​「ライブっていいなぁ!」12月の渋谷に灼熱空間を生んだG-FREAK FACTORY、魂のライブ

レポート
音楽
2016.12.22
G-FREAK FACTORY

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G-FREAK FACTORY “ダディ・ダーリン” TOUR 2016.12.16 渋谷CLUB QUATTRO

12月半ばの渋谷の街は冷え切っていた。クリスマスが近付くワクワク感や、海外からやってきた陽気な旅行客で賑わってはいるが、とにかく寒い。今日はレゲエロックを標榜するG-FREAK FACTORYによる熱いライブ――そう頭に思い描くことで体の中に熱が生まれる……わけは全くないのだが、すがるような思いでフロアの熱気を思い浮かべ、会場のクラブクアトロがあるセンター街を突っ切った。

街の喧騒とは裏腹に、場内にはあたたかな空気が流れていた。BGMはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやベックといった90年代の海外アーティストたちによる楽曲が中心。サブライムの「What I Got」が心地いい。開演時間の19時に近付くにつれ一気に観客の数が増えていく。男女比は半々ぐらいだろうか。若者だけでなく、彼らの年の倍近くありそうな男性の姿もある。彼らの音楽が幅広く支持されていることがよく分かる。

今日はシングル「ダディ・ダーリン」のレコ発ツアーファイナル。作品のボリュームはたったの3曲ではあるが、ツアーの公演数は19本という規模の大きなものとなった。この作品をもって全国を回りたい――そんな強い気持ちと作品に対する自信が込められているのだろう。

19:10、客電が落ち、BGMとして流れていたベック「Loser」をバックに、ボーカル・茂木洋晃以外のメンバーがステージ上に姿を現す。そして、不穏なイントロから深いリバーブのかかったギターが乗っかり、ダブ要素の強いセッションが繰り広げられる。さらに演奏のテンションがグッと高まったタイミングで茂木が登場。ポエトリーリーディングのように言葉を吐き出し、本日の決意表明をかました後、「Unscrabmle」へ。この展開を観客は分かっていた。クラウドサーファーが続出し、あちこちでハンドクラップが。仕事帰りのサラリーマンもフロアの最後方で拳を突き上げている。そんな様子に満足そうな茂木は「ありがとう、渋谷!」といい笑顔。

MCでは彼らの地元・群馬がネット上でイジられていることを逆手に取って、「日本のアフリカから来ました、G-FREAK FACTORYです!」と熱くあいさつ。MC後、熱気を冷まさないようにぐっとテンションを上げていきたいところだが、「日はまだ高く」のイントロで茂木は演奏をストップさせ、こう言った。「(フロアの)半分から後ろが全然付いてきていません! 普段は対バンのせいにしてるけど(笑)、今日はワンマンだよ?」そして、再び同じイントロが鳴らされると、メンバーの姿が見えなくなるぐらいたくさんの手が挙がる。そればかりではない。曲の途中でフロアにいる全員を、そう、本当に全員をしゃがませ、カウントを合図に一斉に跳び上がらせた。ワンマンライブだからと言われてしまえばそれまでだが、ライブ開始15分でこのテンションまで持っていく茂木の人間力とテクニックが素晴らしい。

前に出てくることなく、(途中で少しMCをしていたけど)ほとんど喋ることのない演奏陣も文句のつけようがない。ビートを損なうことのないどっしりとしたリズム隊、控えめながらも絶対に欠かせない高音パートを彩る鍵盤、そしてオリジナリティ溢れるいなたいギター。そう、茂木の圧倒的な存在感にも決して負けていない、原田季征の味のあるギタープレイがたまらないのだ。下手をするとダサくなりかねないところ、絶妙なセンスが光るフレージングなのである。若手バンドどころか、彼らと同年代のバンドにもこのテのプレイをするギタリストはいないだろう。ひと言でレゲエロックと言えど、その言葉からイメージするサウンドを余裕で越えてくる懐の深さは、もしかしたら彼によるところも大きいのかもしれない。

茂木がジャマイカの国旗をまといながらのパフォーマンスとなった中盤の「イロハニホエロ」では、この日最初の頂点を迎えた。フロアの盛り上がりは高まる一方で、熱心にステージへと向かっていく姿からは凄みすら感じる。この一瞬だけ切り取れば、「宗教じみている」と揶揄する輩もいるかもしれない。しかし、決してそうではない。オープニングの一音目、第一声から、バンドとフロアが、音と、言葉と、歓声と、汗と、拳と、クラウドサーフを通じて高めていった関係性がここで爆発を起こしたのである。なんて美しい光景なんだろう。そんな感動に打ち震えていると、茂木はうれしそうにこう叫んだ。
「ライブっていいなぁ!」

彼らのライブのいいところはそれだけではない。最近のバンドはとにかく演奏が上手い。持って生まれたセンスにプラスして、スタジオでライブを想定した練習を相当積んでいるのだろう。しかし、時折その様子がライブ中にこちらまで透けて見えてしまい、ワンブロックごとMCが入るたびにテンションがぶつ切りになるケースがわりとある。そのせいでほんの少しだけ気分が萎えてしまうのだ(そして、そんな時にチラッと時計を見てしまう…!)。しかし、G-FREAKはそうではない。とにかくステージが流れるように進んでいく。まるで1本の映画のような……というとキレイ過ぎるが、熱さのなかにもハッとするほどスムーズな展開が潜んでいる。

仮に映画と呼ぶならば、この日のライブはG-FREAKのこれまでを追ったドキュメンタリー映画のようだった。想いの共有をフロアに強要するのではなく、「俺たちはこうやって生きてきたんだ」という彼らの生き様を、音と言葉を尽くしてこの日は表現した。これがまるで暑苦しくなく、初見の客の心すら掴む温かさと説得力に満ちていた。結成以来、地元でなかなか芽の出ない日々も過ごしてきた彼らだが、苦悩のひと言では説明しきれない様々な想いが、この渋谷クラブクアトロという場でポジティブなパワーとなって昇華していた。

「ダディ・ダーリン」~「Too oLD To KNoW」~「EVEN」とドラマティックに本編を締めくくった後は、「オーイエー!」という観客の大声援に応え、再びステージに登場。メンバー紹介どころかスタッフ紹介までやり切り、3月8日にフルアルバムをリリースすることを発表した。そして、同月18日からは再びツアーが始まるという。そんなハッピーなお知らせの後、「いつの日か」と「SUNNY ISLAND STORY」を披露し、見事なエンディングを迎えた。

満足感に浸りながら建物の外へと足を踏み出すと、街は驚くほど冷えていた。そうだ、忘れていた。2時間半前には凍えながら会場へと向かっていたんだった。そんなことを思い出している間にも体からは熱が奪われていく。決して消えない灯が体の中心で揺れているのを感じながら、小走りで駅へと急いだ。
 

取材・文=阿刀“DA”大志 撮影=HayachiN

セットリスト
G-FREAK FACTORY “ダディ・ダーリン” TOUR 2016.12.16 渋谷CLUB QUATTRO
1. jam
2. Unscramble
3. SOUL CONNECTION
4. 日はまだ高く
5. GRANDSLAM
6. アシアトカゼノオト
7. Redemption Song(ボブ・マーリィ カバー)
8. FOUNDATION
9. アメナキニジハナシ
10. 奮い立て 合い燃えろ
11. イロハニホエロ
12. DAYS
13. 隠り唄
14. チャンダンの香るこの部屋から~第二章~
15. 島生民
16. ダディ・ダーリン
17. Too oLD To KNoW
18. EVEN
[ENCORE]
19. いつの日か
20. SUNNY ISLAND STORY

 

ツアー情報
G-FREAK FACTORY「“ダディ・ダーリン”TOUR」追加公演
2017年2月18日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
<出演者>
G-FREAK FACTORY / and more

G-FREAK FACTORY "FREAKY" TOUR 2017
2017年3月18日(土)千葉県 千葉LOOK
2017年3月19日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
2017年3月25日(土)岩手県 the five morioka
2017年3月26日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2017年4月1日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2017年4月2日(日)石川県 vanvanV4
2017年4月9日(日)群馬県 高崎club FLEEZ
2017年4月15日(土)京都府 KYOTO MUSE
2017年4月16日(日)岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room
2017年4月22日(土)香川県 DIME
2017年4月23日(日)愛媛県 WStudioRED
2017年4月28日(金)長野県 LIVE HOUSE J
2017年5月13日(土)福岡県 Queblick
2017年5月14日(日)広島県 CAVE-BE
2017年5月20日(土)宮城県 仙台MACANA
2017年5月21日(日)秋田県 Club SWINDLE
2017年5月27日(土)熊本県 Django
2017年5月28日(日)長崎県 Studio Do!
2017年6月3日(土)北海道 BESSIE HALL
2017年6月4日(日)北海道 苫小牧ELLCUBE
2017年6月11日(日)大阪府 BIGCAT
2017年6月16日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2017年6月24日(土)東京都 LIQUIDROOM
※各公演ゲスト出演あり

 

リリース情報
ALBUM『FREAKY』
2017年3月8日発売

※初回限定盤のみ「山人音楽祭2016」のライブ+メイキング映像を収めた特典DVD付 / 詳細は追って発表
 
初回限定盤(CD+DVD)
価格:\3,000(税抜価格)+税
品番:BDSS-0030
 
通常盤(CD)
価格:\2,500(税抜価格)+税
品番:BDSS-0031
 
レーベル:BADASS
 
【収録曲】
01. ONE DAY
02. KTKZ TO TAIYO
03. Too oLD To KNoW
04. ダディ・ダーリン
05. HALF-DONE
06. SOMATO
07. イロハニホエロ
08. APPLAUSE FOR THE LOCAL HERO
09. Remain
10. 奮い立て 合い燃えろ
11. らしくあれと
12. オレンジの街
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