キット・アームストロング(ピアノ) 知性派の新鋭が織りなす神聖な響き

インタビュー
クラシック
2017.1.12
キット・アームストロング(ピアノ) ©Neda Navaee

キット・アームストロング(ピアノ) ©Neda Navaee


 2016年秋のザルツブルク・イースター音楽祭 in JAPANで協奏曲のソリストとしてブロンフマンの代役を務め、好評を博した新鋭ピアニスト、キット・アームストロングが2年振りにソロ・リサイタルを行う。

 フランスのベルギー国境近くのイルソンにあるサント・テレーズ教会を購入し、地域の人との交流の場として、クリエイティブな活動のためのプログラムを発信するなど、文化的拠点として様々なアイディアを形にする活動をしているという。

「13年からその教会を拠点としていて、そこで生活もしています。地域の方たちと意見交換をし、何ができるかを模索しました。14年に初めてのコンサートを行い、みなさんの熱意に助けられながら、15年には5回行いました」

 今回のリサイタルでは、“教会の響き”を大切にした3人の作曲家、リスト、モーツァルト、そして16世紀にイギリスで活躍したウィリアム・バードの作品を取りあげる。

「ここ数年の活動で、バードの作品の素晴らしさに気づきました。今回私が演奏する『私のネヴェル夫人のヴァージナル曲集』はバードの作品の中で重要な位置を占めている鍵盤楽器のための作品です。バードは合唱の演奏会プログラムでよく見る名前ですが、彼の器楽曲は、声楽曲に負けず劣らず、ときに声楽曲以上に、表現豊かだと感じます。鍵盤楽器にとってなかなか難しい、冒険的な作風も見られ、当時の楽器の音色から考えても、野心的な試みをしています」

 前回もリストを演奏したが、今回は大作のソナタを披露する。

「リストは、私にとって親しみの持てる作曲家です。彼の書く主題に大きな価値を感じるからです。遠近法のような力でこちらの心をぐいぐいと引っ張り、ひとつの主題を感得させます。リストの作品には、ほんのわずかな音符のなかに感情が凝縮され、ときに“圧縮”されるようなことがあり、それは心の震えそのものにも感じられます。また、主題の性格変奏が優れていると言われますが、今回演奏するソナタもその一つです」

 さらに、長く親しみ「人生を音楽に捧げてもいい」と納得させてくれたという作曲家、モーツァルトのソナタ第17番と「幻想曲とフーガ」なども聴かせる。

 生物学、物理学、数学を学び、作曲も行うなど好奇心と高い能力を兼ね備えた多才なキット・アームストロング

「日本の皆さんがこれまでにクラシック音楽に対して捧げてこられた情熱や活動に尊敬を覚えます。今回のリサイタルで、なにかを感じ取っていただければ。皆様との再会を、楽しみにしています」

取材協力:ジャパン・アーツ 構成:編集部
(ぶらあぼ 2017年1月号から)


キット・アームストロング(ピアノ)
2017.1/23(月)19:00 浜離宮朝日ホール
問合せ:ジャパン・アーツ 03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/



他公演
2017.1/21(土)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール(0570-064-939)
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