザリンド)。柚希は、男性に扮する娘として、男性が演じる女性を演じることになる。ここまできても気づかないオーランドーの盲目ぶり(鈍感さ?)にやきもきしつつ、笑ってしまうのは、シェークスピアの時代の観客も同じだったに違いない。
美青年ギャニミードに扮する合間に、時折みせるロザリンドの表情が愛らしい。
サイケデリックなロックスター登場
ジェファーソン・エアプレインの「ホワイト・ラビット」ではじまる第3幕第5場。
オーランドーの兄・オリヴァー(横田栄司)がヘイトアシュベリーに足を踏み入れる場面。幻想を振り払うように、苦悩にも恍惚にも見える表情で森を彷徨う。浮遊感あるサイケデリックロックに導かれるように、ヒッピー達に感化されていく演技に息をのむ。
曲のクライマックスで、オーランドーが登場する。ロックスターのようなカリスマ性を湛える姿が、『お気に召すまま』のストーリーにどう位置づけられるのか。本公演に期待が高まるばかりだ。
シアタークリエ10周年公演シリーズの第1弾という、記念すべき機会だからこそ実現した豪華メンバーの競演だ。ロックで、斬新で、ハッピーな、世界のファンが注目するシェークスピア劇の初公演を見逃さないでほしい。
(取材・文・写真撮影:塚田史香)
■演出:マイケル・メイヤー
■音楽:トム・キット
■出演:
柚希礼音
ジュリアン、橋本さとし
横田栄司、伊礼彼方、芋洗坂係長、平野良、古畑新之
平田薫、武田幸三、入絵加奈子、新川將人、俵木藤汰、青山達三
マイコ、小野武彦
日時:2017年1月4日〜2月4日
会場:シアタークリエ
〈大阪〉
日時:2017年2月7日〜2月12日
会場:梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈福岡〉
日時:2017年2月24日〜2月26日
会場:キャナルシティ劇場
■公式サイト:http://www.tohostage.com/asyoulikeit/