【SuG 武道館への道】Vol.1 武瑠:片岡愛之助主演『GOEMON-石川五右衛門-』を観る
SuG 武瑠 撮影=風間大洋
2017年9月2日(土)にキャリア初の日本武道館公演を開催するSuGが、日本武道館の似合うバンドになるべく様々なエンターテインメントに触れて心技体を磨く連載がスタート! 記念すべき第1回目は、武瑠(Vo)が昨秋に上演されていた片岡愛之助主演『十月花形歌舞伎 GOEMON-石川五右衛門-』を観賞。コラボ歌舞伎ならではの斬新な設定や演出から何を感じ取ったのか?
だいぶ歴史は浅いですけど、ヴィジュアル系も“傾く”っていうところから始まったところは歌舞伎と同じですね。
――歌舞伎をご覧になったのは今回が初めてですか?
いや、3回目です。高校生のときに授業の一環で観たのと、4年くらい前に今日と同じ新橋演舞場に観に来たのと。でも、そのとき観たのは古典歌舞伎だったので、今回のようなコラボ歌舞伎は今日が初めてですね。一般的にイメージする伝統的な歌舞伎とは違って、“歌舞伎ミーツ○○”みたいな感じなのが、なんだか観ていて懐かしい気持ちになりました。
――“懐かしい”って、どういうこと!?
今回の『GOEMON』は、片岡愛之助さん演じる石川五右衛門は、実はスペイン人とのハーフで赤毛だった……っていう設定じゃないですか。そういう“if”の話って、作品を作るときに自分もよくやっていたんですよ。例えば3rdアルバムの『Lollipop Kingdom』(2012年4月発売)では、『ロミオとジュリエット』を兵隊の国とお菓子の国の話に置き換えてみたりとか。そうやって何かと何かを掛け算する演出を入れまくってたんですけど、最近は削ぎ落として、純粋に音楽ばっかり追及していたから、“ああ、こういう手法、よく自分もやってたなぁ”って思い出しましたね。
――じゃあ、いきなり五右衛門がフラメンコを踊り出しても、特に驚くこともなく?
うん。例えばワンピース歌舞伎とか、最近はいろんなコラボ歌舞伎があることは知っていたので。むしろ“フラメンコと三味線のスケール(音階)って合うんだ!”とか、もっと細かく聴いちゃいました。すごく独特の世界観を醸し出していたから、“こんなに上手く融合するんだ!”って。
――フラメンコのリズムと歌舞伎ならではのツケの音が、驚くほどマッチしていましたよね。さすがミュージシャンは視点が違う。
五右衛門の見た目にしても、グラムロック感みたいなのがありましたよね。デヴィッド・ボウイの『地球に落ちてきた男』みたいな(笑)。衣装の色味にオレンジを使ってるのも、ラテン感を出すためなのかな?とも考えたり。でも、あんなにゆとりのある衣装を着てピタッと止まるのって、すごく難しいことだと思うんですよ。だから派手な動きより、そういう“静”の動きのほうが印象的でしたね。それこそ首を傾げる動きとか。
――そこが歌舞伎の様式美でもありますもんね。
そうですよね。あとは役によって声色も違うから、今井翼さんが二役やっているのも、幕間にパンフを観るまで気づきませんでした。でも、一番ビックリしたのは舞台セットの十字架かな。歌舞伎に十字架なんて、伝統的な古典歌舞伎推進派の人からしたら“なんでやねん!”って感じだろうし、十字架があったから余計にデヴィッド・ボウイ感があったのかもしれない。
『GOEMON』 写真提供=松竹
――なるほど。中村壱太郎さん演じる出雲の阿国の“時代によって変わっていかなければいけない”という台詞も印象的でしたが、そうやって伝統に革新を織り交ぜていく手法については、どんなふうに感じられました?
もちろん自分は肯定派ですね。間口も広がるし、新しい発見も生まれるし。文化として残してゆくためには、核は残しつつ外側を新しいものに入れ替えてゆくことって必要不可欠だと思う。もちろん崩しすぎて、元からある良さが失われてしまったら、本末転倒だけれど。
――そもそも歌舞伎だって、常識外れなほど派手な格好や振る舞いをする“傾く(かぶく)” が語源ですもんね。人がやらない斬新なことをやって“なんだコレ!?”と大衆を驚かせる人たちが始祖だったわけで、“型”に囚われてしまうのは逆におかしい。
それってだいぶ歴史は浅いですけど、ヴィジュアル系にも言えることですよね。以前、事務所の先輩だったMIYAVIさんも、タップダンスやグラフィティをヴィジュアル系と組み合わせて“KAVKI BOIZ”という活動もしていたし。まぁ、今のヴィジュアル系は伝統的なほうに目が向いていて、そのへん体現できていないけど。本来“傾く”っていうところから始まった文化であるのは、歌舞伎と同じですよね。
SuG 武瑠 撮影=風間大洋
――逆にヴィジュアル系や他の文化とは違う、歌舞伎ならではの魅力だなと感じたものってありましたか?
いや、そこは深すぎて難しい! 客席を見ていても芝居そのものを楽しむ以上に、自分が応援している役者が今回はこの役をして、次はあの役をやる……っていう風に成長を見守っている、いわゆるコアなお客さんが多い気がしたんですよ。お客さんとの繋がりがものすごく深い文化で、それがあるからこそ何百年も続いてきたのかなって。
――確かに、歌舞伎といえば大向こう(劇中に観客がかける掛け声)が付き物ですが、あれもファンとして相当なキャリアが無いとできないワザですし。
あんなの間違えたら、すごく恥ずかしいですよね! だから、お客さんもただのファンじゃなく、歌舞伎という文化自体を愛してるサポーターみたいな感覚なんじゃないかな。元々は大衆的なものだったんだろうけど、今はそうじゃないからこそ続いている。
『GOEMON』 写真提供=松竹
――今は格式高いものになり、家族代々でサポートするような、ある種“一見さんお断り”的なコアな世界になっていますよね。だからこそ今回観た『GOEMON 石川五右衛門』のように新たなものとコラボして、新しい血を入れていくことが必要なんでしょうけれど。
とはいえ、10代の子からしたら確かに入りづらい文化ではあると思うんですよ。芝居のテンポだったりピークへの持っていき方が、Vineだとかツイッターだとかのスピード感が求められる若者の文化とは、やっぱり全く違う。だから“新しい血”とは言っても無理に若い層を取り込もうとするんじゃなく、実際に歌舞伎を観ている年齢層とさほど変わらない、でも、歌舞伎とは違う文化を好きな層を狙ったほうが、発展性がある気はしましたね。あと、幕間にお弁当を食べる風習とかは面白いなぁと思ったんで、そうやって観劇自体を一つのイベント化することは大事かもしれない。それこそ劇場のレストランを演目に沿ったものにするとか、いろいろやりようがあるじゃないですか。
――マーケティング的にも的確なご意見です。ちなみにSuGとして、何かコラボしたい異ジャンルだとか異文化ってありますか?
前にミュージカルの『アダムス・ファミリー』を観に行ったら、ステージの下にステージが用意されていて、そこでバンドが生で演奏してたんですよ。あれは面白そうでしたね。個人的には、ちょっとゴシックな演目でやってみたい。歌舞伎でやるのは、さすがにハードルが高すぎるんで(笑)。
SuG 武瑠 撮影=風間大洋
――演劇とは親和性高そうですよね。物語性のあるアルバムはSuGもお得意ですし、特に武瑠さんは俳優さんとの交流も盛んですし。
おかげで舞台を観に行く機会も多くて、この前も『おそ松くん』を観に行ってきました。演出が素晴らしくてアニメの良さを活かしていたし、出てる人たちもみんな上手くて、自分には絶対できないな!と思いましたね。実は活動休止中にも2つくらいオファーがあったんですけど、“無理です!”って断ったんですよ。
――なぜ? SuGの活動の中でも、よく演技的なことやってません?
根本的に、演るよりも作る、体現するよりも発想するほうが得意なんですよ。SuGでは自分の素材を極限まで活かせるスタイリングとか演出、音楽を全部自分で考えて世界を作っているからできるだけで、人が作ったものの中には絶対に入れない! 役者ってスポーツ選手みたいなもので、誰かのアイディアを体現する能力が求められるけど、俺にはそれが無いんです。
――なるほど。つまり、いろんな舞台を積極的に観ているのも、あくまで“自分の世界”を作る上でのインプットがしたいから。
そうですね。実際4年前に歌舞伎を観に行ったのも、その時点で“浮気者”(2013~2014年に行なった武瑠のサイドプロジェクト)の構想があって、東京を使ってEDMっぽいことをやろうと考えていたから、わかりやすい和の要素を吸収したかったんです。だから舞台を観ながらも、和太鼓のロールとか金色の虚無僧とか具体的なイメージを膨らませていって、1年半後に「I 狂 U」(2013年11月に発売した浮気者のミニアルバム『I 狂 U』のリード曲)のMVを撮ったときには、実際そのアイディアを使ったんですよ。
――そうやって一見繋がりのないものを掛け算してリスナーを驚かせる、つまり“傾く”のは、SuGでも十八番ですもんね。
だから音楽に根本から向き合って、日本武道館に立つんだという目標に向かって真っすぐ頑張っている最近の流れは、逆に面白いですよね。これも来年に控える10周年ブームなのかもしれないけど、これまで常にみんなをビックリさせてきたこれまでの手法とは全く真逆のやり方をしてるわけだから、かなり新鮮なはず。
SuG 武瑠 撮影=風間大洋
――最初は音楽重視で、だんだん演出を盛り込んでゆく流れのほうがノーマルなのに、ある意味SuGは逆流しているというか。
そう。逆流してる(笑)。でも、『KILL KILL』(2016年11月2日発売2ndミニアルバム『SHUDDUP』リード曲)のMVで、久々に演出をいっぱい盛り込んでみたら、いつもより反応が大きくて! やっぱりみんなこういうのが好きなんだなぁとは思いました。
――きゃりーぱみゅぱみゅのMV等も手掛ける増田セバスチャン氏を監督に招いて、小道具に至るまでこだわりまくった一作ですもんね。
そういう自分たちの本質を『GOEMON 石川五右衛門』を観て思い出したし、夢の場所である武道館で昔みたいな仕掛けを取り入れるのも一つの手だなぁとか、いろいろと感じるところはありました。五右衛門が鷹に乗って三階席まで飛んでくるのを見て“SuGだったらコウモリに乗っても面白いな”とか、二階席の端で役者さんたちが立ち回りする演出には“ギター隊の二人ならイケるかな?”とか。
――武道館は広いですから、普段はできない仕掛けもいろいろできそうですよ。
まぁ、楽器を弾きながらだと難しいところはあるんですけど、面白そうですよね。まーたん(masato/G)を飛ばしてみようかな(笑)。
――自分ではなく?
俺、なんか飛ぶイメージが湧かないんですよね。飛んでる間、何をしたらいいんだろう?って手持無沙汰になっちゃうし、同じミュージシャンでも飛んで腕を広げるだけで魅せられる族と、飛んでもどうしたらいいのかわからない族がいるんですよ。俺は飛べない!
――私がフライングを見たことのあるミュージシャンといえば、GACKTさんとALFEEの高見沢さんですかね。
じゃあ、やっぱりウチだとまーたんですね! ちょっとクラウドファンディングしてみようかな。“規定の金額が集まったら、武道館でまーたんが飛びます!”って(笑)。
取材・文=清水素子 撮影=風間大洋
SuG 武瑠 撮影=風間大洋
会場:明治座(東京都)
日程:2017年5月3日(水・祝)~2017年5月27日(土)
出演:
【犬山道節】片岡愛之助
【犬飼現八】中村萬太郎
【浜路】坂東新悟
【犬塚信乃】中村米吉
【下男額蔵実は犬川荘助】中村橋之助
【犬江親兵衛】中村福之助
【網干左母二郎・犬田小文吾】中村隼人
【犬村大角】中村種之助
【犬坂毛野】中村壱太郎
【庄屋蟇六・扇谷定正】中村雁治郎
<イープラス全館貸切>
2017年5月20日(土)16:00公演
http://eplus.jp/sys/web/s/meijiza-kashikiri/index.html?top_mid_ban
▼片岡愛之助の出演舞台情報はこちら
2017年9月2日(土)日本武道館公演
開場16:00/開演17:00
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SuGシート:¥10,800(税込)※アリーナ1列から10列 ※FC会員限定
指定席:¥5,940(税込)※アリーナ11列目以降~スタンド1階席
39シート:¥3,900(税込)※スタンド2階席
39 LIVE ADDICT chapter1 THE BEST TOUR
※終了分は割愛
4月22日(土) 松阪M'AXA(三重)
4月23日(日) 名古屋CLUB QUATTRO
4月29日(土) 岡山IMAGE
4月30日(日) 高松DIME
5月3日(水) 宮崎SR BOX
5月5日(金) 福岡DRUM Be-1
5月6日(土) 大分DRUM Be-0
5月11日(木) 渋谷TSUTAYA O-WEST
5月14日(日) umeda AKASO
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【応募締切】2017年5月14日(日)23:59