横山幸雄(ピアノ) 節目の年にプログラミングをシフトチェンジ

インタビュー
2017.1.9
横山幸雄(ピアノ) ©ミューズエンターテインメント

横山幸雄(ピアノ) ©ミューズエンターテインメント


 1990年のショパン国際ピアノ・コンクール第3位(1位なし)に入賞。翌91年4月に開いたサントリーホールでのデビュー公演から、25年目のシーズンを迎えている横山幸雄。この1月には25周年記念リサイタルを同じサントリーホールで開く。

「今でもサントリーホールがあるアークヒルズに行くと胃が痛くなるぐらい。デビュー演奏会はものすごいプレッシャーでした。それが演奏活動を重ねていくうちに、たとえ大きなミスをしても、お客様がそこから僕がどう“脱出するか”を聴いてくださるだろうと楽観的に考えられるようになってきました。そのように、自由にふるまえるようになったのは、25年間に得たことのひとつだと思います」

「自由」がキーワード

 今回のリサイタルの選曲も、「自由」がキーワードだ。前半はモーツァルトの「幻想曲 K.475」、「ソナタ K.457」とシューマンの「幻想曲」。

「音楽で一番自由なのは即興ですよね。その即興性を彷彿とさせるのが幻想曲というジャンルです。言葉のイメージから、『幻想的な』と連想する方もいらっしゃいますし、そういう要素もなくはないのですが、音楽のスタイルとしては、ソナタという枠に収まらない自由な形式。発祥は即興演奏なんですね。実際、モーツァルトはかなり意図的に即興風に書いています。シューマンの幻想曲は、たぶんソナタ的な発想から始まったものが、その形式に収まりきらなくなった作品だと思います」

 シューベルトの「即興曲op.142-1」で始まる後半は、「幻想即興曲」をはじめとするショパン数曲とリストの「スペイン狂詩曲」が続く。
「幻想曲のような即興的なごった煮の中から、もう少し整理されたのが『即興曲』でしょう。ソナタ中心だった流れの中で、即興曲とかバラードとか、自由なスタイルの曲が書かれるようになったのがシューベルトの時代です。ショパンの『幻想即興曲』は死後に出版された遺作ですが、20代半ば、つまり生まれて『25年』の時期の作品。そして、そういう即興演奏的な音楽をもう少し整理して、自由かつドラマティックに仕上げたのが、リストの狂詩曲という分野だと思います」

自分の個性がどの作品と合うのか

 ショパンはいうまでもなく彼のプログラミングの軸のひとつだが、モーツァルトとシューベルトは近作のCDにも録音しているものの、横山としては比較的新しいレパートリー。さらに、リストを演奏会で弾くのは10数年ぶり、シューマンの「幻想曲」はなんと今回が初めてだそう。

「若い頃はあれもこれもと、どんどんレパートリーを拡げてきましたし、一方で自分の柱とするショパンやベートーヴェンは全貌を知りたくて全曲演奏に取り組みました。でもそれはもう十分で、今後は、今回のシューマンがそうであるように、少しずつ広げる方向性もありつつ、今までやったものを見直して突き詰める方向にシフトチェンジしたいと思っています。演奏家としての個性、たとえば僕は自分の録音を聴けば自分の演奏だとわかりますよね。その個性が作品の魅力を引き出すのにぴったりな曲を探していきたい。自分の演奏が、どういう説得力を持って聴いていただけるのかということを考えて取り組んでいます」

 今回意識したのは「有名曲から通好みの作品までを組み合わせ、門戸を広げつつも、ずっと聴き続けてきてくれたファンにも新しい発見があるような選曲」。ワインに例えれば「完全で、欠点のない、ロマネ・コンティのよう」とたとえてくれた。自信のプログラムだ。また、同時期に記念アルバム『雨だれのプレリュード』もリリースされる。こちらもリサイタルと共に楽しみたい。

取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年1月号から)


デビュー25周年記念
横山幸雄 ピアノ・リサイタル
2017.1/21(土)18:30 サントリーホール
問合せ:ジャパン・アーツ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp




CD
『雨だれのプレリュード/横山幸雄
ソニー・ミュージックダイレクト
MECO-1036(SACDハイブリッド盤)
¥3000+税
2017.1/25(水)発売

WEBぶらあぼ
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